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本書の最良のエンディングは、演劇の「裏台本」より「表台本」だったかも!?

王子と魔女と姫君と 8 (花とゆめコミックス)
松月 滉(まつづき こう)
王子と魔女と姫君と(おうじとまじょとひめぎみと)
第08巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★(4点)
 

演技のために仁(めぐみ)と校内デートをした昴(すばる)。仁の優しい言葉に不思議な感情を抱いて…? 一方、文化祭準備に追われる零時(れいじ)は過労で倒れてしまう。心配した昴は…。それぞれに想いを抱え、ついに文化祭の演劇が始まる!! 米子(こめこ)さんが主役の番外編も収録♥

簡潔完結感想文

  • 昴の叔父は仁と同じく禁断の恋に悩む者。その共通点とトラウマ解放のために裏台本が出来る。
  • 中盤は1巻1回の告白がノルマなのか元親が告白。その前に零時の風邪回。プリンス間で格差あり。
  • 長すぎる演劇は次巻に続く。呪いが実在するなら性転換による米子エンドも面白かったかも。

校イベントは長い、の 8巻。

体育祭回も その1日の様子で巻を跨いでいたけれど、今回の文化祭も次巻に続く。演劇のタイトルは そのまま「王子と魔女と姫君と」。王子の謎に肉薄する この演劇から一気呵成に物語もエンディングに向かうと良かったのだけど、恋愛成就の前に お断りイベントが渋滞して勢いを削いだのが残念だった。

今回、上演中の演劇には「裏台本」が存在する。それが なぜか真実に肉薄するのだけど、表の台本だと昴(すばる)の王子は、自分をずっと見捨てなかった米子(こめこ)の赤ずきんを運命の人に選ぶらしい。
私は本編も米子エンドでも良かったと思った。米子を1話から登場させていれば よりフェアだし(でも先輩組なんて『2巻』からの登場なので米子の方が早いし)、前世の王子にとって最良の友人として選んだ彼女が最高の恋人というエンディングは幼なじみエンドに近いものがある。

一番 大切なものは一番 身近にあった という教訓。まぁ 仁でも通用する話だけど…

このエンディングには昴に性転換をさせる必要性があって(女性のままでも そんなに問題は無いけど)、それが読者に受け入れられるかは とても微妙なところなのは分かる。でも米子を選ぶことで なぜか男性よりも女性にトキメイてしまう昴の本質も彼の中にある王子の気質が性同一障害のような悩みを引き起こしていた、という説明にもなる。同性のまま米子を運命の人に選ぶことで、昴は米子の心に触れて その人を選んだという究極のプラトニックも演出できる。女性を たぶらかしたことで性転換の呪いをかけられた王子なのだから、愛を知って呪いが解けるのも必然ではないだろうか。

作品のバランスブレイカーになりつつある仁(めぐみ)なんて最初から居ない方が良かったかもしれない…(苦笑)


かし何度も言うようだけれど作者はプリンスたちを大事にしているのか していないのか分からない。告白や お断りを平等に描くから話が長くなるのに、それ以外の部分では個人回に偏りが あり過ぎる。最初から存在が疑問視されている隼人(はやと)と夢路(ゆめじ)の先輩組は もはや空気だし、今回 告白担当となった元親(もとちか)も敗戦を予感しての告白で勝利する見込みがない。元親の場合、この現世での運命の相手とも言える女性キャラが先に登場しているので ますます勝利の可能性が低い状態。

中盤以降、零時(れいじ)が作者にとって便利なキャラになっているからか存在感が大きい。見守っているスタンスで、このところ目立った活躍のない真白(ましろ)は告白イベントで盛り上げるつもりなのか。実は真白が最後まで昴のことを諦め切れないような気がする。

雑なカウントの仕方だけれど仁が個人回10回目に到達したのに対して零時が5回、その他は2~3回止まりという格差が いよいよ広がっていく。やっぱりプリンス5人だけに限定して、本当の横一線の勝負にした方が盛り上がっただろう。

ずっと仁も昴も自分の気持ちにリミットをかけている状態が いよいよ読者のストレスに変わる。仁に関する謎で物語を牽引(けんいん)している つもりなのかもしれないが、この謎に そこまでの魅力は無い。引っ張り過ぎて間延びしている印象が拭えない。各キャラも漫画的なキャラクタで動いているだけで、その人の背景に奥行きがない。ページを埋めるワチャワチャもワンパターンで いつも同じに見えるのは私がこの作品に興味がないからだろうか。


じられた仁との校内デート中に、彼から距離を置かれたことに思いの外、寂しさを感じた昴。近くて遠い距離という自分たちの関係性を思い知った。

昴の叔父は仕事のため途中で退場。演劇の「裏台本」が用意できれば それでいいのだろう。それでも昴の実家には居座り、仁の母親を含めて家族ぐるみの交流をする。そこで仁と話した叔父は、自分が姉への気持ちを封印していたこと、その何かを隠そうとする「禁断の状態」が今の仁と似ていることを告げる。仁は自分の昴への気持ちが、恋愛感情というものでは収まらないほどの親愛の情であることを認める。

その仁に対して叔父は、その感情を言っても構わないのではないかと助言する。しかし仁に その意思は芽生えない。まだトラウマが発動しているらしい。これで仁回は10回目か。

仁の愛が大きすぎて プリンスたちが軽薄に見える副作用あり。やっぱバランスブレイカ

化祭の準備で八面六臂の活躍を見せていた零時が風邪を引いてしまう。零時回(5回目)で風邪回(仁に続いて2回目)となる。
高熱の零時を迎えに来た彼の兄の策略によって昴は一緒に自宅へと付き添う。零時が部屋で横になった後、兄と会話している最中に零時が兄から昴を奪い去る。これは昴が零時には見せない笑顔を見せていたことへの嫉妬。自分には見せない笑顔を見せろと、弱っている零時は本音を零(こぼ)す。

零時の部屋から学校へ戻ると軽い仁回、そして久しぶりの元親回(3回目)となる。
元親は昴が自分の方を見てくれない無力感を覚えており、元親が音鞍(ねくら)に本格的に好意を寄せられる、という一定の方向性が確定する。それでも元親は昴に告白し、自分を見てもらうように努力する。これで隼人(はやと)・夢路(ゆめじ)・零時(れいじ)に続いて4人目の告白回となった。ただ初回の隼人やキスをされた零時ほどのインパクトはない。可愛いキャラの宿命で下位に甘んじているように見える。


化祭当日に、夢路と真白(ましろ)の妹が出会い、妹は夢路に恋をする。これにて夢路ルートも正式に終了か。

昴は王子に、プリンスたちはプリンセスに性別を換えて演劇が始まる。
演劇のタイトルは「王子と魔女と姫君と」。この演劇で重要なのは、プリンセスたちには運命の相手がいたのに王子の口先だけの愛に気持ちを変えてしまったという。王子またはプリンセスたちの運命の相手は最初から違うということか。また王子の動機としては、敵しかいない王城で愛に飢えていたため、プリンセスたちの愛を ほしいままにしたことが明かされる。

そんな王子の罰として魔女が呪いをかけた。呪いによって王子は夜の間だけ女性となる。こうして夜伽が出来なくなったからかプリンセスたちは城を去り、王子は孤独になる。孤独になった王子は遊びに費やしていた時間を執務に使うことになった。それは王子の諦念だった。人を好きになれない自分には一緒に生きてくれる人がいない。そして独りで死んでいくのだろうと王子は覚悟を決めていた。

そこから昴の叔父と米子(こめこ)たちが進めていた「裏台本」に突入。本来は自分を最後まで見捨てなかった赤ずきんの米子とのエンディングを迎えるはずだったのだが、魔女ルートに変更された。それを予感させて次巻に続く。