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チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600)

チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600)

東城大学医学部付属病院で発生した連続術中死の原因を探るため、スタッフに聞き取り調査を行なっていた万年講師の田口。行き詰まりかけた調査は、高階病院長の差配でやってきた厚生労働省の変人役人・白鳥により、思わぬ展開をみせる。とんでもない行動で現場をかき回す白鳥だったが、人々の見えなかった一面が次第に明らかになり始め…。医療小説の新たな可能性を切り拓いた傑作。


無駄な分冊の下巻。いよいよ『未曾有の災厄と福音』を齎す名医の登場。が、その人はおよそ名医には見えない容貌をしていた。ゴ、ゴキブリっ…!?
この名医、名を白鳥圭輔という。役職は「厚生労働省大臣官房秘書課付 技官(医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長)」。またの名を「ロジカル・モンスター(論理怪獣)」、コードネームは「火喰い鳥」。強烈な存在感と行動力を以って読者を瞠目させる迷惑な名医が登場。
白鳥の登場で物語は怒涛の動きを見せる。と言っても彼が周囲に波風を立てるだけなのだが…(苦笑) これは白鳥言う所の田口との調査方法の違いにあるのかも。白鳥は田口の調査を一定評価するものの内容が「パッシヴ(受動的)・フェーズ調査」のみで「アクティヴ(能動的)・フェーズ調査」が決定的に足りないと指摘。『対象を自分の繭の中に取り込んでそこでゲロさせる』田口の調査方法が「パッシヴ・フェーズ」、『相手の心臓を鷲掴みにして、膿んでいる病巣にメスを突き立てる』のが「アクティヴ・フェーズ」らしい。白鳥が繰り出す専門用語に狐につままれたような心境になりながらも、徐々に話の主導権を奪われ、白鳥に付き従うしかない田口と読者。これこそが「ロジカル・モンスター」の本領発揮か。
真犯人や謎解きに関しては最初からお手上げ状態の医学ミステリなので、本格ミステリのような緻密な論理展開は繰り広げられないが、結論には納得。ただしその後の展開には辟易した。後日談が異様に長く、そして作者と作品との距離が異常に近くなってしまった。ミステリとしての山場を越えた後に現代の病院医療の問題点・持論の列挙が続き、作品の焦点がぼやけてしまった。この犯人像も事件も何もかもが持論を書く目的から始まった逆算ミステリという構図が見えてしまって、作品世界に没入していた集中力が途切れてしまった。
白鳥キャラクタは奥田英朗さんの精神科医・伊良部を連想するが、調査の手法は京極堂の「憑き物落とし」と類似していると思う。相手の心理を揺さぶって問題点を顕在化・自覚化させて暴き出す。京極作品の読者にとっては、カタカナ語で煙に巻いた(?)白鳥の手法も目新しくないかも。「憑き物落とし」の効果はやや蛇足的なアフターケアに最も強く表れていた。本人すら気づかない禍根や病巣を綺麗サッパリ摘出したという意味ではやはり彼は名医である。私の白鳥の見立ては「台風(動物じゃないけど)」。暴風と共に恵みの雨と台風一家をもたらす存在。もちろん台風なんて二度と上陸しなきゃ良いのに、と相変わらず嫌われのだが(笑)
物語が進むにつれ、段々白鳥の人格にもなれると、彼の「ゴキブリ・モンスター」の中の純粋さまで読み取れてしまうのが嫌だった(苦笑) 人格は兎も角、調査員としてはこれ以上ないほど優秀で、限られた時間の中で情報を収集、引き出す能力は天下一品。更には到着後の術中死を悔やむ正義の人。白鳥夫人はそんな彼の本質を知っている人だろうな、などと思った。
余談:桐生-鳴海義兄弟は、高村薫さんの合田-加納義兄弟の関係性に似ていた。なので、結末は二人が××で××、かと期待していたのだが…(苦笑)

チーム・バチスタの栄光(下)チーム・バチスタのえいこう   読了日:2010年04月20日