呉 由姫(くれ ゆき)(原案:ルビー・バーティー)
金色のコルダ(きんいろのこるだ)
第3巻評価:★★★★(8点)
総合評価:★★★☆(7点)
音楽コンクール第1セレクション当日、香穂子の伴奏者が失踪!! 一人きりで舞台に立つ香穂子は…!? さらに参加メンバーは合宿へ。ハプニング連続、ドキドキの共同生活の行方は…!! 大人気ゲームのコミック版、第3巻☆
簡潔完結感想文
- コンクール当日。香穂子の伴奏者が現れず演奏中止に。その時、ある人の声が…。
- 選ばれし7人の演奏者が揃ったところで合宿。巻き起こるドキドキラブハプニング!
- 他の出場者の音楽への真摯な態度を知るほどに香穂子の後ろめたさは増していく…。
いよいよ全員召喚。コンクール、…じゃなくて恋愛開幕の3巻。
3巻目でようやく学校内の音楽コンクール全4回のセレクションの内、第1回目が実施される。
波乱に満ちた第1回のセレクションだったが、もう一人の異邦人の召喚で幕を閉じた。
各人の挨拶がてらの第1回セレクションが終わったことでようやく本編開始といったところ。
2巻までは前奏曲といった感じでしょうか。
そして、いよいよ乙女ゲームの本領発揮といったところです。
第1セレクションの波乱は大きく2つ。
1つは香穂子の伴奏者が会場に現れないこと。
これは故意によるもので、音楽科の香穂子への恨みつらみが思わぬ形で体現された。
覚悟を決めた香穂子は一人で演奏を始めるが審査員に伴奏者の不在を問われて困っているところに…。
客席から声を上げたのは土浦。
彼が香穂子の伴奏者として演奏すると名乗り出て、即席ペアによる演奏が始まった。だが、セレクション後、土浦の高い演奏技術は妖精・リリに認められたらしく、コンクールの参加者になってしまう。
原作ゲームを知らない私は、土浦は香穂子の伴奏者として物語の中で伴走する役割なんだと思いましたが、参加者にまでなってしまい驚きました。
まぁ、伴奏者じゃ他の出場者と伍することは出来ませんもんね。
これが2つ目の波乱。
これは香穂子によって召喚されたというよりも、土浦自身が異世界への門をくぐったという感じですね。
土浦にはコンクールを辞退するという選択肢もあっただろうが、
そうしなかったのは、自主的に門をくぐったという点や、舞台上で演奏した時に彼にも感ずるものがあったからだろうかと推測する。
または香穂子の近くにいられるという、まだ明確な名称を持たない想いも理由に違いない。
香穂子にとって月森が同じ道の遠く先を行く背中ならば、土浦は一番近くで肩を並べて歩く人だろうか。
コンクールの体裁とともに、恋愛シミュレーションゲームの形も定まってきましたね。
少女漫画的にはここからが本番。
合宿や学校の男性陣との交流がメインディッシュ。
コンクールなんぞ箸休めです(笑)
香穂子を女性として意識するのは火原、そして土浦だろうか。火原は10数巻に亘って片想いしてるのかと思ったものの、作中時間では1年にも満たないんですね。
でも火原は初めて接近したのが香穂子だから刷り込みで好きになった感じも否めないんですよね。
冬海ちゃんと同じ状況に陥っても、同じ赤面の仕方、同じ感想を漏らすような気がする。
ムードメーカーで攻略しやすそうで(笑)、私がゲームをするとしたらメンバーの中でも早い段階で狙い撃ちする人ではあります。
そして、そんな火原の恋心に触発されて自分の感情に戸惑うのが土浦。
音楽コンクールは嫌いですが基本的に負けず嫌いというか、他人から影響を受けやすいですよね土浦は。
恋愛としては火原など香穂子に近寄ってくる男性陣に対抗心を燃やし、
音楽としては月森の凝り固まった音楽観に対抗心で技術を磨いているようにも思える。
しかし同室の月森と一夜にして部屋替えを要求するとは、一体何があったのでしょうか…。
他のメンバーの香穂子への気持ちはまだまだ表に出てきていません。
丁寧というか、緩慢というか前半は やけにスローテンポで進んでいる気がしますね。
これは原作がある作品の強みでしょうか。
ある程度、商業連載であるから毎回の連載で勝負しなくていいのでしょうね。
短期決戦で人気獲得に躍起にならなければいけない作品とは事情が違うのでしょう。
そこが作風に品を感じるところでもあるので、私は好ましく思っていますが。
合宿の中でしっかりと他のメンバーの音楽への意識の高さ、知識の深さを表し、
ただの遊びの合宿ではなく、一層 香穂子の心に焦りと後ろめたさを現出させる裏のテーマもあるのだろう。
恋愛漫画としては合宿は各人の色々な側面を見られて楽しいですね。
私服や寝相、寝起きとか普段の学校生活の中では見られない面が見られる。
読者にとってのご褒美、それが合宿。
セレクション終了ごとにやってくれないかなぁ…。
品行方正な作品だからか、入浴シーンとかはありませんけどね。
月森の「お坊っちゃんシリーズ」の第一弾はこの巻の電子レンジで食事を温めることも出来ないでしょうか。
読み返すと絵柄に少し違和感があった1,2巻に比べて、この『3巻』からは登場人物の顔に安定感が出てきましたね。
絵としては私の好みの上位に入ります。
ちょっと身体が細すぎて怖いと思うところもありますが。