
最富 キョウスケ(もとみ キョウスケ)
電撃デイジー(でんげきデイジー)
第03巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★☆(5点)
不良校務員&下僕という関係が続いている黒崎(クロサキ)と照(てる)だけど、二人の心の距離は急激に縮まってきていた。そんな中、照は旅行先でDAISY(デイジー)へのお土産のオルゴールを買う。そのオルゴールはDAISY…つまり黒崎の手に渡る。しかしそれが、二人の関係を――!?衝撃展開の連続!!
簡潔完結感想文
- 連載の先行きが不透明だから強いカードから切っていく。それはジリ貧への入口だよ…。
- 『3巻』は もう一人のヒーロー・DAISYの救出劇なし。全部 黒崎として照に接する日常回。
- 嘘つきヒーローと嘘を見抜いたヒロインのライアーゲーム開幕。残る問題は黒崎の心持ちか。
序盤のフルスロットルは失速も早い、の 3巻。
『3巻』で明かされているけれど当初は3回の予定の連載が好評で ずっと続いているという。その千載一遇の高評価を維持するために作者は持てる力を全て注ぎ込む。それが『2巻』の意外な裏切り者だったり この『3巻』のヒロイン・照(てる)が早くもDAISYの正体を知る展開だ。
連載期間に余裕があるならば この展開は もっと先に用意するものだろう。最初から全16冊の作品になると分かっていたのなら7巻や8巻のターニングポイントとして利用するはずだ。でも まだまだ新人作家の当時の作者には先行きが見通せないから とにかく読者の興味を惹きつけ続ける展開に全力投球している。
それは一長一短で連載を継続させるが、簡単に終えられないことになる。大きな構想があれば それでも良かったのだけど作者には その場しのぎのエピソードしか作れない。これが全体の作品の質を落とすことになる。一番 適当な長さで作品を閉じられないのは作品の不幸だろう。序盤と同じ密度で話を続けられたら良かったけれど、そんな奇跡みたいなことは難しい。


上手いなと思ったのは『3巻』はヒーローとしてのDAISYが登場しないこと。毎度毎度 PCに侵入する話を作ってはワンパターンになるしバリエーションも考えられないという裏事情もあるのだろうけれど、DAISYが前に出ないことで照は黒崎(クロサキ)の人となりを知っていく。
『3巻』は日常回の連続とも言える内容で引っ越し回だったり旅行回で、これまで近づき続けた2人の距離が離れることで照は客観的に黒崎を見つめることになっている。DAISYではなく黒崎が照を助けることで照は乱暴な口調の黒崎の中に理想の欠片を見つけたと言える。そもそも理子(りこ)にしろ竹田(たけだ)にしろDAISY=黒崎を匂わせすぎていて、物的証拠がなくても照が気づくのは時間の問題だった。この大人2人は少年のように純粋で頑固な黒崎の助けになりたくて照が早く真相に届くように願ったのだろう。
また黒崎自身にも限界が来ていて、DAISYが黒崎の影響を受け過ぎていて、以前よりも照自身に興味津々な好意がダダ漏れの内容のメールを送るようになっている。前は照の言うことを受け止めるだけで自分の気持ちを発信したりしなかったのに。この変化を照は察しないことに違和感がある。
一つ疑問なのは このメールに照はDAISYからの思慕の予感とDAISYへの思慕を抱かないのか ということ。照の中でDAISYは兄と同じ所に位置する存在で恋の相手ではない。だから黒崎に惹かれた。でもDAISYから こんな熱烈なラブレターを貰って照は少しも悩まなかったのか? 作品と作者は早々に黒崎の「二重人格」を明かす方向性を決めてしまったので この問題を掘り下げることをしなかったけれど、連載が継続し続けるのが分かっていたなら、やっぱり照の想いが2人の素敵な人に引き裂かれるエピソードも欲しかった。話のネタになる大事な鉱脈を見逃して先へ先へ急ぐばかりの作品を勿体なく思った。


変わらず黒崎の心理にはブレーキが働いているので真の両想いは まだまだ先になりそう。ただ黒崎の心の問題も後から生まれたもので作為しか感じられない。作品と釣り合わない暗く重い話を用意してしまうのも新人作家の陥りがちな傾向だろう。奮闘は見られるけれど作家側の必死さも隠せていない。
夏休みから理子(りこ)と住むことになった照。黒崎は内心の動揺を隠して引っ越しに関心がない振りをしているが、自分の全部を賭けて守ると決めた存在が出ていく喪失感を覚えている。
最後の夜、照は理子の部屋の引っ越し作業を手伝って帰りが遅くなり、黒崎が料理をしてくれた。その料理を一緒に食べ少し感傷的な雰囲気が流れる。…が、1話丸々オチに全振りした話である。この引っ越し回の10話も1つの最終回チャンスに見える。11話で仕切り直しのように人物紹介が挿入されているのも一区切りついたことを証明ではないか。
11話から一度は照を裏切った状態の清(きよし)も復活。清は黒崎に恩があるため照に続いて下僕2号として黒崎の校務員の仕事を手伝う。そして清もDAISYの正体を知る一人となっている。
照は兄の死去から葬儀まで降り続いていた雨が苦手。体調・メンタル共に優れない長雨の時期でも照は人に頼られると断れない。本書は照の心の美しさを過度に演出しすぎている。黒崎は乱暴に照をフォローし、そしてDAISYで甘く囁く。二重人格のツンデレである。こうして照は雨への苦手意識を克服し、彼女の強さが黒崎にも影響を与える。
黒崎と買い物中の照が『1巻』で登場した竹田(たけだ)に拉致される。竹田からの連絡で照の誘拐を示唆された黒崎は必死に捜索。
黒崎に助けられることなく照は独力で竹田の思惑を見抜き、彼に屈しない態度を見せる。恋の仮想ライバルとして現れた理子の時といい、対決する時の照は無敵スイッチが入っている。
今回の竹田の狙いも『2巻』の清と同じように照の携帯電話の中にあるかもしれない亡き兄・奏一郎(そういちろう)の未発表ソフト。しかし照が了承した状態での竹田の解析でも何も発見されなかった。この携帯電話だけが照を物語の中心に据える道具なのに、この時点で この携帯電話は空っぽ=照が狙われる理由もないとしたのは悪手だったのではないか。照には黒崎=DAISY問題しか残っていないのだから その解決が終わったら物語の幕を下ろせばいいのに、連載というプロジェクトが大きくなり過ぎたのは幸運中の不幸と言えるだろう。
竹田は泥棒の指示など謝罪と、黒崎という名前を出さないものの彼の過去への許しを照に乞う。竹田もまた黒崎の過去を知っているようだ(『1巻』の時点では接点が小さい感じだったけれど…)
到着した黒崎はキレたら竹田の命が危ないと考えるぐらいには冷静で、竹田から自分以外の「紅林(くればやし・奏一郎のこと)の遺品」を狙う存在がいると黒崎に伝える。あるかもしれない という噂に踊らされている人がいる限り話は続けられるのだろう。
聖母である照は竹田を憎まず再会を望む。竹田だけに限らず、照はDAISYの正体を匂わされ続けているので少しずつ黒崎ではないかという思いが芽生え始める。
照の三泊四日の勉強合宿の前に買い物に出掛ける2人(その前の話も買い物回と言えるのに…)。もう同居している訳ではないのに同居のように気軽に話している。
清貧少女の照は この勉強合宿の費用はどこから出しているのか(ひねり出した らしいが)。金欠で身動きが取れなさすぎると物語に動きや変化が出ないから貧乏設定が なし崩しになるのは少女漫画あるある だ。
この合宿で照は不良品といえる特徴のある一品限りのオルゴールをDAISYに贈る。また黒崎のPCメールアドレスに初めてメールを送っている。携帯電話の番号も知り黒崎と即時 連絡が取れるようになったようだ。台風の接近で予定を切り上げるか、宿泊代のために粘るか相談する照に対し、黒崎は明日 照の手料理が食べたいと早めの帰宅を願う。
台風接近の中、黒崎は自室の窓を開けたまま出掛ける。その家には料理を届けた照がいて、強風によって黒崎の部屋に置かれていたオルゴールが落下して蓋が開き、そこから曲が流れだすのを聞く。その曲はDAISYに贈ったオルゴールと同じもの。照は逡巡しつつも禁止されている部屋への侵入を果たし、そのオルゴールが不良品の一品であることを確認する。初めて入った黒崎の部屋は兄と似ていた。それは黒崎もまたPC関係に強いという証拠となる。
しかし照は自分が見たこと知ったことを全部 忘れる。忘れたふりをして これまで通り黒崎と接する。黒崎は自室の惨状を確認しつつオルゴールの蓋が閉じられた格好で床に落ちた幸運に安堵する。
最初は慣れず黒崎に自分の動揺を悟られそうになるけれど、黒崎は照の不安定さを雨のせいだと勘違いする。前の話が上手く作用している。照は黒崎が時より見せる優しさがDAISYと同じ種類のものだと確かめ、寝たふりをするように嘘を付き通す覚悟を決める。
