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少女漫画と小説の感想ブログです

自国内では身分を隠して水戸黄門にもなれるが、他国に行けば王子という国の顔

呪い子の召使い【電子限定おまけ付き】 4 (花とゆめコミックス)
柴宮 幸(しばみや ゆき)
呪い子の召使い(のろいごのめしつかい)
第04巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

不死×毒×王道主従ファンタジー、第4巻!レネと王子の前に現れた、王子の元婚約者・マチルダ王女。まだ王子が好き&命を狙われているようで…。王女を想う従僕・ラウルの思惑も絡む中、王女が誘拐され!?「婚約者」編の行方は…?呪いを抑える鉱石を求め異国情緒あふれるカラ国訪問中、温泉&王子看病イベント発生の「鉱石」編もスタート!

簡潔完結感想文

  • それぞれが盲点になっていた一番近くにいたい人の姿を再確認する婚約者騒動。
  • フーの再登場で始まる鉱石編。その始まりはデート回に風邪回と愛しさの再確認。
  • 今回は王子の身元を明かしての初めての巡行。他国に介入できない難しさに直面。

・引きこもり王子は広い世界で見聞を広める 4巻。

いきなり余談だけれど、不死の呪いと変換しようとして父子になって気が付いたけど、レネの呪いが不死であり父子なのは単なる偶然なのだろうか。

さて主な舞台が王宮(『1巻』)→地方(『2巻』)→王宮(『3巻』)と移って、『4巻』では初めて他国に赴くことになったレネとアルベール王子。
『2巻』で地方に行った際は身元を明かさずにいたけれど、今回は外交上の問題から最初からアルベールが王子として行動する。これによって手厚い もてなしを受ける一方で、行動が制限され、アルベールは常に国の代表として動かなければならなくなった。こういう立場の違いを示す細かい演出やエピソードが本当に上手い。ちゃんと作者の中で世界が構築されている。2020年代は頭を使わなくて読めるような作品が流行しているけれど、ちゃんと世界が描かれる作家さんへの評価と活動を保証して欲しいものだ。

王宮の一部では呪い子はマイノリティではない。これを危険視する臣下もいるはず

守られた王宮で暮らすだけでなく、広い世界を見て回ることで王子が賢帝になる礎を築いていくという流れは、『精霊の守り人』から始まる上橋菜穂子さんのシリーズを連想した。違いは、アルベール王子の横には常に精神安定剤といえるレネがいることだろう。この辺が いかにも少女漫画といえるけれど、レネだけがアルベールに触れられるという「呪い子」の設定があるから、ニコイチの行動にも ちゃんと理由が用意できるところが良い。

ただ一方で本書には「呪い子」という縛りがあるように見え、その土地の(暗い)秘密と その裏にいる呪い子という構図は早くも既視感がある。この辺は私が連続して読み通したのも悪かった。以前のエピソードより深いものを描こうとして、重い内容に偏らないかも心配だ。読者は人間ドラマは見たいけど、それほど重い内容は望んでいないはずだ。

上述の「守り人シリーズ」が10年間に亘って描かれていたのに対して(作者は別の仕事もあったという事情もあるけれど)、本書は月2回の連載で、訪れた国の歴史や背景を考案する時間も足りないのが大変そうである。数十万部も売れた実績が出来れば途中で休載してネタを用意する時間も与えられるのだろうけど、まだまだ駆け出しの作者には難しいだろう。漫画家は過酷な職業だなぁと痛感する。


前も書いたけれど、作者は緩急の付け方が上手い。もしかしたら次のエピソードのネタを捻り出し、練り上げる時間稼ぎなのかもしれないけれど、1つのエピソードが終わった後の日常回で時間の流れや人の輪が広がっていく様子を描けている。

また少女漫画として日常回は束の間の小休止で、シリアスから一変して糖度の高いシーンが挿入できるタイミングとなっている。今回は お茶会が次の行き先を決め、デート回で外出先での2人きりの時間が流れ、風邪回でレネにとってアルベールが どれほど大切な存在かが描かれる。ピンチの時には格好良くて能力の高さを見せるアルベールが、日常回だと年上女性に恋心が空回りしていく姿が見られるのも良い。白泉社らしいヒーローと鈍感ヒロインの構図に加えて、身長差や年の差を乗り越えようとするアルベールの奮闘が可愛い。それでいてピンチの時は誰よりも格好いいのだから、変身ヒーローのように活躍するから、この辺も緩急になっている。

今回は呪いのコントロールがテーマでもあって、アルベールや再登場したフーが能力を使いこなそうとしている。一方で不死の呪いが いつも発動している状態のレネも力のコントロールが出来るなら、意識的に死ぬことも可能なのだろうか。
そういえばアルベールはレネのことを考えると心が落ち着き毒の呪いが発言しなくなるけど、今後 レネがアルベールを本格的に好きになって、彼のことを考えながら満たされた気持ちで階段を踏み外したりしたら、その時 彼女は どうなってしまうのだろうか。

恋によって呪いを克服しつつあるアルベールと逆に、レネは恋を知って死んでしまうという残酷な未来を描いたりしたら読者が壁に本を投げつける事態になってしまうだろう。


・マチルダの命を狙う隣国の王子・ロイ。マチルダも病んでいたが、弟のロイも精神的虐待をして子供たちをコマとして育てることしか考えられない父王の被害者だった。姉弟2人は寄り添いながら生きていたが、マチルダの婚約が決まり、2人は各自 望まれる役目を果たさなければならない時が来た。しかしロイは それを裏切りだと感じた。マチルダは自分が望んでも得られない王への道を歩けるロイが羨ましかったが、ロイには自分が姉よりも恵まれている自覚がない。年齢差による精神的な成熟度の違いなのか、持つ者の思慮の不足なのか、ロイは少し幼い。そして一方的に姉から裏切られたと被害者意識を持って、姉を愛しているから憎み、自分から離れないように画策した。

チルダは弟に恨まれ、好意を寄せるアルベールに拒まれ絶望の中にいた。それは彼女の心が本格的に黒く呪われることを意味していた。しかしマチルダもまた自分の持っている者に気づかないので、従者・ラウルの存在が見えていない。
反対に、距離を取ると物事が見えるからか、ロイはラウルが呪い子ではないことを見抜く。目の前で薬でドーピングした現場を見たとはいえ察しが良すぎる。マチルダはその真実に裏切られたことよりも、自分が何も見えていなかったことに気づく。彼女にも「一番近く」にいる人はいたのだ。


度は2人で地獄に行く覚悟を決めたところで、レネとアルベールが到着する。レネはマチルダに自己肯定感を回復させ、アルベールは再度 姉に捨てられたと自害を試みるロイを、叔父・オリヴィエの一件を例に出し阻止する(『1巻』)。2人は それぞれ姉弟の呪いを解いたと言える。
姉と違って「一番近く」にいる人が思い当たらないロイはグズグズするが、そこに姉は鉄拳制裁で弟に喝を入れる。2人の姉弟は再び手を取り合って自分たちの罪や運命に向き合うことを約束する。

こうして隣国の お家騒動でもあった婚約騒動は、マチルダ側が婚約を白紙に戻すことで終了。ちなみにラウルは治療すれば回復するらしい。命を縮めて前借りしていた力のことは有耶無耶になる少女漫画的な ご都合主義か。ちなみに弟・ロイの方は しっかり罰を受け、この後の展開に出てこず、マチルダが次代を担うような描き方になる。

この一件は隣国同士の関係性の強化への一歩となる。姉弟とは別の意味で病んでいる父王を説得するのは難しいだろうけれど、それを達成することがマチルダの目標となる。マチルダは愛を行動理念とする王女となり、その態度は父王をも圧倒する。病んでいるだけで あっという間に改心してしまうところが似た者親子の3人なのかもしれない。

しかもマチルダのアルベールへの好意は本物なので、彼女は目標達成後の再アタックを約束。一気にラウルと恋仲になる訳ではないようだ。


チルダ一行と入れ替われるようにフーが『3巻』での約束通り王宮に やって来る。そして自分を信頼してくれた騎士団長・ギヨームとも再会し、騎士団入団を考えるようになる。アルベールが王になった時、それを守るのがフーという友情と信頼は熱い展開だ。

フーは王宮でジゼルやロザリーとも顔合わせをして、お茶会を楽しむ。呪い子が4人集まる呪いのお茶会で、話の流れから「炎のフー」は「氷のジゼル」と対決関係になっていまう。そして早く呪いをコントロールしたいがあまり焦るフーの能力が暴走し、それを能力者たちが止める騒動が起こる。危険を冒してもフーを止めようとする彼らの間にある友情や愛情が良い。ただフーは王子を危険に晒したことで罪に問われかねないと思ったけど。

この騒動は全てが次のエピソードへの布石。フーがまだ未熟なこと、能力の暴走が呪いを制御する鉱石と関係していることが描かれる。なのでフーの暴走阻止のためにも、次の目的地は鉱石の産出地の国に設定される。


回は、アルベールが素性を明らかにしたままの最初の巡行といえる。向かった国は既に友好国なので国同士の衝突の心配はない。しかし国が違えばルールが違う。そして新しいキャラも登場する。
主に交流するのは採掘場の統括者のアイシェンという女性。まずは彼女を案内役として観光する一行。この地特有の衣装を試着することでコスプレのような場面が出てきて、レネは豊満な胸を持っているという設定が出てくる(そうだったのか)。

いきなり本題には入らないので、観光中にレネがナンパされたり、買い物デートのような1日を過ごす。ただ作者が巧みなのは その日常回の中に今後の布石を しっかりと置いているところだろう。レネに見守られて足湯に浸かっていたアルベールが戻ろうとしたところ、呪いを発動しながら倒れてしまう。

アルベールの異変を聞いたアイシェンが駆けつけ、彼女は この国では ある山に入ると体に異変が起き、皮膚が固くなり死に至る病が過去に流行したことがあり、その病との関連を心配した。しかし そういった症状は出ていないため山々の国で標高が高いことから疲労と環境で倒れただけだと判断され、アルベールに触れられる唯一の存在であるレネは看病に勤しむ。風邪回は相手への慈しみが増す機能がある。

ただ毒の呪いは薬の効果を打ち消す。それは倒れる前の足湯の場面で示されていたこと。だからレネは本当に身の回りの世話しか出来ず、このままアルベールを失う恐怖に呑み込まれそうになる。人を失うことは不死のレネにとって最大の恐怖。レネの養父であるカガリから話を聞いていたフーが励まし、レネも以前のように恐怖に身体を支配されない。そう思えるのはアルベールの存在があるから。

アルベールが目を覚ました途端、不眠不休の看護を行っていたレネは眠りに就く。その2人の様子を間近に見ていたフーは そこに呪いをコントロールするヒントがあると考える。


うして滞在先に足止めを食らう中、フーは奴隷時代に懇意になったカヤと再会する。フーは呪い子であったから奴隷に売られたように、カヤもまた呪い子。彼の能力は「岩」。カヤは呪い子を処分する者の手から命からがら逃れ、アイシェンに拾われた。カヤとアイシェンもまた恩や主従関係がある。マチルダとラウルの関係に近いが、カヤの能力は本物。

アルベールが回復し、鉱石が発掘される山々に視察に向かう。その際にフーはカヤに呼び出され、王子たちと別行動をする。呪いを抑える鉱石の採掘場は視察不可。しかし採掘はされ続けていることに この国の闇が浮かび上がる。

その秘密の採掘場の実態を教えてくれるのが別行動組。その場所は呪い子しか入れない、呪い子の労働場所だった。その場所は万物に流れる「力」が強い場所。人の持つ思いが強すぎると力は呪いに変換されるらしく、それならば最初から呪いを受けている呪い子を労働者にしようと言う考えなのだろう。呪いを抑える鉱石も、抑えると言うよりも力の均衡を保つ効果がある発動しているらしい。

岩の呪い子であるカヤは採掘と相性が良いが、フーに採掘を見学させた直後、彼は倒れてしまう。助けを求めて戻ってきたフーにアイシェンは疲れだと診断するが、フーは納得がいかない。そこでアイシェンを尾行して、彼女が王族にも呪い子の異変を内密にしていることを知る。


イシェンが向かった先の部屋には、建前とは違う病にかかった呪い子たちを治療する部屋を発見する。確かに呪い子は病にかからなかったはずだったのに、1年前から呪い子たちが過去の流行り病に倒れることになった。しかし病の発生源が呪い子以外入れない採掘場であるため、政府は報告を黙殺。その現状にアイシェンは独自の調査を開始する。

ガスが病の原因だと突き止め、そこで出会った謎の能力者によってガスは止められた。束の間の平穏の間にアイシェンは再度 王族に報告をするが、国益を優先し、呪い子たちが仕事を失うと言われ、今度はアイシェンが沈黙する番となった。

王子という立場の制限や限界を知ることも今のアルベールにとって大切なこと

この問題に対しアルベールには解決策が浮かばないため、彼らも沈黙せざるを得ず すごすごと引き下がるしかなかった。しかしフーは熟慮した結果、病の発生源がガスならば自分が燃焼させれば解決すると考える。
共に奴隷時代を生き抜いたカヤのために早速行動しようとするフーだったが、他国の事情に介入することになるアルベールは動けない。そのアルベールの態度にフーは失望し、彼らの友情が瓦解寸前。それでもレネやギヨームに励まされ王子として出来ることを考え、アルベールは前進する…。