《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

神様や妖怪から学校・人間活動にテーマを移行し、物語を畳みはじめました

神様はじめました 18 (花とゆめコミックス)
鈴木 ジュリエッタ(すずき ジュリエッタ
神様はじめました(かみさまはじめました)
第18巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★★(6点)
 

巴衛と奈々生のお付き合いがスタート! そんな浮かれ気分の奈々生を前にミカゲ様が釘をさし!? そして舞台は沖縄修学旅行へ。巴衛・鞍馬・瑞希も一緒で楽しい旅になるはずが、霧仁に遭遇! 奈々生の××が奪われて──!?

簡潔完結感想文

  • 一人前の神様になるのではなく人として一人前になるために18巻目で初の勉強回。
  • その前に登場したのが いつなのか分からない名ばかりの親友との思い出と情報共有。
  • 修学旅行回でも奈々生が単独行動し、巴衛が遅れて到着する いつものパターン。

2人の縁を結んだミカゲによる2人の巣立ちの準備、の 18巻。

長い長い過去編を経て両想いになった交際編。といっても日常編に戻ったのかと思うぐらい2人の関係での糖度は低い。一つ屋根の下に暮らす両想いの男女ではあるものの、瑞希(みずき)やミカゲというストッパーも存在して、巴衛(ともえ)が いくら野獣化しても奈々生(ななお)に手出しは出来ない。

これは2人が真に交際をする前にすることが残っているからだろう。その1つが将来を見据えること。これまでは神様と神使(しんし)という関係でいて巴衛は奈々生のボディーガードとして学園生活を送っていたけれど、これからは巴衛が、雪路(ゆきじ)の時には叶わなかった同じ種族で同じ時間を共に過ごすのならば、学園生活は本来の学びの場になる。

それは奈々生側も同じ。話は明らかにその方向に進んでいるとはいえ少々ネタバレになるかもしれないけれど、巴衛が妖怪から人間になるように、奈々生も神様から再び人間になる必要がある。ミカゲ社の本来の神様であるミカゲが20年振りに社に帰って来たのは巴衛を助けるためであり、そして奈々生に渡したバトンを返却するためなのだろう。だから今回、ミカゲは2人の将来を見据えた親代わりのような立場を取る。大変なことに巻き込まれてはいるけれど、土地神としてチヤホヤされて、怠惰と同義のモラトリアムを謳歌するような奈々生の生活を立て直す。お金の悩みも生活の悩みもある俗世に2人を送り出すならば、それまでに そこで生き抜くための力を蓄えて欲しい、というのがミカゲの願いなのだろう。

ミカゲの帰還は2人が未来に飛び立つ準備のためでもあろう。社の守り手は必要だ

また全体的に終わりを見据えた展開になっている。その1つが奈々生の学校生活。白泉社作品の中では きちんと時間の流れてる本書だけれど、それでも あと1年強の学校生活を悔いなく送るため、そして本当の友情を築くために奈々生と初めての友人たちの情報共有がはじまろうとしている。まぁ この友人たちは いつから出ていないんだ、というほど存在感が薄いけれど、奈々生が人間として ちゃんと青春と友情を実感できるように彼らとの交流が再度 描かれる。作品を妖怪学園モノにしようとして友人たちを出したものの、学校が舞台であり続けないために友人たちは放置された。でも出したからこそ再利用できるのだから この紆余曲折も無駄じゃない。式神・マモルくんの放置に比べれば友人たちの扱いは良い…。
そして過去編でも暗躍していた霧仁(きりひと)/悪羅王(あくらおう)の現代での決着を付ける話も進めなければならない。

まとめると、
1.奈々生と巴衛が人間として成長すること
2.残された時間で各登場人物たちとの関係値を最大にすること
3.悪羅王問題に決着をつけること

この3つの問題を描くために両想い後も物語は続く。そして この3つを片付けない限り奈々生と巴衛の本当の幸福はやってこない

日常編に戻ったことで、それまでの疑問が再度 顔を出す。奈々生は中学の時は修学旅行に行けなかったけれど、高校は生活費に困らないから行ける。序盤は社を再興することで収入アップを目指す雰囲気だったけれど、いつの間にかに暮らしに困らない状態になっているのが未だに納得いかない。奈々生がバイトしているとかなら まだ分かるけど、家事は巴衛に任せたまま自立とは程遠い生活をしている。妖怪パートが終わると奈々生の好きじゃない点が幾つも浮かび上がってくるのは本書の欠点だと思う。

この辺の問題を補正するためにも奈々生に一般的な悩みを再度ぶつけたのだろう。最初は白泉社読者が憧れる特権的な地位に一気に上り詰め(しかもイケメン妖怪を従僕させられる)、色々な意味でファンタジー世界になった。けれど、それを現実方向に軟着陸するためにも奈々生が勉強を始める今回のような展開が必要なのだろう。


常が戻り奈々生は巴衛と学校生活を送る。巴衛は下界で生きることを決めた天狗のクラマが全てに全力でテストで好成績を取っていることをしり お手本とする。
巴衛が ずっと人間である自分よりも人間社会に居るために努力していることをしった奈々生は自分に喝を入れて「刺激し合える仲」でいようとする。両想いになったから胡坐をかいていては自分だけが成長しない。今回が本書初の勉強回だろうか。

この流れは奈々生を立派な人間にするため、将来のためなのだろう。社にミカゲがいることで彼が親のような立場に立ち、奈々生が2週間後の期末試験で全教科80点以上とらなければ修学旅行に行かせないと宣言する。それはミカゲの叱咤激励。本当は点数など どうでもよくて、少しでも机に向かって、努力することを学んで欲しかった。

根を詰めた状態でテスト前夜になり、奈々生は巴衛の部屋に勉強を教えてもらいに行った際に彼が不在で そのまま彼の布団で寝てしまう。奈々生が自分の布団で寝ている「据え膳」に対して巴衛は社の中にある人目を気にして接近できなかった奈々生に襲い掛かる。そこに瑞希という抑止力が加わり、巴衛はミカゲに失望される。奈々生の隙の多さが問題でもあるけれど、巴衛だけが非難される。奈々生の逆ハーレムが成立している話とも読める。


々生は友人たちに巴衛との交際を報告。この友人たちは10巻単位で放っておかれた気がするけれど、妖怪学園を再スタートさせるにあたって しれっと復帰する。

そうして向かう修学旅行。瑞希も直前に転入したことにして一緒に参加する。ミカゲ社の財力が底なしになっている…。

妖怪モノの作品なので修学旅行にも妖怪関係者が集合する。目的地の沖縄付近には不穏な空気が流れ、奈々生は空港で霧仁(きりひと)と再会。霧仁の怪我を心配する奈々生はハンカチで彼の血液を拭うが、いきなり霧仁にキスをされる。霧仁がキスをしたのは もちろん愛情などではなく奈々生の精気を吸って自分の体調不良を緩和しようとした。精気を吸われてもケロリとしている奈々生だけど、どうやらキスの時間の長さが短いから問題なかったようだ。


日の夜、友人の あみ が入浴中に沖縄の地元の人魚妖怪・ウナリに誘拐され、男子禁制の場所に誘拐犯がいると聞き奈々生は単独で乗り込む。そこで奈々生は あみ が勘違いで連れ去られたことを知る。あみ は霧仁の血液の痕跡の残る奈々生のハンカチの側に居たから誘拐された。霧仁らしき男が羽衣を盗んだのでウナリは霧仁の痕跡を追っていた。

無関係の あみ が巻き込まれたことに責任感を覚え、奈々生は自分が羽衣の奪還を約束し、代わりに あみ の解放を願う。実にヒロインらしい巻き込まれ方である。

今回のエピソードは奈々生の周辺の人間が奈々生の環境を知る契機となる。あみ が奈々生を尊敬しているけど「いつだって」というほど2人の間に思い出はない。その前のミカゲ社でも奈々生を称賛していたけれど、ヒロインをアゲるばかりの空気感になってしまっていて居心地が悪い。

あみ との思い出は継続的なものではなく思い出は作品の前半に集中している

仁が人魚の所持する羽衣を強奪したのは、黄泉国(よみのくに)の自分の肉体の周辺の炎を無効化できるアイテムだったから。奈々生を人柱にして黄泉国へのゲートを安定させる案は却下したのだろうか。
強硬策に霧仁が走ったのは「霧仁」という肉体の限界が近いから。だから これまでは一線を越えさせなかった夜鳥(やとり)に弱さを見せて なりふり構っていられない。そんな霧仁の状況を見ていられないのが霧仁の式神。ウナリのいる洞窟から海に放り出された奈々生の前に現れ、羽衣と交換に奈々生に条件を呑ませる。その条件は奈々生の精気の全てを霧仁に注ぐこと。そうして霧仁の健康状態を回復させたい。

奈々生は式神の真剣さを自分で判断して、霧仁の居場所に乗り込む。式神の判断に夜鳥は反対するが、霧仁の生への渇望により奈々生は彼に精気を与える。生死の境から復活した霧仁が缶詰を食す場面を見て、意識朦朧とした奈々生は霧仁の向こう側に悪羅王(あくらおう)の存在を見る。どうでもいいけれど過去編の缶詰は缶切りがないと開かないもので、悪羅王は腕力で中身を取り出していたけれど、今回は霧仁の身体ということもありイージーオープン方式の缶詰になっている。霧仁(悪羅王)の方も500年前の出会いを思い出したようで奈々生の命を奪わない道を選ぶ。