
慎本 真(しんもと しん)
先輩! 今から告ります!(せんぱい! いまからこくります!)
第04巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★☆(7点)
夏休み直前の校舎裏。大好きな神鷺先輩にキスされた小春。「次会ったとき、ちゃんとオレの気持ちも伝えるから」って言われたけど……約束の花火大会まで待ちきれない小春は、妄想があふれて止まらない! 念願の花火大会当日。先輩に会えるかと思いきや……そこに現れたのは衝撃の人物で!? そして先輩の気持ちって――!? 胸が痛くなるほどキュンキュンする、大人気『告りま』4巻!
簡潔完結感想文
- 約束の花火大会の日、最悪の想像を繰り返していた小春を悲しませる予想外の仕打ち。
- 告白の返事は一週間後に順延。でも あの神鷺が個人情報は解禁した時点で答えは一つ。
- 神鷺への愛に溢れた家族も友達も小春も全員が温かくて告白シーンは涙腺を刺激する。
今日も明日も家宝が増えていく神鷺家 の 4巻。
読者を笑わすのに長けた作家さんは、結局 読者の感情を操作するのが上手ということなのか、コメディ作品は その振り幅の大きさの分だけ感動してしまう気がする。これはヒロインの胸キュン構造と似たようなものだろう。ヒロインが落ち込めば落ち込むほど その後のヒーローの言動によって跳ね上がる喜びとのギャップは大きくなる。それと同じように直前までコメディの本領を発揮していたのに、急に真面目になって読者が予想していない時にキュンとさせてくれる場面が挿入されるから、その落差に感情が大きく揺らいで感動してしまう。両想い前のヒロイン・小春(こはる)が作った映像にも感動して、その後の両想い達成の瞬間に もう一段階 感動が襲ったのにはビックリした。


てっきり私は神鷺(かんざき)は花火大会のようなシチュエーションを重視する人だと思っていたので、もっともっと雰囲気を作ってから小春に告白の返事をするのかと思っていた。しかし彼が小春に伝えたいのは雰囲気じゃなくて自分の本気だった。そこに感動する。
小春との関係を一気に家族にオープンにする神鷺は、小春をどれだけ大切に思っているのか、どれだけ誠実に彼女を恋人にしようと思っているのかが伝わる。同時に それは神鷺が多くの高校生男子が気恥ずかしく思ってコソコソしてしまいがちなことを自分を大切に育ててくれた家族に自分の幸福を伝えたかったという家族愛に溢れるものにもなっており、その側面からも感動してしまう。
肝心の小春に対しては関係性がハッキリとしてからも すぐにはキャラ変しないで これまでのように塩 もしくは ツンデレ対応になる。でも反応が同じだからこそ、これまでとは違う部分が浮かび上がってきて、それが小春の幸せになっている。言葉や態度以上に神鷺が小春のことを大切にしていて、「彼氏」神鷺の新しい面が少しずつ発掘されていく。しかしラストの展開では もしかしたら神鷺の好みは年上の美人という性癖が発揮されてしまうかもしれないけど…。
告白シーンでは小春の将来的な野望が すぐに実現したけど、これからも彼女の想像や妄想は全て実現するのだろう。これぞ少女漫画である。だから今年は見られなかった花火大会の花火も来年以降、80年に亘って連続で神鷺と見る可能性がある。今回、生徒の多くに渡した10年後の予言となりそうな招待状も きっと未来への約束なのだろう。ヒロインが願ってきたことが続々と叶うのは藤もも さん『恋わずらいのエリー』を思い出した。ヒロインの妄想力や打たれ強いところなど、私の好みを突いた作品たちである。
当て馬として優秀な梗(こう)は神鷺に刺激を与え、独占欲から神鷺は小春にキスをした。小春は母親にも言えない秘密が出来たことが嬉し恥ずかしい。また母親に このことを言えないのは神鷺との関係性が明確になっていないから。しかし その関係性も花火大会で明らかになる予定。何より神鷺がキスをしたことが彼からの好意であると小春は考える。花火大会までの期間を期待に胸を膨らませながら一日千秋の思いで暮らす。
しかし本書で何も起きない訳がない。いや、何も起きなかった。花火大会に神鷺は現れなかった…。彼の連絡先も知らないので事情を聞くことも出来ない小春は学校に昼集合というアバウトな待ち合わせから花火大会終了まで その場に立ち続けた。浮かれる自分を制しようと最悪の想像をしていた小春でも想像できなかったパターンに突入する。
ネガティブ思考に陥り、約束を破ることが神鷺の答えなのではと考え始める小春。そこにナンパ男(のような中学時代の元カレと言えなくもない人)が登場する。自分を好いてくれた梗のように寂しさを埋めてくれる人と言えよう。それでも小春は自分が見てきた神鷺のことを信じ、それを宣言することで神鷺が召喚される。
このナンパ男には もう一つ役割があって、彼は通学電車内で神鷺に憧れていたという設定で急に告白をする。神鷺は いつものように固有スキル「微笑みの処刑台(ギロチン)」を発動させるけれど、それに加えて自分には今 好きな人がいると相手に伝える。綾に失恋し恋心を消滅させた神鷺の好きな人は自分しかいないと小春は それだけで胸キュンする。
遅刻の理由は義姉・綾(あや)の出産だった。神鷺が準備万端で小春に会いに出かけようとした時、綾の陣痛が始まり、家族が誰も対応できなかったため神鷺が出産までの数時間 付き添うことになった。この遅刻で神鷺は小春と連絡先を交換していなかったことを反省し、綾と姪っ子の写真を送るために小春に連絡先を教える。
念願の連絡先交換に小春のテンションは爆上がりし、ずっと告白しなかった欲求不満を解消するかのように告白を連発する。それに呆れながらも神鷺は一週間後の仕切り直しを提案する。
その一週間後という指定は綾が退院する日で、神鷺は小春と姪っ子を対面させようと考えていた。場所は神鷺の家。小春は神鷺の家の住所、そして洋菓子店を経営しているという情報の洪水に溺れる。ちなみに次男の神鷺は、兄がなっていることもありパティシエになるつもりはない。一週間後は洋菓子店の定休日でもあり、小春は おそらく神鷺の家族と会うことになる。その想像と入念な準備をしながら一週間を過ごす。
神鷺家は一族の突然変異である次男を溺愛する変態一家だった。生まれた時から美形で家族を驚かせた神鷺は そのまま家宝に認定される。そのメンタルは小春の波長と共鳴するものがあり、小春は実家のような安心感を抱く。家族は甘やかして育てた次男の性格を心配するが、小春は そんな家族に囲まれたから神鷺の人間性の温かさがあると全肯定する。これによって小春は神鷺家に温かく迎えられる。


小春は この日のために自分たちの馴れ初めを紹介する映像を、この一週間で周囲を巻き込みながら作成していた。この時点では まだ彼女でもないのに思い上がった行動である…。この映像で小春は自分以外にも神鷺が どれだけ周囲から愛されているかを盛り込む。この皆さんからの告白は結構 感動するんだけど、メロディ先輩の口調がカタカナ混じりで表記されているのは ちょっと差別的にも感じる。作者の中でメロディの設定が どうなっているのかは分からないけれど、異国の血が入っているからといって全員が たどたどしい日本語になる訳ではない。キャラデザの参考にした芸能人の発言をテロップでカタカナで表記するようなテレビ局があったら問題になるだろう。
最後は小春。てっきり家族の前で見せる映像では自重するのかと思ったらしない。大型ビジョンで告白した人が そんな気遣いはしないか(笑)映像の後、小春は後回しになっていた自己紹介を映像に号泣する神鷺家の人々にする。自分は将来的に神鷺の彼女になる、と言いたかった小春だったけど神鷺は それを言わせない。なぜなら小春は もう彼女だから。神鷺の返答は思ってもいないタイミングで起きた。神鷺の素直で誠実な宣言は感動した。こういう場面の作り方が上手いなぁ、とセンスを感じる。
信じられない展開にキャパオーバーの小春は発熱する。両想い直後に緊急風邪回である。フラフラの小春を神鷺は自分の部屋に隔離してベッドを使わせる。その夢のような状況に小春は また頭が追いつかない。
でも小春は冷静に神鷺から まだ好きだと言ってもらっていないことを指摘する。神鷺は なかなか その言葉を発さないけれど照れながらも自分の小春への好意を認める。両想いと交際を神鷺が認めてくれたけど、小春の告白は これからも続く。神鷺家の人々からも祝福されるけれど、家宝の様々な表情を見たい変態家族がパパラッチ化する予感がする。
小春は2学期の開始日に映像に協力してくれた人を中心に10年後の結婚式の招待状を下駄箱に配り回る。それによって2人は晴れて公認カップルとなる。これ以降、女性ライバルが登場しないのは小春が先手を打ってマウンティングを かました効果もあるのかもしれない。両想い・交際後も小春のパワーは衰えず、神鷺は こういう辱めにも慣れていかなければ いけないようだ。それでも言い合いながらも神鷺は初めての彼女を大事にする。そういう神鷺の優しさに触れる度、小春は幸せを感じる。
9月4日は小春の誕生日。そこで神鷺は小春の家に行き、彼女を育てた母親と会うことを望む。それで どれだけ自分が大切にされているかを実感できて小春は感動する。小春は既に自分たちの交際のことも話しており母親に予定を聞く。けれど約束の日に何かが起こるのは もはや お約束のようで今回の対面も一筋縄ではいかない。
