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少女漫画と小説の感想ブログです

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あるいとう 10 (マーガレットコミックスDIGITAL)
ななじ 眺(ななじ ながむ)
あるいとう
第10巻評価:★☆(3点)
 総合評価:★★(4点)
 

「くこちゃんはやっぱりきれいや」。桜太の言葉に耐え切れず、弱い本音を吐き出し始めるくこ。桜太に絵をやめさせたのは私。なのにまた連れ戻したのは優しさなんかじゃない。

簡潔完結感想文

  • 自分と他者の言動を全て自分の価値観に照らし合わせて、強い弱いの土俵しかないヒロイン。
  • 他者に心配をかけながら、他者に自分を見つけて欲しい。究極の「構ってちゃん」ヒロイン。
  • ヒロインには自分以上に好きな人なんていない。だから恋愛要素を捨てるアンチ少女漫画。

愛感情よりも際立つ自己愛、の 10巻。

本当に申し訳ないのだけれど、本来 感動的であるはずの『10巻』のラストシーンが好きじゃない。正直に言うと うすら寒さを感じたし、10巻まで到達して描きたいのがコレ?と思ってしまった。ヒロイン・くこ の関心が ずっと自分にあって、それ以上の広がりが作品世界に生まれないまま。他者を好きになることより自分が好きな人に少女漫画のヒロインは務まらない。心理カウンセリングを利用したら、何かしらの症名が付くのではないかと思ってしまう。

くこ は どんな言葉も自分を傷つける悪い意味に変換する地雷女。触るな危険!

全部 私に読解力がないし、心が汚れているからなのだろうという逃げ道を用意しつつ、やっぱり私は くこ が好きになれないと感じた。本書は全編に くこ の悩みが描かれており(それしか描かれていないと言ってもいい)、間接的に彼女のような人を否定する人は人でなしですよ、と言う圧力があって私には居心地が悪かった。

当初は10代の青臭い悩みだと思えていたけれど、ここまでくると単純にメンヘラ気質にしか思えない。一度 否定すると くこ の全てが面倒くさく思える。結局 くこ は自分の言って欲しい言葉を他者が言ってくれないと、そうじゃないと いちいち傷つき、時に声高に反発しているだけに見える。自分ですら定義できない本当の自分と言う幻想に振り回され、周囲を振り回している。彼女に足りないのは自分との距離感じゃないだろうか。自分を冷静に見つめる客観性を身につけることが大人への第一歩でもあると思うけど、それを拒絶して本当の自分を見つけてほしいと思春期特有の自己中を爆発させている。


ストシーンへの流れでは、こういう冷めた意見を言って欲しくないだろうけど、衝動的な行動なのにブログを更新する余裕があるんだ、とツッコミを入れたくなる。そこにはペットの死や大きな病気に接しても自撮りして自己の悲しみを伝える承認欲求の強さと類似したものを感じた。あとはリストカットなど自傷を繰り返して他者の心配と関心を買おうとする人とも同じ。
父親や友人にかけている心配を放置して、自分のSOSの発信と愛されている自分を再確認しているようにしか見えない。くこ は ずっと他者の言動を自分の心理状態に落とし込む。他者に100%思いを馳せたり思い遣ったりする場面はない。そんな人だから恋愛の入る余地は少ない。

また くこ のブログの更新を通知設定していた有名(うな)は更新直後に桜太(おうた)に連絡を入れられるのでは?と思った。有名は くこ の行方不明を知らないけれど、桜太の話から くこ の異変を察知する余地は無くはない。現状では有名は くこ を心配する余裕は無いかもしれないけれど。


太を神戸に連れ戻して有名(うな)と引き合わせて、改めて彼の存在の大きさに気づいた くこ。でも それが桜太に新しい傷を作りかねない自分のための行動だと くこ は授に泣きながら相談する。そんな くこ に授はキスをする。それもまた不器用な優しさであり自己中な行動。

くこ は桜太と遭遇しないように見計らって病院に行くが、そこで仕事の都合で日中に病院に到着した桜太と遭遇してしまう。桜太は くこ の行動を肯定してくれたけれど、善意100%ではないことを自分が よく知っている。桜太が進んでいた道の方向転換をさせてしまったのは自分だと責任を負っていた。だから桜太が有名や絵に気持ちを戻す可能性に自分が救われようとしていた。その自分のナカの黒い部分を桜太に吐き出して、くこ は行方知れずになる。


舞(いぶ)は出さないと決めていた自分のナカが少しずつ漏れ出す。その漏れた気持ちからキヨは衣舞の気持ちを推察する。キヨは思っている以上に周囲が見える賢い子である。

キヨは くこ が家に帰らないことを彼女の父親から伝え聞き、キヨを基点として関係者による くこ捜索が始まる。夜の捜索をしようとする衣舞を心配してキヨは彼女と一緒に行動し、神戸の街を歩き回る。

BGMは山崎まさよし さん「One more time, One more chance」だろうか

授もキヨから連絡を受け、まだ土地勘のない神戸を歩く。そこで桜太と遭遇。これまで互いに存在を認知するだけの、思い思われている男性2人の会話が始まる。くこ が帰っていないことを告げると桜太も捜索に加わる。


太と衣舞は捜索中に自分が くこ に強さを求めてしまったと反省する。そしてキヨは くこ との歴史を、そして片想いに終わる彼女への大きな愛を再確認する。

くこ の居場所は彼女が更新したブログによって知らされる。授たちも同様に居場所を特定し、捜索隊4人は集合する。それぞれが抱える くこ への反省を共有した後、4人は くこ と再会し抱きしめられる。