
吉住 渉(よしずみ わたる)
ウルトラマニアック
第03巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★☆(5点)
亜由は憧れの人・架地くんと両想いになり念願の初デート。一方、2人の恋を応援している魔女っ子仁菜は、クラスメイトの辻合くんに正体がバレそうになり……。
簡潔完結感想文
- 辻合に魔法がバレて秘密の共有で仁菜は急接近。彼は自己肯定感を満たしてくれる。
- 仁菜と辻合の接近で余ってしまったユタにも接近する異性が。全5巻でキャラ数 多すぎ。
- 秘密を話していない人から秘密の書かれた脅迫状が届く。架地の仲間外れ感が憐れ。
思い立ったら即 実行してしまう中学生たち、の 3巻。
本書では魔法という秘密の共有は この世界の住人と魔法王国(マジックキングダム)の住人の距離を縮める契機になる。亜由(あゆ)と仁菜(にな)が秘密を知って非日常の体験をすることで仲良くなったように、『3巻』では仁菜と辻合(つじあい)が秘密の共有を果たし、接近する。
反対に同じ世界の住人同士に魔法の秘密は不必要。だから亜由と架地(かじ)との間には魔法情報は共有されない。そういう意図は分かるけど架地だけが仲間外れになる。しかし作者は それも狙っていて、自分の恋人である亜由が辻合やユタという男性とコソコソ話し合いをしているから面白くない。


登場人物が中学生だなと思った場面が花火大会。この日、亜由は仁菜が嫌がらせを受けていることを知り、花火大会直前に対策会議を開く。これは亜由が仁菜を心配しているから即座に対策を立てて、彼女を守ろうとしたのだろうけれど、この時 事情を話せない架地は放置してしまう。数少ない夏休み中の恋人と過ごせる時間という希少性を忘れた亜由のミスだろう。
そんな離れていきそうな亜由の手を離さないように架地は花火大会中にキスをしようと積極的な行動に出る。しかし架地もまた自分の中に浮かんだアイデアを実行しようと必死になりTPOをわきまえなかったことが彼のミスだろう。
亜由は花火大会終了後に魔法関係者を呼び出すまで我慢するべきだったし、架地も不安や焦りに駆り立てられた行動ではなく、帰り道に2人きりになった時に亜由に接近すれば良かった。一つのことに集中し過ぎてバランスを欠く行動をしてしまうのが中学生らしく感じられた。
早い段階で両想いになり交際編に突入した亜由側の問題、そして少しずつ惹かれながらも上手くいかないところが多い仁菜側の描写とダブルヒロイン体制の面白さが存分に出ている内容になっている。
またペットの擬人化を含めると本書は2話に1回は新キャラが登場している気がする。全5巻の割にキャラ数が多い。カップルや仲良しになった彼らに亀裂を入れるためには新キャラが必要なのだろう。そして同年代のキャラが増える度に多角関係の角が増えていく。
『3巻』の縦1/4の柱部分の「FREE TALK」ではアニメ化の話が語られている。2020年代に問題になった漫画を原作とした作品の改変や脚本問題が描かれていて、2003年前後の少女漫画のアニメ化の原作軽視に唖然とする。この時代、特に本書の場合は玩具発売を念頭にした企画だから仕方のない面もあって、作者も ちゃんと承知している部分もあるだろうけれど、もはや別物になっている作品の原作とは何なのかと考えずにはいられない。それでも怒りや悲しみを乗り越えてアニメ制作に向き合っている作者の精神力に感嘆する。あまり詳しくないけれど、アニメ作りが製作委員会方式となったことで原作に手を入れるような真似が減っていることを祈るばかり。
架地は自分の腹黒い部分を亜由に見せないまま両想いになって、そこが今後のネックになるかと思いきや、あっという間に二面性をカミングアウト。作られたキャラだけじゃなく その人自身を好きになったから両者とも問題ないらしい。
そんな2人は初デートをすることに。服装に悩む亜由は仁菜のホームステイ先で魔法で作ることになる。幸せに浮かれる亜由の前で仁菜は自分の感情を覗かせたりせず、友達の幸せを喜ぶ。しかし仁菜の魔法なので迷惑な結果に。それでも交際したての2人は幸せ。
交際直後で動きのない亜由の代わりに動くのが仁菜側。ある日、仁菜は辻合に魔法を目撃されてしまう。人間界で漫画を貸してくれた恩を理由に仁菜は魔法のことを話す。
亜由の時も百聞は一見に如かずで目の前で魔法を行使したが、辻合には飼い猫を人間態にする魔法を見せる。今回の仁菜の失敗は、辻合と対等な立場で言葉を交わせる僥倖を手放したくない飼い猫が脱走するというもの。
仁菜と辻合の接近によって余りものになったユタに仲村 紗也香(なかむら さやか)が声を掛ける。この学校のアイスドールと呼ばれる一匹狼の紗也香がユタの彼女になりたいと申し出た。女の子大好きなユタは それを快諾。
ユタが仁菜を好きだと知っている亜由は彼の行動が理解不能。そこで紗也香に彼を選んだ理由を問うと、彼女はユタへの想いをスラスラと口にする。紗也香がアイスドールと呼ばれるのは狙ったキャラ作りではなく、小学校の頃の友人関係での悩みがキッカケ。そのトラウマで孤独の道を進まざるを得なかったようだ。
辻合は仁菜の魔法を面白がる。失敗を含めて笑ってくれる辻合の存在に仁菜は安心する。2人が急速に距離を縮めたことが噂になると辻合は交際を提案する。しかし その理由は「魔法が使えて おもしろい」というものだったことが仁菜を落胆させ、反発させる。これは多少なりとも仁菜に想いが芽生えているからこその落胆だろう。


だから辻合と距離を取っていた仁菜だが、亜由から仲良しグループでの花火大会に誘われることで彼と再会する。しかしマイペースなところのある辻合は至って普通。そして仁菜は辻合のことよりも自分に届けられた嫌がらせの手紙で頭がいっぱいになる。自分が嫌われていることに落ち込む仁菜に辻合は冷静な対処をしようと安心させてくれて、仁菜は彼の優しさに触れる。
花火大会中に仁菜の状況を分析しようと亜由は魔法関連の情報を共有する者で対策会議を開く。そこに参加できない架地は疎外感を覚える。その疎外感が架地を焦らせ、彼は花火中にキスを迫る。隣には仁菜たちがいるため亜由は顔を背け、2人に微妙な空気が流れてしまう。
2学期が始まる直前、2通目の嫌がらせが仁菜に届く。驚くべきは その文言で魔法王国という単語が使われていた。そこで再び対策会議が開かれるが、波長がシンクロする魔法王国の住人は この学校に感知できない。外部犯が疑われるが動機が見当たらない。深く考えるのが苦手な仁菜は会議を打ち切るが、彼女を想うユタは辻合に仁菜の安全を見守るように願い出る。
ちなみに この回からユタの姉・桐島 美斗(きりしま ミト)が魔法王国から教師としてやって来るが、そこまで登場の必要性を感じないキャラである。新キャラを追加して物語に弾みをつけようという感じなのか。何だか白泉社作品っぽいネタ要員の追加である。
ミトに連れられて、魔法で夜遊びをしているのはリアル読者にとっては変身願望や大人の世界を覗く意味があるのだろう。けれどミトは教師だし、飲酒もしているし、魔法で年齢を誤魔化すというのは違法性が高い。仁菜の素質を描くための回だがミトは初登場から好きになれない。
