
山田 デイジー(やまだ デイジー)
恋するふたごとメガネのブルー(こいするふたごとメガネのブルー)
第05巻評価:★☆(3点)
総合評価:★★☆(5点)
ふたごの姉・ももの恋を応援するって決めたさくら。でも、自分もフジタのことを好きだと気づいてしまう。あふれだす想いをかくしきれないさくらは、ついにフジタにも、ももにも告白してしまう! フジタにようやく返事をもらえたさくらだけど、気持ちを受け取ってはもらえず…。ももに大反対されながらもあきらめるために有永(ありなが)の“ホントの彼女”になることを決めてしまう。だけど思い出すのは、フジタのことばかりで……!?
簡潔完結感想文
- 失恋を忘れるために、新しい恋を模索するヒロイン。さくら って恋愛脳だっけ??
- きちんと時機を見計らって行動する有永に対して、空気の読めない藤田の勝手さ。
- 自分の大切な3人の人を全員一度 傷つけた中途半端ヒーローが幸せになってもねぇ…。
双子の姉は一途で、妹はビッチでした という結論? の 最終5巻。
凄い。恋に破れた側の2人は好きになれるけど、恋が成就した側の2人を ちっとも好きになれない。少女漫画で こんなに祝福したくない恋も珍しいのに、作中の2人は祝福を受けて、そして自分にとって大事な人を誰もなくさないというヒロイン補正が働いていることに納得がいかない。
連載 全20回中19回で読者アンケート1位を獲得したという輝かしい実績の割に、打ち切りだったのではないか と思うぐらい説明が足りない。私は動かなかった恋愛が動く理由が ちゃんと用意されている作品が好きだ。その理由にトラウマがあってもいい。でも本書は その理由が全く見当たらない。特に藤田の、自分が恋をしない理由として挙げていた受験に対する考え方の変化が全く描かれないまま。そして さくら の成長も中途半端。結局、彼女は藤田や姉に負けないだけの夢を抱けないまま終わっている。2人とも自分の掲げた目標を達成しないまま恋愛成就してもねぇ…。
最終回におけるヒロインたち2人の行動は朝令暮改そのもの。ヒロインの さくら は自分を好きでいてくれる有永(ありなが)との交際を決めたはずなのに、好きだった男に告白されたら秒で心変わりをする。1日の内に2回、クラス内で交際相手が変わるなんてビッチでしかない。ヒロインは恋愛脳で自分のことしか考えられない人間でした、という結論が炸裂している作品で幻滅した。
そしてヒーローであるはずの藤田(ふじた)は受験を理由に恋愛をしないはずだったのに、その方針を あっという間に、そして理由もなく転換する。そこが本当に解せない。なぜ作者は藤田に恋愛を解禁する理由を作らなかったのだろうか。藤田がしたことと言えば、さくら の告白に応えないということだけ。作者の考えでは直接、さくら を振ったことはないからヒーローとしてセーフなのだろうか。
私が藤田に対して思うのは、追われる恋よりも追う恋をしたいという男性の本能や危機感を刺激されてから初めて動くような愚鈍な男だということだけ。しかも鈍感な藤田が自分の感情を理解できるように お膳立てをしてくれたのは有永だろう。
さくら は双子の姉の もも、そして藤田は有永というライバルがいて初めて動き出す。本書は近すぎて見えなかった恋を描いたつもりなのかもしれないが、同時に他人のものが欲しくなる強欲な男女の物語に見えてしまうのが難点だ。
自分の動き出すタイミングと引き際を広い視野で考えられる有永は もちろん、最後まで一途さを貫いた もも も良かった。2人の素晴らしいライバルの動きに対して、さくら と藤田の体たらくは悪目立ちする。


物語序盤の設定の秀逸さや、双子の姉と同じ人を好きになってしまった辛さ、そして もも が振られることは間接的に さくら の希望を打ち砕くなど、低年齢向けの掲載誌「なかよし」とは思えない充実した内容だったのに、結果的に「なかよし」的な、伏線回収など不要とばかりの力業で まとめに入った その落差が落胆を大きくした。
終盤は さくら が恋愛の痛みを恋愛で癒そうとする恋愛脳丸出しの人間に成り下がっているのには違和感を覚えた。結果さくら は、有永も そして自分の尊厳も傷つけて読者に共感されないビッチに成り下がる。
そして ただでさえ煮え切らない藤田は、大切なはずの3人を鈍感や勇気のなさで傷つけて回っただけである。さくら よりも この男が友情や人望を失わないことが受け入れられない。もも を振ったのは結局 最初から恋愛対象外だったからだし、何度も念を押した有永も彼の幸せの絶頂で不幸にしている。
本書は鈍感さという凶器(もしくは狂気)を描きたかったのだろうか…。
告白の返答を望む さくら に藤田は有永を勧める。藤田が誰とも付き合う気はないことを理解しているはずの さくら だったが、改めて失恋を痛感する。さくら も もも と同じように藤田との時間の中で可能性を見い出していた。藤田は自分だけに優しい、そう女性に勘違いさせる罪な人間である。もも が告白に対して藤田から貰った ありがとう や うれしい という気持ちさえ貰えないことに さくら は落ち込む。
さくら の痛みを察した有永は授業をサボって さくら が話し出すまで黙って横にいてくれる。改めて失恋した さくら に有永は自分との交際を再提案する。ここから さくら が有永の彼女になって彼を好きになるよう努める流れが分からない。さくら の希望は誰かの彼女になることではないだろう。
有永は どんな自分も受け入れてくれる。そうして2人はクラス内で交際を公表する(なんで?)。これは藤田へ見せつけるための有永の希望なんだろうけど、有永に安らぎを覚えているはずの さくら の頑張りは痛々しく感じる。
それでも有永から与えられる感情は藤田がくれなかったもの、と さくら は考えてしまう。そうして涙する さくら の前に藤田が現れ、泣いている彼女を心配する。ただ今は藤田の優しさは痛みになる。だから さくら は、好きじゃないなら せめて優しくしないでと言うと、藤田は好きだと答える。そこに有永から声を掛けられ、さくら は藤田の言葉を また勘違いさせる言葉だと冗談だと流す。そう装っても整理しきれない さくら の心。
藤田は本気で さくら のことが好きだと思い始めていた。相手への感情に蓋をしようとする2人。その平常心を装いつつ いつもと違う2人の様子を客観的に観察するのが有永だった。有永は それでも さくら が自分のことを きちんと内面まで認めてくれて彼女への好意が いよいよ本気の域に達する。だから有永は藤田が さくら に特別な感情を抱き始めたと知っても、おそらく当初の予定のように身を引かない。ここからが本気の三角関係と言える。


しかし さくら は有永の本気の気持ちに対して、また藤田の言動で勘違いしないように、藤田の呪縛から逃れるように有永との道を選ぶ。
このところ蚊帳の外にいた もも は塾での藤田の様子に異変を感じ、気に掛けると藤田が勉強以外のことに気をとられていたことを知る。それが藤田の心の変化だと見抜いた もも は さくら に藤田への可能性を話す。だが さくら は有永へ気持ちを切り替えようとしているところ。だから もも の言葉を精一杯 拒絶するのだが、もも は振られたから好きでいる意味がないという さくら の姿勢に疑問を呈する。
さくら と言い争いになってしまった もも は家を飛び出す。そこで藤田を呼び出し、彼に もう一度 自分の好意を伝える。藤田が誰を好きであろうとも、例え相手が実の妹でも この気持ちは もも は負けないと胸を張れる。だから かつて さくら がしたように藤田の頬にキスをして、彼の気持ちを自分に向かせるために交際を提案する。その気持ちを藤田は受け取れない。それは藤田の中で さくら だけが特別な女の子だから。藤田は気づかなかっただけで ずっと さくら が好きだったと言うが、その鈍感さで周囲にいる大切な3人の人を傷つけている。
さくら は自分の考えに固執して有永と本当に交際する方向に動く。そして もも が藤田に送られて帰宅したのを目撃し、2人が上手くいったと勘違いする。
こうして有永は再度 教室内で さくら との本気の交際を発表する。しかし さくら は有永からキスをされそうになって藤田を思い出し有永を拒絶してしまう。
そこへ藤田が乱入して告白。その遅い告白に さくら が鉄拳制裁を加えたことから言い争いになる いつも通り仲の良い2人を見て、有永は身を引く。そこからは祝福の嵐。1日で2回 交際報告をする ただのビッチの さくら がクラスメイトから祝われ、事情を話すと もも からも許され祝福される。有永も いい人ポジションであり続け、友情は続くという さくら たちのためのハッピーエンドは甘すぎるのに苦い。
