白石 ユキ(しらいし ユキ)
はにかむハニー
第02巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★☆(5点)
こんなに好きにさせといて、キミのほんとのキモチが知りたいよ…。寝ている熊谷(くまがや)くんに、こっそりキスしちゃった蜜(みつ)。意識しすぎて、ついつい熊谷くんを避けてしまう。そんなある日、風邪をひいた蜜のお見舞いに、熊谷くんがやってきて…? 2人っきりでただでさえ、ドキドキMAXなのに、「キスしたよな?」「俺からもしていい?」なんて…どうしたらいいの!?!? 知れば知るほどハマっちゃう♪ 熊谷くん中毒続出! 人気バクハツ☆ムズきゅんLOVE、第2巻!
簡潔完結感想文
- 風邪回に事故チューにデート回。色々イベントを起こすけど彼は私を好きじゃない…。
- クラスの王子様を振って、モブ女性にチヤホヤされて、自分が誰を好きかを明白にする。
- 遭難、病欠、両想い。恋の障害の熊谷のプレゼント相手を放置したまま、で正解なの??
ここから全10巻の作品になるとは思わなんだ、の 2巻。
早くも両想いである。これまでヒーローの熊谷(くまがや)は付き合ってもいないのに付き合っている彼氏がしてくれたら女性が喜びそうな行動を してきたが、この後からは それを合法的に(?)やれる立場になるだけで、何も変わらなそうな気がする。
おそらく作品人気が出なければ本書は全2巻で終わっていたはずだろう。ラストシーンで両想いの幸福なキスもしたし、永遠に結ばれるジンクスも達成している。これ以上の展開はない、と言ってもいい中で編集部側は どういう判断で連載継続を決定したのだろうか。


唯一、連載の継続の布石になっているのが『2巻』で熊谷が水族館で買ったキーホルダーのプレゼント先。というか、両想いの前に この問題を片付けなければならなかったのではないか、と思うんだけど…。ヒロインの蜜(みつ)は熊谷が想っている女性がいるのではないかと告白を引っ込めたり、モヤモヤしていたりしたのに、その問題を解決しないまま熊谷から好きと言われたら、もう両想いになることで頭がいっぱいになってしまっている。恋愛脳ならではの、目の前のことしか考えられない感じが苦手だ。
蜜も苦手だけれど、熊谷も苦手。距離感がバグっているという設定をいいことに、蜜にキスしようとしたり、彼女の胸に顔を うずめてきたり、蜜に自分を置き換えるタイプの読者は そのシチュエーションにドキドキするのだろうけど、物語の大きな流れを重視する私には彼の行動は理解不能だった。
『2巻』だけでも風邪回、お姫様抱っこ(2回目)、事故チュー、デート回での他の男性への威嚇、遭難、彼女 in 俺の服(2回目)、体調不良など少女漫画のベタなイベントやエピソードが続く。最初から全力で(けれど平凡な)胸キュンを提供しているが、早々にアイデアの枯渇に直面するのではないかと心配だ。
設定と言えば蜜が実は強いというギャップは『2巻』では一切 描かれていなかった。もはや蜜は強くもなく、男性への恐怖心も一切あるとは感じられない。ただの普通の女性になっていて もうちょっと設定を活かしてくれないかと残念に思う。山での遭難シーンでは蜜が熊谷を上手に操縦する様子が見られたので、これからは蜜が彼の特性を理解してコントロールするような、女性側が主導権を取るようなシーンが見られたら嬉しく思う。ただ熊谷が一種の障害を持っているのではないかと思うようなシーンもあり、主導権を握るというより、養護や介護のように見えそうで心配だ。ハンドメイドという特定の分野に才能を発揮しているのも障害の特徴のような気がしてしまう。
思わず寝ている熊谷の頬にキスをしてしまった自分が恥ずかしくて蜜は彼を避け続ける。この場面を中王子(なかおうじ)に見られて蜜は弱みを握られる。どうしたら階段下に居たであろう中王子が あの角度でキスを目撃できるのか謎だが、そんなことは作者は考えたりしない。
中王子に自分の愚行を指摘されて蜜は熱を出して学校を休む。午後になり玄関から不審な物音がすることに気づいた蜜は返り討ちにしようと玄関を開ける。鍵が締まっているドアを自分から開けるのは愚行以外の何物でもないが、少女漫画は そんなこと気にしない。
外には熊谷が差し入れを持ってきていた。以前、蜜を送り届けた話はあったがマンションの部屋番号まで なぜ分かったのか(熊谷には話し掛けられる友達もいない)。熊谷の侵入を阻止しようと押し問答をしている内に蜜が熱で倒れる。それを熊谷が助け、お姫様抱っこ(2回目)で部屋まで運ぶ。「料理 作るよ」とも「キッチン借りるよ」とも言わずに勝手に料理を始め出す熊谷が怖すぎる。話の流れは分かるが、なぜ必要な台詞をカットするのか。
その後、蜜は熊谷が作った お粥らしき物体を口に運び火傷する。そこで熊谷が蜜の唇を確認しながら、あの日のキスのことを質問する。描写されていたが熊谷は気付いていたのだ。蜜は熊谷に やっと謝罪するが、熊谷は蜜からのキスが唇が柔らかくて甘い香りがして頭から離れなくて嬉しくて、だから俺からもしていいか?と意味不明なことを言い出す。蜜も熊谷が どういう感情からの発言か確かめないまま既成事実を作りにかかる。2人とも意味不明すぎて共感できない。頬のキスのはずが、蜜がバランスを崩したため唇同士が重なってしまう。わー、タイヘンだー。
この事故チューに熊谷は責任を感じるが、そんな彼を蜜は笑い飛ばして励まそうとするが、その途中で大粒の涙が こぼれる。これは事故チューが嫌だったのではなく、熊谷との気持ちに違いがあるからだった。
週末、熊谷は再び蜜の部屋を訪れる。事故チューの お詫びをしたかったようだ。なんでもするという熊谷に蜜は1日デートを提案する。キスをねだったり どうも自分の利益に誘導したがる人である。
ただし1日デートを おねだりしたけれど内容や目的地を考えていない蜜。そこで熊谷の提案で水族館に行くことになる。蜜が欲しかったキーホルダーが完売してしまったため、熊谷は蜜がトイレに行っている間に それをハンドメイドする。トイレが混んでいたらしいし、材料や道具を持ち歩いていたのだろうが、こんなに簡単に作れるものではないだろう。リアリティなんて考えてはいけないのかもしれないが、翌日 渡すなどの現実的な対処でも問題はなかったはずだ。作者は次の展開のためにも ここで渡すことにしたのだろうけど、話が不自然で話が入っていかない。
この日の最後に もう一度 ちゃんとした告白をしようとした蜜だったが、熊谷がキーホルダーを大切な人に渡そうとしていることを知り蜜は尻込みをする。
学校イベント2泊3日の校外学習が いきなり始まる。こういうイベントって前から開催が予告されていたりするのだけど、本書は本当に突然に始まる。
グループのメンバーはクジによって蜜・熊谷・中王子と、熊谷と仲良くなってから蜜を避け始めた女子生徒の4人となる。ここで蜜は その女子生徒と関係性を修復するのだが、本書において学校の友達は居ようが居まいが あまり影響はない。
水族館のキーホルダーの一件が気になる蜜だったが、彼を好きという気持ちを再確認して頑張ることを決意する。けれど熊谷と一緒に作業していた中王子が2人の間にあったことを全て理解して、熊谷がデリカシーなく蜜を傷つけていることを知る。だから中王子は熊谷に蜜と距離を置くように忠告する。これは中王子の意地悪ではなく、蜜を守るための発言である。
しかし中王子の発言は熊谷に恋心の在り処を教えることになる。それを自覚した熊谷は、夜のレクリエーション・肝試しで蜜と行動を一緒にすることを望むが、彼女は中王子と行動することを選んでいた。これは この直前に蜜が中王子に助けられて、彼の言うことを聞かなければならなかったから。波乱を起こしたいがための、しょうもない理由だなぁ…。


熊谷は もう一人の班員である女子生徒と肝試しのペアになるが、彼女を体調不良にさせて熊谷の動きをフリーにする。蜜は中王子から熊谷と一緒に居ると傷つくと忠告されても、彼から告白を受けても少しも気持ちが動じない。それを確認した中王子は告白を冗談にして撤回する。この告白が冗談だったかどうかは中王子だけが知っている。
少女漫画では山の中に入ると遭難するのが お約束で、蜜も中王子と別れて単独行動を取って遭難する。野犬に囲まれて大ピンチ、に現れるのが熊谷。暗くて広い山の中から一直線に蜜を見つけたのは、蜜が持っていたサイリュームが液漏れしていて、夜道を光らせていたから。本書では理由を説明することが珍しいので この論理に驚いてしまった(笑)
これは『1巻』のマスコットが点々と転がっているのを蜜が見つけて熊谷に出会ったのと似ている。あの日、蜜は熊谷の心根に触れて好印象を持ち始めたが、今回は熊谷が蜜に恋心を抱くという一つの転換点になっている。
合流した途端、豪雨に見舞われて2人は横穴に避難する。山中の一夜というベタなイベントが始まる。蜜は蜘蛛が苦手だが、熊谷は雷が苦手。轟く雷鳴に蜜の胸に顔をうずめる熊谷。好きな人じゃなかったら気持ち悪すぎる行動だ。その後、我に返った熊谷は中王子から距離を置くように言われたことを正直に話す。距離感だけじゃなくてデリカシーも思考力もバグっていて、こんな人のどこがいいのか分からなくなる。蜜も同じで好きと言っても いつまでも伝わらない熊谷に いよいよ腹を立てる。
しかし蜜は熊谷の操縦方法を理解してきたようで、気温が下がって寒くなってきた時に彼と一緒に暖を取るために彼を上手に操る。熊谷の服の中に蜜が入り、密着して過ごしているとバランスを崩し倒れてしまう。そこで熊谷が独占欲を滲ませるが、その真意が分からないまま中王子たちによる捜索隊に2人は発見される。
翌日から熊谷は女子生徒からの距離が近くなっていた。これは遭難した蜜を助けるため、熊谷が教師の制止を振り払った行動を見たことによるもの。格好いいと判断すると、これまでの自分が彼を避けていた行動を綺麗に忘れるのが女性という生き物らしい。
熊谷の人気の上昇を見て、本来は喜ぶべき状況なので蜜は彼を生徒たちの輪に送り出す。しかし彼女たちが熊谷と両想いのジンクスや永遠に結ばれるジンクスを達成しようとしていると知り、蜜は黙っていられない。熊谷に追いつこうと走るが、前日の遭難で上手く眠れなかったため倒れてしまう。教師からすればトラブルばかり起こす生徒として認識されただろう。
気が付くと蜜は宿泊場所に戻っていた。すぐにでも熊谷と花火を見ようと飛び出そうとする蜜の愚かさが目立つ。蜜を運んだのは もちろん熊谷。彼は蜜の部屋に石を投げて蜜と話すために彼女を窓から脱出させる。それにしても この宿泊施設 どういう構造になっているのか。宿泊場所が2階なのか、それとも1階なのか よく分からない高さだ。蜜が熊谷に飛び込んでいく場面が描きたいだけなのだろうけど、それなら1階に窓を付けるとかすればいいのに。
熊谷は自分を取り囲むミーハー女子よりも蜜を選んだ。そして彼女に自分の気持ちの全てを告白する。それは中王子に取られたくない嫉妬や独占欲、つまりは好きという気持ち。こうして2人は両想いになり交際を約束する。
意図せず1つのジンクスを達成して、彼らの幸せは永遠となる。作品の人気が無ければ ここで最終回でもおかしくないところだろう。