《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

さぁ、お前の罪を数えろ という前に お前の罪を教えて欲しい。罪のゲシュタルト崩壊

電撃デイジー(5) (フラワーコミックス)
最富 キョウスケ(もとみ キョウスケ)
電撃デイジー(でんげきデイジー)
第05巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

“DAISY(デイジー)”の名を騙(かた)ったウィルスメールが学校中にバラまかれ、偽DAISYの正体をつかもうと動き出した黒崎(クロサキ)。ところが、何者かに襲われそうになった照(てる)をかばってケガを負ってしまう。身を挺(てい)して守ってくれた黒崎のそばにいたいと、強く願う照。そして、2人きりの病室で、黒崎は照に――!?

簡潔完結感想文

  • 秘密がバレていることがバレている。これで恋も秘密も明け透けな状態が成立して伸びしろ終了。
  • 少女漫画らしくないサイバーサスペンスが読める作品。でも私は少女漫画に これを望んでいない。
  • 犯人の後ろには黒幕がいる。事件のゴールを移動させて連載を1回でも多く延長させる辟易の悪癖。

人作家はヒーローのトラウマの塩梅を間違えがち、の 5巻。

すっかり2人が第三者の悪意に巻き込まれ続ける算段が出来上がっている。
例えば これまで2回、ヒロイン・照(てる)の携帯電話の中には天才プログラマーが遺したソフトが入っていると疑われてきた。検証の結果 完全にないことが分かっても、あるかもしれない と思う人がいる限り照は狙われ続ける。
今回の事件も同じで黒崎(クロサキ)の過去に対して遺恨がある人がいる限り黒崎の罪は糾弾され続け、その手段として過激な手法を採れば平穏は訪れないことになる。これで作者がネタを考え付く限り新エピソードが追加される状況となった。災難は向こう側から降りかかって照と黒崎は被害者となる仕組みが完成した。

この構造が明らかになる初回の事件でも私は辟易しているのに、これが後 何ターンか続く。
それでも今回の事件では黒崎が照がついている嘘に気づくという動きが見られ、2人の関係性に変化が見られるため少女漫画としての面白さが生まれている。しかし やがて関係性の変化のないまま事件だけが続くことになる。同名タイトルの中で2人の活躍が読めるシリーズモノだと考えれば納得できる部分もあるけれど、明確なゴールの無い少年漫画のバトルモノと同じになってしまった。
以前も書いたけれど本書は連載を楽しむのが最適な作品で、完結後(しかも10数年後)に読む作品ではないのかもしれない。リアルタイムで主人公たちのピンチと成長に共感できたことが読書の財産になるのだろう。

アクセサリがヒロインを美しく演出し、トラウマはヒーローを美しいものにする

女漫画らしいのは事件の深刻さと主役たちの心の闇をリンクさせている点だろう。人間的な成長というよりもマイナス面を強調するのが少女漫画の悪いところではないか。

特に この『5巻』は照・黒崎双方の自責の念を強めるために使われている。どうやら彼らが心を痛めることがドラマ性を強くすると考えているようだ。
照の方は まだ彼女の痛みが分かるけれど、黒崎は彼が抱える「罪」が何なのか発表されないまま、概念と その負の要素だけが強調されるばかりとなる。私には黒崎のモノローグが いちいち面倒臭く思った。照とは罪の重さが違うのかもしれないが自己陶酔しているように思える。

完全に黒崎のトラウマが後付けだからというメタな視点も入っていると思うけど、トラウマは黒崎の格好良さを演出するために使われている気がする。少年漫画のように事件が続く展開にするなら、湿度の高さを追求する方向性ではなく事件そのものの構造を工夫するとか描き方を切り替えて欲しかった。少女漫画読者には珍しい内容なのかもしれないけれど、私は こういう事件は完成度の高い小説で読みたいと思う。

新人の少女漫画作家さんは予定外の連載延長でヒーローの背景を重くし過ぎる という初体験の不慣れによる失敗が多すぎる。ここまでで黒崎に夢中になっている読者にはトラウマの苦しみにもキュンと出来るのだろう。私は当初の作風の延長線上ではなく、路線変更と言われても仕方のない連載の形態を快く受け入れられない。


崎が自分を庇って大怪我をしたことに自責の念が生まれる照。緊急事態に理子(りこ)をはじめとした黒崎と旧知の仲の面々も衝突してしまう。ちなみに ここで喫茶お花畑のマスターの名前が増田(ますだ)だと分かる。あと黒崎の年齢も24歳だと発表される。

自分は周囲を不幸にする悲劇のヒロイン思考になりかけるが、照の中でDAISYの声が聞こえ すぐさま復活する。照は賢い子であり、どれだけDAISYが支えであり彼女の正しさの象徴であるかが分かる。

流血した黒崎は見た目よりは軽傷で やがて目を覚ます。そして それでも くすぶる照の負い目にすぐ気づく。照が どうしてもネガティブになってしまうのは事件直後に送りつけられた照の責任を追及するメールのせいでもあった。本来は照が狙われた事件で一同は その理由を推察し、照に先輩から託されたメモが犯行動機となると考える。

黒崎の入院・退院のフォローは下僕である照の役割。そして照は黒崎を通じて自分のどん底を助けてくれるDAISYへの感謝を述べる。これは黒崎の中にあるDAISYへの嫌悪や後悔をケアする意味もあるのだろう。


DAISYの正体を照が気づいたことを黒崎は勘付いていた。完璧に隠せるほど照は成熟していなかった。ただ照は状況判断が出来る人で、自分を狙った過激な犯行を潮目にして変わる周囲の自分への意識をしっかり利用する。自分に向けられる敵意を同情に上手く変換していて器の大きさを感じる。

照はDAISYの正体を自分が知っているとバレた時、黒崎は自分から離れると心配していたけれど黒崎は自分に向き合おうとしている。だから本当は そうするための餞別として買っていたアクセサリを その意思はなく間接的に照に贈る。少女漫画のアクセサリは愛の象徴である。


崎は久しぶりにDAISYとしてスキルを発動して犯人への手掛かりを掴もうとする。これまでの1話完結型の話ならば新登場キャラが犯人だったけど、いよいよ長編化してきて なかなか犯人に辿り着かない。その中の犯人候補の1人が『1巻』1話で登場していた犯人・新井(あらい)。黒崎に恨みを持つ人間で以前の犯行と癖が似ていると黒崎は考えるが彼を確保できないまま。深刻になりそうな展開の中で、モブ生徒を使って黒崎の特別が誰かを演出する。

学校内で新井が残した物が生徒会のPC。そのPCの動作が遅くて生徒会長の玲奈(れな)が困っていて、照は清(きよし)を派遣する。ここで友人枠の恋愛フラグが成立し始める。清の働きによって新井と交際していた玲奈によって新井の個人情報が提供されるが、直後に新井は誰かによって操作されていることが発覚する。ここから誰かの後ろに誰かがいる、そんな構図が何度も繰り返される。

(左)中段のような照の表情の描き方が苦手。小5の描く絵っぽいからかな?

一方、照と接触を計るのが、黒崎が怪我をすることになった事件でも照を その場所に導いた養護教諭の森(もり)だった。森は誰かに指示されたことを訴え、その脅迫から逃れるためにDAISYの正体を照から聞き出そうとする。照が拒否した直後、森は路上で襲われ負傷する。それが照の中の自責の念を再び目覚めさせる。

照は罪の意識から逃れようと森が望む行動を取ろうとするが黒崎が制する。そして照は黒崎が諭すように照の行動の甘さを指摘することで自分の愚かさを痛感する。そして森に対する感情の動きで照は自分が いい子ではなかったことに失望したのだった。