《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

多大な愛情と奉仕の返礼は方言応援とマッサージとコーヒー粉。海老で鯛を釣ったぜ!

ポンコツ警察官は私に夢中(5) (Kissコミックス)
上野 はる菜(うえの はるな)
ポンコツ警察官は私に夢中(ポンコツけいさつかんはわたしにむちゅう)
第05巻評価:★★(4点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

好きかどうかはわからない。けど……失いたくない。愛が重めの警察男子とお付き合い中の椛。だけど段々と増えていく彼の重さに、この先、耐えていけるのか不安になり、彼と距離を置いて考え直すことに。そんな中、同郷の舞台俳優から再び告白されて…!? 椛はどんな未来を選ぶ…!? 警察男子の一途すぎる愛に困惑×ときめきの新感覚ラブ! 「好き」を超える最終巻!

簡潔完結感想文

  • 「姫対応」の記憶が愛情の天秤を傾ける要因。単に先に付き合った方を選んだだけ…??
  • 活動限界が近い2.5次元俳優よりも安定した収入の警察官で将来安泰。そんな視点はゼロ。
  • 自分から椛を誘わないけれど行きつけの喫茶店で偶然 会い続ける代永。日比谷2世爆誕!?

の男に99%惹かれていた自分は秘密にするオトナ女子の恋愛テseクニック、の 最終5巻。

まず全5巻の合計が800ページにも満たないことに驚く。本も薄いし内容も薄いし、ヒロインと違って読者のコスパは悪い!? などと思ってしまう。

そして少女漫画なんて そんなもの と言われそうだけど、信じられないぐらいヒロインに都合の良い世界が広がっている。以前も書いたけれど これなら高校生ヒロインの方が100倍頑張っていると思う。それぐらい本書のヒロイン・椛(もみじ)は成長することなく愛されヒロインであり続けた。

私が最も疑問に思い、残念に思う部分は日比谷(ひびや)と代永(よなが)の2人の男性から どちらかを選ぶ時の根拠の薄弱さ。日比谷と別れる決断をした椛は、日比谷の存在を失うことを恐れる。でも それって もし代永と先に付き合ったとしても思うことだよね、と思う。日比谷との交際の将来には ぼんやりとした不安の種があるけれど、それは日比谷と交流がゼロになる明確な恐怖よりも小さい。ただそれだけ。これからも付き合いながら違和感を覚えるだろうし、何度だって同じ思考に陥るだろう。単純に椛は日比谷の手厚い「姫対応」を失いたくなかっただけなんじゃないの、と冷ややかな言葉が浮かぶ。椛の出した結論は現実的で打算的な答えだと思うけれど、少女漫画で一番 美しい恋心に そのリアルは要らなかった。

リアルを追求するならば27歳の椛が結婚する相手として2人を見極めるとか、年収とか将来性とか色々と打算的に考えるべきところはあるのに、そこは無視する。ただただ2人の男性に言い寄られて選ぶのは自分というシチュエーションだけが提示される。代永は舞台俳優という職業の響きは格好良いけど、どうも実態は2.5次元俳優のようだ。掃いて捨てるほどいるイケメン俳優での寿命は近い。アラサーのリアル思考で その辺を分析して欲しかった。

椛が決意しても「タイトル詐欺になるので別れられません」と謎の力が働く

品として椛が狡いのは彼女は日比谷を切って代永を選ぼうとしていた事実を綺麗に忘れること。椛は日比谷に対して同じ「好き」を返せないことを自分の欠点だと思い、そこを日比谷に嫌われても仕方がないと思っている。でも少女漫画的には完全に代永に傾いていた気持ちの方が問題なんじゃないの?と思う。自分の中に確かにある代永への恋心を失うことへの恐怖は描かれないまま日比谷に急旋回していく

代永と両想いになる機会は何度かあったけれど、神の思し召しか ほんの少しずつタイミングが合わない。代永エンドでも良かったけれど、思いっきりタイトル詐欺になるから作品に謎の力が働いているように思えた。自分や周辺でピンチが続くことで「吊り橋効果」が維持され続けているだけ かと。

椛の気持ちは男性2人は知らないこと。だから悪女でもないのだけど、日比谷を傷つけたし代永に期待させた。そこへの自己嫌悪はあってもいいのではないか。作品的に椛は代永に日比谷との復縁を告げる心を痛める過程を経ていないし、代永は椛の前から去ったりしない。そこがズルい。代永も自分からは椛を誘わないと言って誠実さと一線を用意している割に自分から椛の前をウロチョロしている。告白を断ったはずの男性が ずっと近くにいるのは新たな恐怖だろう。ところどころ代永も変なところがあったけれど、代永は日比谷と同類の重いストーカーになりました という結末なのだろうか…。

それにしても椛は、2人の男性は それぞれに失恋しているのに、あんただけは傷ついたこともないよね、と嫌味を言いたくなる存在だ。男性たちからは愛されヒロイン(無自覚)であり続けているけど読者から愛されないヒロインであることに気づいているのだろうか。
自分が ちょっとキュンときたら性行為を誘発させて大団円に見せるのも あざとい。その直前まで好きかどうか分からないと言っていた相手と寝る女には呆れる。

心が疲れた時に男性たちに癒してもらっておいて、椛は女神だから何もしていないのも気になる。タイトルにもしたけれど、日比谷に対して方言で応援し、気が向いたらマッサージして、コーヒー粉を送ったら溺愛されるなんてコスパが良すぎる。しかも自分でも それが日比谷への愛情なんだ!とか思っていて性質(タチ)が悪い。日比谷が椛に費やした数十時間に対して椛のヒロインとしての実働は1時間程度だろう。そういう見返りを求めないのが溺愛なのだろうけど…。2人の愛情の重さが完全に違うまま終わる作品も珍しい。

作品が椛や日比谷の良い部分を引き出せなかったから、最後まで恋心の根拠が薄弱になってしまった。作者は椛が日比谷に寝返る(?)際に、こんな理由で良いのだろうかと作品のエピソードの弱さに泣いたのではないかと想像する。


比谷は椛から距離を置かれても彼女への執着を止めない。日常観察し遠くから彼女の健康状態を測る。

自分からは何も行動しない椛は今回もマスターに代永の出演する舞台に誘われて観劇する。代永の出演するのは2.5次元劇か。椛と同じ20代後半ならば舞台俳優・代永の寿命が近い。
感激と観劇後、お手洗いに立ち寄る椛だったけれど女性トイレは長蛇の列。そこで別フロアのトイレを探すが間違った扉を開き倉庫に入り閉じ込められてしまう。スマホもマスターに渡してしまっており助けが呼べない。

代永の唯一の減点対象は思ったよりも派手で軟派な舞台に出演している点

(距離を置いていることを知らない)マスターから日比谷に連絡が入り、ヒーローフラグが成立するが不発。倉庫に現れたのは代永だった。しかしミイラ取りがミイラになり、代永と密室に2人きり。代永も日比谷と同じぐらいマイペースなところがあるので椛にペットボトルに用を足すように提案する。性格的にも一般的な職業じゃないところも代永も代永で交際してから大変なところが多くありそうだ。

アクシデントによる急接近と代永が今も椛に好意を持っていることを告げ良い雰囲気になるが そこに救出チームが到着。もう少し遅ければ椛の選ぶ相手は違っていたかもしれない。


比谷との関係が清算されているからなのか今度は簡単に代永にトキメく椛。倉庫騒動のお礼の名目で椛は代永と出掛けることになる。男を切らさない女だ…。代永は日比谷と違って椛のことを配慮する。自分からは誘わないけれど いつでも椛に応える気持ちがあるとだけ伝えて別れる。

自分の気持ちを尊重してくれる代永に気持ちは傾き始めるが、別れを日比谷に告げる直前に体調不良に襲われる。今回、椛の異変に気づくのは毎日のように彼女を観察している日比谷。胃腸炎に かかって衰弱し始める椛。この時期、代永は撮影で沖縄におり絶対に助けられない。てっきり代永は椛から連絡が来るまで自分からは連絡しないのかかと思っていたけれど そうではないらしい。これは代永はタイミングが悪くて救世主になれない ということを示したいのだろう。

体調の波を見計らって外出した椛は日比谷に遭遇。悪化の予感がした椛は日比谷に甘えることにする。それを口実に日比谷は部屋に入り浸り、看病を始める。しかし日比谷に下心はなく完璧な親切心で彼は動く。そういう人だということを椛も知っている。


こから無私の助けを受けて椛は日比谷から受けてきた親切の数々を思い返す。そして関係性を清算したら完全に日比谷を失うことを痛感する。その自分のありのままの気持ちを日比谷にぶつける。まず勤務中の日比谷に話し掛けたのは椛の居ても立っても居られない気持ちの表れか。

椛は日比谷への好きは これまでの好きという感情と別種であり、その理解が及ぶまで時間が掛かったと分析する。日比谷と同じ好きを返せないという正直な気持ちを語ることが椛の誠実さ。そして そんな椛を受け入れるかは日比谷次第。ダメだったら代永がいる、などと思ってはいけない。

日比谷はポジティブモンスターなので拒絶じゃなければ それでいい。椛も そんな日比谷らしいところに好感を持つ。ここから一気に2人は性行為に雪崩れ込む。さすがアラサーの恋愛というところか。日比谷が準備万端なのは ずっと夢を見ていたからか。逆に椛は性行為なんて自分からは考えたこともありません、というカマトト臭がする。部屋を移動してでも、というのは雰囲気に流されずに椛の決断であることを強調している。

2人が よりを戻したことを数日後に代永は知ることになる。代永の当て馬補填は芸能活動の順調さのようだ。ポンコツ警察官は今日も方言で無敵に活躍する。