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少女漫画と小説の感想ブログです

人類最初の三角関係の当て馬が引き起こす迷惑の数々!? 全部お前のせいじゃねーか

神風怪盗ジャンヌ 5 (集英社文庫(コミック版))
種村 有菜(たねむら ありな)
神風怪盗ジャンヌ(かみかぜかいとうジャンヌ)
第05巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

突然告げられた稚空と都の交際宣言。動揺するまろんだが、都に悪魔が憑いていることがわかった!? そして、ついに、まろんと神様の対面の時が…! 神様から人類の運命を託され、ジャンヌとして魔王との最終決戦に挑むまろんだが…。愛と希望の最終巻!!【収録作品】スペシャルカラー口絵 有菜っち美術館/描き下ろし番外編

簡潔完結感想文

  • 人間界での最後の敵は一番戦いたくない相手。当初から構想されていた最終盤かな。
  • フツーの女の子の変身物語ではなく、このカップルは世界で一番 古参の尊い存在です。
  • 神様は人間には不介入だけど天使には介入しまくり。したことに対してフォローが過多。

線が張られている部分と そうでない部分が見え隠れする 文庫版 最終5巻。

文庫版『5巻』で最も面白いと思ったのは(※ネタバレになるけれど)、最後の当て馬が神様だと判明した部分だった。正確には神様が恋をしたのは自分が最初に創った人類2人の内の1人。創世記の内容を神様とアダムとイヴの三角関係にアレンジするのは さすが少女漫画だ。この内容を読んだ熱心なキリスト教信者が神に人格を、それも男性的な想いを抱くような擬人化をしたことに怒り出さないか心配になるぐらいだった。

この人類最初の三角関係から幾星霜、現代で そのアダムとイヴの転生者となるのが稚空(ちあき)と まろん の2人であった。彼らを人類最強のパーフェクトカップルとすることで読者の承認欲求もMAXまで高まっていく。
アダムの力を持っているから稚空はシンドバッドに変身できるのだろうけど、いつ その能力に目覚めたのかとか、シンドバッドの力の根源は何なのかとか明かされない部分が多すぎる。シンドバッドが常にジャンヌを守る行動だけしていれば、それが最初の男性の役目だと分かるけど、どうして彼にも悪魔を封じる力が宿っているのだろうか。アクセスと出会った経緯も、稚空は神様の存在を感じられるかなど、描かれていないことが多すぎる。神様はアダム=稚空には語り掛けないままだし、イヴへの恋心が残り過ぎではないだろうか。神様の小さい器を描いているようにも見える。

まろん側の恋愛解禁は両親のことに整理がついてからだと思っていたけれど、いきなり親友・都(みやこ)に最後のストッパー役を押し付けてきたのも驚いた。両親の不和の解消をトリガーにすると まろん の恋愛が最後の最後まで進まないから、都にスライドしたのだろうけど、これまでの描き方との矛盾も感じる。まろん が都を信じ切れていないようにも見えるし、あまり上手い策だとは思えなかった。

友情が壊れないことを確認してから、相手の胸に飛び込みに行く勝ち確ヒロイン

あと神様が力を回復した世界は何も変わらない。元々人間には不介入を貫いているから そうなんだろうけど、世界が良くなったという実感の不足がカタルシスを奪う。三角関係の逆恨みの結果、という神様の自作自演感も残る。全体的に この世界が偏り過ぎているように思った。
全体的に酒井まゆ さん『MOMO』にも通じる、良くも悪くも「りぼん」っぽい作風だ。


かに作品を最後まで読んだ作者は全てが救われた気持ちになるだろう。そのぐらいハッピーエンドの度合いは高い。けど私のように粘着質に考えると ご都合主義も甚だしく思う。

まず最終回の主役はフィンと言える内容になっているけど、彼女への えこひいきが目に余った。フィンは準天使出会った時も堕天使になった時も その罪を結局 償っていないように見えてしまった。人間の全(ぜん)は不介入を貫いて死ぬけど、裏切った天使のフィンを神様は助けようとするのが納得いかない。全にも救いがあったし、フィンを放置するとハッピーエンドが濁るのも分かるのだけど、文庫版『5巻』の神様は男性的すぎて、女性に甘いエロオヤジ的な存在に見えてしまった。
せめて まろん がフィンを助けるために自分の力を投げ出そうとするとか自発的な行動が欲しかった。その前に神様が「奇跡」の提案をしてしまい、彼女は言いなりになった。神様の勝手な行動が物語もエンディングも台無しにしていないか。それは 神様の天使 >>>> 人間のような構図が完成してしまっていて、人間の読者に不快感が生じてしまう部分にも言える。

最終決戦の内容も私が望んでいたような決戦ではなかったし、魔王も何がしたかったのか何の力があるのか分からないまま。また悪魔がチェスの駒に封じられることに意味はない。最強の駒でもルークやナイト止まりでキングやクイーンなどが未登場のまま。そもそも なぜチェスの駒なのかに理由がない。こういう道具立てに意味を持たせると読者も熱中しやすくなると思う。これが少年ジャンプ作品なら絶対に読者の心を くすぐるような設定を付与していただろう。

一方で まろん の成長そのものは上手く描けているし、女性に純潔を求めることへのアンチテーゼは現代的に思えたのは良かった。そういえば純潔うんぬんを最初に口に出したのはフィンだったような気がしたが、てっきり こういうことで まろん と稚空の接近を阻止しているのかと思った。なのにジャンヌ・ダルクと出会った時に純血が力の源みたいなことを口にして公式設定のようになっていた。その割に公式設定ではない、気持ちの持ち方一つだという説明は迷走しているように思えた。

最終盤はスケール感の小ささ、設定の甘さなど少女漫画の限界を感じさせる面が見えてしまった。序盤の怪盗としての派手な活躍の割に、ラストが人知れず世界を救った功労者というのもスッキリしない。まろん が力を失ったことへの思いとか、これまでとは違う世界の在り方とか全く描かれずに、物語の焦点がフィンの転生に絞られ過ぎていることも不満。裏切り者が出しゃばるんじゃねーよ、と意地悪く思ってしまった。

神風怪盗ジャンヌは最後にとんでもないものを奪われました。それは主役の座です、ってか…。純潔を失ったら主役の座も失って、次の新しい恋であるフィンに全てを持っていかれたように見える。恋愛イベントを全て消化したら新しい恋の方が価値があるようだ。


空が都(みやこ)と交際するという訳の分からない展開から始まる。中盤の稚空=シンドバッドへの不信の時なら いざしらず、最終盤での この展開は彼の心の動きが読み取れなくてダルい。それでも まろん は都の行動を非難する人たちを許さない。自分以外の人を愛していても稚空の幸せを祈れるのが聖女ヒロイン様なのである。

強がっていても孤独や寂寞を感じる まろん の受け皿になるのがノイン。このために500年の心変わりをしたのか。この役目が出来ないから水無月(みなづき)は先に振られ、当て馬を卒業していたのだろう。

フィンも自分を想うアクセスに対して切ない気持ちを抱いているのを挿んで、都が悪魔憑きであることが判明する。これまでは友人の家族関係に悪魔が憑いていたが、ここで一番 近しい人が悪魔に魅入られる。都の、親友の まろん が稚空への想いを話してくれないへの不満や不安を悪魔への隙になった。最後の通常敵が都になるのは当初から考えていたのではないか。


校イベントのキャンプに絵を持っているか? という疑問は、都が持っていた幼なじみの2人が幼稚園児だった時の写真であることが答えになる。強化フォームになってジャンヌの力もパワーアップしており、高位の悪魔を相手にしても無敵の力を示す。
けれど悪魔は都の命を盾に取る。しかし今も都の心が まだあると踏んでジャンヌは変身を解き正体を明かす。その衝撃で都がフリーズした際に再度 変身して悪魔を封印する。都が持っている写真が いつも通り別の物になってしまっても、まろん が持ち歩いていた同じ写真と交換することで都が大切にしていた写真は守られる流れが とても好き。

実は都はジャンヌの正体が分かっていた。今の都は まろん ≠ ジャンヌを証明するためではなく、ジャンヌがヘマをした万が一の時に まろん を逃すために刑事側にいた。そして2人の話題は恋愛関係に及び、まろん は都を傷つけるのが嫌で稚空に想いを伝えられなかったと告げる。こうして親友2人は恋愛の決着で友情が壊れないことを確認する。これで長い停滞も終わる。そして長く失恋を予感していた都は晴れ晴れとした表情を見せ、それが同じく失恋した水無月の心を打つ。最終回直前に身内カップルが予感される。


めて自分の想いを告げようと稚空を捜し出した まろん だったが、彼は自分の抱擁の中から消失してしまう。これは まろん を絶望させるためのフィンの作戦。しかし目の前で死亡するのではなく瞬間移動をしたように身体が消えたことに まろん は希望を見い出す。

自分の甘さを指摘されフィンは いよいよ まろん に剣を向けるが、そこにフィンが堕ちることになった仲間の準天使たちを連れてくる。2人の天使が大きいのは準天使だから大きくなれるのか。設定が よく分からない。
そこからフィンが なぜ堕天使になったかが語られる。それはアクセスと もう一度 会う約束を果たすため。フィンはアクセスが好きで、彼と会うために悪の道を進んだ。んー、堕天使になったらアクセスに触れられないし、そもそも堕天使であるフィンの存在を神様が どうして放置していたのか、ジャンヌの側にいることを許しているのかが矛盾となっている。

自分の気持ちを告げられたことでフィンは自己の消滅を試みる。天使でも悪魔でもない、その中途半端さは世界に許されない存在なのだ。まろん に対する愛情も本物だと告げ彼女は消えそうになる。それをアクセスが、仲間の天使たちが阻止し、フィンだけが正天使になる。これは神が許したから起きた現象らしい。どうも色々と合理的とはいえない展開が続いている。


ろん は自分の孤独を救ってくれた大切な存在を取り戻したが、いよいよ神様の力が衰弱し、地球に危機が訪れようとしていた。そこで まろん は神様のいるらしい宇宙空間(?)にフィンと共に連れていかれる。神様は精神体。人間のような姿をしていない。そして まろん は魔王に生死を懸けたタイマン勝負を申し込まれる。魔王は時間をかけた割に結局、力業にでるようだ。

この世界はキリスト教の創世記が基礎になっているらしい。違うのは少女漫画風アレンジで、神は どちらかというと男性の思考で、自分が創ったイヴに恋をしてしまった。最初の人類で三角関係が勃発し、次元の違う/同じことが恋の勝敗を決め、神は恋愛において敗北する。そして2人の男女に楽園を去られたことで神は孤独になり、その寂しい心から魔王が生まれたという。魔王が人間に害意を覚えるのは、神としての孤独が原因のようだ。その強い害意の割に やることが回りくどい気がするけれど。

神様は魔王を倒す手段として最初の人間イヴの転生者に その使命を与えた。まろん も その一人で神に愛された存在と言えよう。神が願うのは魔王の救済。そして今の魔王は配下のフィンに去られて孤独だという。


の世界のために まろん は24時間後の決闘を承諾する。ちなみに まろん がジャンヌに変身した一つの理由である願いごとの成就は、神様からの提案ではなく、フィンを通じて魔王の囁きだったらしい。設定が複雑になり過ぎて分かりにくい部分が出てきている。

決戦までの24時間で、まろん は稚空に純潔を捧げる。これまで言えなかった彼への思慕、そして彼だけが気づいてくれる自分の不安や恐怖を話してから、2人は結ばれる。神様は自分の目と鼻の先で好きだった女性の性行為を感知しているのか…。ちなみにノインや、ジャンヌ・ダルクと出会った時に純血がジャンヌに変身する条件とされてきたが、気高さと誇りがあれば女性は純潔という解釈で乗り越える。処女信仰を打破する現代的な考えだと思う。ジャンヌ・ダルクは自分でも解説していたけれど、性暴力が原因ではなく気高さと誇りを維持できなかったから変身の力を失ったのだろう。

まろん の決戦の相手は自分自身。虚勢を張って強くあろうとした過去の自分に対し、まろん は戦いを放棄する。義務ではなく自分が思うままに生きる、それが今の まろん が獲得した強さ。だから戦うことなく相手を消滅させ、その手に残った稚空から贈られた十字型のペンダントで魔王が宿る絵を封じる。これにより魔王に魅入られていた まろん の両親は長い長い魅了から目を覚ます。


れた魔王は約束を守らず まろん を道連れにしようとするが、最後の一撃から まろん をフィンが守る。フィンは魔王の孤独を知り、彼が孤独の中で消滅しないよう自分の命を捧げる。
フィンを抱きしめながら憔悴するアクセスを前に、神様は まろん が与えられた「再生力」を与えることで転生が可能であるはずと あやふやなことを言い出す。その代わり まろん(イヴ)の転生も変身の力も失われるらしい。フィンが正天使になったのなんて つい先日なのに、フィンに転生・復活の権利があるというのも謎だ。全(ぜん)は人間だから不介入を続けたけど、フィンは天使だから助かるのか。なんだかスッキリしない理論だ。アクセスも天界で修行して転生を目指すという。2人が再会するためにアクセスはピアスをフィンに渡す。これが転生の証拠となる。

地球に戻った まろん が目にしたのは仲良く並んで娘を迎える両親の姿だった。これが まろん の最大の望みと言っていいだろう。宇宙空間から地球にテレポートしたであろう まろん より海外から航空便で帰国した両親の方が早く到着しているのは どういう仕組みなのか。

そして7年後、24歳になった都(主婦)と水無月(青年実業家)は4歳の息子・心時(しんじ)がいる夫婦となった。稚空は医学部のインターン生なのだが、早くも子供を設けている。都たち夫婦の息子はアクセスの転生先、そして まろん夫婦の子供はアクセスのピアスを握りしめて生まれてきた。名前は魚月(なつき)。初代の魚月から準天使・フィンとなり、再び人間として二代目・魚月になったようだ。

ノインは相棒のシルクがいるけれど独り身。本編では いまいち役割も出番も意味も無かったシルクの存在は番外編で救済される。女性ライバルだった弥白(やしろ)も結婚済み。少女漫画界の結婚年齢・出産年齢は異様に早い。そして全(ぜん)は若くして亡くなったこともあり黒天使になっていた資格を得ている。ちなみに黒天使って堕天使と混同されやすくてネーミングとして良くないと思う。
全の転生は まろん は全く知らないまま。だから これは まろん の救いじゃなくて読者の心を救う展開なのだ。もしくは作者の自己満足。なら最初から死ななくても、と思ってしまうのは読解力が低いと怒られそうだ。

お粗末な六つ子のようなSIX SAME FACES。全員同じ前髪が最後まで気になった

「番外編 Let’s Go シルクロード★」…
シルクはノインが土と水から創った存在。失敗ばかりのシルクに振り回されながらノインの日常は続く。ノインも孤独だったということか。そしてノインは命を創れる時点で神様と等しい力なのではと思うけど…。

「番外編 魚の記憶・月の華雪」…
本編終了から更に15年以上が経過した魚月と心時の恋模様。魚月は自分には前世で約束した恋人がいるのに、心時に恋をしている自分に悩んでいたが、自分の恋心が前世から続くものだと知る、という話。

「番外編 君の「幸せ」になる。」…
まろん は両親との再会後、これまでの時間を取り戻すかのように一緒にいたが、2人とも再び仕事で海外に行く。放置され気味だった稚空は それが嬉しくて喜んでしまうが…。考えてみれば2人の交際編も初めて描かれたと言っていいだろう。

「番外編 魚の記憶・月の華雪2」…
交際においての心時側の心理を描く。前世の記憶が義務感になりかねない、というのは分かる気がする。