
リカチ
明治メランコリア(めいじメランコリア)
第02巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★☆(7点)
女学生鈴(すず)と青年津軽(つがる)、二人の想いは引き離され──!? 津軽が何かを隠していると知り、突きとめようとする鈴だが、突然の口づけに動揺し、その場を立ち去ってしまう。その直後、何も告げずに津軽は行方をくらませる。そんな時、血の繋がらない兄・春時(はるとき)が帰ってきて!?<<
簡潔完結感想文
- ホワイダニットの謎を残して鈴の心を盗んだ怪盗・津軽を15歳の名探偵が海の果てまで追跡。
- 女性と年の差のある男性は自分から追うのではなく彼女に追わせる狡猾なこと やりがち。
- 2人の間の隙間風の確認で始動する当て馬。春時だけじゃなくメランコリック当て馬を用意。
衝撃のラスト1ページに瞠目する 2巻。
『2巻』は行方をくらました津軽(つがる)の痕跡を鈴(すず)が「さがしもの屋」のように追う内容になっている。チートな探偵役の津軽が作中から消えることで、鈴が探偵役に昇格している。姫としてイケメン下僕たちを従えながら(笑)、鈴が主体になって動くのは続編ならではの動きだ。
『1巻』は主に鈴と津軽の15歳の現在地を描いていたけれど、『2巻』は津軽が不在の世界での日本国内における鈴の現在地が描かれる。舞台を海外に移す前に必要な情報を集めたり、既存または新キャラを登場させたりと、鈴の移動が多いこともあって舞台の転換が多い。
そして鈴の津軽の追跡前に、鈴が女学校など現在の生活を全て投げ打つ動機が用意されている。それが津軽からのキス。どのような種類のキスか明言されていないが、鈴にとっては それが別れの挨拶のように思え、消えた津軽や彼に渡すはずの浴衣を取り戻すために動き始める。
気になるのは津軽は追うな、と言いながら動機も痕跡も用意しているところ。いつもの理性的な津軽なら鈴に手紙は残すけれど思い出は残さないだろう。けれど それをした津軽に彼らしくない衝動が見える。そして それは不在の間も鈴が自分を忘れないためのマーキングのようにも思える。聡明な津軽なら そうすることで鈴が自分を追ってくることは想像できるだろう。それでも鈴が自分を間違いなく追えるように正解を用意して旅立つ。年下の女性に自分を諦めないようにするのは蒼井まもる さんの『さくらと先生』を連想した。年長者の男性は自分から好きだと言わないくせに、好きでいて欲しいワガママを抱えているようだ。
そして津軽というヒーローの不在が当て馬たちの眠りを覚まさせる。
『2巻』から春時(はるとき)が動き出し、今度は鈴が16歳になるまでは「兄」でいる という お得意の自分ルールを持ち出しながら、それを ちゃんと守れない自制の利かなさを発揮している。16歳になるまで何もしないから津軽に奪われるという結末まで見える気がしてならない…。春時は『緋色綺譚』での津軽の年齢になっただろうに詰めの甘さは相変わらずそうだ。『緋色』では鈴と一緒に暮らすのは誰か、が最後の問題になっていたけれど、いよいよ『メランコリア』では鈴と結婚して同居するのは誰かになりそうで、男性間の最終決戦となるのだろう。仕事で煩悩を消して自制してた春時だが津軽がいなければ我慢の必要がない 春時関連で気になったのは鈴にリセット機能が発動している点。『緋色綺譚』のラストで鈴は春時からの兄妹ではない好意を確かに感じ取っていたはずなのに、鈴は春時を「兄」に固定しようとし過ぎている。同室で布団を並べて隣同士で眠ったり、兄への思わせぶりな台詞を連発したり小悪魔・鈴ちゃんが爆発している。津軽が不在の時に胸キュン要素を補完するのが春時の当て馬としての役目で、疑似恋人関係を楽しんでもらうのが鈴の役目でもあるのだろうけど。
そして『メランコリア』での新キャラが初登場。鈴も春時も『緋色綺譚』の時から恋心はMAXで変化に乏しいから、『メランコリア』内で変化していく関係性を描くためにも新キャラが必要なのだろう。そして この新キャラ・平賀(ひらが)と鈴が当初は衝突してばかりでいるのも、2人の関係性の変化を鮮明にするためだろう。感じの悪かった人が いつの間にかに当て馬になっている。これが少女漫画を読む醍醐味の一つだろう。
平賀は15歳からの鈴しか知らないから彼女を最初から女性として認識している。自分がロリコンなんじゃないかと悩んだりしなくていいから、好意を持ったら迷いなく鈴に言動で示してくれるのではないかという期待が持てるキャラだ。消えた津軽に会う目的もハッキリしていて舞台も大きく変わり今後の期待が持てる『2巻』だった。
津軽は鈴にキスをする(鈴の顔のどの部分に当たったかは明言されていない)。これは津軽が鈴に与える枷。こうすることで自分を忘れられなくするのだけど、そうするのは自分が忘れ去られる可能性があると言うこと。
事実、津軽は翌日から鈴の前から姿を消した。丁度 軍部が津軽に露西亜(ロシア)の密偵(スパイ)疑惑をかけ、身柄を確保する直前に津軽は煙のように消える。自宅で動機となる痕跡を捜した鈴は異国からの手紙がないことに気づく。そして津軽が残した一通の手紙を思わぬところから発見する。そこには待たなくていい、と書かれていたが、キスをされた鈴は津軽を忘れることなど出来ない。だからこそ津軽はキスをしたとも言える。この衝撃的な体験が鈴の原動力となる。また渡すと約束したまま行方が分からなくなった女学校で制作途中の浴衣が見つかる時が、2人の再会になるのだろう。この浴衣の現在地は巻末で明かされる。
何も言わずに津軽が消えたことに涙する鈴の寂しさを察知したかのように春時(はるとき)が登場。春時は鈴の置いていかれた孤独を理解し、彼女の傍にいるように努める。
鈴は海外渡航経験のある叶(かのえ)を通じて津軽も旅券を所持していたことを知る。そうして津軽を待つのではなく追いたいと願う。『緋色綺譚』のラストの同居問題と同じように春時に本音を話すことで活路が見えてくる。いつだって春時は鈴の「鈴のやりたいことはなるべくやらしてあげたいと思ってるからな」状態なのである。これは春時の「兄」としての願望。
河内(かわち)を通じて津軽の目的地が仏蘭西(フランス)だと判明するが、出発の記録が横浜になく現在地が分からないまま。そこで鈴は もう一つの港・神戸で記録に当たる。春時は同行し、現在とは違い1日では到着しない旅程で同室で布団を並べての宿泊をすることになる。兄として振る舞る春時だけど時に男の顔が出てしまう。津軽不在の中のドキドキ要員に過ぎないのだけど…。
神戸から津軽が出発したことを確認し、河内のコネと地位で旅券が用意され、鈴の海外行きは あっという間に実行に移される。莫大になるであろう費用も河内が負担する。周囲がイケメンかつ金持ちだから姫ポジションの鈴のフットワークは軽い。
出発前に叶に彼から預かっていた物を返却。それは海外事情を集める役目も担っている曲馬団が海外在住の夫婦から受け取った機密写真だった。そして叶は海外で津軽を知っている人に2回会ったと鈴に教える。複数人いる中の一人が女性であることが鈴は気にかかる。また その内の一人が日本で海軍兵学校にいると知った鈴は渡航前に足を延ばし会いに行こうとする。
鈴が単独行動するとピンチになるのは お約束で、少しでも情報を得ようと海兵に話を聞こうとして乱暴されそうになる。佐之次(さのじ)や河内から体術を習っていると『1巻』で書かれていたが、鈴は確かに強くなっている。それでも2人を相手にするのは困難で、そのピンチを助けたのが新キャラ・平賀(ひらが)。通常はピンチを助けられた女性が好きになるのだけど、固定ヒーローがいるため、そうならない。ただ平賀は これでヒーローになり得る権利だけは得た。乙女ゲームでいえば攻略対象である。
癇に障る と キュンとするは実は紙一重。春時のようなツンデレの再来が期待される そして『緋色綺譚』から倉田(くらた)が再登場。小悪党だった倉田だけれど本来は海軍兵学校卒の軍人。鈴と会った頃は胸を患い療養中だった、という後付けにも程がある設定が加わる。倉田とは遠慮のない仲。鈴は情報を欲しい立場なのに偉そう。
平賀は無口キャラ。女性への偏見もあり鈴は上手く関係を築けない。ただ最初の関係性が悪いほど、その後の変化が分かりやすい。ヒロインが最初「大っ嫌い!」と叫んだ男性は後の恋人になる流れと一緒。それに冷静であろう平賀が鈴に対してキレているのは、それだけ鈴の存在で心が揺さぶられている証拠ではないか(目が大きいとか褒めてるし)。鈴に想い人がいて残念そうにも見える。
一騒動あってから倉田から話を聞き、渡航前の津軽は倉田に鈴が自分を追ってきた場合、止めるよう頼んでいた。倉田は異国での人捜しの無謀さと浪費を一通り説いたところで鈴に条件付きで協力すると言う。
そしてラストは衝撃の1ページとなっている。




