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照柿(上) (講談社文庫)

照柿(上) (講談社文庫)

照柿(下) (講談社文庫)

照柿(下) (講談社文庫)

男と女が恋に落ち、嫉妬に狂う熱病のような夏。殺人は起った。 魂をゆさぶる現代の“罪と罰”書下ろし1400枚!野田達夫、35歳。17年働き続けてきた平凡な人生に、何が起こったのか。達夫と逢引する女、佐野美保子はほんとうに亭主を刺したのか。美保子と出会った瞬間、一目惚れの地獄に落ちた刑事合田雄一郎はあてもなく街へさまよい出る。照柿の色に染まった、男2人と女1人の魂の炉。


この小説は面白い・つまらないは別として、私的感想・解釈をはさめない小説だと思う。書かれている事がルポ・ドキュメントとしても読めそうなリアリティ。『マークス』の合田刑事の設定はあるが、美保子や達夫の生活は、このままの生活をしている人、特に達夫は彼がどこかに実際にいるのかも、と思うほど。ここら辺の筆力は高村さんの持ち味だと思う。ただ「マークス」に引き続いて楽しみ所の分からなかった作品でもある。夏の暑さにやられて白昼夢を見てる感じ(見たことないですけど)。また長いのも悪因。上下段組みで500ページ。果てのない物語も頭ぐわんぐわん。なるほど合田さんと一緒に読者も彷徨っているのか。
この作品は合田刑事ファンには楽しいのか、嫌なのか。合田さんの子供時代や大学・新婚時代も語られているので楽しくはあるのだろうけど、一目惚れで我を失うほどの合田さんは痛々しいのでは。私としては三角関係というよりも既に出来上がってる二人に合田さんが横恋慕したという印象。加納検事が怖いほどの冷静さで逢瀬(?)の時間を考えたように、合田さんの猪突猛進だと思う。やる瀬ない物語の引き金を引いたのは合田さんではないかと。合田さんの加納検事・加納家での礼儀正しさはどうして他の場所・状況では出ないのだろうか、と疑問に思うのです。なんだかキャラクタ小説として読んでいますね。感想が拙くてすいません。

照柿てりがき   読了日:2003年04月07日