
吉住 渉(よしずみ わたる)
ウルトラマニアック
第02巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★☆(5点)
架地くんが手作りクッキーをゴミ箱に捨てる所を目撃した仁菜。これがモテ男の正体だが、彼を好きな友達の亜由に伝えてもいいのやら? ときめき不思議ダイアリー。
簡潔完結感想文
- 新キャラ登場で前半ヒロインはモテモテ状態。三角、四角と多角化する恋の図形。
- 恋をすると疑り深くなり、身近な同性がライバルに見える副作用に悩まされる。
- 週末のデート報道の直後に別の男性との熱愛スクープが発覚する恋多きヒロイン!?
両想いよりも美しい友情、の 2巻。
4人のメインキャラに加えて新キャラも登場し、それぞれ知っている情報が違い、それぞれの思惑が飛び交っているのにスムーズに読めるのは作者のストーリーテラーの能力の高さが突出しているからだろう。
最小限の人数で、その人たちが次々に恋の障害や邪魔者として認識されることで個人の悩みが深まっているのが よく出来ていると感心してしまう。実は『2巻』までで作品内で新たに動いた恋心は吹けば飛ぶような気持ちだけ。それ以外は恋心の変動は全くないのに ここまで読者をグッと惹きつけているのは語り口が上手いからに他ならない。
いきなりの持論ですが吉住作品のヒロインは聖女とは言い難いだろう。自分の恋心を何よりも優先する普遍的な傾向が隠せていない。その等身大の姿が作品の良い苦みとなっているから吉住作品は掲載誌「りぼん」にありながら甘ったるくないのだと思う。
そんな吉住作品の中では本書のダブルヒロインの1人・仁菜(にな)は聖女っぽさを感じられた。そして それはダブルヒロイン体制だからこそ描けた心の美しさなのではないかと思う。
今回、1つの恋愛が成就する。それが本書の前半ヒロインといえる存在・亜由(あゆ)と架地(かじ)の恋である。実は仁菜が登場する物語の開始以前から両想いだった2人は仁菜の お節介と少しの自己犠牲によって晴れて両想いになる。


仁菜は架地に惹かれる自分に気づいていたが、それでも亜由の幸福を優先する。こういう気持ちの動きは これまでの吉住作品には見られなかったこと。私は両想いの喜びよりも、2人の女性の友情の方が美しく思えて印象に残った。仁菜が亜由を思ったように亜由も仁菜を思っている。その天秤の釣り合い方は、成立した恋よりも分かりやすい友情の両想いに思えた。
友情を優先し、互いに譲り合うという作られたキャラではなく心の底から相手の幸せを願ったことで彼女たちは2人ともヒロイン性を獲得したと言える。このライバルでありながら最高の親友という関係を描けたことでダブルヒロイン体制は大成功と言える。
また この両想いと友情の成立に際しては、本書の特徴である魔法が登場していないのも見逃せない。魔法で好きな人の好きな人を暴いたりしていないし(直接的には)、魔法の力でメンタルを安定させて好きな人に向き合うことをしていない。魔法は作品世界を彩るツールであるけれども、恋を有利に進めるアイテムではない。
…と、ここまで絶賛したヒロインたちの心の美しさだけど、最終的な行動以外は実は かなり利己的なのが吉住作品のキャラだと言える。
魔法の力で直接的に恋を有利に進めたりしていないが、その実行は試みている。例えば亜由は架地の好きな人を『1巻』『2巻』で計2回 暴こうとしている。他にも架地に近づく先輩女性を退散させるために魔法を使っているし、自分の願いのために自己中心的な発言もしていた。また仁菜の好きな人を許可なく暴いた。
仁菜も言う権利のない亜由の気持ちを勝手に架地に伝えたり、デリカシーに欠ける。
新キャラも他者を利用することで自分のメリットを狙ったりと全員 中学生らしい、吉住作品らしい自己中心性を持っている気がした。そんな利己的な一面、作られたキャラも本書の大事な要素だろう。「いい子ちゃん」じゃない ちょっとズレている人たちだからこそ吉住作品のキャラは癖になるような気がする。
架地がファンからのプレゼントを捨てるようなブラックな性格をしていることを知ってしまった仁菜。というか架地も自分の教室のゴミ箱にプレゼントを捨てるとか足が付くような行動をするな、もしくは するか?と思うけど。
ただ架地にも言い分があるらしく、(自分にとって迷惑な)プレゼントを断らないのが彼の最大限の譲歩らしい。貰わないと泣かれたりするので、一度 受け取ってから捨てている。普段は家に持ち帰ってから処分しているが、仁菜が見た時は量が多かったため持ち帰らなかったらしい。
これは亜由がクールビューティを頑張って維持しているように架地も好青年キャラに努めているから。キャラを演じると自他双方にメリットがあるから彼らは本当の自分を出さないようにしている。芸能人やサービス業のようなものか。
仁菜は架地の性格に腹を立てながらも、性格の悪いところも含めた等身大の中学生の架地の性格を認める。自分しか知らない その人の秘密や、その人との秘密の共有などは恋愛の入り口になりやすい…。
いきなり転校生・桐島 由多(きりしま ユタ)が登場。名前がカタカナ表記ということは彼もまた魔法王国の住人で仁菜の幼なじみである。ユタは落ちこぼれではないが素行不良で退学処分となって こちらの世界に来た。彼には魔法王国で進学するチャンスは ないということなのか。
ユタは人間界に来ることになり仁菜と同じ学校になるように留学手続きをした。ユタは当初、亜由を狙う素振りを見せる。仁菜はユタの行動に困っている時、彼と一緒に架地の好きな人が亜由ではないという情報を聞いてしまう。そこでユタから黙っている代わりに仁菜に亜由との橋渡し役を強要される。


そうして始まる疑似デートの中で亜由に自分のことを話す。ユタの本名はユタ・キリシア。ホームステイの仁菜と違って彼は一人暮らしをしているらしい。金銭面の問題や、学校を退学処分になって異世界で暮らすことなど両親は頭を抱える息子だと思うが、その辺は無視される。
退学処分になった者のユタは仁菜よりも魔法が上手。パソコンなど道具を必要とする仁菜と違ってユタは念じるだけで魔法が発動する。自分の能力を誇示しようとしてユタは加減を間違え、その暴走を非難する亜由から平手打ちを受ける。チャラ男は怒ってくれる女性に弱く、いよいよユタは亜由に本気になるフラグが立ったはずなのだけど…。
この日の お礼と非礼を詫びるためにユタはインスタントカメラを亜由にプレゼントする。それは撮影対象者の願望や感情が分かるアイテムだった。亜由に渡した魔法のフィルムは対象者の好きな人が写し出されるというもの。ユタは これで架地を撮影しろという。彼は亜由が架地が自分を好きじゃないと知ってショックを受け、自分の方を向くと考えたようだ。
亜由は『1巻』ラストに続いて2回目の架地の気持ちを暴く行動に出る。恋する乙女の行動とはいえ、亜由は この行動に少しも疑問を持っていないのが残念。自分の力で何とかすればいい。
カメラを持ち歩くことで撮影を依頼され、周囲の恋愛関係を次々と学んでいく亜由。そしてユタを撮影すると そこには亜由ではなく仁菜が写っていた。ユタが この学校を選んだのは仁菜がいたから。鈍感な仁菜は自分の気持ちに気づかないからユタは亜由で女遊びを楽しんでいたらしい。そしてユタも告白して関係性が壊れるぐらいなら幼なじみでいたいと願っていた。
架地と遭遇しなかったため撮影チャンスが無かった亜由は待ち合わせをしていた仁菜を撮影する。そこに映し出されたのが架地だと知り亜由は思い悩むことになる。
ユタは亜由の気持ちを知りながら、自分の利得のために学校中に亜由との交際の噂を流す。仁菜の心を刺激したかったらしいが、その噂は架地にまで届いてしまう。
架地は その噂の真意をユタの幼なじみである仁菜に聞く。そこで架地は自分の好きな相手が亜由であることを打ち明ける。亜由が そうだったように架地も一緒に帰った時に相手から言われたイメージの維持に努めていたのだ。架地が亜由が好きな人ではないと言っていたのは、彼女を自分のファンの加害から守ろうとしただけだった。
そのことを知った仁菜は落ち込まずに喜ぶ。そこで亜由の気持ちを勝手に伝え、そして両想いは約束されているからと告白を促す。成功率が100%だからか架地は即座に告白に移る。しかし亜由は仁菜の顔が浮かび架地に お断りする。
告白が終わるのを待っていた仁菜は架地が傷心して現れたことに驚く。そして亜由のもとに走り、真意を問い質す。亜由は仁菜の気持ちを大切にした。けれど それと同じように仁菜は生まれたばかりの自分の感情よりも亜由の方が大切だった。
仁菜は架地に続いて亜由の背中を押して告白を受けるように促す。亜由は仁菜が魔法のサポートを提案しても そのままの自分で彼のもとに向かう(結果は分かっているし)。仁菜は友達を優先したことでヒロイン性を獲得したと言えよう。
こうして亜由はユタに続いて架地との交際が噂されることになる。亜由も架地も自分の本性を見せずに交際している。これが悪い方向に働かなければいいのだけど。
