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少女漫画と小説の感想ブログです

正式にループから抜け出したことが発表された『八巻』以降に待つのは末広がりの未来

墜落JKと廃人教師【通常版】 8 (花とゆめコミックス)
sora
墜落JKと廃人教師(ついらくジェーケーとはいじんきょうし)
第08巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

元旦に、心臓が破裂しそうな「夢」を共有した灰仁と扇言。それをきっかけに、恥ずかしい過去を思い出してしまった扇言に、灰仁は…!?ホワイトデー、オンラインゲーム、遊園地、そして進級…とイベント満載。さらに、「税金」をテーマとしたアオハルな特別授業も収録!Epidode.45~49と番外編を収録。累計100万部突破(紙+電子)!とまらないキケンなつり橋効果LOVE!

簡潔完結感想文

  • 偶数巻でも新キャラが登場せず、世界の拡張が一段落。個人的には『8巻』は なずな巻。
  • つり橋効果で あっという間に恋に墜ちた2人に対して当て馬の恋は ゆっくりと育てる。
  • 通常運転と思わせて葛藤を抱えている灰葉と同じように、作品も通常回に伏線を張る。

校中の あらゆる場所でイチャつく自称・禁断の関係、の 8巻。

『8巻』は作品にとって2つの転機だったと思う。
1つは進級したこと。これにより扇言(みこと)は「永遠の高2」を卒業して、作品がサザエさん時空のループから脱出したことを意味している。これまでは無限だった高校生活が明確に あと1年になり、青春の有限性が示される。これまでは作中の季節は雑誌掲載(現実)に合わせたりしていたけれど、ここからは作中の時間が流れる。これは白泉社長期作品の中盤に頻繁に確認される現象である。

これまで扇言は灰葉への迷惑ばかり考えてきたが、ここからは卒業も悩みに加わる

2人にとって卒業し生徒と教師という関係性に終止符が打たれることは新たなステージの始まりで、それを待望する心もあるだろう。しかし扇言は それと同じぐらい変わってしまう不安があるのではないか。
それは今回3年生に進級して灰葉(ハイバ)が副担任じゃなくなった時の不安と同じだと思う。扇言は灰葉が自分のすぐそばにいないことを不安に思っており、その彼女の心境を察した灰葉は離れていても自分のスタンスが良くも悪くも変わらないことを しっかりと示した。それは高校を卒業して本当に物理的な距離が生じる将来の予行演習のように思えた。同じ空間に居られなくても自分の心は常に扇言の傍にある。そんなことを灰葉は教えてくれた。その考えを発展させてみると、それは現世と あの世であっても同じこと、と灰葉の死亡フラグにも思えなくもない。

それにしても2人は禁断の関係で、そこに罪悪感が芽生えているはずなのに、学校内でも平気で接触して、自宅と同じようなイチャイチャを展開している。今回は調理室でもイチャイチャしだしたので、その最終形態は校長室なんじゃないかと私は疑っている。灰葉と校長は昔馴染みである伏線が張られていたし、一般的な教員と校長よりも距離が近く、灰葉なら校長室に無断で入れるフラグが立っているようにも思う。次は学校内の どの場所で2人きりになるのだろうか。


して2つ目の転機は偶数巻なのに新キャラが登場しないこと。これでレギュラーキャラクタは勢揃いしたと考えていいのだろうか。

これで時間の流れが不安定な世界(宇宙)の拡張が終わり、一定の時間が流れ始めた。そして これまでと違う ゆっくりとした季節の変化が到来する。
同じように ゆっくり描かれるのが主役以外の恋心。特に本書は短期連載出発ということもあり主役の2人は あっという間に恋に墜ちた。それに対して一馬(かずま)など連載を通して恋に落ちるキャラクタの その過程は丁寧に描かれる。一馬は淳人(あつと)の登場と撤退(『4巻』)で当て馬のフラグが立ってから随分 経過しているけれど まだまだ恋の入口に立ったばかり。

『8巻』は一馬の登場シーンが多めだけど、同じぐらい多いのが なずな。個人的には『8巻』は なずな巻で、再読すると彼女の心の動きが よく分かった気がいた。特に冒頭の一馬の恥ずかしい話として披露される なずな に対する不器用な心遣いは なずな の中で大きな転機になっていると考えた。なずな視点で彼女の心情を考えると結構ビターな作品に見える。

こうして世界は変わらないようで変わっていく。それは主役の2人も同じ。いつも通りイチャついているだけのように見えるけれど、その中で作者は大きな流れを作っている。これもまた時間のループから抜け出したから進む話なのだろう。


日(元旦ではない気がする)の出来事を夢オチという共通見解を持つことで世間からの非難の声をかわそうとする2人だったけれど、扇言は自分が衝動に呑まれたことを反省していた。

そこに現れた一馬(かずま)と なずな と一緒に恥ずかしい過去の暴露大会となりアイドル・一馬が なぜか辱められる事態に。このところ一馬が なずな と行動しているのは扇言を噂から守るためでもあるのだろうか。『6巻』の嫌がらせ事件を一馬が認識しているか不明。
また なずな は自分のターンで一馬の話で落としているが、考えようによっては これは一馬が なずな のヒーローになった瞬間だとも読める。不器用ながら自分を守ってくれた人を好きになっても おかしくない。


レンタイン回は『2巻』で消化しているため重複を避けるため、それを飛ばしてホワイトデー回となる。バレンタイン回とホワイトデー回の間に季節が一巡しているけれど、巻末で作者が公式に「JKはサザエさん的な時空で2年生を2回や」った と言い切っているので、2年生設定だけは揺るがない。じゃないと一馬が この学校の生徒じゃない時期の話になるし。

チョコを貰い過ぎて お返しが大量になる一馬がコストを考えて手作りお菓子を作ることになり、料理が得意な薫子(かおるこ)に指導してもらう。ただ薫子はいなくても話が成立する。

この時、灰葉のホワイトデーとして『6巻』で作成していた遺書が贈られる。ただし扇言は開封せず、この遺書が意味を持つのは もう少し後になる。


いてはスマホアプリでイチャイチャ。やっぱり この2人 学校を自宅だと思っていませんか?? 2人にとっては仮想空間は気兼ねなく一緒に過ごせる場所らしいが、どの口が言うのか と びっくりするほど接触しているけれど、普通の恋人同士のようなデートが出来ないのは確かである。

この回で灰葉は扇言が遺書を読んでいないことを確認する。ちょっとずつ灰葉が語れていない秘密に迫っていく感覚がある。ちゃんとオチが用意されているけれど、なりすましシステムが どうして成立しているのかが よく変わらない。一馬は扇言その1と扇言その2と連絡を取っているのか?


園地回。なずな は一馬がデートじゃない言い訳のために自分も同行し、それを わざと目撃させることで事を荒立てないように先回りしている。なずな は自分は目撃者グループに入ることで一馬を2人きりにさせ、そして目撃者たちを楽しませることで一馬への関心を忘れさせている。

扇言と灰葉は陰× 陰コンビで、一馬・なずな は陰×陽コンビでバリエーションが違う

疑似デート回はストーカー回でもあって、今回も灰葉、そして扇言の兄・詞(つかさ)が尾行する。白泉社作品は他者に比べて圧倒的に尾行が多い気がする。どの作品もヒーローが やや粘着質だからだろうか。

訪れた遊園地は廃園寸前。それを知らなかった一馬は上手くリード出来ないことに落ち込むが、扇言は一馬と楽しむことを楽しみにしていた。そういうところが好き♡ と思う圧倒的ヒロイン力だ。ただ廃園寸前設定は他の来場者を描かなくて済む作画カロリー低減の意味合いにも思える。

2人は ちゃんとデートになってるデートを楽しみ、扇言が一生続く関係性を一馬に伝え良い雰囲気が流れる。そこに なずな が再合流するが彼らに遠慮して観覧車に乗らない。人工的な陽キャは空気を読める人でもある。そして一馬は多少 空気が読めていない。一馬にとって なずな は比較対象。なずな との関係が友情ならば扇言は違う、と彼の中で変革が始まる。

少女漫画における観覧車はヒーローとしか乗らないアトラクションであることが多いけれど、今回はオチ要素として使われる。灰葉が同級生ヒーローだったら割って入れるけど、そうじゃない秘密の関係 かつ 直前に天誅が下されているので行動不能なのだ。


3年生に進級早々、薫子のドジっ子体質の影響を受け扇言が怪我をする。それに加えて新年度は顔触れが変わるため鬱りやすい。扇言は灰葉が副担任ではないことにも落ち込む。しかし灰葉は副担任だから扇言と関わっていたのではなくて、そうでなくても彼女のことを見続け、これまでと変わらないフォローが可能なことを証明する。

「番外編」…
いつもの巻末の「特別授業」の雑誌出張版のような一編。この時のカラー扉が「最後に死にたいと思った場所」で5人の姿が描かれているけれど、扇言ら生徒たちは初登場回以降、本気で死にたいと思っていないことが分かって安心する。自殺防止サークルが好循環を生んでいる。というか一馬も死にたがりグループなのか?

この回も一人だけ教師で大人の灰葉の疎外感が描かれている。ただ扇言の青春に灰葉は不可欠な要素である。