《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

彼女が誘拐されても「話す話す詐欺」を繰り返す24歳男性のために次の事件が起こる

電撃デイジー(7) (フラワーコミックス)
最富 キョウスケ(もとみ キョウスケ)
電撃デイジー(でんげきデイジー)
第07巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

兄を亡くし、天涯孤独な照を陰から支え、守ってくれる謎の人物「DAISY」。そのDAISYは、実は照をいじめて楽しむドSなイケメン校務員・黒崎だった!密かに想い合う照と黒崎だが、黒崎は過去に、照の兄を「殺してしまった」ことを悔やみ、正体を明かせずにいる。さらに、照と黒崎を狙う事件が次々と起こり、2人の身辺は落ち着かない。7巻では、照に近づこうとする「アキラ」によって、不穏な気配が漂い始める。そんな中、黒崎はついに、照に自分の犯した「罪」について話し、自分がDAISYだと打ち明ける決意を固める。「大事な話がある」と照をデートに誘う黒崎。しかしアキラの策略によって予想外の事態が・・・!?2人の恋に大激震が走る、超衝撃展開!

簡潔完結感想文

  • この辺から日常回がイレギュラーで事件に巻き込まれるのが通常運転になりつつある。
  • 少女漫画の1話でキスするヒーローを真似したのかキャラじゃないことをするアキラ。
  • 何でも先手を打ってくる悪役側がDAISYの正体を知らない後手に回る現状に違和感。

件は恋愛の起爆剤、の 7巻。

1つ前に読んでいた soraさん『墜落JKと廃人教師』がジェットコースターや高所など危機的状況の緊張と恋愛の胸の高鳴りを混同する「つり橋効果LOVE」を描いていたけれど、本書における事件は主役の2人と読者のための つり橋なのではないか。更に本書は会話のテンションが高くて(リ)アクションも大きいため、主役の2人に作風を合わせたら事件も派手になっているようにも思う。

事件が頻発すれば読者のつり橋効果も継続し、照(てる)はピンチの中に強さを発揮するし黒崎(クロサキ)のヒーロー行動も見られて事件解決のカタルシスも得られる。事件は作品の、そして作中の恋愛の起爆剤として有用なようだ。
そして黒崎は格好いいだけでなく弱さも内包していて今回のように黒崎が責められるほど読者は勝手に2人の恋が切ないものだと感情を揺さぶられる。

そして この事件の連続は黒崎のためでもあるように思えてならない。直前に照が誘拐されて命の危機まであったのに黒崎は自分の過去の「話す話す詐欺」を継続している。じゃあ何が起きたら話すんだ という状態の黒崎を動かすために事件の余波を利用させようと試みているのではないか。どんだけ過保護なんだよ、黒崎は。24歳という設定が邪魔に思える。照と同学年の天才ハッカーにした方が まだ受け入れられる。

悪役に個人的に気に入られるのもヒロインの仕事の一つです

も作品が誘導する通りに感情を動かせれば良かったのだけれど素直じゃなくなってしまった心には響かないことの方が多かった。事件と黒崎や照を結びつけようとして過去が引っ張り出されるのだけど、その過去は完全に後付けで本来は無かったはずのものだから捏造に思えてしまう。作者は想像力を駆使して頑張っていると思うけれど、黒崎のセンチメンタルを私は嘘くさく感じられる。

作中の大きな事件は どれも現在進行形というよりも過去の遺恨や復讐で、作品全体が後ろ向きな過去志向に思えてならない。校務員の黒崎が学校に固定されているのに学校内の事件は既に起こし過ぎている現状。だから その現状を打破するためには過去を掘り下げることしか出来ないのだろう。照の兄・奏一郎(そういちろう)の存在感やエピソードは どんどん膨張するばかり。

好みの問題かもしれないけれど(本来 構想していなかった)暗さをドラマに利用する作品を私は好きじゃない。照の判断が早いだけに黒崎の足踏みが悪目立ちしている。


常が続き学校内の校務員としての黒崎の評判が初めて描かれる。24歳の金髪に周囲の大人たちは意外に優しい。これも黒崎がソツなく人間関係を構築しているから。

ただし反発する教師もいて、その人の偏見を撤回してもらうために照はテストで1位を取ると宣言してしまう。照が成績トップを賭けたテスト回は『2巻』でもあった。日常回なので敵はおらず相手の自爆を黒崎がフォローするだけ(ってか勤務先のPCで違法行為をするなよ…)。照も無理をせず自分の能力を発揮する。

1話完結型の必殺仕事人パターンは連載最初期の感じに近い。今回 黒崎に英語スキルがあることが判明。この作品は黒崎に後付けで設定を乗せていくパターンなのか…。

この学校の教師の質の悪さは異常。久々に無敵の黒崎が読めたからいいけど

井(あらい)の起こした事件の黒幕とされる「アキラ」が始動する。それと同時に黒崎の関係者として緑川 秀雄(みどりかわ ひでお)教授という故人が登場する。緑川はコンピュータ暗号の第一人者だった。

アキラは照に接触を試みキスをする。完読すると どう考えてもアキラはキスに興味があるような人間じゃないけれど少女漫画的なインパクトを優先したのだろうか。
ファーストキスを奪われたことに精神的ショックを受ける照に黒崎も動揺して顔を合わせられない。そんな すれ違いを埋めるのがDAISYという人格。そこで優しい言葉で慰めるはずが黒崎は自分の気持ちを滲ませてしまう。けれど その衝撃的な言葉が照の悩みを吹き飛ばす。


キラの情報を入手するために黒崎は竹田(たけだ)に会う。『6巻』ラストで拾った犬も薫子(かおるこ)と名付けられて再登場。しかし竹田って黒崎たちと あまり接点がなく、無能な部類の評価だったのに頻繁に再登場して心を開いている。


崎が病むと照が聖母になるシステム。その存在に感謝した黒崎は照に お出掛けを提案し、そこで全ての秘密を話そうとする。

行き先は遊園地。2人は最後に観覧車に乗ることを約束していた。観覧車は少女漫画で一番大切なアトラクション。黒崎は個室状態のゴンドラで秘密を話すつもりだったのだろう。

しかし そこにアキラの魔の手が伸びる。照は兄の形見である携帯電話を別の物にすり替えられ、アキラから観覧車に同乗するよう指示される。そして黒崎には養護教諭だった森 千春(もり ちはる)から連絡が入り照の危機が知らされる。


キラは観覧車の制御システムをダウンさせて停止させる。演出だろうけど、観覧車が止まった後の来場者たちの反応が過剰。ジェットコースターなど剥き出しの状態ならともかくパニックになるのが早い。観覧車が墜落するって どういうこと??

ここまでしてアキラが引き出したいのはDAISYの正体。この構図が全然 分からない。照がDAISYと接触を持っているのは知っているけれどDAISYの正体をアキラは知らないのか。悪役が万能に見えるけど分からないこともあるようだ。
愉快犯のアキラとしては照がDAISYを裏切って秘密を話すという状況が欲しいのだろう。アキラは照に黒崎の罪を語り傷つける。そして照は黒崎の罪を自分が非難した状態に傷つく。

照は独力で事態を解決しようとするが それが黒崎を傷つける罠だった。犯人側は黒崎が兄・奏一郎を殺したという情報まで入手している。やっぱり情報の入手の度合いがチグハグに見える。罠によって動揺した黒崎は森に自分がDAISYだとバレてしまう。森が欲するのは黒崎の罪の元凶である暗号ウイルス「Jack’o Frost(ジャック フロスト)」。その罪を刺激され黒崎は照の救出に動いた後、以前の予定通り姿を消そうとする気配が漂う。