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少女漫画と小説の感想ブログです

電撃(黒崎)とデイジー(DAISY)との疑似三角関係の終焉でも どちらも失わないヒロイン

電撃デイジー(9) (フラワーコミックス)
最富 キョウスケ(もとみ キョウスケ)
電撃デイジー(でんげきデイジー)
第09巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

兄を亡くし、天涯孤独な照(てる)を陰から支え、守ってくれる謎の人物「DAISY」。そのDAISYの正体は、照をいじめて楽しむドSなイケメン校務員・黒崎だった!密かに想い合うようになる照と黒崎。しかし実は黒崎は照の兄の死に深く関わっており、照の兄を「殺してしまった」と自分を責め、照に正体を明かせずにいる。

簡潔完結感想文

  • 祝・黒崎カムバック。でも両片想い状態のままにして物語を続ける意義と余地を残す。
  • 当て馬が出てこない作品だけど、照は本命の黒崎も当て馬ポジションのDAISYも失わない。
  • 一匹狼を気取った黒崎が何も解決せずにカムバック。やってること全部 中途半端じゃね??

密も恋心も筒抜けだけれど伝えていない 9巻。

少女漫画ではヒーローのトラウマの解消は恋愛解禁の合図となる。この『9巻』で照(てる)は黒崎(クロサキ)の こじらせすぎる罪の意識に介入せず、照は別の方向から黒崎を光に導くことを伝える。この照の芯の強さを感じられる姿勢は素晴らしかった。照だけに光属性の人なんだな と その類まれなヒロイン性を感じられた。

照の働きにより黒崎は恋愛解禁状態になったけれど、だからといって すぐに恋愛する訳ではないらしい。読者の多くが両想いになるのだと思っていたけれど、2人は全てを筒抜けにしながらも両想いにはならない。これは まだ両片想いだから恋愛イベントが残っている という作品の姿勢の表れなのだろう。

恋愛関係で言えば以前も書いた通り本書は当て馬が登場しない珍しい作品だ。その代わりに照の心の中でDAISY(デイジー)から黒崎に心がシフトする動きが見られた。
今回、両片想いになり完全に黒崎とDAISYの2つに分かれていた人格が統合した。もう架空人格は必要なくなるのだけど、少女漫画ヒロインが作品のラストまで本命と当て馬に囲まれるように、照も2つの人格を どちらも失わない。黒崎は無理していることもあるだろうけど、メールという電脳空間では2人は素直にいられる。

2人の間にDAISYというクッションを置くことで意思疎通がスムーズに進むのは これまでの展開でも明らか。これから交際や結婚をする中で喧嘩した時にも敢えてDAISYを使うことで仲直りが早期に可能になるかもしれない。ただ黒崎側はDAISYの人格を使って照を非難しそうだ。そして照がDAISYは そんなこと言わないと言い出すことで2人の間で架空の存在であるDAISY論が繰り広げられて喧嘩が長引くかもしれない。

黒崎を選んだらDAISYを失うかもしれない。三角関係は疑似でもツラい

の大きな山を越えても作品の方向性が良く言えば少女漫画の枠にとらわれない、悪く言えば作者の手に余る方向に進んでいくようだ。

両片想い ≠ 両想いのように作品は まだ解決していない問題を残存させている。一つの組織が壊滅しても それを壊滅させた組織が残っている。トラウマを乗り越えた黒崎は現時点で無敵。アキラとの初対決も年長者の余裕が見えている。ただ このままでは終わらないだろう。黒崎とDAISYの2つの人格の統合を終えたことが一つのピークになり、ここから もう一回 盛り上がりを作るのは至難の業だろう。ここからの全てが蛇足にならないか心配だ。あと単純に私は事件に興味がない。

また気になったのは、自分の過去の落とし前をつけるためにも黒崎は照の感情を無視して狩りに出かけたのに、その決着をつける前に戻って他者に解決を委ねている点。照が物理的に危険に晒されると すぐに救出に向かった黒崎だけど、照の心が壊れそうになったことを都合よく忘れていないか。黒崎には そういうデリカシーの無さと自分の視点でしか物を考えられない狭量さを感じる。
全体的に黒崎って一度決めたことを完遂できない人に思える。増え続ける自分の罪に ちゃんと向き合わないで弱いまま照を悲しませる罪を重ねていく。この人の成長が少しも見られず、センチメンタルとハードボイルドを見せつけて読者の黄色い声援を集めているとアンチの気持ちが湧く。

こうなったのは おそらく黒崎のカムバックは少女漫画としての別離の限界が到来したから。作中でもメタ的な発言があったけれど『8巻』が丸々別離だったため現実時間で4か月 読者は照と黒崎の交流が見られていない。だから黒崎が組織を壊滅するよりも早々の再会の場面がノルマだったのだろう。こうして黒崎の自分じゃ解決しない問題が一つ増えていく。

本書はヒロインが本当に強くて格好いい分、ヒーローが貧弱で情けない。


崎は森(もり)から とある「組織」が黒崎が過去に作成した暗号ウイルス「Jack’o Frost(ジャックフロスト)」を復元させようとしていることを知る。森に自分の正体と照という弱点が握られているため黒崎は彼女の目論見に乗り組織の壊滅に動く。森の立場は『9巻』後半で明かされる。

最初に黒崎を見つけるのはマスター増田(ますだ)だった。マスターは黒崎の行動の理由を知り、そして照が過去を知ったことを教える。今の黒崎は罪の意識に支配されているが、それでも黒崎は周囲から愛され続けているとマスターは伝える。

照は黒崎に会う決意を固めていたが、そこにアキラから連絡が入り、アキラから情報を受け取る場所を照はDAISYにメッセージを送る。危険に踏み込む照の救出のために黒崎の身体は勝手に動く。だがそれは罠だった…!!

騎士気取りのお前が照の心を傷つけたんだよ! と言いたくなる黒崎の独善思考

崎の行動を誘導できる照は黒崎の上位存在。彼女の手の上で踊らされ黒崎は照と強制的に再会。
弱虫な黒崎は強気な口調で逃亡しようとするけれど、その反応も照は織り込み済み。黒崎の最新の黒歴史を披露することで彼を捕獲する。トラップを黒崎に謝罪しながら、黒崎にも謝罪すべきことがあると責め立てる。

仕切り直して遊園地(『7巻』)で黒崎が するはずだった話を再開する2人。『8巻』の内容が3ページに要約されて再説明されている。
黒崎は何度 考えても照に許されるとは思っていない。なら照は その姿勢を受け入れる。そもそも照は許す立場にない。だから照は自分なりに これからの黒崎との関係の構築の仕方を考える。それは罪の意識を相殺し得る力。その強さに触れて黒崎は感涙する。2人の中で初めてDAISYの存在も過去の罪も共有された。


がて2人のもとにメンバーが合流し、ホテルのスイートルームで今後の対応が話し合われる。危険な橋を渡っている黒崎は学校周辺に戻らず時の経過を待つ。その別離に照は異議を唱える。それは一度 黒崎を失ったことで生まれた照のトラウマのようなもの。

しかし理子(りこ)たちは2人を同時に隔離することを考えていた。2人はスイートルームでの お泊り回に突入する。黒崎へのミッションは照の不安の除去。そのために黒崎はDAISYと人格が統合して初めて黒崎のまま優しい言葉を照に囁く。


の回では黒崎は校務員に復帰している。暗号ウイルスの件はマスターたちの調査待ちとなった。雑な話の畳み方だ。

黒崎との距離や接し方は少し変わり そこに幸福を感じる理子は同時にDAISYの喪失を寂しく思っていた。久しぶりの理子と黒崎の2人きりの会話も思わせぶりなものではなく素直な心のキャッチボールに なっている。両想いは未達成で物語は完結しませんという宣言か。

照はDAISYという心の支えがいなくならないように黒崎に その役目の復活を願う。しかし自分の羞恥を優先して彼は照を傷つける。すれ違いを経て黒崎はDAISYのアドレスで自分の言葉で初めて照にメールを送る。こうして2人は自分たちの今の関係性を模索する。


展した2人の関係性を描いた後は、また次の事件の予兆となる。
黒崎が「Jack’o Frost」根絶のために追い詰めようとしていた「ハイペリオン」というサイバーマフィアが滅びようとしていた。それは どこからかハイペリオンの情報がリークされたから。次の問題は このリークした存在となる。黒崎は それがアキラや森の組織だと踏む。

早々にアキラからのコンタクトがあり黒崎は照の抵抗を押し退けて会いに行く。以前のように突然いなくなったりしないと黒崎は照の不安を消す。黒崎はアキラの容貌と性格を把握するだけで去る。どうやら相手への執着心が強いのはアキラの方らしい。