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少女漫画と小説の感想ブログです

Teen Age (双葉文庫)

Teen Age (双葉文庫)

十代は、可笑しいことがいっぱいあった。そして、ときどき焦って、ふと痛みも知った。誰もが胸の奥にしまってある、たいせつな通過点。今、わたしたちの作家が描く、ティーンエイジ小説の最高傑作アンソロジー
友情や恋に悩み、将来への漠然とした不安に揺れ動く少年少女の姿を、読者の熱い支持を得ている七人の女性作家が描く。いま十代、そして十代を通り過ぎたすべてのひとに贈る珠玉のアンソロジー。オール・オリジナル作。


ほとんど瀬尾まいこさん目当てで読み始めた本。けれど他の作品もなかなかに楽しめた。内容は題名の通り十代小説。十代は不器用で苛立っていて乱暴なんだけど、同時に純粋で繊細でもある。この奇妙なアンバランスさが十代の魅力だと思う。後半の性質2つは大人になると、なぜか失くしてしまうことが多い。どの作品も約30〜40ページの文章にそういう十代の性質を見事に描いた作品たちだった。ページ数・十代という年齢制約の中でも、作品ごとに違った個性があり、違った世界があった。企画モノの面白さを満喫しました。読みたくなるような人選も良い。
個人的に好きだったのは、やっぱり瀬尾さんの「狐フェスティバル」。それと椰月美智子さんの「イモリのしっぽ」。椰月さんは初めて読む作家さんだったけれど、他の作品も読んでみたいと思う作品だった。基本的に私は言葉遣いの乱暴な登場人物・作品が嫌いなのでほっこり落ち着いた上記の二編が好みでした。

  • 「神様のタクシー(角田光代)」…誉め言葉として、角田さんって本当に嫌な人間・嫌な人間関係を描くのが上手いと思う。読むと身体を抉られるようで毎回、痛い。
  • 「狐フェスティバル(瀬尾まいこ)」…私の好みとして、純粋で、何気ない日常を描いた作品が好きなので、この作品はとても良かった。主人公は少女なのが決まりなのかと思っていたので、純朴少年が主人公なのは良い意味で裏切られた。
  • 「春休みの乱(藤野千夜)」…最初から最後まで、よく分からなかった。何が書きたかったのか、あの能力に何の意味があったのか。最後の川上さんの作品もそうだが、不思議ちゃん系の話は、消化しにくくて苦手です。
  • 「イモリのしっぽ(椰月美智子)」…一番好き。二人の距離はつかず離れず。だけど、その空気は冬のストーブみたいにほんのり暖かい、温かい。何でもないことなのに、とても幸せになれる文章。私の理想の十代ってこんな感じ。
  • ハバナとピアノ、光の尾(野中ともそ)」…いきなり舞台は外国、キューバの男の子の話。これこそ映画のような作品だと思った。光の量が多く感じられる文章。
  • 「Inside(島本理生)」…初・島本さんの文章は、かなり好きだと思った。とりあえず父、最悪。我慢して神経性胃炎になるような、ひりひり痛い作品だった。
  • 「一実ちゃんのこと(川上弘美)」…不思議ちゃん系のお話。よく分からないけど、感触は良かった。これが川上ワールドなのかな?と思う。

Teen Age   読了日:2006年05月19日