
種村 有菜(たねむら ありな)
神風怪盗ジャンヌ(かみかぜかいとうジャンヌ)
第04巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★(6点)
フィンが魔王の手先だと知り、数々の信じられない事実にショックを受けるまろん。アクセスの口からフィンが堕天使になってしまった悲しい過去が語られ…。その後、ジャンヌに変身できなくなってしまったまろんの身に不思議な出来事が!? 【収録作品】スペシャルカラー口絵 有菜っち美術館/ジャンヌspecialピンナップ
簡潔完結感想文
- どんでん返しが繰り返され過ぎると読者側の感覚は麻痺してくる。神が魔王でも驚くまい。
- 複雑な天使誕生のプロセス。その実例はすぐに登場するが もう一つの実例が待っている。
- 過去編で一番驚いたのは後期強化フォームの爆誕ではなく、ノインの意味不明な心変わり。
戦う変身ヒロインというよりセカイ系、の 文庫版4巻。
今後の展開の布石という側面もあるけれど文庫版『4巻』はサブキャラクタや過去に焦点を当てていて、それは まろん の物語を進めずに連載を続ける手法にも見えた。序盤の展開の早さに比べると、現在パートで起こっていることは少ない。説明ゼリフも多いし、悪い意味でオタク臭い作品になりつつある。


そして序盤からずっとヒロイン・まろん にとって辛い世界が提示され続けている作品ではあるけれど、ラストの稚空(ちあき)からの仕打ちは身近な人の裏切りが続いて いよいよ裏切る人もいなくなっていったように見える。それでなくても世界の全てが まろん を悲しませるための装置に見え始めているのに、愛を信じられるようになり無敵のヒーローになったはずの稚空が また同じようなターンを繰り返すところにネタ切れの匂いがする。
まろん への衝撃的な展開の連続はリアルな少女漫画読者には本当にショックで、だからこそ本書が忘れられない作品になるのだろう。それは分かるのだけど、作品と距離を置くと その悲劇性を強調する作風が いかにも少女漫画だなと思ってしまう。色々と理由を付けているものの魔王のジャンヌへの心理攻撃は非常に地味な作戦に見える。
これは最後まで続くけれど この頃から、当初の元気に目的を果たすジャンヌの姿は既になく、目の前の相手にも事情があると戦わずに対話をする姿が目立ち始めている。文庫版『4巻』でジャンヌが戦ったのは後期フォームにパワーアップした時ぐらいではないか。既存の少女漫画とは違う躍動感が作品の特徴だったのに、誰とも敵対しないことが聖女の証になりつつあることが惜しい。
今回の一番の驚きは悪魔騎士・ノインが、あっという間に500年間の恋心を捨てたこと。稚空がジャンヌと まろん を別人格と考えているように、ノインは自分はジャンヌ・ダルクの騎士なのだと役割を固定するのかと思ったら、いきなり まろん に思慕を募らせてきて驚いた。もしかしたら作中でジャンヌ・ダルクが純潔を失ったから興味を失ったのだろうか、とか思ってしまった。もはや ただの性暴力未遂をしたロリコン教師で、500年前に置いて来ればよかったのに、と思うキャラである。
また最終回の前に、まろん の本当の両想い達成の前に水無月(みなづき)に告白の機会を与え、彼が しっかり失恋することで内輪カップルの成立の伏線にしている。ノインは現世に相手がいないから まろん を想い続ける当て馬の役割を果たし、水無月は内輪カップル成立のために まろん への想いに終止符を打つ
告白することが初登場の水無月から成長した部分である。もうちょっとアプローチを繰り返す場面などが挿入されていると もっと良かったかもしれない。全(ぜん)・ノインと立て続けにモテる まろん に告白したone of themになってしまった。そして ずっとずっと好きだったという割にはノインと同じく、この後すぐに心変わりをする。
主役カップル以外は別の人を経由して次の人を見つける。リアルな心の動きだけど、彼らが主役カップルの引き立て役になっているという見方も出来る。読み進めるほど、まろん が世界の中心で世界一気高く淋しいという偏りが目立ってきてしまっているように思う。
強い自分を具現化してくれるジャンヌになる際から ずっと味方だったフィンは準天使ではなく魔王に忠誠を誓う堕天使だった。それだけでなくフィンは まろん を大嫌いと拒絶する。傷つけることこそがフィンの目的。まろん には 神の1/3の力が分けられており、その命が転生し続ける限り神の力は世界から消えない。ならば その存在を内側から破壊し壊す、というのが強大な力に対抗する魔王の計画だった。ちなみに文庫版『2巻』のラストの事件で、まろん が都を守るために聖なる力を解放させたのは魔王の指示に従ってしまったからだった(分かりづらい伏線だ)。これで まろん の外殻は消滅し、魔王は乙女の心に干渉できるようになったようだ。
そして堕天使は まろん の両親は17年間 魔力によって操られていたと告げる。幼い頃の不仲は彼らの自発的な思いではない。まろん = ジャンヌを苦しめるために彼らの人生は操られていたのだった。
家族代わりだったフィンまでを失い まろん は絶望する。悪魔騎士・ノインはフィンの存在を知っているようだ。そしてノインの口からフィンは どこの世界でも中途半端な存在で、だからこそ魔王に忠誠を誓うことで精神の均衡を保っていることが明かされる。
フィンが堕天使になった経緯には色々と設定が作られているけれど、面倒くさいので割愛。この回想の中で また新キャラのイケメンが出てくる。フィンがイケメンに恋をしていると思わせて、彼女の胸に鳴り響いていたのは警告音だったというミスリードが面白かった。
天使の設定は宗教の教義のようだが、この中で大切なのは、神様から与えられた命が残ったまま死ぬと天使になること、そして天使は聖気をためると人間に生まれ変わること。しかも前世で縁深かかった人の近くに生まれるらしい。
このルールの実例は すぐに挙げられる。フィンが天使になったのも命が残されたまま死んだ人間だったから。フィンは人間の無限の欲望に巻き込まれそうになった時、力を暴走させてしまい天使の地位を剥奪され、楽園追放処分となった。それは死刑と同義だったけれど、その直前に魔王に呼び止められ、堕天使となって生きることを選んだ。
絶望しても強い自分でいようとする まろん は学校を休まない。けれどロザリオは石になり もうジャンヌには変身できなくなった。フィンのいない現実を振り払おうとするけれど、心の不調は やがて身体にも影響を及ぼす。
その まろん を稚空は精神的に支える。まろん は まだ稚空の愛を全面的に受け入れることが出来ない状況だけど、それでも稚空は献身的に彼女を支えたいと願っている。それが稚空の愛なのだ。
悪魔の気配を察知しても今の まろん には戦う術がない。だから稚空がシンドバッドとして出向くのを見送るしかない。そこにフィンが現れ、まろん を魔王側に勧誘する。けれど まろん は稚空を、自分を信じる。願いごとが叶うという見返りがなくても、多くの人を幸せに出来る道を独力で模索する。それが まろん の進む道なのだ。
まろん の予想外の強さにカッとなったロザリオをマンションの部屋に投げ捨てる。それを追い まろん はダイブして話し合いを聞いていたノインによって助けられる。…がノインはダメージを負ったのか? 一連の動きが分かりにくい。残ったのは地上で気を失った まろん。その まろん を都が発見して救急車を手配する。
現代で昏倒し続ける まろん の意識は500年前に飛んでいた。そこで まろん の意識は自分の前世、ジャンヌ・ダルクと出会う。その日はジャンヌが処刑される前日。分かりにくい描写だったけどノインも昏倒したため、同じ時代に飛んでいて、彼が まろん の解説者 兼 ナビゲーターになってくれる。まろん の誕生日5月30日は、ジャンヌ・ダルクの処刑日に由来するのか。


ノインは変身できない まろん に代わって、ジャンヌ・ダルクの処刑を急ぐ司教たちに憑りついている悪魔の封印を、牢から出したジャンヌ・ダルクに その役目を果たしてもらおうとする。それは歴史の改変となり、まろん の存在が消滅するかもしれないが、まろん は全(ぜん)に続く「2度目の」人の死を回避しようとする。
ノインは過去の自分が魔王に下るのを阻止するために別行動となる。この際、まろん はノインの性暴力未遂は本気じゃなかったと許す。だからと言ってノインのマントの中で抱かれるように眠ることを許すことには ならないと思うのだけど、今はイケメンキャラがノインしかいないのでヒロインは甘えるのが正解なのだろう。今回の経験を通して、ノインは まろん とジャンヌ・ダルクを別人だと考えられるようになるが、なぜか よく分からない結論を出してくる。
まろん は自分の存在が消滅するかもしれない行動に出る前に、稚空から贈られたペンダントを着ける。意識だけが過去に飛んだのではなく、物質的に飛んだということなのか。じゃあ、現在で昏睡する まろん の肉体は何なの??と言いたくなるし、その割に まろん は この時代の一般人には見えていないので、やはり精神体なのかと思う。
ジャンヌ・ダルクは まろん の願いを聞き入れない。なぜなら彼女は司教たちによって純潔を奪われたという。だから自分の死亡時に放つ最後の神力で悪魔に魅入られている司教と この街の住民を救うという。自分が晒し者になっているのも浄化には好都合だと考えていた。ノインが知ったら怒りで虐殺を始めそうな展開だ。言葉だけとはいえ低年齢が読むには えげつない設定を用意している。
まろん は全に続いて自分の目の前で命を終える人を見るのが忍びない。だから最後まで抵抗する。その姿に自分には持てなかった信念の力を見い出したジャンヌ・ダルクは自分の力を放出するのではなく、まろん に託すジャンヌ・ダルクの力は稚空から贈られた十字のペンダントに宿る。そしてジャンヌは強化フォームというべき2つ目の姿を手に入れる。死にゆく人が最期に まろん の名を呼ぶのも全と同じ展開となっているのが良い。ペンダントが実体かどうかが問題なのではなく、少女漫画で愛の象徴であるアクセサリを まろん がちゃんと過去にも持っていったことが力に変換されるのだろう。
しかし慣れない姿、相棒のフィンもいない状況で強化フォームお披露目の無双状態にならないままピンチを迎える。そのピンチを救うのは時空を超えた稚空の声。現在の まろん の覚醒を心から望む その声を聞いて まろん は無敵の勇気を手に入れる。その心に反応して まろん は剣を手にする。新体操のリボンに比べると攻撃特化型で、「ジャンヌ」の最大の特徴が無くなったようにも思える。良くも悪くも洗練されすぎている。
この時代の悪魔を封印すると竜巻が起こり、まろん は風によって現在に運ばれる。ちなみにノインは自分を悪魔から守るどころか、過去の自分に悪魔を憑りつけていた。どうやら未来の自分が悪魔を憑依させるのは決まっていたことらしい。しかもジャンヌ・ダルクではなく、まろん と一緒にいる未来のために現在に帰る。あれほどジャンヌ・ダルクに忠義を誓っていたはずなのに、浮気が早い。
目が覚めた まろん の横には稚空がいて、彼女の命を確かめるように きつい抱擁をする。彼の愛を感じ取った まろん はキスを交わし、時空の旅を終える。
これで ようやくフィンの裏切りから止まっていた時間が流れ出したと言える。まろん は黒天使のアクセスが魔王の手先ではないと分かり、シンドバッド一味との敵対関係を終了する。そしてフィンによってもたらされた両親の悪魔憑きの反動として、これまで絶対に掛けられなかった父親への電話をする。留守番電話であるものの、これまでの鬱憤や放置された子供の寂しさを力強く訴える。これはタイムスリップしたことで、人生にやり残したことがないように、と考えたからだった。そして稚空への告白も その一つ。しかし まだ素直な気持ちを告げることは出来ない。そんな中途半端な状況に稚空は まろん に欲望を抱くが、フィンの後釜として早く準天使になりたいアクセスが神の眼として機能し始める。乙女の純潔を守ってることを神にアピールしたいらしい。
そんな2人の両想いを前に、残される人々の恋心に決着を付ける。まずは水無月(みなづき)。初登場から外見も性格も変わった彼が改めて告白し、そしてフラれる。フラれたことで当て馬を卒業し、そして別の恋のルートが開けるのだろう。ちなみに まろん は水無月の恋心を全く感知していなかった。彼のためにも稚空への告白を決意した まろん だったが、フィンは まろん を絶望させる手段として都を利用していた。これは丁度 まろん の目に稚空しか映っていない頃合いとリンクするので、確かに まろん が生んだ隙にも思える。
「番外編 即席!? アクセス伝説★」…
本編では実現不可能だからか、いわゆる惚れ薬回のような感じでフィンがアクセスを好きになる一瞬の幻を見せる。しかしアクセスは自分の信念を忘れてしまっているフィンは自分の好きなフィンではない。だからフィンに嫌われても本来の彼女を取り戻す。

