《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

このブレスレットは承認欲求を満たすための道具ではなく、対等でいるための資格。

MOMO 2 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
酒井 まゆ(さかい まゆ)
MOMO(モモ)
第02巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

モモを倒したがっている大魔王・ピコに「地球を救いたければ、俺に協力しろ」と言われた夢。モモにプラネタリウムをプレゼントするためにバイトを続けるものの、迷う気持ちは消えなくて――!?

簡潔完結感想文

  • 2ポイント目は金銭で買った物質ではなく、それを贈ろうとした心に与えられる。
  • ナナギの登校が女性ライバルを誕生させる。登場から秒で窃盗を決意する悪役令嬢。
  • 地球の代表権は譲渡されたがヒロインの座は譲れない。でも時々 闇堕ちフラグが!?

の純白と海の暗黒は 夢の持つ二面性、の 2巻。

大魔王・モモを7回 喜ばせることで地球を救うというメインストーリーと同時進行で、少しずつ夢の中の葛藤や苦悩を滲ませているのが作者の手腕。夢(ゆめ)は掲載誌の「りぼん」ヒロインとして正しいことをし続ける一方で、彼女の心の中に潜んでいる暗い気持ちが少しずつ描かれ始めている。

また物語が単調にならないように、ナナギが学校に転入して夢と距離を縮めたり、地球を救う代表権の譲渡があったり と意外な展開を用意しているのも作者の工夫を感じた。そして このナナギも まだ心に秘めていることがあるようで、彼が人間的な感情に目覚めた時、その抱えているものが発表されるのだろうか。
そう考えると誰もが まだ腹に一物を抱えている状態に見えるので、ここから個人回によって彼らの相互理解が深まって、そこから恋愛要素も発展していくのだろうか。叶歌(かなか)なんかは、焦点が当たらな過ぎて どんな人なのかという理解できる余地もない状態なのが気になるが。作者は色々考えているだろうから、これからも楽しみな部分もあるけど、色々考えすぎて情報を出し惜しみして、スピード感が失われなければいいけど。

美結の参戦で恋愛の三角関係になるのかと思いきや、思わぬ方向から彼女の願いが発表される。

この描きたいことが いっぱいあり過ぎる状態が、作品内で説明不足や描写不足を引き起こしている。例えば夢がモモのために購入したプラネタリウムは、一度も起動させることなく壊れた判定をしているのが気になった。また『2巻』から登場する美結(みゆう)が夢に目をつけるのが早すぎるし、彼女が最短距離で夢のブレスレットを盗むのも自然な行動には見えなかった。
ただし恋のライバルかと思われた美結が、まず夢が偶然 手にした代表権を羨むという展開は意外性があり楽しめた。そして美結がいたから、夢も自分自身の願いの輪郭が一層 鮮明になったと言える。まだまだ恋愛を主題に据えないのが作者らしい。

ちょっとずつ構想が先走りして、漫画として安定しない部分もあるけれど、これだけ世界観や人々の思惑を詰め込めるのは作者の才能だろう。相変わらず横顔に違和感があったりして画力の面でも向上の余地がある。でも それは伸びしろだから、今後よりブラッシュアップするであろう作者の作品が今から楽しみだ。


コに、モモの抹殺による地球救済を提案された夢の前に、会話を盗み聞いていたナナギが現れる。ナナギは『1巻』でモモの首に手をかけていたこともあり、この策略に賛同している。

モモ抹殺の話をしているとピコが現れ、ナナギは大魔王一行の新参者であることが明かされる。そしてモモが油断するときはポイント獲得、つまり喜んでいる時で、夢のアルバイト代を つぎ込んだプレゼントである家庭用プラネタリウムを渡す時が最大の好機だとナナギはピコに伝える。

迷いのまま夢はモモにプレゼントを渡すが、ピコの攻撃からモモを守る。夢にとってモモは純粋に笑顔が見たい対象。これまで星が救われなかったというのなら、この地球を最初の一例にするとピコに反論する。


こから魔王同士の壮絶なバトルになると思いきや、夢が物理攻撃でピコを倒す。モモに この星を去れと言われて逆上したピコは、彼女が抱えていたプラネタリウムを叩き落し、モモの怒りを買い、鉄拳制裁と威圧感でピコを黙らせる。ピコは物理攻撃に弱いのか?

こうして迷惑な魔王様は悪役のテンプレ台詞を吐きながら退散していく。
動かしてもないのにプラネタリウムは壊れた判定され、夢はモモのために覚えた冬の星座のナレーションを呟きながら機械を抱える。そのひたむきさがナナギの心を打つ。そして夢はモモに請われて、彼女を抱きしめながら、輝く星空を説明する。モモを裏切らず地球を救う、それは夢の真っ直ぐな心とモモたちへの好意による決断。そして その優しさがモモに伝わり2ポイント目をゲットする。プラネタリウムは壊れても、それを贈ろうとしたこと、モモに喜んでもらおうとする真心がモモに伝わることが大事なので、即物的プラネタリウムには壊れていただいたのだろう。

この事を後で聞いた叶歌が泣くのは、泣くほど弱くない、泣けるほど素直になれない夢の代役を買っているように見えた。


コの登場によって、夢の護衛の必要があり、その役目を同じ年頃に見えるナナギが担う。ナナギの外見は自由自在なのだが、この星の、特に日本の女性には外見の価値が絶対なので、ナナギは もてはやされる。そしてナナギは沙成の設定と演出を守り、学校では無表情の塩対応を止め、笑顔を絶やさず好感を持たれるように振る舞う。

ナナギは学校一のイケメンであり、そしてエイリアン。彼のヒーロー性は際立っている。

またナナギの登校によって、夢は彼との接触の機会が多くなり、これまで以上に色々なことを話し、距離感が近づく(叶歌は どこいった)。今のナナギは夢だけの騎士。与えられた役割だと分かっていても、夢の心は浮つく。
そしてナナギから夢がモモから与えられたブレスレットは地球の代表者の証で、これを身につけている状態でのみポイントが加算される、と教えられる。


ナギの登校に合わせて登場するのが、この学校一の美少女・美結。彼女は登場早々、ナナギに階段への落下を救助され、ナナギは彼女のヒーローになったと言える。
美結は、夢とナナギの接近を知り、彼女のブレスレットを狙う。これは ちょっと行動が早すぎて理解できない。今日会ったばかりのナナギに近い目障りな人が夢なんだろうけど、いきなり的確にブレスレットを狙うのは、1回分に収めるためとはいえ意味不明。作者は描きたいことが多すぎて、ページ数が足りずに色々 端折った印象を受ける。

美結が別のクラスから出てくるのを目撃したのは叶歌。彼は授業をサボって学校をふらついていた。叶歌って こんな人なの? 夢が少女漫画、りぼんヒロインらしい性格なのは分かるが、叶歌は まだ どんな人か掴めない。

ブレスレットの紛失は すぐにナナギにバレて叱られ、そして すぐに叶歌によって美結が怪しいと教えられる。夢も すぐに美結の動機に思い当たるが、ちょっと描写が足りていないように思う。


び出して話を聞くと、美結はすぐにブレスレットを取り出す。ただし盗んだのではなく落ちていたのを拾ったと嘘はつくが。

ナナギとの関係を疑う美結に対して上手い言い訳が出来ない夢は、真実を話すことで美結にドン引きしてもらおうとするが、彼女はバカにされたと逆上する。そこで大魔王であるモモと美結を引き合わせることになる。代表者に守秘義務は課せられてないから、夢に罪はないのだろう。

そして百聞は一見に如かずで、夢の時と同様にモモが美結に宇宙を見せることで信憑性が増す。だが美結は今度は地球の代表者というモモの特別な地位を羨ましがり、交代を望む。途中交代はモモが望めば可能らしい。

美結は顔だけではない特別な自分になれるよう、ずっと努力を重ねてきた人だった。だからこの機会を逃したくなく、積極的に代表者への意欲を見せる。それに対して沙成、そしてモモは交代に異存はないようで、彼らにとって自分が「特別」だと思い上がっていた夢はショックを受ける。突き放された形となった夢は代表権を美結に譲る。それはナナギとの関係も終わると言うこと。


うして夢は以前のように慎ましく、何も望みを抱かない毎日を送ることになる。充足感と興奮で眠れない美結に対して、夢は欠落を覚えて眠れないという対比が良い。

美結はナナギと一緒にいるようになり、ナナギの肉体が人間の機能を有していることが明かされる。ぼやかしてはいるが生殖行為も可能だと言うことなのだろう。食事は必要ないけど、人類の全機能が備わっている。これは地球人に解剖されるパターンだ。それはともかく、ナナギは夢のパートナーと なり得るという伏線に思えた。

モモは「大魔王のルール」として その星の やり方に口を出さない。だから彼女の本心は見せなかっただけのようだ。このルールは、星の生物を殺生できない仕組みと同じで、誰かに定められている匂いがする。つまり大魔王の上位存在が…???


リスマスを間近にしても、夢はバイト三昧。主に生活費のためだが、それ以外に彼女は やることを失ってしまった。そんな夢のバイト先にモモが訪れる。これは美結によるポイント獲得の傾向と対策を知るための質問攻めに辟易したから。大魔王と代表者との相性というのは存在するようだ。

こうして家出した大魔王を夢は家に迎え、彼女との共同生活が始まる。
何十億年と生きて、星を巡ってきたモモは その星の生命体が どういう反応をみせるか数多くの事例を見てきた。星の生物が一丸となったり、代表権が争いを起こしたり。モモの扱いも時に神であり、時に悪魔とされ、千差万別。その中で夢だけは対等なのではないか。


朝、大魔王の家出を知った美結は夢の家に怒鳴り込んできて、モモを奪還する。彼女はモモに自分の世界に積極的に関わらせることで、彼女からポイントを引き出そうとする。ただモモが望んでいるのは豪奢なイベントではなく、慎ましくも温かな空気であることは彼女の発言から察せられる。2人の女子高生が表すのは贅沢と清貧の差だろうか。

美結は自分の誕生日会でモモの存在を明らかにして、大魔王の存在を公のものにしようとしていた。でも それは美結の承認欲求を満たすため。モモの気持ちや地球の存亡などは二の次なのだ。

裕福な家庭、子供を愛してくれる両親、それらがありながら美結は より多くの物を望む。そんな彼女を夢は暗い目で見つめる。


結の誕生日会は船上パーティ。そこでモモは お披露目され、美結は世界中から注目を集める算段。だがモモは振り始めた雪に夢中で美結の演出に乗らない。美結はモモを使って売名行為がしたいので、モモも その道具にしようと調教し始める。だが それは精神的な虐待に近く、モモらしさを奪うもの。モモを等身大で肯定的に捉えていた夢とは その点が大きく違う。

モモは夢に助けを求め、そしてナナギも美結を否定し、夢を擁護する発言をする。こうして代表者としての資質を問われることになった美結だが、代表権を今更 夢に戻すことはプライドが許さず、船上から海中へブレスレットを投げる。

その美結の傲慢さを見た夢は海に飛び込み、ブレスレットを捜す。夢は美結に対して湧いてきた感情で、自分が多くを我慢して生きて、誰にも期待しないことで失望を回避していたことを改めて認める。ブレスレットを手にしたが『1巻』1話の川と同じように そこから溺れそうになる夢だが、そこにナナギが現れ、またも夢を助ける。

そして夢は自分がブレスレットを必死で取り戻したのは、地球のためではなく、モモの隣にいる資格として欲したことを知っている。夢もまた美結とは方向性が違うけど、同じように個人的な理由で動いている。