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ここにおわす方をどなたと心得る、先の副将軍、ではなくて この先の国王であるぞ!

呪い子の召使い【電子限定おまけ付き】 2 (花とゆめコミックス)
柴宮 幸(しばみや ゆき)
呪い子の召使い(のろいごのめしつかい)
第02巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★(6点)
 

不死の呪いを持つ少女・レネは、ひょんなことから毒の呪いを持つ王子・アルベールの召使いに。徐々に心を通わせる二人は、事件を乗り越え王宮に戻るも、そこには呪い子の排除を企む者がいて…?

簡潔完結感想文

  • レネとアルベールの2人が名コンビとなってが王宮や地方における人の呪いを解呪する。
  • 本書において親という存在は子供の生存や幸福を純粋に願う人たち。だから作品が温かい。
  • 王宮や地方の平定はアルベールが国王になった時の栄華の布石。新興宗教かもしれないが…。

てはアルベール様が国王になられた御世のために、の 2巻。

とても乱暴な言い方をすれば『1巻』アルベール王子が王位継承をする足場が固まるまでを描いたと言える。国王の次男として生まれたアルベールだったけれど兄を失い、もう一人の後継者候補は自滅した。そしてアルベールが次代のトップ オブ トップになることが確定することで、無欲かつ虎視眈々と玉の輿を狙っている白泉社ヒロインのレネの未来も明るくなった。恋愛的な進展がなくとも、その先にある未来は輝かしいものであることが予感され、それが読者の幸福に繋がる。

そこから発展する この『2巻』の内容もアルベールが治める未来の国の足場固めと言える。この『2巻』は2つのエピソード(2つ目は途中まで)が収録されており、1つ目では王宮内に残るアルベールを快く思わない一派の一掃が描かれ、その者の首根っこを最初っからアルベールが押さえつけることで、将来 絶対に国王を裏切らない腹心の部下を持ったと言えるだろう。

そして次世代を見据えた王宮内外の騒動なので、国王と騎士団長・ギヨームは基本的に静観の姿勢の姿勢を見せる。大人組である彼らが口を出さないことで、呪い子(のろいご)を中心とした騒動の主体はアルベールとレネの物語に移譲される。そして行く先々で新しい見識と人々に出会うことで、次期国王が決定的なアルベールの王子時代の地方視察は君主としての準備と成長の時間になる。

舞台が国内の各地方に移ることで、いよいよRPGのような展開になってきた。まぁ王宮内で事件が続き過ぎると噂が広がるばかりだし、登場人物も限られてしまうだろう。ずっと王宮内でアルベールが狙われ続ける展開では、警備のガバガバさは読者の疑問なり、その人徳の無さがアルベールの将来に不安の色が混ざってしまう。王子という身分を隠して、市井の人と交わるのはTVドラマ「水戸黄門」的だと思った(今回の感想文タイトルも それにちなんでいる)。


た呪いというネガティブな題材ながら、その根源には親子の間にある確かな愛情が あることが救いになっている。呪いを憎む者は その連鎖を断ち切るために呪い子への攻撃を試みるけれど、その呪い子たちの多くにとっては呪いは愛情の繋がりであるとポジティブに捉えられているのが良い。

ヒロインのレネは親の生きて欲しいという思いが呪いとして発現した一方、今回 登場する育ての親であるカガリの願いは彼女の信念になって彼女を支えている。血の繋がりが呪いの絶対条件ではないかもしれないが、血の繋がりがなくても願いは託される。読んでいて感動したのは、このカガリの願いがアルベールをはじめとした第三者に繋がっていく現象が確認できたこと。レネは実の親から呪いを受け、そして育ての親から呪いに呑み込まれない心を受け取った。

これは『1巻』で感じた、アルベールにとってギヨームは最初の救いになっている構図に似ている気がした。血の繋がりのない人たちが懸命に相手のことを思い、心を動かした。レネの信念の裏にはカガリが、アルベールが絶望に呑まれなかった裏にはギヨームがいる。誰かに思われることが描かれている温かさが作品内を満たしている。

呪いの有無に関わらず、人の心を黒く染めないために必要なのは注がれる愛情

そして『1巻』や今回の王宮内の騒動では、呪い子ではない者たちが自分たちの呪いというべき思想に呑み込まれていったけれど、呪い子本人たちが呪いに呑み込まれておらず、彼らさえ救う存在になっていく展開が良かった。

そう考えるとレネとアルベールは伝道師のような役目に思える。自分たちの教義を広め、人々の心を安寧に導く存在。となるとアルベールは国王ではなく教祖様になっていくのかもしれない。国の各地で奇跡を起こして、信者を増やす。王族として信頼を集める存在になるのかと思いきや、信仰される対象になるのか…(苦笑)


語は『1巻』の後継者騒動を経た、王子と召使いが呪い子であるという噂が広まった状態から始まる。2人の呪い子の舞台は幽閉の離れから王宮内に移る。

そこで登場するのが もう一人の召使い、ロザリー・シャロン。彼女がアルベールに仕えることで王子には内密にレネが お役御免となる。王宮内の噂話でロザリーが元貴族で現在は没落して、王宮で特定の人に仕えていたことを知る。そんな彼女がアルベールに仕えるのは色仕掛けで玉の輿を狙っていると知り、同じように無欲を装って玉の輿を狙う白泉社ヒロインのレネは気が気でない。

そしてアルベールに必要なのはレネの笑顔。彼女との時間が自分の呪いを、つまりは精神を安定させる。けれどロザリーの仕事は完璧で、自分の居場所は完全に奪われたと感じたレネは離れようとする。クビは244回目で慣れているはずなのに心が痛む。

レネはロザリーと衝突するのではなく、唐突に現れた物取りとの刃傷沙汰となって、呪い子同士の繋がりだという揶揄を訂正するために、自分がアルベールの側に居たいと本音を漏らす。そうすることで離れ離れになるよう仕向けられた2人は再び気持ちを重ねる。恋愛感情はない状態だけれど、起きていることはケンカと仲直りに近い。

自分より有能で仲の良い女性がいても側に居ることを諦めたくない。恋心の発現か

の騒動を終えてからロザリーは自分が「宰相」の命によって動いていたこと、本当は仕えたい主人がいることを伝える。その宰相のヒューゴ・プルーストはアルベールの幽閉が解かれたことに不満を抱えていた。そして物取り騒動と王子の安全確保を理由にアルベールを軟禁状態にする。ヒューゴは過去に国王に幽閉を進言していた張本人だった。

そこでレネとアルベールは騎士団長のギヨームを頼って軟禁場所から逃亡。しかし その途中で幽霊に誘われるように地下に氷漬けになった女性を発見する。その部屋に置かれた日記から彼女が氷漬けになった経緯を知る。領主の子であった彼女は兄と雪国で育ったが、母親が呪い子で領民全員と死んでしまったことで運命が一変する。この日記は、ヒューゴが愛しの人の文字を毎日 眺めるために、目に付きやすい所に置いてあったに違いない。だから全く不自然ではない。


記を読んでいる最中にヒューゴに発見され、再び軟禁される。ヒューゴの呪い子に対する深い恨みを私怨が混ざっていることをレネは予感する。

捕縛されたのに なぜか日記は持ち出せて、アルベールは日記をロザリーに見せる。ロザリーが日記の持ち主を知っているから、彼女はヒューゴの捜索の目から逃れる必要があったのだろう。氷漬けになっていたのはヒューゴの妹・ジゼル。そしてジゼルはロザリーが仕えていた本来の主人だった。ロザリーが没落令嬢になった後、王宮でヒューゴたち兄妹に出会う。懇意になったけれどジゼルの呪いが暴走し、その暴走を止めるためにヒューゴはジゼルに矢を放ち、そこでジゼルの時は止まった。この経緯があるからロザリーはヒューゴを恐れて言いなりになったけれど、自分の時のようにレネたち2人の呪い子の特別な関係を崩したくなくて彼らに加担する。

今度は3人で部屋から逃亡し、ジゼルのいる地下に向かう。しかし そこにはヒューゴが先回りしていた。それなのに彼らを捕縛したりせず、なぜかヒューゴは自分語りを始める。それはジゼルの日記に書かれなかった、領主の母が呪い子だったことで家族も領民も、そして領地が崩壊した物語だった。領地を出たヒューゴたち兄妹は すぐに国王に保護され、その後に王宮でロザリーと出会うことになる。
ヒューゴは大雪崩で沈んだ領地は領民を恨んだ母のせいで、その母の恨みが数年後にジゼルに呪いを宿したと考えていた。だから毒を仕込んだ矢を放ち、妹の暴走を止めた。それが呪いの連鎖を断ち切る方法だったのだろう。


ルベールは ずっと自分語りをするヒューゴに、アルベールは彼の葛藤を見る。それに呼応するようにジゼルの呪いが発動し、レネは氷漬けは毒矢から身体を守る防衛本能だと考え、毒を制するアルベールの能力でジゼルの氷を氷解させようと試みる。それは民を助けようとするアルベールの王子としての務め。その自己犠牲を厭わない姿勢にヒューゴは母親の姿を重ねたのではないか。そしてレネは自分も、誰かの呪いも その根源は願いであると信じている。

ヒューゴは自分の無力を呪いへの憎しみに変換していた。それは『1巻』の王弟・オリヴィエと似た心の動きに見える。しかしオリヴィエと違うのはヒューゴには妹・ジゼルがいる。自分が傷つけた妹から赦されることでヒューゴは自分を許せる。あの日から時間が止まっていたのはヒューゴも同じで、氷が解けることで その時が動き始める。ジゼルの復活はロザリーの救いにもなる。

彼ら兄妹の母親は、天候と領民の自分への怒りが自分のコントロール下から外れることを予感し、2人の子供に生きてほしいと彼らを逃がした。レネと同じく生きてほしいという願いは呪いになった。確かに呪いは連鎖したけれど、それはジゼルの命を救い、ヒューゴに妹を殺害させない奇跡の呪いにもなった。そして母は呪いの力で被害を最小限にしようと努めた。やはりヒューゴはオリヴィエと同じように自分の身近な人の愛情が見えなくなっていた。呪いは それを目にした者の目を曇らせる作用があるのかもしれない。

この一件はアルベール王子の徳として語られる。国王やギヨームの大人組は それを見越して静観していた節がある。ヒューゴに対する処罰が無いのも、内々に処理する国王たちの意向と考えられるだろう。
またレネは王室から正式な側仕えの証を頂戴する。これで国王・騎士団長・宰相、この3トップに認められたことになる。アルベールが得たのはヒューゴという腹心の部下だろう。国王に苦言を呈する時もあるであろう宰相の首根っこを最初に掴んでいる、とアルベール国王の無双の始まりとも考えられる。


ネたちはヒューゴから呪い子の噂が広がる地に向かって欲しいと依頼される。ヒューゴも呪い子の処刑などを考え無くなり、呪い子の暴走の阻止と適切な処置を王子たちに望んでいるいるようだ。

向かうのはレネの故郷。レネの故郷ではアルベールは身分を伏せる。しかし到着早々、レネの育ての親である医師のカガリと遭遇し、彼には身元を明かす。アルベールは恋人の両親に挨拶する勢いだけど、現時点では彼の徹底的な片想いである。本書における親という存在は愛が重め。だから呪いの発現にも繋がるのだろうけど、カガリも親バカ。カガリを通して村の現状が語られる。

領主が親から子へ交代したことで、村に広がる「炎の獣」の噂を根拠に重税が課せられている。現領主は修道士でもあり、彼ならば呪いを祝福に変えられると、強制的な お布施のように税を課した。しかし税を納めた者は実際に被害を免れており、それが税の正統性を認める状態になってしまっている。


々に戻ったレネの実家にはフーと呼ばれるアルベールと同じ年頃の少年が居た。彼は村の近くで行き倒れており、それをカガリが介抱したことが縁になった。

この村でも呪い後に対する偏見は酷い。その根拠にレネがこの村に居た頃にカガリが重傷を負うことになった事件があった。それはレネのトラウマと言えるものだろう。このトラウマは この夜にカガリがアルベールに語る。不死の呪いは他者に害を及ぼすものではないと軽く見ていたカガリだったが、人は異質なものに過剰反応する。それが小さな村であれば尚更で、カガリはレネを守るために村を出ることを考えた。しかしレネはカガリは村人の健康の要だと分かっており、彼の決意を曲げさせる。

投石の嫌がらせに耐えていたレネだったが、ある日 カガリが石を受けたことで流血。自分の痛みよりも他人の死は痛切で恐怖であると感じたレネは自分だけが村を出ていく決意を固めた。その際にカガリは心まで呪われないことを願う。親から子へ発言する呪いではなく、願いなのだろう。それがレネの強さになった。アルベールやオリヴィエ、ヒューゴたちとは違う道を歩み、彼らを照らせた裏にはカガリの存在があると言える。


キャラにレネの呪いを実証するために、レネがフーを命懸けで守るシーンが挿入される。レネに助けられ正論を言われることで、新キャラはレネに一目置く。

しかしフーは呪い子で、彼は自分の意志に反して炎を発したように見える。焼け焦げた道を辿り、2人は一軒のお邸に行き当たる。そこは現領主が使用している家で、彼は恐怖による統治を進め、その恐怖から逃れるために民が税を納めるよう誘導していた。領主にとって税を払わない領民は無価値のようだ。フーは この領主に飼われた/買われた獣だった。彼には命令に絶対服従しなければならない首輪が付けられていて、自由を奪われている。呪いはフーを迫害し、そして不自由を与える。だから世話になったカガリのいる村へも火を つけなければならない。

そのフーを救おうと、レネとアルベールは呪いに縛られるフーの解放を試みる。しかし領主は先にカガリを捕縛しており、フーへの村の焼き打ちの命令を実行させようとする。けれどカガリは自分とフーの間に特別な関係はないとフーを庇う。フーに逃げ道を作らせたカガリに領主は怒り、カガリを燃やすことを命ずる。その無慈悲な命令に対して怒り心頭に発したフーは領主を消そうとする。それは自分の首輪に縛られた苦しみからの解放を望んでのことでもあった。

だが その直前にレネとアルベールがフーを抑止する。領主にアルベールの身元を明かし、勧善懲悪の一件落着の流れが完成するが…。