
中条 比紗也(なかじょう ひさや)
花ざかりの君たちへ(はなざかりのきみたちへ)
第01巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★(6点)
憧れの人・佐野泉に会うため、アメリカから性別を偽って男子校に転入してきた少女・瑞稀(みずき)。危険いっぱいの男子校ライフの行方は!?
簡潔完結感想文
- 男装ヒロインの金字塔。ヒーローも当て馬も格好良くて、確かにイケメン♂パラダイス(頭悪そう)
- 作者初の(結果的)長期連載でペースメイクが上手くない。緩急の付け方や放置された伏線に難アリ。
- 愛蔵版1巻だけで高校1年生どころか2年生の夏まで消化。季節的に花ざかりの春は最後まで描かれない。
約30年の時間の経過で間違いなく古典的名作となった 愛蔵版1巻。
1996年から連載が始まった作品が2026年にアニメ化される。それだけ人気が高い作品なのか、それとも過去作を掘り返さないとアニメ業界は原作に飢えているのか。それは分からないけれど、この30年間に少女漫画界では男装ヒロインが男子校に潜入する作品が生まれたけれど、どのヒロインも本書のヒロイン・瑞稀(みずき)には勝てなかったのは確かな事実だろう。
その成功の裏にはシンプルと綺麗さを併せ持ったキャラクターデザインの秀逸さや、瑞稀は恋する乙女そのものでありながら あまり女性らしくないこと、寮生活を彩る入居者たちのキャラクタ造詣の確かさがあるのではないか。


特に瑞稀が「女」の部分を出したり、使ったりしないニュートラルでフェアな感じが読者に敵を作らなかったどころか、彼女の見方や自分の気持ちを託す存在になったのだろう。そういう意味では瑞稀は最強ヒロインと言えるだろう。冷静に考えたら好きな男性に会うために男子校に潜入するなんて変態的・偏執的行為だと思うのだけど、瑞稀の湿度が低いから心地良くさえある。これは瑞稀が生まれ育ったアメリカの土地や空気感、帰国子女という異邦人的な立ち位置が作用しているのだろうか。少女漫画をツッコみながら読む意地悪な私でも瑞稀に関しては ほとんど嫌な気持ちにならなかった。アメリカ育ちなのに喧嘩っ早い江戸っ子気質なのは気になるが。
そして基本的な三角関係の構図や、男性の魅力も『1巻』から ちゃんと出ている。人気が出るのも納得だ。ヒーローである佐野(さの)は瑞稀が女性であることを早々に知って、だからこそ悩み惹かれていく。そして当て馬ポジションの中津(なかつ)は瑞稀が女性であることを知らないまま、男性だという認識で惹かれ、だからこそ悩む。瑞稀の一途さと、男性たちの葛藤の上にある恋心のバランスが絶妙。男装ヒロインかつ三角関係モノとしても秀逸だから本書は人気が出たのも納得だ。


本書は4回の短期連載から始まり、読者の支持がある限り連載が延長された作品のようだ。だから色々と設定に矛盾があったり、連載が大いに蛇行したりと問題も含んでいる。作者には忘れられた伏線に読み返すと気づいてしまう。
まず短期連載分では瑞稀が体育会系っぽい設定になっていることに驚いた。これはクラスメイトの中津との距離を埋めるイベントのために必要だったと思われるが、女性である瑞稀が学年一の俊足だという事実や設定が活かされる事件は起きない。中津より足の速い女性は日本記録を狙えるのではないか。
また同じように体育会系設定でいえば、瑞稀は当初 自分が好きな佐野と一緒に高跳びをしたいという願いを抱いていたが、それには全く触れられないまま8年後に作品は終わる。また高跳び関連でいえば、佐野とライバルの神楽坂(かぐらざか)の関係も中途半端に終わる。中学時代のチャンピオンである佐野が、挫折を乗り越えて高校時代も、というのがスポーツ漫画なら王道展開になるところだけど、公式戦での勝敗はつかないまま。
また作者が短期連載部分から構想(もしくは妄想)していた校医・梅田(うめだ)の恋愛も放り出されたまま。匂わすだけ匂わせて結末が行方不明になって読者は煮え切らない思いを抱える。
全体を通してみると丸投げされた要素が少なくない。8年間の連載終盤では人気に翳りが見えて、描こうとしていたことが描けなかったりしたのだろうか。本当は伏線を回収するつもりだったのか、それとも本当に忘れていたのか、それを今となっては知ることは出来ない。
もし人気の凋落が原因ならば その責任は作者にもある。長期連載が初めてで不慣れな部分があったとはいえ、明らかに手を広げ過ぎた部分がある。モデルや芸能界、BL要素と作者が一番 楽しんでいる部分は賛否両論だろう。唐突なモデル挑戦編は一部の読者に喜ばれる一方で、それで作品熱が冷めた読者もいただろう。梅田を含めた同性愛者の恋愛は作者の好事家の一面が出過ぎて、これを望んでいない読者からは反感を買う部分だろう。この当時に出版社が2025年の現状のようにBLレーベルを持っていたら そういう作品を描いたのだろうか。作者が現在も存命で現役だったら、活躍の場が広がっていくのを見れたかもしれない。
4話で一定の結論が出ている作品なので、それを よくぞ144話まで連載を引き延ばしたとも言えるけど、純粋に長編作品としてみると、あまり構成が美しくない。人気が出た途端、終わるに終われない白泉社作品の私の評価は一概に低い原因となっている。
物語は、アメリカから来日した芦屋 瑞稀(あしや みずき)が転校初日に遅刻して廊下を走っていたらヒーローに ぶつかるという古典的な開幕を見せる。変わっているのは瑞稀が女性であること、彼女が「男子校」に入学する点。男装ヒロインの作品は過去に何作か読んだけれど、多くのヒロインが人の事情に巻き込まれたという言い訳を用意しているけれど、瑞稀は自ら意思を持って男装・転校しているのが特徴的と言える。
瑞稀は3年前の一時的に帰国時(母国はアメリカだろうから帰国というより来日か)に、当時13歳だった佐野 泉(さの いずみ)という男性の走り高跳びの姿に魅了されて、彼のいる男子校に転校してきた。ローカルニュースの一場面だけで夢中になり、その後3年間 かれを追い続けた。恋は盲目の典型だろう。瑞稀という名前は男女どちらでも不自然さはないけれど、明らかな女性名だった場合、瑞稀は どうしたのだろうか。その時は諦めたのか。
恋の相手の佐野は元中学チャンピオン。綺麗なフォームで跳ぶ選手は実績も伴うということなのか。アメリカ暮らしの際には瑞稀は彼の情報を集めるために自分の時間を使い、どうにか親を騙して同じ男子校に入れた。
瑞稀は佐野に近づこうと一気に距離を縮めようとするが、彼の認識では男性同士という関係性と、異国との文化の違いで佐野に警戒されてしまう。
目的を上手く果たせない瑞稀と最初に仲良くなるのが、大阪弁・関西弁を巧みに操る金髪の中津 秀一(なかつ しゅういち)だった。


舞台となるのは全寮制の私立・桜咲学園(おうさかがくえん)。一芸入学制度があり中津はサッカーで入学したが、佐野は一般入学だという。
その寮で瑞稀は佐野と同室になる。そこで瑞稀は佐野が高跳びをやめたこと、予想に反して ちょっと冷淡な彼を知る。それでも交流を重ねていく内に彼の素性が見えて、やっぱり惹かれていく。
人当たりの良い中津と本当に仲良くなるのが、女性である瑞稀が、校内一の俊足の中津よりも足が早く、校内No.1の座を奪われた中津が瑞稀にサッカー勝負を挑む。勝負のためとはいえ、非現実的な瑞稀の俊足設定は必要だったのだろうか。この後、数多くの部活動にスカウトされる場面も古典的。
勝負の際に熱くなった中津に肘鉄をくらい瑞稀は昏倒。それを目撃した佐野が瑞稀を お姫様抱っこで保健室に運ぶ(足の速い中津は校医を捉まえるために走る)。その お姫様抱っこで瑞稀は早くも佐野に女性だとバレてしまう。秘密が露見するまでの緊張感は物語にとって生命線なのかと思ったら、すぐにバレた。
そして佐野以外にも瑞稀を診断した校医の梅田 北斗(うめだ ほくと)にも あっさり見抜かれ、瑞稀は彼から尋問を受ける。尋問を回避させてくれたのは、既に事情を知る佐野だった。中津の涙の謝罪も瑞稀は大事にせず、そのことで彼から親友と認定される。そして中津は瑞稀の性別を知らないまま、彼女に惹かれてしまう当て馬の中でも可哀想なポジションになっていく。コメディ担当として相当優秀で、作者からの愛も佐野以上に感じる部分もある。
瑞稀は、ここまで上手くいった計画が破綻することを避けたい。だから どうすれば梅田が納得するかを考える。
その絶体絶命に加えて、佐野は瑞稀を露骨に避けるようになる。これは佐野が瑞稀の性別を知って、どう接すればいいか分からなかったから。佐野は周囲が思うほど老成している訳ではない。兄弟関係は弟だけで女性に慣れていないのも要因だろう。
そんな中、瑞稀は佐野が女性と話をしている場面を見て傷つく。だから一度は逃亡するものの寮で飼っている犬・裕次郎(ゆうじろう)の散歩と言い訳を用意して盗み聞きを働く。
この女性・山科 理香(やましな りか)は佐野の中学時代の関係者。理香の口を使って、佐野が この女性を庇って事故に遭い、それで足を怪我したことを瑞稀に知らせる。ただし佐野は事故が高跳びをやめた原因ではないと明言する。怪我は完治した上で佐野は高跳びに戻らなかった。
ここでは飼い犬・裕次郎が寮に来た経緯を使って、佐野の優しさが演出される。感情の体温が低いから表面上は分かりにくいが、佐野は温かい人である。しかし気になるのが、裕次郎は女性か佐野か寮の管理人以外に心を開かないとしているのに、瑞稀が脳震盪を起こした日は中津が裕次郎の担当になっていた。描かれていないけど中津が苦労したって考えればいいのか…?? あと おまけ要素で寮が120室240人収容可能としているが、3年生は個室という情報と ちょっと矛盾している。
この帰り道はマイナスに振れかけていた瑞稀の気持ちを戻すかのように、裕次郎を巡る心の優しさに加え、車の接近による2人の身体的接近(壁ドン)で瑞稀は彼を改めて好きだと認識する。
日本に来た時と同じように佐野への恋心が梅田に向き合う勇気になる。瑞稀は この際、いつか佐野と一緒に高跳びをやってみたい、と言っているけど、そんな機会はこの後 連載が8年続いても訪れなかった。梅田は瑞稀の「男気」に触れて、この一件も黙認する。ちなみに梅田が瑞稀が女性だと分かったのは、脳震盪の時に身体検査したから とかではなく、彼がゲイだからという理由が用意されている。論理的ではないが、この後 梅田が瑞稀の相談役になるのには一役買っている。自分を絶対に好きにならない男性を相談相手にして、瑞稀のメンタルヘルスは保たれる。
佐野も梅田と同じく瑞稀の性別を知っているけれど、瑞稀を守るために知らない振りをし続ける必要があり、知っている前提で動けるのは梅田だけ。学校側の人間で、女性としての瑞希をケアできて、それでいて恋愛対象外という幾つもの便利な設定が梅田には付与されている。
梅田の片想いは4回の短期連載部分から設定されている。連載が100回以上続いた本編でも それほど展開しなかった内容を どうして この時点から用意していたのだろうか。作者が自分で夢中になるようなネタだからなのか…?


瑞稀は、こちらの学校に乗り込んできた理香と接触を持つ。理香は佐野の幼なじみで、中学ではクラブのマネージャーをしていた。理香は佐野が好きで、瑞稀の初のライバルとなる。そんな彼女から待ち合わせの伝言を頼まれ、瑞稀は板挟み。それでも瑞稀は お節介を焼いて佐野に接触の機会を促す。
そして佐野が高跳びを練習する生徒を眺めているのを知り、瑞稀は佐野が高跳びに復帰したくなるようにアレコレと趣向を凝らす(ハッキリ言ってウザい)。
この間に、寮の部屋内のユニットバスで佐野に裸を見られたり、中津が自分の性的指向に悩んだり、瑞稀が生理に苦しんだり日常が描かれる。
理香は今度は瑞稀と接触して、ライバル心を剥き出しにする。理香にとって佐野はトロフィー彼氏そのもの。けれど瑞稀は彼の本質が好き、という分かりやすいヒロインと それ以外の比較が持ち出される。自分の敗北を知った理香が手を出そうとすると佐野が現れナイトになる。そして佐野は理香に断絶を宣言。その佐野の極端さに瑞稀は今度は理香の気持ちを慮るが、彼と亀裂が生まれてしまう。
それでも親友からの手紙を勇気に変えて、瑞稀は再度 佐野にアタックし続ける。だが佐野が怒ったり戸惑ったり感情に影響を与えているのは瑞稀が女だからだということに彼女は無自覚。佐野は またカッとなって瑞稀に激怒の壁ドンをお見舞いして部屋を飛び出すが、すぐに反省する。けれど部屋に戻ってみると瑞稀は中津といい感じになっている。それが佐野を傷つける。
中津は瑞稀を苦しめる存在となりつつある佐野に痺れを切らして彼に怒りをぶつける。しかし その途中で瑞稀が女性関係が派手な寮長・難波 南(なんば みなみ)に連れていかれる場面を目撃し、瑞稀の救出に向かう。佐野だけが瑞稀を女性だと知っているから起こる空回りである。これを機に2人は落ち着いて対話をし、佐野は事故の顛末を語る。佐野が事故に巻き込まれたのは試合前のプレッシャーを背負っていて、行動が一瞬遅れたから。弱い自分を思い知らされたから佐野は競技から離れた。
けれど佐野は復帰を決める。その動機の大半は瑞稀の存在がある。誰にも奪われたくない瑞稀が自分に復帰を望むなら それを叶えさせたい。言葉にはしないけれど両片想いが成立して4回の短期連載分は終わる。
5話目で早くも1年生の2月。瑞稀は数か月前に転校してきた というから2学期ぐらいからの転入でいいのかな。
2月はバレンタイン回。女性からチョコレートが欲しい男子校の桜咲生は、わざわざ共学校との練習試合を組んで出会いを求めている。
そんな中、中津が瑞稀に応援を要請。一方で佐野は自分のトラウマを克服しようと未だに特訓中。瑞稀は それを陰から応援するが、自分のしていることが友達の範疇を超えているか悩み、佐野は瑞稀を女性として扱うことに未だ苦戦中。
皆で中津を応援した他校で、佐野は自分の最大のライバル・神楽坂(かぐらざか)に遭遇する。事情を知らないのに佐野を守ろうとしてヒロイン様は神楽坂に喧嘩腰で接する。瑞稀には色々とウザい面もあるけれど佐野にはプラスに働いているから問題が無いのだろう。
その後の神楽坂の偵察に瑞稀が遭遇。理香といい勝手に学校ん入ってきて、当然のように瑞稀と遭遇している。ちなみに神楽坂は佐野よりも密着するような、瑞稀を担ぐ格好で接触している。佐野は瑞稀に胸が「ある」ことで気が付いたが、神楽坂は瑞稀に「ない」ことで気づきかねない。神楽坂は佐野に喧嘩を売るが、それを買うのは瑞稀。なんかアメリカ帰りというより江戸っ子っぽい。瑞稀は佐野の事情を理香から聞いたが、瑞稀の事情は彼女の独り言を佐野が聞くことで入手する。裕次郎は この自分語りのために必要だったといっても過言ではない。
勝手に勝負を買った瑞稀だけど、初めて佐野の高跳びを見学させてもらい、彼がまだトラウマを克服できておらず、以前のレベルとは程遠いことを知る。それでも佐野は諦めていない。戻ってくるのは瑞稀という動機を見つけたから。瑞稀は彼が過去を克服する手伝いを考える。
佐野の焦燥や不安は中津達も感じており、酒盛りが始まる。飲酒も当然ながら、それを寮内で行うことに時代を感じる。2025年だと全員停学とか寮の廃止ぐらいしないとバッシングの嵐が収まらないだろう。佐野が酔ったことで彼のキス魔が発動する。これが連載を延長させるための手法に見えるのは私の心が汚いからだろう。正式なキスとするか事故チューとするか判断が難しいところ。
瑞稀は、キスと その後に彼を殴ってしまった罪悪感で佐野のことが まともに見られなくなる。2人に出来た距離に、短期連載と同じように難波が入り込む。そして難波が瑞稀を気に入ることで、瑞稀は難波を好きな中央から嫌がらせを受ける。悪者がいれば自然に佐野がヒーローポジションになってくれる。そして瑞稀もイジメに負けない強いヒロインになれる。
神楽坂が高校記録を更新。佐野は紛れもない王者から挑発を受ける。その問題が起こっている内に瑞稀の兄・静稀・C・芦屋(しずき・クロード・あしや)が来日するという連絡が入る。1996年前後の連絡手段はエアメールが主流なので、瑞稀が手紙を受け取り読んだ時には兄の来日は明日に迫っていた。瑞稀の兄は異母兄になる。自分の日本人の父の最初の結婚相手がアメリカ人の女性で、兄が幼い頃に亡くなり、その後 瑞稀の母親である日本人女性と再会したという。色んな事が並行して起きすぎている気もするけれど、なんとか1つの問題に繋げている。
この問題でも瑞稀は梅田を頼る(彼が勤務時間中に部外者の男性とキスしているのも問題だ)。梅田は自分の妹の服を瑞稀に貸与。兄との再会をコソコソ決行しようという瑞稀の態度は佐野に不信感を与え、彼は尾行する。この女装した瑞稀が佐野が初めて見る瑞稀の女性の姿となる。
瑞稀は、意志の卵である兄の研修中に黙って日本の学校に通い始めたらしく、兄は不満を口にする。兄の滞在は2週間。初回の対面では何とか話を誤魔化し切った瑞稀だったが、兄は桜咲学園という学校名を聞き、実際に足を運んでしま。
色々と抱え込み過ぎて我慢の限界を超えた瑞稀はイジメの犯人を突き止め、勢いのまま犯人と仲良くなる。佐野にも梅田にも頼らずに解決できる力が瑞稀にはあるという証明にもなっている。
だが一つの問題が解決すると次の問題が発生。兄が来校し、男子校から妹を連れ帰ろうとする。まるで宗教団体の信者家族である。この時、瑞稀の横にいた佐野が兄の横暴をコントロールしようとする。しかし「妹をたぶらかした」と思っている兄から敵意をぶつけられ、瑞稀の滞在は佐野が今度ある予選大会で高跳びを成功したら認めると言われる。佐野にしてみれば関係のない兄妹の争いに巻き込まれただけで、高跳びの成否を賭けの対象にされることは心外だろう。それでも話は進む。
瑞稀が佐野が自分のために跳んでくれる♥と思わないために神楽坂の存在がある。瑞稀の兄妹の事情がなくても最初から佐野は予選に参加するつもりだった。佐野も瑞稀の負担にならないよう ついで ということを強調する。
佐野が根を詰めているのに何も出来ない自分に落ち込んでいると、中津が外食に誘ってくれて元気を回復する。中津は瑞稀にとって そういう存在である。
瑞稀の兄は佐野の高跳びの成否はどちらでもいい。どちらの結果になっても瑞稀を連れ帰るつもりだった。しかし梅田や、佐野と神楽坂の言い争いを聞くことで兄は佐野の事情を知ることになる。それは瑞稀が好きになった佐野を知っていく過程。また神楽坂が何度も佐野に嫌味を言うのは、彼が中学で勝てなかった佐野と戦わなければ真の日本一とはいえないと考えているからだろう。彼もまた瑞稀とは違う乱暴な方法で、佐野がスタートラインに立つことを願っていたのだ。
それでも兄は厳しい言葉を佐野に投げかける。それは妹を思っての行動であるものの佐野に失礼だから瑞稀に激怒される。大人げない兄を叱るのは、大人組の梅田。目的のために手段を選ばない兄をたしなめ、予選会の存在を教える。瑞稀は佐野に謝罪したいが、佐野は大事にしないために先に許す方法を提示する。この行動は肘鉄をした中津を許した時の瑞希に似ている。
予選当日、瑞稀は佐野にお守を渡し応援する。間違えて縁結び用を買ってしまった瑞稀だけど、それが佐野に奮起させる材料になるのだから失敗ではない。佐野は最初のジャンプで成功する。結果は予選落ちの記録だが、トラウマを乗り越えた。それを見届けて兄は単独で帰国する。砂金帰ったことで佐野が瑞稀を抱きしめるシーンは見なかった。見たら帰国圧が再燃したかもしれない。
早くも高校1年生が終わってしまい、しかも夏休みまで時間が跳躍する。結果的に この作品には春というものが存在しないことになっている(最終回のためにとっておいたのか??)。この時、期末テストがあり、佐野の英語の点数72点と良くも悪くもないが、後に出てくる彼は優れた成績の奨学生という設定と矛盾している気がする。ちなみに瑞稀は学校の授業の水泳は塩素アレルギーという診断書を梅田に捏造してもらい、プールの授業を回避している。
夏休み中に寮が老朽化により改装工事することになり、アメリカに帰国しないつもりだった瑞稀は行き場を失う。兄の例もあり一度 アメリカに帰ると日本に戻って来られなくなると考えた瑞稀は途方に暮れる。
中津が自分の実家に一緒に帰らないかと誘うが、四六時中一緒にいることで秘密がバレるリスクが高まると瑞稀は断る。この時、佐野も同じ提案をしてくれるのだが、これは後半の佐野の家族話と照らし合わせると佐野の行動に一貫性がない。いくら瑞稀のためとはいえ、佐野が実家に帰ろうとすることはないだろう。この時期は佐野家の話は構想していなかったことが窺える。
瑞稀は警戒しているつもりでも、四六時中一緒にいる佐野は瑞稀が女性であることを思い知る。それが寝ぼけた瑞稀が佐野のベッドに入り込んできた場面。夜はバストを抑えるベストを着用しておらず、佐野は瑞稀の胸の感触に眠れなくなるが、何もなかったと瑞稀に優しい嘘を付く。
瑞稀に2週間の居場所を与えたのは梅田の妹・里緒(りお)。梅田は自分が放棄したペンションの手伝いを瑞稀に回す。バイト代が出ると聞いて佐野も参加。佐野の参加を聞きつけて中津も参加する。寮の改装で部活動も中止なのだろう。きっとそう。そのペンションで女好きの大学生が瑞稀を女性として狙う、という いかにも連載が長期化した途端の日常回となる。
