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少女漫画と小説の感想ブログです

電撃(鞭)とデイジー(飴)を使い分ける現代版あしながおじさん はドSと溺愛の二重人格

電撃デイジー(1) (フラワーコミックス)
最富 キョウスケ(もとみ キョウスケ)
電撃デイジー(でんげきデイジー)
第01巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

“何があっても君を守ってあげる――”唯一の肉親・兄を亡くした照(てる)の心の支えは、兄がくれた携帯電話に届くDAISY(デイジー)という謎の人物からのメール。ある日、照はひょんなことから不良校務員・黒崎(くろさき)の下僕として働くことに。でもこの極悪オトコ・黒崎が実は…!?

簡潔完結感想文

  • 身寄りのない心の美しいヒロインが、あしながおじさん に見守られる現代版サイバー童話。
  • 視点を変えればロリコンが公私に亘って対象者を監視し続ける背筋の凍る話。イケメン無罪。
  • DAISYを心の支えにしながら黒崎にも惹かれ始める浮気者ヒロイン。別人の方が面白かった!?

れっ、この作品は花とゆめCOMICS(白泉社)だっけ? の 1巻。

身寄りのない努力ヒロインがヒーローに下僕にされながらも実は溺愛されている(無自覚)という少女漫画読者の夢を詰め込んだ作品。ヒロインがヒーローに絶対に勝てない構造や仲良く喧嘩している様子も白泉社チックな作品だと思った。いつの時代も一定の支持を得るドSヒーローも読者を夢中にさせる要素。それでいて溺愛という病みと暗い過去を漂わせる闇まで背負っているのだから完璧なヒーロー像だ。

本書が他作品と違うのはヒーローの黒崎(クロサキ)には2つの人格があるということ。黒崎はヒロイン・照(てる)の通う学校の校務員をして彼女と直接 交流する人格の他に、数年前から「DAISY(デイジー)」という仮想空間の人格で照の心の支えになっている。本書は何も知らない照が全方向から愛されていることに読者は満たされる他、黒崎が我慢と葛藤している姿に萌えることも可能である。

正体を気取られないための過剰防衛なのか黒崎は こじらせた人格を抱えている

この黒崎とDAISYの二重人格が いつ照に明かされるのかも作品の縦軸になり、作品内に一定の緊張感を生み出している。読者は黒崎の裏の顔である照への恋情が届いて欲しいと願い、DAISYの素性が明かされそうになる場面にハラハラする。売れる要素を上手に全乗せした本書は売れるべくして売れたと思う。

もしも可能ならば黒崎が身バレを防ぐために照に対してDAISYの影武者を立てることで、照が黒崎とDAISYの2人に好意を寄せる疑似三角関係なんて展開も読みたかった。これなら照が優柔不断ヒロインになったとしても読者も共感してしまう状況となる。

そして このDAISYは凄腕のハッカーという「必殺仕事人」の一面も持っている。特に連載が定期化する前の序盤は1話完結の話が多く、黒崎にとって照を傷つける存在を悪とする勧善懲悪な物語が楽しめる。
IT技術が急速に発展し身近になってきたであろう2007年に少女漫画で この分野を開拓したのは先見の明がある。少なくとも本書の連載中にサイバー犯罪や技術を扱う少女漫画は二番煎じの烙印を恐れて登場しなかっただろう。


だ当初3回の短期連載で始まった本書は長期連載での問題も内包している。
まずはヒーロー・黒崎を校務員に固定してしまったこと。これによって黒崎が身動きが取れなくなった。当初は学校内の照の問題を解決したり、彼女の動きを監視できる立場として便利な設定だったけれど、やがて足枷になる。学校外での問題に対処できるように照との同居が始まったり、黒崎のフットワークを軽くするために学校の お偉いさんを据えたりと苦慮の痕が見える。

そして人気作になったことで明らかに2人の関係を描き終わった後も作品が続いていく。私は勝手にDAISY問題に関わるのが第一部、それ以降の連載継続のための物語を第二部としているけれど、第二部は蛇足判定されても仕方がない。

本書がずっと連載として面白いのは確かで想定読者年齢がリアルタイムで読んだら絶対楽しい。でも2013年の完結から10年以上が経過した2026年に読むと作品世界を無理に拡張し続けている痕跡が見えてしまう。そのプログラムが問題なく動くようにする修正パッチの数々は全体として美しくなかった。黒崎はともかく照を物語に介入させ続けるには無理があったように思う。序盤の1話完結ならではの展開の早さと切れ味の良さが失われてしまった。人気連載ならではの悩みなのは分かるけれど私が第一部の終了だと思っている『9巻』で終わって欲しかった。

完結から年月と年齢を重ねてしまうと作品内外での ハゲろ の連発も何が面白いのか分からない。当時の作者と箸が転がっても おかしい年頃の読者にだけ受けている。すっごい善人化している照の悪口はアリなんだ、と判断基準も分からない。笑いに関しては少女漫画の域を出ないと思わざるを得ない。

あと単純に黒崎のロリコン属性は否定できない。『2巻』での照の下着を見た時の反応なんて初心(うぶ)というより気持ち悪いと思ってしまった。また1話の前から黒崎は照に恋心を抱いているため それが生まれた経緯が全く分からない。校務員として照に近づき、寝ている間にキス(頬)をしたりと客観的に見ればストーカー的な執着が見え隠れする。この辺は少女漫画的イケメン無罪が適用されており、照が黒崎を好きにならない(または嫌悪する)世界だったら黒崎の行動は異常者でしかないように思う。


績トップで奨学生でもある高校2年生の紅林 照(くればやし てる)。ある日、照は学校内の窓ガラスを誤って割ってしまい、金髪の男性校務員・黒崎 祐(クロサキ タスク)に下僕として働かされることになる。

生徒会に目の敵にされて、黒崎から理不尽な扱いを受けても照にはDAISY(デイジー)という存在がいる。DAISYは兄が亡くなる直前に紹介してくれた人で照は直接会ったことはなくメールでしか言葉を交わせない。DAISYという心の支えがいるから照は折れずに自分という花を咲かせている。

DAISYへのメールに苦難を書かない照の健気さが黒崎の庇護欲を増幅させるのか

照の性格として仲間が自分のミスを庇おうとしても正直に名乗り出たり、DAISYに弱音を吐いて助けてもらったりしない。「一人で頑張る いいコな自分に」酔ってはいないけれど、ガッツリ決め顔はしている。

そして自分に嫌な態度をとっていた生徒会長が窮地に陥っていると知れば生徒会長のためにDAISYに連絡を取り、DAISYのハッキング能力を頼り、DAISYは秒で解決する。当然のようにDAISYの正体は黒崎である。


ラス一枚で延々と働かされる照。そして助けてもらったにもかかわらず照はDAISYがハッカーという「悪」であることが割り切れない。それだけ潔癖ということなのだろうけれど、いまいち この葛藤が分からない。

照は街で鞄を落とした際に散らばった荷物の中から携帯電話を小悪党に盗られてしまった。それはDAISYとの唯一の接点のため照は必死に探すが、雨の中 捜索したため翌日、黒崎の前で倒れてしまう。風邪回である。心身共に弱っていることもあり照はDAISYがどれだけ大切な存在かを黒崎に伝える。そこで黒崎は照が記憶しているDAISYのアドレスを聞き出し自分が仲介すると伝え照を安心させ眠らせる。
眠ったことを確認した黒崎はDAISYに変身し、照の携帯を奪還。1話目のハッキングよりも今回の電話番号特定の方が謎のスキルだ。

黒崎が寝ている照に電話を返却した際に照は初めてDAISYと生身で接触する。夜の室内でDAISYの姿は見えないのだけど、初めて自分の声でDAISYに語りかけ、流れ出る涙を拭ってもらう。それどころか黒崎は照の頬にキスをする。DAISYの優しさは愛情によるものだったのか。
黒崎に介抱されたことが借りになり照は校務員の仕事を手伝い続ける。

照にも黒崎に見せる荒ぶる人格とDAISYに見せる乙女モードの二重人格がある!?

3話目から作品内で よく出てくる喫茶 洋食の飲食店・お花畑が登場。レギュラーキャラクターのマスターも登場。マスターは黒崎のDAISYとの二重生活を既知らしい。

生徒会長は学ばない人で再び性質(タチ)の悪い男性に振り回されることが発覚。今回も生徒会長が心配で彼女のために動くが、作品は照が お節介ヒロインにならないように黒崎に忠告させて行動を制限させる。それでも勝手に身体が動くのはヒロインだからだろう。

今回のピンチではDAISYに救援メールを送ることも出来ず、黒崎が照たちの拉致の目撃者として動き黒崎として照を助ける。黒崎だからデレることは出来ず ずっと照を罵倒し続けるばかりだけど、黒崎は生徒会長に自分の恋心の在り処を伝えている。別に相手が照だと暴露する必要はないと思うのだけど読者の承認欲求のためか黒崎が勝手に喋る。生徒会長は誰よりも先に黒崎の恋を知る。

照の中で理想の人間DAISY << 理想とは掛け離れた目の前の黒崎 という図式が完成するところまで3回の短期連載で描き切りたかったようだ。理想は理想のままにして黒崎に恋に落ちる この終わり方も綺麗だ。


の墓でDAISYが来ていた痕跡を見つけた照は、兄の元 仕事仲間だった竹田(たけだ)という男性に出会う。この竹田は黒崎がDAISYだと知っている。

竹田の口から照の兄が天才的なエンジニアで人望も厚く大きなプロジェクトのリーダーも務めたことが明かされる。この大きなプロジェクトという単語が終盤の展開に利用される。どこが伏線になるか作者にも分からない。
そして照は散逸してしまった その天才エンジニアが遺したプログラムの受け取り手として考えられていた。この竹田は「仕事できそーで できない」という評価なのに後に重要なキャラになっていく。


から家に泥棒が入ったとDAISYに連絡が入るが黒崎は身動きが取れない。不安なのは分かるけれど今回は照は簡単にDAISYの救援に頼っている。その不安に付け込むように竹田が現れるが、照は彼の手から逃げ、黒崎を頼る。

照の中では黒崎への信頼感も生まれている。兄やDAISYのように優しくない存在に惹かれることを自分でも不思議に思う。黒崎は自宅で照を落ち着かせた後、竹田の犯罪の証拠を掴み、暴力を交えて竹田を脅迫して動きを封じる。しかし黒崎は照の兄の死に自責の念を負っていた。これが黒崎の感情の暴走を抑止するのか。