- 作者: 高村薫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/01/25
- メディア: 文庫
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殺人犯を特定できない警察をあざ笑うかのように、次々と人を殺し続けるマークス。捜査情報を共有できない刑事たちが苛立つ一方、事件は地検にも及ぶ。事件を解くカギは、マークスが握る秘密にあった。凶暴で狡知に長ける殺人鬼にたどり着いた合田刑事が見たものは…。リアルな筆致で描く警察小説の最高峰。
相変わらず汗臭い人たちの捜査が続く下巻。感想としては小説としてのパワーは感じるのですが、粗削りというか上巻の感想の最後に述べた風呂敷が乱暴に畳まれた感じがします。犯行理由がいまいち分からないというのが、読むスピードを落とすような気がするんですが…最後まで全部がきっちりと腑に落ちるということもないし。やっぱりミステリというよりも小説。ここが伏線かもなどとじっくり読まないで、捜査が進む様子を淡々と読むのがいいのでしょう。
もちろん読んで損はないと思います。これ以後の作品、特に「レディジョーカー」をより深く読むためには必読です。警察小説の代名詞ですからその後の警察小説、例えば日明恩の『それでも、警官は微笑う』 での小物「白いズック(スニーカー)」の原点が分かったときには私は思わず微笑んでしまった。小説を読んでいる途中で、作品中に合田くん達が向かった新宿の京王プラザホテルに行く機会があったので「ここか!」なんて感動したり。なんだかんだでキャラクタに思い入れの強い作品なのかもしれません。やっぱりどの小説よりも、登場人物たちがリアルに描かれているので、すぐ側にいるように思うのかもしれません。