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少女漫画と小説の感想ブログです

鬼の居ぬ間に 洗濯と料理とイチャイチャして両想いであることを確認。鬼の帰宅を座して待つ。

カンナとでっち(2) (別冊フレンドコミックス)
餡蜜(あんみつ)
カンナとでっち
第02巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

カナヅチを愛でるイケメン見習い大工・勝仁(かつひと)と同居生活中のカンナ。ある日、ひょんなことから彼に「初キス」を奪われちゃったカンナは、少しずつ彼のことを意識し始めちゃって……!!? 父と交わした「恋愛禁止」の掟、ちゃんと守れるの――!? 「別冊フレンド」で読者人気アンケートがドンドン上昇中!!! イケメン職人男子とのドキドキ同居ラブストーリー!

簡潔完結感想文

  • 事故チュー以降、2人の恋心は既成事実になるのとヒーローの性格に違和感。
  • 連載化の後は掲載月と内容がシンクロ。受験生だけど勉強ゼロのヒロイン誕生。
  • 20年単位で繰り返される歴史。母と娘、親方と でっち は似た者同士である。

100m走のゴールを目指して爆走中、の 2巻。

『1巻』の感想文と重複するが、本書は読切短編から短期連載が始まり、「あらすじ」にもある通り「読者人気アンケートがドンドン上昇中」になったため、全7巻の長期連載となった。

推測になるが雑誌「別冊フレンド」の短期連載は8話と相場が決まっており、読切の1話 + 短期連載の8話で連載は終了する予定だったのだろう。その証拠として この『2巻』のラストで両想いになり、実質的な最終回である次の9話で、恋愛禁止の掟を設定したヒロインの父で ヒーローの大工の親方でもある いわば この恋愛におけるラスボスとの対決が見られる。そこで 2人の関係に一定の方向性が示され、ハッピーエンドとなる(はず)。

『7巻』の作者の あとがき で「100m走が持久走になった感じ」とあるのは、短期連載でのゴールを想定していたからだろう。

つまり何が言いたいかというと、やや唐突な『2巻』の両想いも、キレイに物語を終わらせるための準備なのである。結果的に そのゴールは第一部完であり、その後に第二部が始まり、終わりなきレースが続いていく。

そのため読者との歩幅、速度との齟齬が生まれてしまっている。私は特に『1巻』の事故チュー以降は2人が実質的に両想いという前提で話が進んでいることに違和感があった。ヒーローの勝仁(かつひと)も『1巻』とは少しキャラが違うように見え、妙に女性慣れしている感じで、強引な言動や顎クイなど「別フレ」読者が好きそうな胸キュンシーンを繰り広げていることに首を傾げざるを得なかった。大工ということで もうちょっと実直な恋愛が見られるかと思ったら、いきなりチャラ男に変身している。

事故チューとは言え1回キスをしたら「自分の女」扱いの勝仁に違和感。読者人気獲得の為か??

ただ本書の良い所は、良い意味で過去を振り返らない。どうやら勝仁はキスの経験があるし、女性や性に対しての免疫もあるようだ。そのことをヒロイン・カンナが気にすれば後ろ向きのネタである元カノ問題などに遭遇してしまうところだが、本書は前向きなので、彼らは いつも将来を見据えている。作者は走る距離が長くなっても飽くまでもラブコメの姿勢を崩さなかったのはブレない姿勢で良かった。


して今更 気が付いたが短期連載開始である2話目からは現実の掲載号と作中の月が同じになっている。『1巻』のラストは12月号で年末の話だったし、『2巻』でも1月号なら初詣回、2月ならバレンタイン回、3月号では早咲きの桜で お花見をする話になっている。その季節イベントと大工仕事を絡めて お話が作られている点も良かった。ただ そのせいで、カンナの実家である小田原(おだわら)工務店が長期間を要する大きな仕事ではなく、細々とした仕事ばかりを受注しているように見えてしまうが…。

そして気になるのは4月号から進級したカンナが「受験生」と自分を自称していること。定時制高校の3年である勝仁は卒業後は大工だから問題ないにしても(学校に行っている気配がまるで感じられないが)、カンナは何を目指し どこを「受験」するのかが謎のまま話が進む。今後しばらく掲載号と季節が一致するのだが、夏になってもカンナは受験の準備を進めない。そして最終的にも彼女の将来は分からない。

連載というレースが ずっと続き、手探りのまま走り続けたために準備が足りなかったのかもしれないが、この辺も考えて欲しかった。当初の連載の形態から最初から結果ありきの恋愛に見えることも含め、かなり残念な部分だ。この辺は次回作での改善が見られるといいな。


仁と事故チューをしてしまい、それが初キスだったこともあり忘れられないカンナ。上述の通り、勝仁は初キスではないようだが、カンナはそこに固執しない。

2人の気持ちは確実に近づいているが、家庭内では恋愛禁止の掟があるから2人はカンナの父の監視の目を恐れる。ここでもう2人は共同体になっていて、恋愛モードになっているのが よく分からない。カンナ側はともかく、勝仁が どこから どうしてカンナに惹かれたのかが分かりにくい。日々過ごす内に気になり、キスで完全にスイッチが入ったのだろうが、何だか知らない間に既成事実化しており、話だけが先に進んでいく印象を受ける。相手が自分のことを好きなのだろうか、というナイーブな心配などは一切描かれていない。それがラブコメの本書らしいといえば そうなのだが、もうちょっと距離の縮め方を丁寧に組み立てて欲しかった。

ちなみに年明けの1月で初詣回でもある。

そしてこの時期に開催されるのが「ODG」。カンナの父親が送った写真により「ODG」こと「男前大工グランプリ」に勝仁が出場することになった。優勝賞品が大工道具と会って、道具フェチの勝仁は燃える。そして このミスコンのような大会について、勝仁は俺様ヒーローやナルシストでは決してないが、自分の容姿を肯定的に受け止めて、それを武器にすることも厭わない。

だが審査項目には勝仁が まだ修行中の鉋(かんな)がけの実技もある。毎日その練習に励む勝仁。『1巻』で鉋を扱えるには2~3年かかると言う話だったが、集中的に修行することで鉋=カンナと上手く付き合う方法を見つける、ということなのか。だが連日の練習でも結局、鉋がけは1回も成功することなく本番を迎えるが、本番では上手くいく。その嬉しさのあまり、カンナは舞台上に上がって勝仁と抱擁しあう。もはや好意を周囲に隠せる状態ではない。


いては2月号のバレンタイン回。
商店街に リアルお菓子の家を作ることになった我らが小田原工務店。そのアイデアを固めるために、まずカンナと勝仁の2人で市販の お菓子で家を建てていく共同作業が見られる。大工として肩を並べることは出来ないが、同じ作業をすることで それぞれの良い所を見つける時間となった。

こうして完成した実際に人も入れる お菓子の家の中で、カンナは勝仁にチョコを渡す。この時の勝仁はグイグイ男子で、少女漫画読者が喜びそうな女性の手にあるチョコを直接食べたり、顎クイでキスをしてみるかと誘ったり、典型的で、勝仁らしくない行動をしているのが気になる。読者人気を取るために作者も手段を選んでられなかったのだろうか。骨の髄までシチュエーション重視の「別フレ」作品になってしまったようで悲しい。


いては3月号で桜の季節を前にした お話。
桜の名所でもある川辺に川床(かわどこ)を増設するということで小田原工務店が任される。この川床は20年前のカンナの父と母との出会いの場所でもあり、家族にとって思い出深い場所なのだ。怪我の手当てや内緒のデートなど、20年後の娘世代にも同じことが繰り返されようとしている。

ただ一部、川床が明らかに傾いているように描かれているのが気になる。あの傾斜では机上の物が動いて、料理を落ち着いて堪能できないだろう。小田原工務店の信用に関わるので、きちんとした描写をして欲しい。

毎年恒例の家族行事だが、今年は勝仁も含めて4人で川床で食事をしながら夜桜を楽しむ予定となる。この回でもカンナと鉋の共通点が語られ、鉋という道具は「気まぐれで頑固で素直じゃないから」難しく、「わかり合うには長い年月をかけて一緒に成長しないとだめ」だという。

当夜、カンナは男性陣を待つ間、母と女同士の会話をする。20年前、交際禁止の修行中だった父を一人前になるまで待つのは さみしくなかったのか、というカンナの疑問に、母は仕事をしてる(父の)真剣な姿を見たら さみしくなかった、と答える。まっすぐだから信じられた、という言葉は勝仁の姿勢とも重なり、カンナにも2人の似ている部分が発見できただろう。

母と娘は20年の時を経て、相手の若くて半人前の男性に同じような素質を感じた。もしかしたら この20年後、カンナの子供も同じように運命の出会いをするかもしれない。


女漫画あるある の一つ、なぜか当たる商店街のクジ引きで、両親は1等の温泉旅行に行ってしまう。そのため年頃の男女は2日間家で2人っきりとなる。両親が不在で実家で始まる お泊り回といったところか。

この回は4月号の掲載で、どうやらカンナも高校3年生に進学したらしく、自分を「受験生」としている。その割に今後、受験勉強する様子も描かれず、志望の進路も全く明かされない。2人は将来を考えるが、カンナが近しい未来を全く見ないのが本書の気になるところ。

そんな「受験生」のカンナだが、両親の不在の中、勝仁と2人で小田原工務店の看板制作に励む。またも共同作業である。早くも出会いを振り返ったりしているのは、短期連載が もうすぐ終わる予定で まとめにかかっているからか。

この回で気になるのはカンナの服装。家から出る予定もないのに、そこそこの良い服を着ているように見えるのが気になる。そしてペンキを使う作業の前にも着替えないし。しかも勝仁と2人きりの時に膝上丈のスカートを着るというのが、乙女心なのか下心なのか微妙なところ。

お留守番回なのに お出掛け回のような気合いの入ったカンナの服装。勝仁はセクハラ気味だし。うーん…。

無事に看板は完成し、勝仁の服についた汚れを落とすために お風呂場で洗濯をする2人。まさに鬼の居ぬ間に洗濯で、2人で お風呂場でイチャイチャしている。勝仁が いきなり服を脱ぎだしたり、下心を出したりとキャラが違う。風呂上がりも裸だし、筋骨たくましい脱ぎ要員としてサービスシーンが続く。

そして この回でカンナは不器用で料理も下手という設定になった。そんな娘の現状を知りながら、母が この日の料理を手配、または外食や内食してと甘やかさないのは、カンナの恋を応援するためなのだろうか。

昼食後、2人で庭のベンチに座り、勝仁はカンナの膝枕で眠る。直にカンナの太モモに頬や鼻、口までも近づけているのはセクハラだ。勝仁は やはり女性との接触に手慣れている節が見られる。そして勝仁は そのまま眠ってしまいカンナは動けない。

その夜、2人で洗濯物を取り込むベランダで、勝仁はカンナに好きだと伝える。カンナは勝仁を嫌いじゃないと抵抗するが、勝仁はカンナが自分を好きだと疑っていない。割と自信家である。まぁ あれだけカンナの態度が分かり易ければ そうなるか。

この家では恋愛禁止令が発令中だが、勝仁は正直にカンナ父に自分たちの関係を伝えることを選ぶ。そんな男前の彼の姿勢にカンナも素直に好きと伝えた。

そして翌日は決戦の時。早くも カンナとでっち は2人1組となって問題を解決し、未来へ進むこととなった。