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四季 夏 (講談社文庫)

四季 夏 (講談社文庫)

十三歳。四季はプリンストン大学でマスタの称号を得、MITで博士号も取得し真の天才と讃えられた。青い瞳に知性を湛えた美しい少女に成長した彼女は、叔父・新藤清二と出掛けた遊園地で何者かに誘拐される。彼女が望んだもの、望んだこととは? 孤島の研究所で起こった殺人事件の真相が明かされる第2弾。


相変わらずファンサービスな一冊。じっくり読めば読むほど情報を読み取れるようになってます。かくいう私も、あの親子の会話には頬緩みっぱなし。もう一方の意外な登場人物はあまり好きではないので、どうでもいいです(笑)。
前作『四季 春』の後から、真賀田四季が両親を殺すまでの話。そこにおまけ的に起こる誘拐事件。これは完全にサービス。『すべてがFになる』の舞台である妃真加島の研究施設が完成直前に起こる事件。なぜ天才は両親を殺したのか?この事件の前日談と『すべF』での後日談の対比が興味深い。残るのは真実ではなく、多くの人に理解されうる形なんだな、と。
不満なのは、森川須磨という女性の扱いが中途半端に終わっていること。急に出てきた科学者は後々の話へ繋がるのでまぁいいんですけど、どうも異物感が残る。私の読解力・想像力不足だったらごめんなさい。やっぱり1作品としての楽しさ、充実度は低いのかもしれませんね。前の作品と後の作品に、補完されてその全貌を楽しむといった趣きか。叔父様・新藤清二との葛藤・両親の動向は四季にとって重要なファクタだったんですね。最後の会話が辛いです。全体の物語を重厚にする一本の線ですね、この作品は。
少し気付いた事を反転して書きたいと思います。
(ネタバレ反転→)佐織宗尊の団体と真賀田四季の繋がりの描写がありますが、彼の創設した組織が「すべF」の後から真賀田四季の逃亡(?)を幇助していた、と考えて間違えないんですかね。「有限と微小のパン」にも信仰してる組織の描写がありましたし。よく出来ていて眩暈を起こす森作品です。(←)

四季 夏しき なつ   読了日:2003年11月20日