
優木 なち(ゆうき なち)
僕の家においで(ぼくのいえにおいで)
第02巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★(4点)
(国宝級美男子のご主人様+隣の席の純情男子)×同居で、美玲のドキドキは、さらに上昇中!! ちょー貧乏ネガティブ純情少女の美玲は、なぜか国宝級美男子の真野さんの家に、家政婦として同居することに! 高校に入学して早々、美玲は、隣の席の男子・鈴間くんに、自分と同じニオイを感じて…!? ますます盛り上がる、ドキドキの同居ストーリー。
簡潔完結感想文
- 高校入学1日目で男子生徒と連絡先を交換し、2日目に同居を開始(家主に断りを入れず…)。
- ミスターキャンパスや御曹司、ヒーローの設定は後出しで追加可能。格差は あるほど良い!?
- 両想い後に3人目の同居人が登場するより、両想い前に登場した方がいいのは分かるけど…。
私の(居候している)家においで、の 2巻。
男女の同居モノの大ヒット作は渡辺あゆ さん『L♥DK』で異論はないと思うけれど、その『L♥DK』が16巻、全体の2/3ほどのタイミングで男女3人の同居を開始したのに対し、本書は早くも『2巻』から男女3人の生活が始まる。しかも斬新なのは1mmも他者を家に呼び込む権利の無い家政婦の美玲(みれい)が勝手にクラスメイトの男子生徒・鈴間(すずま)を、家主である真野(まの)に事後承諾で連れてきているところだろう。真野が美玲を家に呼び込んだのは出会って3日目だったように思うが、美玲は出会って2日目の異性を(他人様の)家に呼び込む。どいつもこいつも頭がおかしいのか…。
これは『L♥DK』では同居する2人が同じ学校の同じ学年の生徒なのに対して、本書は2人に年齢差があり自宅以外に一緒の空間にいられないことに起因しているだろう。だから本書は『L♥DK』よりも家が主役のワンシチュエーションコメディと言える。舞台を移動させることが出来ないから、キャラを千客万来させるしかない。それが本書の方針なのだろう。美玲の越権行為は 舞台を固定した皺寄せとフォローすることも出来る。
そして鈴間という当て馬がいることで真野の美玲の気持ちが強くなっていく。それと同時に鈴間の存在は物語に変化を与えつつ、お邪魔虫として同居生活の安全装置の役割を果たしているように思う。同居モノの3人同居のタイミングにしては早いけれど、3人同居が消化試合になる前に投入したのは良い采配だと思う。美玲を鈴間のことで頭をいっぱいにさせて、真野との進展を阻止するのが3人同居の作者側の狙いだろうか。
ちなみに新キャラの鈴間は、描き分けが出来ていないので ただの黒い真野である。「国宝級」という冠が付く真野と、付かない鈴間の違いが私には分からない。美玲は彼らの背後にある資産の大きさを嗅ぎ分けて国宝か どうか評価しているのではなかろうか…。


強引な展開は作品の方針のためと理解できても、一つ『2巻』で最も理解できなかったのは真野の外出で鈴間と2人きりの夜を過ごすことになった美玲の言葉。危険な状況を過剰に心配する真野だが、鈍感な美玲は真野の心配が鈴間が泥棒することだと勘違いする。ここは自己評価が低い美玲は真野からの好意や心配、独占欲を少しも理解していないという場面だ。
けれど鈴間を信用していないのは美玲の方ではないか…。本当に美玲が純粋ならば こんな発想にはならない。美玲は貧乏人は困窮から悪事に手を染めると思っており、それを鈴間にも適用している。鈴間からしたら こんな屈辱的な言葉はない。特に美玲は自分で鈴間を この家に連れて来たのだ。美玲だけは少しも鈴間を疑ってはいけない。これは美玲が嫌いになるレベルのセリフで、なぜ作者は こんなことを言わせたのか本当に疑問。鈴間に対しては勿論、真野がそう思ったのかもしれないと美玲が想像することも失礼すぎる。
自分を へりくだるネガティブは いくら発動しても いいけれど、他人を悪く言うようなネガティブは ただの悪意だ。掲載誌「りぼん」らしく、ヒロインの美玲は恋愛初心者で性知識もなくて…、という純真キャラを わざとらしく作り上げている一方で、とんでもない腹黒発言をさせている。このような ちょっとずつ人を不快にする要素が作品に潜んでいる。
また『2巻』以降は、2~3巻分だけ登場する男女それぞれの期間限定ライバルがゲストキャラとして大暴れするエピソードの連続が始まる。2人が両想いになるまでは そのキャラの登場に意味があって、今回の鈴間は早くも真野の独占状態が崩れて、真野の嫉妬を引き出している。だが両想いになっても結婚しても本書はゲストキャラの基本パターンが変わらない。2人は いつまでもラブラブだけど、読者は作品のマンネリ具合に早々に倦怠期が訪れる。
そして ここから ずっーーーーと、以後24巻分 真野からの注意は美玲が守れない前振りとなる。美玲は自分に価値がないと思っているから隙が生まれるのは分かるけれど、自分から進んで愚行を重ねるような人だから好きになれない。純真とか無垢とかじゃなくて基本的に頭が悪いレベルなのだ。そこも不快。
真野のことを大好きなのは分かるけど、真野だったら どう思うかなど相手の立場に いつまで経っても立てないのが美玲、そして本書の成長の無さで辟易する要素である。
中学まで貧乏キャラだった美玲は、母から制服を、真野から携帯電話を譲り受け普通の高校生活を始める。
新天地は新キャラの登場のタイミングで、美玲の隣の席になった、美玲と同じネガティブ属性の男子生徒・鈴間 光輝(すずま こうき)が登場する。服装に違和感を覚えた鈴間を観察してみると、中学時代の自分と同じ墨で染めた靴下を履いていることを発見する。鈴間を呼び出して それがイジリの対象になると忠告したのだけど、結局 鈴間の靴下問題の顛末は描かれない。美玲が機転を利かせて鈴間のピンチを救ったことが好意のキッカケになるとかにすればいいのに…。
この時の鈴間との交流で描かれるのは、真野に厳重注意された異性との連絡先交換禁止を忘却して鈴間と急接近する美玲の おバカさ。無警戒で無防備だから男性と接近してしまうんです☆ 鈴間は靴下や制服を揃えられない経済状況で なぜ携帯電話を持っているのだろうか。連絡先を交換した鈴間という男性のことを真野が密かに知るための展開でしかない。
翌日になって美玲は真野との約束を守れなかったことを思い出し、鈴間からのメールを削除する。自分から連絡先交換を提案して、送られたメールを削除するって どれだけ自分勝手で、相手のことを思い遣らない行動か美玲は分かっていないだろう。
真野も自分の独占欲で美玲の行動を制限したのに、朝令暮改で言うことをコロコロ変える。真野は美玲の性格を既に熟知しているのだから、愚直に守ろうとすることも想像できるだろう。
そして よく分からない流れから真野は美玲を高校までバイクで送ることになる。それは真野と鈴間の接触のため。そして周囲の女子生徒に真野の地位を高めてもらうための展開。真野は大学ミスコン優勝者という箔が付く。この程度のローカルな情報をJKは市内新聞で知ったらしい。市内新聞 読んでるのかJKは。
そんな真野に大切にされる美玲という図式が完成。真野も美玲を家政婦として紹介し、鈴間を牽制する。出会って2日目の女性の雇い主だという男に威圧される鈴間の理不尽さよ…。
美玲の知らない真野情報は情報通のクラスメイトから もたらされる。真野は この1年間 告白を全部断っており、女性を絶対に家にいれないという。そんな状態の真野が美玲を家に入れる特殊性が嫉妬の対象にもなりかねないが、美玲がネガティブを全力で発揮して否定することで周囲の嫉妬は消える。そして とんとん拍子に友達が出来る。ただ この友達との友情エピソードなどはゼロ。全25巻中ずっと単なる友達という記号でしかない。
順調な高校生活を踏み出した美玲はポジティブになり鈴間にも積極的に声を掛ける。しかし あるメールを見た直後から鈴間が行方不明になり心配した美玲は真野との約束を反故にして、学校で聞いた住所を頼りに鈴間の捜索に出る。
連絡先の件もそうだけど、美玲は真野との約束を守ることが出来ない。2つの問題を抱えた時に どちらかにしか対処できない。それが問題を大きくする。
公園で鈴間を発見した美玲は彼の両親も首が回らなくなり夜逃げし、鈴間が家なき子になったことを知る。だから今度は美玲が「私の(居候している)家においで」と鈴間を誘う。
事前連絡もせず人を家に連れてきて、真野が断りづらい状況にしているのは天然という名の礼儀知らずである。真野は内心でどう思っているか分からないが鈴間の同居を了承する。それでいて鈴間の前で美玲へのセクハラを見せつける。相手に優位であることを見せつける真野も根性が悪い。だが逆に美玲が鈴間と交流している場面も見なくてはならない。人を呪わば穴二つ だ。
後になって美玲も自分の行動が越権行為だと ようやく気づくが、もう真野が鈴間を断ると悪い人に見える段階に入っている。


一人だけ年齢が上の真野は高校生たちのメンタルケアを試みる。自分で交流させておいて自分で嫉妬する面倒臭い真野だけど、結果的に真野の思い遣りが美玲に筒抜けになることで美玲からの評価が上がる。
ある日、真野が家を空けなくてはならなくなり家には高校生の男女2人きりなる。この夜、以前の美玲の裸に続いて鈴間も肌を見せる。意外にも真野の裸を見るようなハプニングはない。美玲は鈴間のために自室で新聞紙で作ったベッドを提供。それを使う鈴間と同じ部屋で寝る。鈴間を泥棒扱いするけれど異性としては見ていないから平気なようだ。
しかし鈴間は平気ではなく美玲への想いを溢れさせる。施しを受けた側が施す側を好きになるのが本書のルールなのだろうか。
