
最富 キョウスケ(もとみ キョウスケ)
電撃デイジー(でんげきデイジー)
第02巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★☆(5点)
不良校務員・黒崎(クロサキ)の下僕として生活中のビンボー女子高生・照(てる)。実は、黒崎はDAISY(デイジー)――肉親がいない照の、唯一の心の支えになっている謎の人物。そうとは知らずに、照は次第に黒崎(くろさき)に惹(ひ)かれていく。そんなある日、家に空き巣が入り、黒崎の家に身を寄せた照。突然、二人の同居生活が始まって…!?
簡潔完結感想文
- 照の中でDAISYは身内、黒崎は異性という位置づけが発表され仮想ライバルにも負けない。
- 連載初期のフルスロットルな展開。1度きりの身内にいる裏切り者のカードを早くも切る。
- 黒崎にある罪の意識がが心理的ブレーキになって簡単に両想いにならない長期戦の布石。
最初の最終回チャンスが到来する 2巻。
『1巻』の感想文でも書いたけれど この作品は『9巻』で最終回を迎えるべきだったぐらい そこで区切りが付いている。それでも終わらないのは作品が人気だから。どの世界でも人気者は簡単に舞台を去れないのである。
その前の最終回チャンスは この『2巻』6話ではないだろうか。ヒロインの照(てる)はDAISY(デイジー)という架空の人格にメールを送り黒崎(クロサキ)への恋心を明らかにする。そのメールを受け取ったのは実はDAISYである黒崎で、彼は照の恋心を知り、黒崎と読者の中では両片想いであることが明らかになり、そこで物語の幕が閉じても不足はない。
唯一、照がDAISYの正体を知らないまま という問題が残されるけれど、それを照が知ることが彼女の幸せとは限らないから このままでも問題はない。照はDAISYに感謝と親愛の情を持っているけれど それは愛情ではない。愛情を抱くのは黒崎の方という彼女の結論が出た時点で決着はついている。むしろ照はDAISYに見守られる優しい時間を失わずに黒崎という好きな人を得たのだから この結末の方が幸せとも考えられる。
それでも8話のラストは作品が終わらなかったからこそ見られる場面だと連載継続に感謝した。照は心理的なショックで気づいていないようだけど、この場面の黒崎は彼の中のDAISYの人格が出ている。照の平穏を第一に願い、彼女のケアをする そんなDAISYの姿勢が滲み出ている。これは黒崎が秘密がバレないようにするドSの仮面を取った本来の優しさなのだろう。間違いなく黒崎=DAISYだと感じられる場面で読めてよかった。


作品は この時点まででも好評だったため継続する。連載継続のために態勢が整えられ、黒崎側に心理的ブレーキが用意されたり、2人に物理的な距離感を生むために同居の解消となる。『2巻』または『3巻』序盤で3回も住居を変えるヒロインも珍しい。最初から同居モノとして考えられていないから早まった同居をリセットするために新キャラを用意して照の住まいを変更させる。
こういう修正パッチのような微妙な進路変更は結構あったように思う。それは全体の構成が最初からある訳ではなく、中期のエピソードを重ねている証拠だろう。この辺は作品が屋上屋を架すばかりだと思う点だ。『2巻』でも黒崎にトラウマを与えて、それをエピソードの核としているけれど、当初は無かったはずの闇を作っていく作業の連続に辟易する。やがて作品のスケールは大きくなるけれど そんなこと読者の誰も望んでいないだろう。どんどん照や黒崎との関わりを作ることが苦しくなっていくばかりだもの。学園サイバーコメディだった頃が好きだったという人が絶対にいる。
この『2巻』では最初の裏切り者が登場する。こういう展開は長編で1回しか使えないのだけど、これも早々に使い切っているのは やはり展望がないからだろう。序盤の人気獲得は作品の生命線だから そのために使える手段を使っていく。けれど同居や裏切りなど強いカードから切っていくから やがてジリ貧になる。照と黒崎の交流以外の中盤以降の事件を楽しみにしていた読者が どれだけいたのか疑問だ。
早くも関係性は完成されて、ここからは この2人が好きな人が楽しむ作品になっている気がする。シチュエーションや出会いが特殊だからか どうも私は話に入り込めない。誰かにとって楽しい作品だと言うことは ちゃんと分かっているのだけれど、私個人は興味や関心を引かれない。
自宅に泥棒が押し入った照の安全を確保するために黒崎は彼女を自分の自宅に招く。この同居に平常心でいられないのは黒崎の方。男性キャラの赤面が好きな私ですが黒崎は照に女性を感じすぎて恐怖を感じる。音を上げそうになる黒崎だけど彼の仕事は照を全力で守ることで それは許されないようだ。
黒崎としての限界に加え、自分がDAISYであることが露見しかねない状況に黒崎はストレスを抱えていた。照は自分が黒崎から歓迎されていないと誤解して黒崎宅を出て自宅に戻る。そうして自分の余裕の無さが照を追い詰めたと反省する黒崎は照を迎えに行く(ちょうどピンチになる ご都合主義)。黒崎側の緊張をリセットして、学校のような主従関係をわざと作って2人の同居は続く。
黒崎の最大の不安も照の度量の大きさでカバー出来るようだ。照は最初から最強ヒロインである。
テスト回。学年1位の照は それを死守することで黒崎から ご褒美を引き出す約束を交わす。
この回からレギュラーキャラの鬼塚 理子(おにづか りこ)が登場。マスターと同じく黒崎が頭の上がらない先輩のようだ。理子はスクールカウンセラーとして この学校と関わりを持つ。理子の話だと どうやら当初 黒崎は遠くから見守るだけのつもりだったが、交流を始め下僕にして同居している始末。その交流が彼らの間にある秘密の漏洩に繋がると考えた理子は黒崎を照から物理的に隔離するため別の働き口を斡旋する。
その選択肢を与えられ黒崎は逡巡する。黒崎が悩みを抱えていることを知った照は、彼と恋愛関係だと噂になった理子に直接 問いただし否定される。理子は一瞬で照の「黒崎」への恋心を見抜く。ただし黒崎のためにも理子は隔離を実行しようと照が黒崎に幻滅するように仕向ける。ただピンチの時こそヒロイン性を発揮する照は大人の理子に対しても ちゃんと自分の意見を述べられる。
照がDAISYに黒崎への恋心を忍ばせたメールは実質 告白なのだけど黒崎からは身動きが取れないのだろう。仮想 女性ライバルも消滅して、素直になれない2人が両片想いになる ここで最終回でもいい。


DAISYは理子が知り合いであることを打ち明ける。この関係性の暴露は必要なのだろうか。黒崎 ⇔ 理子 ⇔ DAISY という図式が完成して黒崎が照にDAISYのことを追及されるだけではないか。ここで照の中のDAISYが兄のような位置づけであることが発表される。それを知った上で黒崎はDAISYとして照に黒崎はやめとけ とメールを送る。
久しぶりに学校内でパソコン関連のトラブルとなり、照は自分の携帯電話の中にあるDAISYの情報が狙われていることを知る。犯人の生徒たちは照を呼び出し、DAISYとの接点を調査するため照の携帯電話の提出を求める。
しかし照はDAISYに迷惑が掛からないように大切に保存していたDAISYのメールや連絡先を徹底的に削除していた。その絶望の中でも照は背筋を伸ばして生きる。大事な場面の時だけ真顔になって作画に力が入っているけれど、その表情にいつも違和感を覚える。表情豊かなのが照だという認識があるからだろうか。
照が狙われていることを確認し黒崎が理子と共に動き、即座に解決。
だが裏切り者は照の すぐ側に居ることが明らかになる。その裏切り者は照を自分のピンチを告げて動かし彼女に単独行動をさせる。その人の安全のために照はDAISYに連絡を取らず、黒崎は1テンポ遅れて行動する破目になる。
呼び出された先で照が出会ったのはクラスメイトの清(きよし)dった。小学校からの付き合いの清は照の兄が妹のために遺した物が携帯電話一つであることに疑問を持ち、その中に未発表のソフトが入ってると推測していた。『1巻』ラストの竹田(たけだ)と同じ思考だ。しかし同じように長い付き合いの照は清の恐喝に疑問を持つ。そして黒崎が登場し事態は収拾する。一時 逃亡した清が誰かと連絡を取ったことで黒崎は清の裏に黒幕が居ると確信する。
この夜、黒崎は自分が満身創痍にもかかわらず照のメンタルケアを施す。照が清に屈しなかったことで彼は犯罪者にならなかった。それが彼の救いになると黒崎は まるでDAISYのように照を優しく包み込んでいる。
清の事情聴取は喫茶お花畑で男性陣だけで行われる。清は照への兄の遺産が少額だったことの真相を突き止めよとしてハッキングをして その違法な手段を脅迫材料にされて言う通りに動くことになった。照のために真実を知りたいという大義名分が彼を突き動かし、誤った手段を採らせてしまった。
一方、照と理子は女性同士の話をする。その1つは同居計画について。理子が物語に召喚されたのも いつまでも黒崎と異性の未成年者を同居をさせていられないからだろう。安全と純血を守るために理子という理解者が生み出された。そして理子が同居を提案するのは自分が照の兄の恋人だったからだと明かされる。
黒崎、理子、マスターは同じチームのメンバーで その絶対のリーダーが照の兄・紅林 奏一郎(くればやし そういちろう)だった。奏一郎の死後、チームは解散し、その功績も抹消された。それは奏一郎が黒崎を守るために全てを犠牲にしたからだと匂わされる。そして清が罪を犯したようにDAISYもまた苦い過去があることが彼の悪夢によって明かされる。黒崎が照に近づくことは自分の罪を意識することでもあるようだ。
