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呪いのコントロールに必要なのはアイテムではなく信頼してくれる第三者の存在

呪い子の召使い【電子限定おまけ付き】 3 (花とゆめコミックス)
柴宮 幸(しばみや ゆき)
呪い子の召使い(のろいごのめしつかい)
第03巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★(6点)
 

不死の呪いを持つ少女・レネは、ひょんなことから毒の呪いを持つ王子・アルベールの召使いに。レネの故郷で「炎の獣の災い」を調査する二人。炎の呪い子の正体と事件の真相に迫るも、二人のいる屋敷に火が放たれ…!?

簡潔完結感想文

  • 授けられたアイテムが訪れた村のピンチを救うRPGな展開。王宮に戻ると時間が経過して…。
  • 王子の前に登場する闇(病み)婚約者。レネに会う前のアルベールとは気があったかも?
  • 忌避される存在として描かれる呪い子を自称する従者。本書では主従関係が一番尊い

泉社らしからぬ正常に流れる時間に戸惑う 3巻。

この『3巻』では「一番近く」という言葉が強く胸に残った。今回、2人(特にレネ)は恋愛感情を飛び越えて、生涯の伴侶として相手を選んだように思う。

また漫画作品に対しての誉め言葉になるか難しいところだけど、テンポと話の構成が上手さから読んでいるとRPGをプレイしている感覚になった。延々と同じことを繰り返すことが許されている(?)白泉社作品の中で、ちゃんと時間の流れや、それに伴う環境の変化が描けている人が私は好きだ。それは想像力の産物だと思うから。本書は短期集中連載を繰り返して、一度 完結した物語のその先を何度も描くことになっているけれど、作者は この世界を動かし続けてくれている。しかも似たエピソードの連続ではなくて、エピソードゼロやアレンジを加えたエピソードの挿入のタイミングが とても巧い。

相反する呪いによって側仕えになれたレネだけど、地位と覚悟を持つ者には敵わない

今回、私が好きだったのはヒロイン・レネの原点を描く彼女の故郷の地方巡行と、そして王子・アルベールの幽閉終了がもたらすエピソードの繋ぎ方。短期集中連載だった故郷編の10話までと、婚約者騒動が本格的に始まる12話の間にある11話の存在が光っていた。11話は本書初の「日常回」と言える内容で、レネがこれまでのアルベールへの感謝を形にして、2人の関係性を整理し、発展の予感を秘めたエピソードになっている。ここで一呼吸置き、そして2人が互いに離れ難い存在だと実感した上で婚約者の登場となっているのが作者の話のコントロールが巧みである証明になっているように思えた。

また この婚約者の出現のタイミングも いかにも追加のエピソードにしていないのも良い。一国の王子であるアルベールに婚約者がいるのは変ではない。そして婚約者が現れるのは、王子の幽閉(公的には療養)が終わって、王子側に応じる態勢が整ったのを見計らっていたから、という理由付けも上手い。レネたちが故郷に言っている間に、婚約者である隣国の王女が、アルベールの実情を把握するという時間の流れ方も上手く利用している。

あと故郷編のラストに、その前の宰相編で入手したアイテムを活用するという流れも上手い。このアイテムが どう作用しているのかは いまいち伝わってこなかったけど、アルベールが渡したアイテムによって人の信頼が生まれ、その信頼で呪いがコントロールされる本書の変わらない核が描かれていた。

そういえば婚約者編といい本書は それぞれの主従関係が肝なのだろうか。主従の順番が逆だけど、レネとアルベールもそうだし、ロザリーとジゼルもそう。今回のラウルとマチルダもそうだし、ネタバレになるけれどフーを信頼した人も そういうこととなる。カップリングとはまた違う、信頼を基礎とした関係が何組も描かれていることが本書の清々しさに繋がっているのだろう。


して何と言っても この婚約者騒動では呪い子が登場しない、という点が本当に上手い。もし ここで呪い子が出てきたら読者はマンネリを感じただろう。しかし作者は ここで呪い子を自称する者を出して、呪い子の登場しないエピソードにした。そこにセンスを感じた。

これまでは呪い子であることは自己否定に繋がってきたけれど、今回は呪い子であることが自己肯定に繋がっている。しかし真相は そうではないから彼の懊悩は深くなってしまう。そして呪い子であってもなくても、人が呪いに囚われてしまうのは これまでも描かれてきたこと。その呪いに囚われた人たちは どこかしら1話以前のアルベールとの共通点がある。矛盾した話になるけれど、アルベールがレネと出会わなければ、マチルダとの婚約話は後ろ向きに前進したのではないか。2人とも自暴自棄の精神を持ったまま、自分の与えられた役目を全うすることを目的に生きたかもしれない。アルベールの呪いによって2人は決して触れ合えないが、2人は それでいい。世継ぎの問題が出たら、もしかしたら第三者の子を産む覚悟があったかもしれない。そういう互いの利害のためだけに夫婦になった可能性は高い。その場合、一応アルベールの優しさに惚れているマチルダが より多く苦悩することになりそうだ。

そのマチルダを見ていると、呪われているはずの呪い子の親子関係よりも、呪いのない子の親子関係の方がは冷たいように思えた。呪い子は世間から忌避される存在だけど、その呪いは親から与えられた願いでもあることは何度も描かれている。
そして それは実の親子でなくてもいい。レネとカガリという義理の親子でも、そして上述の主従関係の話にもなるけれど自分の「一番近く」にいてくれる存在が居れば、それでいい。一番の不幸は呪い子であることではなく、自分の心を理解してもらえないことだと、マチルダやフーのエピソードは訴えている。


事が露見し追い詰められた領主は屋敷に火をつけてアルベール王子たちを亡き者にしようとした上に、レネの故郷にも火を放ち、全てを「炎の獣」による厄災に仕立て上げる。

火災による建物の崩壊に巻き込まれたカガリは自分の死を悟り、娘と別れの言葉を交わす。親であり恩人であるカガリを失う恐怖にレネは囚われるが、そこからアルベールが彼女を助け出し、希望を与える。絶望を反転させたレネは一気に脱出。以前から不死だけじゃなく「怪力」のスキルも宿しているように見えるのは気のせいだろうか…。
気を失ったカガリが目を覚まし、無事を確認したところで、レネとアルベールは領主を捕縛する。記録から彼の悪事も露見し、裁かれることとなる。


一方、フーはアルベールによって自分の運命や過ちを呪うばかりの精神を立て直され、自信と やり直すチャンスを与えられる。村の火災を抑えようとするフーを、アルベールの命により村の護衛に就いていた騎士団長・ギヨームが発見し、王子の持ち物である呪いを抑制する腕輪を所持する彼の正体を誰何し、信頼する。以前のエピソード終了時に与えられたアイテムが、後に役に立つ展開は ますますRPGっぽい。

ギヨームは呪いが人を救うケースを見てきた理解のある人。カガリに続き自分を信じる大人と接し、フーは自分を縛っていた呪いと首輪から解放され、火災を自分の炎で抑え込むことに成功する。ここでの得られた信頼や自信がフーの人生に大きく関わると言っていいのだろう。

火災が制圧し落ち着きを取り戻した村人たちだったが、この火災も呪い子であるレネの訪問がキッカケだと疑念を抱く。それにレネは真っ向から反論する。これは以前の彼女には出来なかった勇気ある行動だろう。そしてレネはフーに やり直す機会と居場所を与えてほしいと願う。世界のどこかに居場所があるだけで呪いのコントロールは容易になることを彼女は知っている。王子という身元が知れたアルベールも頭を下げ、フー自身も反省の態度を示したことで村人たちはフーを受け入れる。村に残れることになったフーは今度は自分が王宮に会いに行くと約束を交わす。


台は再び新年の祝祭の準備に忙しい王宮に戻る。王宮では氷漬けになっていたジゼルが社会復帰して再登場する。その頃、アルベールに縁談の話が持ち込まれていることはレネに知らされないままで、レネが いつも助けてくれるアルベールへの お礼の品を選ぶという日常回となっている。縁談話をレネに知らせようとする男どもをジゼルとロザリーが呪いと暴力で口封じする様子が面白い。

レネはアルベールの好きなソルベを作って(ジゼルの呪いの使い方…)、縁起物の花を飾り、(縁談で)疲弊しているアルベールの気持ちを癒やす。レネからの もてなしにアルベールは喜び、2人の間に良い雰囲気が流れる。


かし それを切り裂くのが隣国の第一王女、マチルダ・サラ・エーレというアルベールの正式な許嫁だった。時に暴力的な行動に出て、有無を言わさずワガママを通すクレイジーな感じは完全にコメディ。本人には悪いけど、アルベールには女難の相が よく似合う。

王子でありながらマイペースやパワフルやメンヘラなどに振り回され続ける運命か…

チルダはロザリーに続くレネの仮想敵のはずなのだけど、この時点では少しもアルベールに恋愛感情を持っていないレネは婚約話に浮かれるだけ。マチルダはアルベールに優しくされた一度きりの幼い頃の邂逅から、療養という名の幽閉期間を経ても ずっと彼を思い続けていたという。祝祭は婚約発表の場になる予定で、残された時間は数日となる。

レネの反応が面白くないアルベールは婚約を破棄したい方向性なので、自分の呪いを公表して破談に持ち込もうとする。しかしマチルダはアルベールが呪い子であっても構わない。本書で初めて(呪い子ではない)一般人なのに最初から呪いを受け入れた聖女とも言える。マチルダが呪いを受け入れることが分かって初めてレネの心が波立つ。もしかしたらレネはアルベールを受け入れる女性などいないと高を括っていたのかもしれない。これは呪い子の傲慢か。


ネは婚約によってアルベールの「一番近く」を奪われることを初めて自覚する。そして自分の発現でアルベールに呪いが浮き出るほど彼を不安にさせたことも知る。だからレネは正直に婚約によって、自分が一番近くに居られないことは嫌だと王子に伝える。

そんな2人の急接近にマチルダが暴力で割って入る。しかし今回は破滅の呪い子であるラウルの能力を使う。実力行使に出ようとするマチルダは、傷が回復するレネを見て、彼女も呪い子であることを知る。その特別な結びつきを見てマチルダは感情が昂り、生きていけないと自害を試みるまでになるが、そこで疲労がピークに達して気を失う。

ヒステリックな王女様が静かになったことで、従者・ラウルとアルベールたちの冷静な話し合いが始まる。アルベールは今回の婚約話の展開が急すぎることを察していた。以前から婚約の話は出ていたが現実味が乏しかった。けれどマチルダは過去の約束を持ち出し、早急に話をまとめようとしている。


の裏にはマチルダと弟との骨肉の争いがあった。弟から命を狙われている彼女は祝祭に合わせて婚約を公表することで自分の身が隣国のものでもあることを示して安全を確保しようとしていた。そして従者・ラウルも個人的に婚約成立を急ぐ理由があるらしい。

ラウルによってマチルダが目を覚ました時のために邪魔者であるレネは遠ざけられる。しかしレネはラウルが落とした薬から彼の事情を察し、王子の元に戻る。その薬は単純なドーピング。身体に負担をかけて身体能力を上げていた。彼は呪い子を自称する一般人だったのだ。
両目がそれぞれ違う色をしたオッドアイのラウルは呪い子だと噂され、マチルダに勘違いされた。忌避されてきた自分の瞳を認めてくれたマチルダはラウルの救いになり、彼はマチルダのために生きることを決めた。しかしマチルダにとっての自分は呪い子であることに価値がある。だから身体を酷使して偽りの自分で い続けた。

チルダは父王に否定され続けており、彼女の王女としての存在価値は隣国の王子との結婚にしかなかった。マチルダの王宮内での境遇を知ったラウルは自分がマチルダの「一番近く」にいたい気持ちを封じ込め、アルベールの療養明けを聞きつけて すぐに行動に映った。それはラウルの酷使し続けた身体が長くないと思ているから。


からラウルは2つの理由で性急に行動した。事情を知ったアルベールはマチルダの警護を手厚くするよう宰相・ヒューゴ、騎士団長・ギヨームに命令する。マチルダの弟は1歳年下のロイ。王位継承権はロイにあるにもかかわらず、マチルダの命を狙う動機が分からない。

チルダは誰かに愛されることで世界を色付くことを願っていた。それは執念と言えるもので、時に暴力に訴えても実現したいもの。彼女の暗い視界はアルベールにも覚えがあり、自分はレネに救われた。同じようにラウルの存在がマチルダの救いになるとアルベールは考えるが、マチルダは身近な者の存在が見えていない。それだけ彼女は本当に愛のない世界に生きていた。父王は子供をコマとしか見ず、マチルダの努力や悲嘆を見てくれなかった。

そんな中、ロイの放った資格がマチルダを誘拐し、姉弟は再会を果たす…。