《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

等身大を装った 俺の背伸びすらも 君についた 嘘の一つなのだろうか。

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咲坂 伊緒(さきさか いお)
ストロボエッジ
第5巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★★☆(9点)

仁菜子への想いに気づいてしまった蓮。しかし父親の再婚に揺れる彼女・麻由香を支えようと気持ちを消すことにする。仁菜子の蓮に会えない冬休みが始まる。蓮への気持ちを知りながら安堂は仁菜子へ想いをぶつけ続ける。バイト先のクリスマス会準備中、安堂の元彼女と偶然出会い、仁菜子は彼の傷を知る…。

簡潔完結感想文

  • 安堂と急接近。彼の過去を知り、彼の優しさを知り、彼の熱意を知って。
  • 安堂の告白に仁菜子は。でも本書の登場人物は諦めが悪いんだからねッ!
  • 蓮の初恋の終り。仁菜子やったね。次巻で交際だね! えっ、違うの⁉


相変わらず蓮との距離は一定以上のままの5巻。
思い思われ、フラれてフラれてフラれる。主要人物全員失恋の5巻。


仁菜子は安堂の告白に対する答えを固める
。同じ時間を過ごす中で安堂の人となりも、自分への気持ちの誠実さも知っていく仁菜子。
先のない蓮への感情を持ち続ける自信の揺らぎを感じながらも、確かに反応する自分の心身を支柱にする。

仁菜子は強いですよね。
強いからこそ安堂は惚れ、強いからこそ安堂は振られ、強いからこそ安堂は中学の時と同じトラウマを負うことを回避できたとも言える。
安堂くん、いい人を好きになった、いい恋だったね。
まぁ物語から退場するどころか、最後まで粘るけど(笑)

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湧き上がる気持ちを忘れるための恋
バイト先で仁菜子に惚れ直した安堂が仁菜子を抱きしめると、そこにバイトを辞めたはずの蓮が登場して現場を目撃する。
見られたくない場面ほど見られる。
少女漫画あるあるですね。
ロボット蓮のポーカーフェイス、手にしていた切符を強く握りしめる拳。
初版から10年以上経つとで交通系ICカードの普及率は格段に上がったね、と思う一コマでした。


そして蓮は麻由香に別れを告げられる。
蓮と麻由香の心のすれ違いを表現するエピソードの重ね方が本当に上手いですね。
麻由香の蓮に対する執着が失われている事の証左となる出来事の数々(仕事優先・占いの注目点など)があるからこそ、作為的なものを感じないスッキリとした別れになっている。

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守ると決めた人が飛び立っていく
でも麻由香はすぐ仕事先や進学先で恋人を見つけそうだ。
いやいやたとえ間がなくても彼氏を乗り換えたんじゃない、ってのが重要なんです。

ずっと蓮と麻由香の肉体的接触の描写は極力抑えられてましたね。
仁菜子に対して警戒心を強めた麻由香が蓮の腕を取って甘えるぐらいで、どんな時でも品行方正なお付き合いだし、キス描写もなかった(かな?)。
麻由香との交際の中では蓮のどんな時でも傍にいてくれる誠実さや包容力を描き、蓮の甘い恋人としての側面は仁菜子のために取っておくから描かない。
作者の統制の取れた引き算の美学、本当に好きだ。


その一方で全体的に登場人物の感情の説明は過多で読者に優し過ぎる気はする。
読書中、あれ、この時の仁菜子ってどういう感情?と考える場面があっても、すぐに後のページにその説明がモノローグで語られていたりして、至れり尽くせりなのだ。
とっても親切設計ではあるんだけれど、そこで想像の余地を無くしてると思ったり、読者とは作意を読み取れないおバカさんと思われてるのかしらと思う時もあった。

あと安堂やさゆりの昔(それは中学時代)の恋愛から得た悟りの独白や自分語りは、小恥ずかしく、むず痒く、聞いてられない。


ストロボ・エッジ ー未完の地図ー』…
蓮と安堂、中学2年生の初対面と、彼らに因縁が出来るまでのお話。
または初恋の純情を踏みにじられた安堂が一気にグレて、チャラ男に変身。
女性不信を刹那的な欲望の力を借りて克服するお話。

展開が早いので安堂の純情がいまいち伝わらず、失恋に乗じて彼女を攻略して、そして予想できる範囲の未来が待ち受けただけの話にも思えてしまう。
一連の展開の中で蓮が一ミリも悪い点がない。
蓮の悪い噂を広めた狭量な男たちと違い、自分が振られた原因が自分にあるという分別や理解力があるからこそ、安堂は蓮に根深いコンプレックスを生じさせる。
彼の中の情と理が乖離してしまっている。

5巻で本編でも登場する仁菜子とは直接関係がない、安堂の元カノ「真央ちゃん」が本書で一番の悪女だろうか。
主人公・仁菜子の恋敵であっても決して麻由香さんを悪く描かなかったのは凄い。
蓮を好きな人を好きになるのは安堂の習性か。

本書の主人公が仁菜子ほど自分の気持ちに誠実な設定ではなく、流されて安堂と付き合って、そこにタイミング良く(悪く)彼女と別れた蓮にモーションかけたりしたら安堂の精神は崩壊するのだろうか、と妄想しちゃう。
刹那的な欲望も湧き上がらないぐらい立ち直れないかもしれませんね。

ストロボ・エッジ 5 (マーガレットコミックス)

ストロボ・エッジ 5 (マーガレットコミックス)

  • 作者:咲坂 伊緒
  • 発売日: 2009/03/25
  • メディア: コミック