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少女漫画と小説の感想ブログです

顔の似た2人が家の中で1人の人間のように振る舞う『ナナミとユキジ』はじめました

神様はじめました 15 (花とゆめコミックス)
鈴木 ジュリエッタ(すずき ジュリエッタ
神様はじめました(かみさまはじめました)
第15巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★★(6点)
 

傷ついた巴衛(ともえ)を救ったのは奈々生(ななみ)だった! ひどい怪我を負った巴衛を抱えて、雪路(ゆきじ)お家に向かう奈々生。しかし、雪路は巴衛を妖怪ではないかと疑っていて!? 過去の世界に関与しないように、奈々生は巴衛を看病しようとするが!? 番外編2本も収録!

簡潔完結感想文

  • 困難も多いけれど、ピンポイントに重要人物に会い続ける過去への旅。初の3巻跨ぎ!
  • 直前にカエルと奈々生を入れ替わりを見抜けなかったように巴衛の人物識別能力は低め。
  • 自分の好きな人の恋が上手くいくよう黒子に徹する奈々生は少女漫画ヒロインしている。

衛の命を助けるために、奈々生の身体が助からない!? の 15巻。

『14巻』に引き続き過去編で『16巻』にも続く。今 作中で起こっていることは、一般白泉社作品における、ヒーローのトラウマや家庭問題への対処なので このエピソードが長くなるのは仕方がないとはいえ長い。しかも本書の場合、現在進行形で問題に対処するのではなく、奈々生(ななみ)が過去に行って、自分の存在を感知させないまま自分以外の女性と巴衛(ともえ)の縁を結ぶ、という間接的な介入なので もどかしさが倍増する。

巴衛の雪路への恋慕の補助線を引いたのは奈々生。同時に本来の矢印の方向は奈々生

話は よく出来ていて感想文のために再読すると、構成の妙に唸らされる部分が いくつも発見できる。『14巻』の感想文でも書いたけれど、まず奈々生は過去を改変するのではなく現在の状況を改善する手掛かりを知るために過去に突入するという姿勢が珍しい。段々と なぜ巴衛が「雪路(ゆきじ)」に懸想するのか、そのカラクリも見えてきたし、これは壮大な すれ違い(勘違い)の恋であることも分かってくる。巴衛の「元カノ」状態の雪路を上手に処理する気配が見えて、一気に視界が晴れる場面の到来が楽しみになる。

大きな困難に立ち向かう奈々生は本当に強い存在で、巻末に収録されている番外編の日常回とのギャップが えらいことになっている。本当に同一人物なのか と疑いたくなるけれど、そのギャップが過去と現代パートの それぞれの楽しみにもなっている。

過去編は ねじれてしまったものを戻す作業であり淡々とイベントが起こるばかりにも見える。なので あまり感想を書くような内容がない。その中で上手いな、と思ったのは過去に行く「時廻(ときまわり)」のリミットを上手く利用して、単調になりそうな物語に小休止を設けていた点。このインターバルによって最少人数の過去編から最大人数が集合する現代編との落差が生まれている。これまで関わった人たちの応援を受けて奈々生が過去に再出発するという流れも良かった。

ただ巴衛の命のリミットがあるため奈々生の疲弊が十分に回復しないまま過去に飛んでいるのが心配。巴衛の呪いを解いても今度は奈々生が昏睡してしまうのではないか。まぁ過去の呪いや記憶の改竄を乗り越えたパーフェクトな巴衛が奈々生を甘やかす場面が早速 見られそうなので それもありか。

気になるのは奈々生は過去への不干渉を決めながら、結局 彼女の存在によって妖怪たちの雪路への執着を集めてしまい、それが彼女の運命を変えているような気がする点。ここも上手に処理されるのだろうか。巴衛の勘違いがなければ雪路は山中で遭難したまま命を終えていたから、その後の人生はボーナスステージと考えることも出来るけれど。


の蛮行で神々の怒りを買った巴衛は戦神(いくさがみ)に傷を負わされ、人間界に逃亡する。深手を負っての妖力節約のためか巴衛は子供の姿になる。『2巻』の打出の小槌(うちでのこづち)のチビッ子化と同じような現象なのか。そして小さくなったことで大妖怪・巴衛ではなく庇護される対象として扱われ、雪路の家に入ることが出来る。

奈々生は巴衛が傷つくことを知っていたから過去に霊薬・桃丹(ももたん)を持参してきたがリュックごと流されてしまい、今は巴衛に この時代の一般的な手当てしか出来ない。更に戦神の特殊な攻撃のため傷の回復も遅い。巴衛が生死の境をさまよっているため、奈々生は彼の好物である笹餅を作ってあげる。笹餅が好物なのは この体験があったからであって、奈々生の行動が因果の始まり。500年の時間が流れても材料が手に入る日本の食という点で笹餅が選ばれたのだろう。巴衛の好物はクレープとかグミでは駄目なのだ。


々生は過去への不干渉を心に決めている。だから奈々生という人格は努めて消して行動する。今の奈々生は居候の身だから熱心に働く。社での家事は放棄するような人だったのに、巴衛の回復を願い、彼の居場所を確保するためでもあるのだろう。ただし雪路は妖怪を憎んでいるから巴衛の本当の姿を知ったら命はない。奈々生以外の周囲の目は厳しい中での看病となる。

奈々生は巴衛を看病する時間にも限界があると考え、川へ自分のリュックの捜索に向かう。しかし奈々生は芯の強いカリスマ性を発揮するが故に男たちからの欲情の対象となる。そのピンチに巴衛の妖力が発動し、昏睡状態でも好きな女性を守るということなのか。巴衛にヒーロー行動をさせたかったのだろうけど、さすがに無理のある弱り方ではないか。


々生は無事に桃丹を取り戻し、巴衛は回復に向かう。そんな頃、雪路は縁談相手に会いに行くため家を空ける。妖怪の襲来で天涯孤独となった雪路は美貌を見込まれ養子になって、そこから自分の家族を作る時期が到来した。自分が家族を築くことは雪路の願いだった。

意識を回復した巴衛にも奈々生は直接 関わらないと決めており、彼が寝入っている(と思っている)時にだけ看病する。一方、巴衛は自分を看病してくれる女性を「雪路」という名前だと思い込んでいる。

そのまま奈々生は雪路の家から去り、そして巴衛は雪路が他の男の嫁になるという話を聞く。巴衛は この家にいる女性は1人だと勘違いし、そして気に入った女性が誰かのものになるなら自分が殺して永遠にしようとする(サイコパス風味)。だが雪路の家を黙って去る奈々生を殺すつもりが、彼女の不調や不運から奈々生を守る。そうして巴衛は自分が この人間の女性に今までとは違う特別な感情を抱いていることを自覚する。


々生が不調をおして行動するのは、自分の目的を果たしていないから。不調の原因は長時間の 過去滞在で、やがて現代に戻る時が迫っている。だから奈々生は戻る前に巴衛に呪いをかけた「神堕ち」に会うために無理を重ねる。だが ようやく出会えた神堕ちに巴衛に呪いの解除を聞く前にタイムリミットが到来。過去で何も出来ずに現在に戻ってしまう。

長い時廻によって身体に過負荷が掛かっていても、目覚めた奈々生は再度 無理をしようとする。そんな奈々生にミカゲは奈々生を大切に想う人たちのために自分を大切にすべきだと身体の回復を優先させる。一度、現代に戻るのは奈々生の単独行動が続いて連載が単調になるのを未然に防ぐためなのだろう。その反動で現代パートでは人の密度が高い。


々生が現代に戻ってからも過去の時間は流れ続ける。巴衛は本物の雪路に執着し、彼女のピンチを救い、彼女の生を願う。少し前まで奈々生がしていたように自分の姿を見せないまま山で遭難しかけた彼女の世話をして、別れ際に名前だけ告げる。

巴衛をパートナーにして神の住まう場所も含めた世界征服を目論む悪羅王は巴衛が自分のもとを去ったまま戻らないことが許せない。側近から巴衛が人間の女性に懸想していると聞かされ、その女の命を狙う。悪羅王は大事なものを秘匿しようとする巴衛の大事なものを見つけるのが楽しいらしい。それは巴衛の心に触れられるからだろうか。


息を経て奈々生は2回目の時廻に突入する。そこで出会うのが悪羅王。現在の魂の座である霧仁(きりひと)には何度もあっているけれど、肉体と魂が一致している悪羅王には初めて会う。それにしてもヒロインはキーパーソンと交流する確率が高すぎる。

巴衛の友人という認識だから奈々生は悪羅王にも臆さず、その物言いが悪羅王に気に入られる。しかし やがて倫理観の違いが明白になり分かり合えないことを理解して別行動を取る。この時、悪羅王に殺害されてしまった人の、生まれるはずだった子孫は現代で存在が消滅したりしているのだろうか。奈々生の行動の被害者になるのかならないのか、あまり深く考えてはいけない。
やがて悪羅王は「雪路」の存在を知る…。

巴衛救出の副産物である悪羅王との交流は今後の物語に影響を及ぼすのだろうか

神様はじめました 番外編 其の一」…
困難に立ち向かっていない時の奈々生の性格は破綻していると思いました。巴衛の隠そうとしているものを探し出して見ようとするメンタルは悪羅王と同種だと思いました。

神様はじめました 番外編 其の二」…
「其の一」とは逆に奈々生が巴衛に見られたくない品、という話(なのか?)。並べると奈々生の身勝手さが よく分かる気がしました。