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幸福な食卓 (講談社文庫)

幸福な食卓 (講談社文庫)

父さんが自殺を失敗したときも、母さんが家を出たときも、朝は普通にやってきた。そして、その悲しい出来事のあとも……。泣きたくなるのはなぜだろう?
「父さんは今日で父さんをやめようと思う」。…父さんの衝撃的な一言で始まる本作品は、いま最注目の新鋭作家・瀬尾まいこ氏による4作目となる長編小説であるとともに、主人公・佐和子の中学〜高校時代にかけての4編の連作による構成となっています。 佐和子の“少しヘン”な家族(父さんをやめた父さん、家出中なのに料理を持ち寄りにくる母さん、元天才児の兄・直ちゃん)、そして佐和子のボーイフレンド、兄のガールフレンドを中心に、あたたかくて懐かしくてちょっと笑える、それなのに泣けてくる、“優しすぎる”ストーリーが繰り広げられていきます。


うーん……。私の期待が高すぎたのか、読み方が悪かったのか…。いや、やっぱり展開は狡く、文章も瀬尾さんらしいキラキラと光る名文がなかった。平易な文章でスルッと読めるけれど、その分スルッと抜けていく。そして物語への疑問だけが残る。確かにあの展開は胸を打つし、泣く事だって出来る。だけど、あれは用意された感動だ。私は、瀬尾さんに独特の温かい文体で、何気ないことをキラキラに変えてほしかった。私はあの展開に作者という魔物を見た気がした。
確かに、出だしはインパクト大。でも、いかにも練られたセリフって感じもする。そう、低評価の一番の原因は現実感の無さだろう。全員が全員、生き方がわざとらしいのだ。全員が変人であるから物語が散漫になって焦点が合わない。誰の思考も共感できず、誰にも感情移入できなかった。直ちゃんの天才って設定はどこに活きているのだろう。どっちかって言うとアホの子にも見えるのだが…。
そして、あの展開…。あぁ、やってしまった、という感じ。今、一番読みたくないパターン。確かに思いもしない展開だったが、思いもしなかっただけに嫌だった。
学校・教室のシーンは現役教師らしい描写だと思う。クラスの不文律の掟や空気の伝達は確かに存在する。なんとなくの空気、でクラスはまとまっているものだ。同じ思春期の女の子の小説で連想したのは、森絵都さんの「永遠の出口」。

  • 「幸福な朝食」…思い返してみると、戸板くんが一番素敵だったかも。この家族は虫眼鏡のような家族だと思った。近すぎても遠すぎてもボンヤリと焦点が合わない。適度な距離を保つとクリアになる関係。一編目は良かったのだけど…。
  • 「バイブル」…佐和子と直ちゃんのそれぞれの恋愛話。なんで大浦くんが佐和子をライバル視したのか書かれていない。直ちゃんの方はともかく、佐和子の悩みには大いに共感。また「誠心会」の場面は、ズレた会話の面白さを感じた。
  • 「救世主」…直ちゃん覚醒と憔悴の巻。いつの間にかに高校生。速く読んだせいか佐和子の成長に頭がついていかなかった。毎年の父さんの大学受験の結果はどうかなぁ…。どのエピソードも触りだけで終わってしまうのが残念。吉田くんとか。
  • 「プレゼントの効用」…最悪。もし万が一、泣かすために作った小説ならば許せません。泣かすためでなくても不必要な展開だ。佐和子ならば失わずとも大事な事を知っているはずでしょう?憤慨。佐和子が可哀相だ。これでは酷すぎる。

幸福な食卓こうふくなしょくたく   読了日:2006年05月12日