
優木 なち(ゆうき なち)
僕の家においで(ぼくのいえにおいで)
第04巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★(4点)
いよいよ積極的になる真野さん! 「こんなこと初めて!」の連続に美玲はどうなっちゃうの─!? 同居中のご主人様・真野さんに「これからは男として見てね」と言われてしまった美玲。さらに2人の距離を縮めようとデートをしようと言い出す真野さん!! 国宝級男子のエスコートに何が起きてるのか分からない美玲はシンデレラのような心地で…!? 【同時収録】キミと溺れたい/僕の家においで おまけまんが「ご主人様のお誕生日前夜」
簡潔完結感想文
- 「家」の外の世界は人を値踏みする厳しい世界。国宝級に比べれば その辺の男は石ころ。
- 真野が見た目だけの国宝級クソバカと判明。高1が大学の勉強を教える「りぼん」的な謎展開。
- 今度こそ確実に真野から告白されるかも!という美玲の期待は ことごとく打ち砕かれる。
身体接触がセクハラになるかスキンシップになるかが恋の分かれ目、の 4巻。
ラストの衝撃展開のために話数と内容が調整されている気がしてならない。
『3巻』で美玲(みれい)が真野(まの)から告白されると思い込んでたのが思わぬ事実が語られたように、今回も両想い寸前で思わぬ方向性が用意されていた。基本ネガティブな美玲がポジティブになると不幸が待っているのかもしれない。何かを期待しただけで絶対に失敗するなんて不憫な運命だ。
そういえば ここまで3巻で2か月弱しか経過していないのに この『4巻』では3か月半が一気に経過している。期限が真野の誕生日だからこそラストの展開が起き得るということなのだろう。逆に真野の誕生日を雑に設定したから作中の時間を駆け足で進めることになったのかもしれない。


収録4話の内、最終話までの3話で疑似デート回、合コン回、勉強回という日常回の連続で美玲の真野への気持ちを確定させていく。…のが狙いなのだろうけど、これでは美玲の気持ちは最初から変わっていないのでは? と思う部分が多い。そもそも『3巻』の段階で美玲は真野からの告白≒自分たちの恋愛関係を意識しているのだから、それを『4巻』で「異性として考える」とプチリセットするのも おかしい。しかも その異性として考えることが明確に描かれていない。ちょっとずつ真野を意識していくことが前半3話の目的なのに、それが上手く描けていない。もっと信奉と好意の境界や気持ちの変化を上手に描くことが出来たのでは?と力不足を感じる部分が多かった。
せっかく美玲が真野を再発見することで、作品的にも真野に金持ち・イケメン以外の良さを描けるチャンスだったのに、それが上手く描けていない。結局 美玲は最初に自分を人間扱いしてくれた金持ち・イケメンの真野を特別視しているだけのように見える。完全に美玲に感情移入すれば真野も素敵に見えるのかもしれないが、客観的に見ると真野は自分の欲望や願望で美玲をコントロールしているようにも見える。「大人」として描かれるべき真野の子供っぽさが ずっと引っ掛かる。
今回のプチリセットで当て馬役の鈴間(すずま)の意義も失われた。美玲は鈴間という もう一人の異性と交流し告白されたから真野の特別性に気づいたのに、その内容は無かったことになる。同居人を求めていた真野が、鈴間という邪魔者の お陰で美玲に惹かれたことを明確にする意味はあったのか。こういう以前の話が それ以後に引き継がれないのは本書の大きな欠点だと思う。だから毎回 同じことが起こる。
また最も疑問だったのが勉強回。この回は色々ツッコミどころがあって、作者は大学の私見を完全に高校までのテストの延長線上と考えているようだ。しかも大学生の真野の試験勉強を高校1年生の美玲と鈴間が教えるという謎の展開。真野の通う大学は、高校1年生の内容も理解できない人が集まるレベルの低い学校なのか…。でも この後の設定では優秀な大学っぽい雰囲気だし、真野も賢い人間として描かれる。世界観や設定があやふやなまま その場のノリでエピソードを作っているのだろうか、という悪い意味での「りぼん」レベルの作品だ。真野は絶対 付属高校のある大学の内部進学組だと思っていたけど『5巻』の番外編で受験組だということが判明。必要がないと勉強しないダメなタイプの人間なのか。
真野が なぜ美玲と同居したか、の謎が解け2人の関係性は次の段階へと進展する。これまでの真野は美玲を この家に縛り付けるために契約を結んでいたが、ここからは同棲を念頭に美玲に自分を意識してもらうためのターンとなる。
そんな状況での お出掛け回の行き先はアウトレットモール。美玲が買い物をする お金がないことを知っているはずでは…。家から出ると世間の厳しい視線が待ち受けており、美玲は魔法が解けたように真野と不釣り合いの自分を痛感する。
美玲が ある服に魅了されていると知ると真野は試着を勧め、そして合計23,580円のコーディネイトを即 購入。これまでは金銭的な援助はなかったけれど、今は真野が美玲にしてあげたい気持ちが本物だから それが解禁されるのか。美玲は同性から見ても可愛い設定であることが判明している。でも悪意のある読み方としては自分の隣にいるには恥ずかしすぎる格好をしている美玲に それとなく衣装チェンジをさせているようにも見えるが…。
気を付けて描かれているのは美玲は物を買い与えてくれる真野が好きなのではない ということ。初めて会った時から真野は国宝級。その印象は少しも揺るがない。人は見た目が100%だという話にも取れる。
国宝級と崇め立てるからこそ異性としての視点で彼を見るのは難しく、美玲は猶予を貰う。期間は3か月後の真野の誕生日。それまでに美玲に振り向いてもらうのが真野の役目、それまでに心を決め返答するのが美玲の役目となる。
美玲は鈴間(すずま)という もう一人の男性を比較対象にしていたはずだが それは綺麗にリセットされる。そこでクラスメイトから合コンへの参加を求められる。美玲は合コンの知識が皆無という わざとらしい設定。
美玲にとっては合コン相手こそゴミクズ。真野に比べると ただの石で、真野だけに心が反応することを実感する。真野も過保護で美玲を監視。合コン相手が失礼なヤツで それを真野が制裁を加えるという安直な展開じゃなくて安心した。
夏休みに突入し、早々に宿題を終わらせた美玲は真野への返事を残すのみ。
しかし真野が大学のテストで0点を取り、合格点を取れなかったら追試と講習で夏休みが終わるピンチとなる。
美玲は相変わらず真野の気持ちを考えられず助っ人として鈴間を召喚するし、鈴間に2人の約束を全部 話している。そのことから派生して問題で真野との仲は険悪になってしまうのも自業自得か。一方で完全な真野の八つ当たりで彼の人間性を疑うエピソードでもある。初めての すれ違いを美怜側が歩み寄って仲直りしていることを描きたいのだろうか。あの美玲が自腹で仲直りグッズを用意しているのが事の重大さの表れなのか…。セクハラしたり交際決定後の即キスを求めたり真野は前のめりで とても年上に見えない。


約束の真野の誕生日は2人の交際記念日になるはずだったが、そうはいかない。美玲が真野から告白されると勘違いした『3巻』と同じく違う展開が待ち受ける。
前日から美玲は準備をし、真野の誕生日を祝う。美玲は夕食が「ししゃも一本」の貧乏家庭で育った割に手作りケーキが完璧に作れるなどスキルがチグハグ。美玲の計画が終わったら 真野は すぐにキスをしたくてたまらない。しかし その直前に この家に来訪者が…。
「キミと溺れたい」…
本編と無関係な読切短編。水野 海花(みずの うみか)は今年の夏こそ素敵な恋をゲットしたいと、泳げないのに出会い(ナンパ)スポットのレジャープール施設に繰り出す高校1年生。高校1年生で今年の夏こそ、ということは中学時代から肉食系だったのか。しかし泳げない海花の醜態は男性に受けず、同じくナンパ待ちの友達の不評を買う。選ぶフィールドが悪い。
単独行動をした海花が溺れているのをイケメン監視員・水城 豊(みずき ゆたか)が助ける。水城の提案で水泳の特訓をすることになった海花。水泳には海花のトラウマが詰まっているが、水城の指導で海花の水泳能力は向上。そこから交流を重ねた水城のバイト最終日、彼が事故に巻き込まれ…。
連載中の『僕の家においで』のフォーマットを そのまま夏仕様にしただけに見える短編。自虐的に言っているけど本当にネタの引き出しが少ない。残念ながら様々な所で作者の世界の狭さを感じる。そして作者は一種類の男性の顔しか描けないのだろうか。鈴間も含め全員が真野の血縁者と言われても納得してしまう。
「おまけまんが ご主人様のお誕生日前夜」…
11ページの豪華な描きおろし。それぞれキスを意識した前夜の様子が描かれる。愛情というより性欲を持て余す20歳の真野。本編の自分の気持ち悪い発言を反省しているけれど、この人は何度も暴走して失敗すると思う。
