《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

連載開始から1年以上で、作中の経過時間は1か月ちょっと。なかなか恋に落ちないはずだわ。

ReReハロ 4 (マーガレットコミックスDIGITAL)
南 塔子(みなみ とうこ)
ReReハロ(りりはろ)
第04巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

このトキメキ、もう止められない! 永遠と秦、友達2人のギクシャクな関係にリリコはハラハラ…。そんな中、湊にピンチを救われたリリコはギュッと抱きついてお礼をと言われてパニックになり湊のほっぺたにキスを!? リリコのゆる〜い兄・雷太が登場する番外編も収録。 【同時収録】番外編〜早川家長男の話〜

簡潔完結感想文

  • ピンチを救ったお礼に肉体的接触を要求する依頼人。それ以上の返礼をしたら なぜか不機嫌になって…。
  • 逆ギレと寛容。自分の想像以上の現実を認めない人々。彼らの怒りを治めるのは仕立てに出るしかない。
  • 泥棒と泥棒猫。湊と同じ高校の同級生にとってリリコは邪魔者。貴金属を盗む下賤の者で、間女である。

寧なスローラブを描いているかと思ったら、作中時間の経過がスローなだけの 4巻。

主人公・リリコの高校入学初日から始まった本書。
『3巻』が終了しても、リリコは恋に落ちたりしておらず、
随分ゆっくりと丁寧に恋に落ちる過程を描くなと感心していたが、
ここで重大な事実が発覚。

なんと作中時間が私が思っている以上に経過していなかったのだ。

それが発覚するのが『4巻』でリリコが放った一言。

「あたし ここに来るようになって1か月以上ですけど…(略)」

驚いた。
いつまでも夏服にならないなぁとは思っていたが、本書では まだ5月なのだ。
それも5月の下旬ではなく中旬かもしれない。

どうりで『3巻』では、クラスメイトの名前を まだ憶えていない、という会話が出てくるわけだ。

この新事実によって私は少しガッカリした。
私の中では、もう1か月ぐらい経過した頃(6月下旬)だと思っていたのだ(服装はともかく)。

長い時間を共に過ごす彼らが いつまで経っても自分の中に芽生える気持ちを把握できないのが、
青臭くて、甘酸っぱくて好ましく感じていた。

だが、出会って まだ1か月となると話が変わってくる。
高校生の彼らと、今の私の時間の感覚は絶対に違うと思うが、
私が勝手に感じていた本書の「ゆったり」の部分が瓦解した気持ちになった。
なかなか恋に落ちない歯がゆさも、1か月ちょっとでは 当然のように思えてきた。
だって、クラスメイトの名前を覚えきれない頃だもの。

むしろリリコたちは毎日のように色々なことが起こる目まぐるしい日々を過ごしてたのか。
1話で感じたリリコの忙しさ・慌ただしさは ずっと続いていたらしい。

まぁ、本書が人を好きになっていく様子を丁寧に描いているのは不変の事実なのだが…。


書の恋のテーマは「不器用」、なのだろうか。
言葉は悪いが、どいつもこいつも面倒臭い性格をしている。

例えば『3巻』から続く、リリコの友人・永遠(とわ)と秦(はた)の恋模様。

リリコに湊という親しい異性が出来たことで、彼にリリコを奪われると危惧し、
湊のことを知らないのに悪し様に言ってしまった永遠。

そして、そんな自分に落ち込む永遠に、秦は秘めていた彼女への好意を伝えてしまう。
永遠は自分にとって唐突な告白をした秦のことを避け始めるのだが…。

永遠は可憐な外見とは裏腹に面倒臭い人ですね。
ある意味で本書一番のお嬢様かもしれません。
そして気持ちが全て重いです。

「お父さんとお母さん以外で すきなのはリリちゃんと秦だけなのに」

と自分の世界を守るために、中学時代の秦を呪ったり、
避けたり、と なかなか生きるのが大変そうである。

しかも自分が避けているのに、無視されたと思う、悲劇のヒロイン気質。
少女漫画の主人公としてはリリコより永遠の方が「っぽい」のだが、
彼女が主人公の少女漫画は、本書のように からりとした雰囲気ではないだろう。
恨み節と呪いの交錯する、陰険な物語に なったはずだ。

永遠の「すき」に秦が入っていることを確認できただけで、秦の今回の告白は儲けものかもしれない。

ちなみに私が『3巻』の感想文で、大いに妄想した
永遠、湊を呪いによって殺す説、は全く出てこなくて安心しました(笑)


も また不器用さを爆発させている。

窮地に陥ったリリコを助けた湊は、
「お礼なら おれ ギュッて抱きついて 可愛く言われるのがいいな」と、リリコに要望する。

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相手が抗えない立場だと知ってのパワハラ。いや、自分がして欲しい願望だったのだが…。

これは『3巻』で帰国子女の友人がリリコに対してハグをしている場面を目撃し、
その瞬間に自分が恋に落ちたことが大いに影響しているだろう。

だが、その要望通りリリコが その場面を再現すると、湊はなぜか お冠で…。

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望外の喜びなのにセクハラだと訴えることで自分の正気と正当性を保とうとする男。

どうやら湊は、リリコがハグに加えてキスをしてきたことに怒ってる動揺しているらしい。

リリコとしては、自分がやられたことの完全再現だったが、
彼女への恋を自覚し始めた初心な湊にしたら、完全にキャパオーバーな出来事みたいだ。

そんな自分の混乱を、リリコの軽率な行動への非難に変換する湊。

面倒臭いです。

しかも湊にとっては望外の喜びであるはずのキスなのに、
依頼人に言われたら誰にでも あーゆこと するわけ⁉」
と、リリコをまるで尻軽女のように非難する。

あぁ 面倒臭い。

「他の男にはするなよ」「オレだけのキスにしてくれ」と言えばいいのに。

リリコは まるで自分がセクハラをしたことに気づかされたように羞恥で顔を赤くしてしまう。
更には、自分のソーシャルディスタンスの詰め方が間違っていたと
リリコに誤認させ、彼女に謝罪の言葉を引き出す始末。

このことでリリコは湊との関係性を、依頼人と仕事人にリセットしてしまう。
ざまぁみろ だよ、湊くん。

不器用な照れ隠しだとは分かっていても、湊の株が下がった一件です。


そして、この2つの面倒臭い人間が引き起こす騒動が、同じ回で解決するところが面白い。

謂れのない非難されても その人が寛大な心をもって許容すれば、
事態は丸く収まるという教訓かもしれない。


半からは新キャラ・星梨奈(せりな)が登場。

何と彼女は湊の はとこ という関係。

そして湊に一直線に好意を示す人。
彼女が不器用なのは料理ぐらいか。
とんでもなく面倒臭そうな性格の彼女の役割は、
不器用なリリコから恋情を引き出すこと。

彼女の出現から起こる騒動の数々が、湊との距離を縮めることになる。
その意味では、星梨奈のワガママは、恋の号砲なのだが…。

しかし星梨奈といい、前半のリリコを窃盗犯に仕立て上げようとした女性といい、
『2巻』でのストーカー女といい、湊たちが通う齊旺高校の女子生徒は個性派(笑)揃いですね。

窮地があってこそ引き立つ湊のリリコへの真摯な態度だとは思うが、
並べてみると、人を不快にさせる事件続きだということに気づかされる。

リリコが さっぱりした性格だから雰囲気が保てているが、
もう少し、爽やかに両者の長所が引き立つシーンにして欲しいものだ。

便利屋だし学校が違うし、起きるイベントが限られているのかなぁ。


あと気になったのは、リリコが初めて恋に気づいた相手、
大学生の久保(くぼ)さんと、その彼女・柚佳(ゆずか)の微妙な空気。

リリコに親し気な久保に対して思うところがある、という1コマがあるのですが、
これって、後々の伏線だったりしましたっけ?

思わせぶりの1コマに終わっていた気がする。
作者は こういうこと多いですよね。
ちゃんと機能していない話が多いというか、
話を広げようとして取っ掛かりは作るが放置しちゃうところがある。

メインのエピソードしか集中できなくなっちゃうのだろうか。


同時収録は、リリコの兄がメインの短編「番外編〜早川家長男の話〜」
兄って、リリコが大人数(といっても3人だが)の男たちの家事を一切担ってる、
という設定以外で、本当に要らない人ですよね。

弟の塁(るい)と2人兄弟の方が納まりが良かったような…。

ReReハロ 4 (マーガレットコミックス)

ReReハロ 4 (マーガレットコミックス)

  • 作者:南 塔子
  • 発売日: 2014/07/25
  • メディア: コミック