
慎本 真(しんもと しん)
先輩! 今から告ります!(せんぱい! いまからこくります!)
第02巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★☆(7点)
【明日も明後日も、告白します!】何度フラれてもあきらめない“恋愛ゾンビ”女子・小春。大好きな神鷺先輩と、体育倉庫で奇跡的に超良い雰囲気に!しかも…そのまま体育倉庫に閉じ込められちゃった!周りに人はゼロ。これってもしかして…密室で朝まで二人きり?寒い体育倉庫。震える小春に、先輩が取った行動とは――!?ますます爆笑&キュンの嵐♪すべての片思い女子におくる、新恋愛バイブル『告りま』第2巻!
簡潔完結感想文
- 好きな人の前で漏らす黒歴「死」が目前に迫り小春が社会的ご臨終間際の告白をする。
- 神鷺が好きな綾から見ても、小春を好きな梗から見ても、神鷺は もう変わり始めている。
- 尻込みから脱したはずの俺の尻込みを蹴ってくれるのは お前の嘘偽りのない全力の告白。
誰の告白も成功していないのに清々しい青春感が漂う 2巻。
『2巻』の小春(こはる)の告白は2回だけ(多分)。告白ペースは『1巻』と比べてガクンと落ちる。それは小春が今、告白しても神鷺(かんざき)には届かないことを承知しているからだろう。しかも悪ふざけ半分の1回目はコント的に伝えて、2回目の告白は神鷺に間接的に届けただけ。小春の告白は実質1回。でも後者の告白は神鷺にとってターニングポイントになる告白となり、彼にとって忘れられない恥ずかしさと嬉しさの入り混じるものとなった。
小春の2回目の告白は神鷺が女性・綾(あや)にする最初の告白と同日に起こる。この日、神鷺は人に自分の本当の想いを伝える難しさ照れくささを知り、自分の弱さを知った。弱いから逃げ出したくなり、現状を維持し、彼もまた成仏できない想いを抱える「恋愛ゾンビ」になるところだった。しかし、そこに小春の後押しが作用して、神鷺は初告白を成功させ、そして恋心が消滅する体験をする。
神鷺が告白を経験すること、自分の想いが相手に受け入れられないことを経験して、彼は小春の強さを知った。小春は神鷺が綾にフラれることで自分の付け入る隙があると考えるのではなく、ただ純粋に神鷺の中に生まれた恋心が綾に知られることなく無意味なものとして強引に封をさせられることを避けたかった。そんな小春の純粋な願いが、神鷺に行動を促し、告白を完遂させた。そして この告白を通して神鷺は また小春への想いを積み上がらせていく。情けは人の為ならず方式で利他的でありながら利益が還元されるサイクルが成立しているのが本当に素晴らしい。


小春は めげない猪突猛進キャラクタながらも聡明さを兼ね備えており、ちゃんと神鷺の心の機微を理解している。自分の気持ちを押し付けるばかりではなく、猪突猛進で神鷺の心にヒビを入れて、彼の事情を理解してからは、彼の気持ちを優先する。揺れ動く神鷺の心のラインを ちゃんと理解している点が読んでいて気持ち良い。
だから告白の回数も自然に減るし、それでいて先輩のビビりを予感して先回りしているから抜群のタイミングで告白を準備する。神鷺は そういう小春に感謝し、勝てないことを知っているから先輩として意地を張ってしまうのではないか。そして今回、神鷺の初恋が消滅することで彼が小春を拒否する建前も消失した。ここから神鷺が どう小春を受け入れるのか、それとも やっぱり見栄を張って自分が改めて告白する勇気が湧かないのか、神鷺の次の一手に注目が集まる。
小春は神鷺のことを しっかり見ているけど、第三者が観察できる神鷺の自分への態度がトクベツであることを分かっていないのも良い。それを第三者に、特に綾に観察させて、綾が既に神鷺が変わってきており、自分が彼をフッても彼を(酷く)傷つけないと先に理解しているのも良い。こういう人の心の流れとか順番とか、どうして こうも上手く描ける人がいるのだろうか。少女漫画濃度の高い作家さんが上手く感情を描けなかったりするのに、軽快な笑いの要素を入れつつ、ちゃんと流れをコントロールしている人を見ると才能、というか頭の良さという言葉が頭をよぎる。作者は長く読者に支持され、長く活躍されるのだろうな、と私にも分かる。
それにしてもページ数が少ない。2010年以前の作品だと1巻200ページだったけど、段々と180ページ前後に減った。これまで160ページ台は見たことがあるけれど150ページ台は初めてかもしれない。作者の作品は内容が しっかりしているし、単行本化の作業でカバー下なども充実しているからいいけど、スッカスカの内容で150ページで、しかも ちょっとお高いB6判だったりしたら目も当てられない。低年齢向けの「なかよし」連載作品なのに この値段だと お小遣いが吹っ飛んでしまうだろうに、なぜ このサイズなのだろうか。
引き続き体育倉庫に閉じ込められた2人。この1日の出来事で本書の半分が割かれる。小春が神鷺の恋心を救ったことで彼の心が揺らいでおり、本来なら良い雰囲気になるところなのだけど、密室でも2人は言い合いを続ける。小春は遠慮がないから、このまま神鷺が兄嫁・綾(あや)に告白できなかったら未練となり、それが大きく育って いつまでも綾への気持ちは消滅しないと断言する。今更の告白は冷静に見て誰も得をしない。でも伝えなければ終わらないこともある。
神鷺が小春の意見を熟考すると保留にしたところで ようやく閉じ込めイベントが始まり、薄着の小春に神鷺が自分のブレザーを共有することで距離が近づく。小春も こういう本気で男女の空気が流れる時は大人しくなってしまう。連載1回分で告白しなかったのは初めてだろうか。


密着により身体は温まったけれど次は尿意との戦いになり、小春は自分が社会的に死ぬ前に神鷺へ告白して息絶える。神鷺は小春をイジる準備をしながらも、彼女の限界を見極め、体育倉庫を壊す動きを見せる。こういう時に無茶をしてでも助けようとする男気に小春はまた射抜かれてしまう。反対に小春は、自分が助かっても神鷺が怪我をするリスクがあるなら無茶を止めようとする。相手のことを優先できる素敵な人たちなのだ。
身動きが取れなくなった2人に倉庫の外から声がして、やがて扉が開く。2人を助けに来たのは義弟・神鷺が帰宅しないことを心配した綾だった。ここで小春は実物の綾と初めて出会う。神鷺のことを心配して助けに来るのがなぜ、両親や兄ではなく身重の綾なのか、という疑問が頭を占めるけど、神鷺兄は なぜか空港まで弟を捜索しているから という設定。そして こうでもしないと綾が小春の前に出てくることは出来ないのだろう。神鷺が小春のストーカー化を心配して家に近づけないし。
綾との挨拶と交流で小春は間接的に神鷺が綾の教えを実践していることを伝える。そして自分が彼に告白し続けていることも。そして神鷺が自分の告白を断る理由も匂わせるが、その役目は神鷺にバトンタッチする。これは小春の日頃の復讐らしい。弱みを見せたらイジられ続ける迷惑な関係性だ。
小春は神鷺の兄に車で送ってもらう予定だったけれど、その前に小春を心配した幼なじみ・梗(こう)が登場し、小春を家に送り届ける。これは神鷺兄の登場は まだ早いからだろう。今回、小春が会うのは綾だけ。綾は小春と一緒にいる神鷺を見て、彼が小春の前では素でいられることを認めたに違いない。それが客観的な神鷺の変化だ。
そして梗もまた小春といる時の神鷺の表情に優しさや愛しさが含まれていることを認めていた。小春にとって綾が好きな神鷺に告白し続ける不毛な日々かもしれないが、実は もう関係性は変わり始めている。それは読者の希望にもなる。
小春に背中を押される形になって神鷺は週末に綾と2人で出掛け、そこで想いを告げることにする。それを小春に報告しつつ、小春が余計なことをしないように釘を刺す。だから今回、小春が出来るのはバックアップと彼の戻りを待つことだけ。神鷺が傷心することは決められているから、小春は彼のそばにいたい。神鷺は それを許可して、現実逃避に一緒に手芸をすることを約束する。
当日、小春は神鷺の帰りを待つ落ち着かない心境を手芸で紛らわす。そして この日までに自分で出来ることはした。
神鷺は告白する前に、綾に自分との出会いを肯定してもらい満足しかける。綾と初めて出掛けて買い物をするほど関係性が良好な義姉弟である。だから神鷺は告白を自分の胸にしまい、現状を優先しようとする。
そこに思わぬ形で小春からのアシストが舞い降りる。イベント会社を経営している元女優の母は小春の告白のバリエーションを増やすのに一役買っている。小春は反則スレスレの手段で神鷺の恋心が真っ直ぐで正しいものだということを彼に伝える。誰の中にもある人を好きになる気持ちは純粋なもので、小春の神鷺への気持ちも、神鷺の綾への気持ちも根本的に同じものである。
神鷺は ずっと言えなかった想いを伝える。そして想いを伝えた瞬間から その想いは消失していく。これは神鷺が けり をつけるための告白。本当は綾が兄と幸せになるたびに、神鷺の気持ちは変容していた。小春に一定の踏ん切りが付いていると指摘されても95%残っていた気持ちだけど、その気持ちも本当は種類が変わっていたのだろう。そして神鷺の告白は綾への告白ではなく小春への感謝に変容していく。
綾にとって神鷺の気持ちは戸惑うものだったけれど、人の想いに どう対処していいか分からなかった神鷺の成長を感じられる出来事になった。だから綾は笑顔で神鷺の想いを断る。これで2人は本当に家族になれた。
友人から神鷺の目撃情報が送られた小春は神鷺に指定された場所で待ち続けることが出来ず、思わず彼を迎えに行く。捜しても見つからない神鷺だったが、綾と別れた彼の方が小春を発見し、2人きりになれる場所に小春を連れていき、自分の恋を終わらせるキッカケを作った小春に感謝する。この時の神鷺は小春への感謝と愛情が募っているからスキンシップモードである。
