《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

少女漫画あるある。過去編を やりだしたら、それは現状の行き詰まりの証拠。

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樋野 まつり(ひの まつり)
とらわれの身の上(とらわれのみのうえ)
第02巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

恵と鈴花、両想いの仲なのに主人と下僕の二人には、どんな運命が…!? 『ヴァンパイア騎士』の樋野まつりのヒットシリーズが愛蔵版で登場♪ 描き下ろしカバーをはじめ、カラーイラストたっぷりの永久保存版。 2013年1月刊。

簡潔完結感想文

  • 本書の特徴である「下僕発作」と「竜神の呪い」。その呪いは本書自体にも かかっていて…⁉
  • 呪いがあるから面白い。でも呪いのせいで同じ展開。現状を打破するには過去編を大量投入?
  • 誰も彼もが一度は「とらわれの身」になって檻の中に。檻に入っていないのは父親ぐらいか?

去に鉱脈を探し当てることで、かえって現在の資源の枯渇が露呈する 2巻。

率直に言うと『2巻』の段階で、ネタ切れが顕著になっていると思います。

特に、私が読んだのは愛蔵版なので、単行本5巻分が全3巻にまとめられているので、
1巻辺りの分量が多く、続けて読むことでネタ切れ感と再放送感を助長させていく。

何と言っても最大の欠点は物語が展開しないこと。

特に恋愛面では4話で早くも両想いになってしまったことで、
進展というものがまるでないのが大問題。

主人公・恵(めぐみ)に掛けられた「竜神の呪い」が引き起こす「下僕発作」が本書最大の特徴で、
これによって絶対的な主従関係と、豹変する恵の二面性がもたらされ、
真剣なんだけど、笑ってしまう恋愛模様が描かれていく。

この「下僕発作」こそ最大の発明ではあるが、唯一の武器なんですよね…。

人気が急上昇したためか、途中から読む人へ向けた説明文が毎回 入る親切設計。
それ故に物語の前半は、呪いと彼らの現状を説明することに終始してしまっている。

その後に少し物語を展開させようと、新キャラや過去編(エピソードゼロ)など、
工夫はしているものの、物語の格にあるのは「竜神の呪い」のみ。

この「呪い」設定こそ、本書をある限界に制約し続けている気がする。

作者の悪戦苦闘の様子は見て取れるし、
美麗な作画だけでも評価は出来るのだが、
短編集ではなく、長編として見た時は辛い評価にならざるを得ない。

特に『2巻』では主人公たち2人でなく、
彼らの祖先や父母に焦点を当てた物語が多いのは、
もう主人公たちでは物語を支えきれないという冷静な判断だろう。


『1巻』から続く鈴花が子供の頃に人身売買組織に「とらわれ」ていた時の話。
その容疑者を特定するために、鈴花(すずか)は自分の記憶の扉をこじ開ける…。

このお話で私が気に入ったのは、愛情と呪い が不可分だという問題。

これは恵と鈴花の問題でも何度も取り上げられることになるが、
今回、焦点があてられるのは恵の母・恵都(けいと)の場合。

彼女の場合、昂上(こうがみ)家に仕える執事であった夫・嘉(よしみ)と、その主人との関係に苦しむ。

恵と鈴花の場合と違って、嘉と主人は男性同士。
それ故に、愛情はないと安心も出来るが、
たとえ同性であっても、相手に自分よりも大切にする人がいる、
という現実は不安と屈辱の感情を生み出す。

確かに歴代の黒石家の人々は、愛する人・配偶者からの誤解という面においても
「呪い」を受け続けているのかもしれない。

「呪い」が引き起こす問題のバリエーションとして、
母のような立場の側から見た物語も面白そうですね。

決して結ばれることはない異性の主従における葛藤も読んでみたかった。

この話で一番疑問なのは、鈴花の証言は逮捕の決定的証拠になるのだろうか、ということですね。


ただ、事件の解決と共に、恵都の誤解も氷解。
嘉はちゃんと恵都のことを想っている。

今回、現役刑事の恵都の視線を逃れながら彼女を見守っていた父は流石、天下の大泥棒か。

また恵と鈴花、2人の形も少しずつ変化していく。
鈴花は待っているだけじゃなく、自分から動いていけるところも魅力的ですね。

一人の殻に勝手にこもらないというか、好意をちゃんと伝える大事さを分かっている。

だが、母の登場で2人の肉体的な距離は一定を保たれることになる。
恵の生殺し状態が続く。


花が巻き込まれた過去の事件が解決して、恵都が休暇中で賑やかな屋敷。

代わる代わる人が出入りして、麻雀卓を囲むなんて少し前では考えられなかった光景。
屋敷もさぞ、喜んでいることでしょう。

「呪い」を憎む母の存在もあって、呪いに対して積極的に動く恵。
いざ、呪いの謎の本場、中国へ行くことに。
だが、恵の身体はもう長くは…。

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とある病魔に侵されている恵の身体。俺の身も心も時間も空間も、全て鈴花の物だよ。ガクッ。

恵には下僕発作に加えて、下僕中毒も起きてしまった。
呪いが解けるまで鈴花なしでは生きられない体らしい。
距離と時間を掛け合わせた数値が一定以上になると、体調不良になるらしい。

少女漫画的には、ラブラブが続くということか。


たな展開として描かれるのが過去編。
しかも数百年前の室町時代

恵の黒石(くろいし)家と、鈴花の昂上家、そして竜神の呪いとの邂逅の話。

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黒石の男の特技は、とんでもない物を盗んでいくこと。…あなたの心です。ホスト体質⁉

悲恋ですね。
ただ死ぬまで寄り添うことが約束された愛。

子孫がいるということは、互いに別の人との子が生まれているということ。

いくら心が通じていても、肉体的には重なれないから呪い。

でも嫌な話、強欲な男主人が、仕える女性に「命令」するというのは出来ないのだろうか。
まぁ、時間を遡れば遡るほど、婚礼まで進むには身分の差の問題が顕著になるでしょう。

でも、いつか両方の血を持つ子が誕生してもおかしくはない。
それも竜神の呪いで阻止されるのかなぁ。


そういえば『1巻』で鈴花の遠縁にあたる湊(みなと)が登場して、
彼にも昂上の血があるために恵をある程度下僕に出来ることが判明したが、
恵の方の、黒石家の血縁は他にはいないんですかね。

そして、どの程度の血縁関係までが呪いの受けているのか知りたい。

例えば湊と、架空の人物・恵の姉妹が結婚、子を持つことは可能なのか。
すると、主従どっちの側のパワーが働くのか、など。

こうして竜神の呪いに対する耐性を持った人物が生まれる可能性はあるのだろうか。

恵の父・嘉も「昔の様に固い身分制度があるわけでもない」と言っているし、
案外、家柄や身分を守るという社会的障害が無くなれば、可能なのかもしれない。


いては、鈴花に恵が立ち入れない過去の思い出にアルという異性の友人がいたように、
恵には妹のような存在がいたことが判明するお話。

それが16歳にしてプロのメイドの留衣(るい)である。

鈴花が行方不明になってからも、定期的に母と屋敷の手入れをするために出入りしていた者らしい。

そういえば鈴花が学校に登校しなきゃならない場面でも、
16歳の留衣はメイドとしての仕事に没頭していた。
これは留衣は学校に通っていないということでしょうか。
そのためのプロという肩書なのか?

留衣の登場と入れ替わりで、恵の両親は中国に行くために、屋敷から退場。
年頃の男女3人だけが屋敷に残ることに。


留衣が付きつける問題は2つ。

1つは仕事としての執事の存在意義を、庶民派の鈴花が奪っているということ。
自分の出来ることはなるべく自分でやりたいという鈴花が、報酬を貰っている仕える側の尊厳をも傷つけている。

2つ目は、鈴花不在の間、恵が鈴花へ向ける優しさを留衣に向けていたということ。
これは決して元カノ問題や恋愛関係ではないだろうが、留衣は自分が恵から大事にされていることに溺れていた。

女性キャラの追加で、鈴花の心が嫉妬方向に動くのかと思いきや、
自分だけが愛されることへの罪悪感の意識や、
そんな自分の立場に優越感が描かれていました。


留衣という人物によって掘り起こされた独占欲を隠さない鈴花は可愛いですね。

そして、女性2人から取り合いの対象になる恵は、
その間で、けんかをやめてー、私のために争わないでー、と言うだけ(笑)

留衣というキャラがあんまり機能していない気がするが、
鈴花の方からもちゃんと愛情を示したことは大きいか。

んーー、でも、やっぱりネタが尽きた感じが否めない。
話に展開が無さすぎる。

設定は面白いけど、それ故に、2人の関係は固定化されてるし、
甘い話なんだけど、同じ味への倦怠と胃もたれが引き起こされている。


とらわれの身の上 特別番外編♡」…
恵の両親の出会いの物語。

出会いは6歳、10年後の16歳での再会。
そして1年ずつ接近していった2人の軌跡。

歳の差は何歳ぐらいなのだろうか。
そして、この2人の話の方が長編化にしやすいだろう。
なんせ2人の息子は数か月で両想いになってしまったのだから。

困ったら、今度は彼らの過去編を小出しにすればいい。

そういえば6歳の恵都も汚職議員に「とらわれ」ていたんですね。
本書の中で一度も檻に入ったことのない人は、父・嘉ぐらいか…?

有能な検事の娘の命を狙い続けるこの国は大丈夫なのだろうか。
恵都はサバイバルな毎日を通して、インターポールへの資質を磨いたのか。