《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

どちらの男性を選んでも、ヒロインの友情と人間関係を壊さないための事前準備

黒豹と16歳(9) (なかよしコミックス)
鳥海ペドロ(とりうみ ペドロ)
黒豹と16歳(くろひょうと16さい)
第09巻評価:★★(4点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

超危険なケモノ男子・杏璃をペットにしている強気な16歳・たいが。大手化粧品会社の次期社長で、杏璃の幼なじみの黒鉄とのデート中にプロポーズをされ、結ばれる二人。結婚式は来年の夏に決まった。一方杏璃のもとに父から電話があり、式までにたいがを振り向かせることができなければ、海外へいくように命じられる。期限を区切られた二人。進む結婚の準備。そんななか、たいがは、自分の杏璃への恋心に気が付いてしまい…!?

簡潔完結感想文

  • なぜか二股ビッチヒロインは誰からも否定されず、1人ずつではなく2人からの過激シーン挿入。
  • なぜか杏璃の家に潜入する彼女でもない女。からの、なぜか修学旅行を堪能する他学年の女たち。
  • 黒鉄に行動を促すために わざと杏璃の名前を出して愛される自分を再確認。この行動がビッチ。

ロインの友達の条件は彼女を絶対に嫌わないイエスマン、の 9巻。

前代未聞の二股ビッチヒロインルートに突入した たいが。この『9巻』は彼女の二股を たいが の大事な人たちに周知させるための巻であるように思えた。杏璃(あんり)と黒鉄(くろがね)、最後に たいが が どちらを選んでも、たいが なら仕方がない、と登場人物全員が納得して、どのルートでもハッピーエンドを確保しているように見える。

ただ そのための布石だと分かっていても二股ビッチが次々に肯定されていく様子は異様だ。ペット・杏璃との同居もそうだけど、この作品には常識人などいない。たいが のやることを認める甘やかす人たちがいるだけ。たいが が「絶対君主軍団(笑)」と仲良くなったのは、彼女が彼らの権威や美貌に臆さない性格だったからだろうけれど、同じように臆さず二股を公表すれば全員が認めてくれるらしい。軍団で唯一 強い軽蔑を覚えそうな樹人(みきひと)に二股が伝わっていないのは、作品に常識を持ち込んで たいが がビッチに見せないためなのか。

頭脳明晰のはずの烈華先輩も頭の悪い理論を繰り広げて、アクロバティック擁護

常識を持ち込まず、作品に都合の悪いことを描かないでいるから、いつも読書中の気持ちがスッキリしない。特に『9巻』は急に たいが が杏璃の実家に突入したり、なぜか他学年の修学旅行に行ったりと いつも以上に強引な展開が多い。たいが の二股ビッチ化で唖然として、作品についていけなくなっている読者は一層 置いてけぼりなること必至。本書は作者の長編作品では現実的な作品だと思ったけれど、やっぱり非現実的なところと、そして急展開が多くて落ち着かない。面白くないという感想とも違うから、支離滅裂という言葉が適当なのだろうか。いつまで経っても こういう内容になってしまうということは これが作者の作風なのだろう。それなのに ちょっと過激なシーンを入れると売れるのだから、お仕事に困らないようだ。


エスマンばかりで誰も たいが を傷つけない一方、たいが は一番 大切な黒鉄を傷つけていることに注目したい。

2人の大好きな男性に対して たいが は、杏璃には何でも躊躇なく言えるけど、黒鉄には言えないことがある。それは たいが の乙女心に起因するものなのだけど、その一方で言い方を間違えて、残酷な物言いになっている。

たいが は黒鉄に もっと愛して欲しい。それを言葉や行動で示して欲しいと思っているのに、彼を動かすために杏璃の名前を出してしまう。それで情動を引き出したり、本音を引き出したり、たいが にとっては結果オーライな未来が到来するのだけど、それを言われた黒鉄の心が傷ついたり乱れたりしない訳がない。

たいが は被害者になることを恐れているけど、加害者になることに無自覚なのは、いかにも想像力の足りない少女漫画ヒロインだな、とっ幻滅する。二股を告白するのもフェアかフェアじゃないか という問題ではなく、自分が楽になりたいだけのように見える。そうやって間違えてばかりのヒロインなのに誰にも正されず、時に憧れられるという変な理屈が変な展開と同じぐらい ついていけない。

『9巻』の帯では60万部売れていると書かれているけれど、その何割の人が2025年現在も作品を ずっと大切に思っていてくれているのだろうか、と疑問に思ってしまう。


璃への想いを自覚してしまったため、たいが は もう彼と同室で暮らせない。誘導されたとはいえ自分で杏璃を飼うと言い出したのに、飼い主の事情でペットを捨てるような真似をしていることが たいが は苦しい。そんな自分の心の内を烈華(れっか)に相談すると、彼女は謎の理論で たいが の意思を尊重すると軽蔑されない。

杏璃を遠ざけている間は、瀬那(せな)が誘導役になり、たいが にミッションを与えて言いなりになる。そこで男性2人に上半身・下半身それぞれスキンシップされる謎展開が始まる。中盤では落ち着いていた過激なシーンが挿入され、何が行われているのか常識的な読者には分からない展開が続く。
その謎のシーンも たいが が開き直り、杏璃と黒鉄も友情を確認し、それで終了。結局 たいが が二股ヒロインになっただけ。最初からヘンテコな設定と展開だったが、終盤でまた読者を置いてけぼりにする展開が再発している。


璃たち2年生は修学旅行中。杏璃は修学旅行先の京都で祖母の眠る墓参りをする。

1年生の たいが と3年生の烈華はお留守番で たいが は この修旅中に杏璃の家に潜入することを決意する。…なんで? 烈華に協力してもらって警備の目を欺き、伊勢谷(いせや)家に2回目の訪問を開始する。

そこで心の壊れた杏璃の母親と初対面を果たす。たいが は杏璃のために動いているけれど、杏璃は頼んでいない。現状では恋人関係でもなく、ただの飼い主とペット。しかも黒鉄との二股状態。自分の心境や環境を整えてから杏璃の問題に着手したいと思うのは分かるけど、現状では ただの お節介。たいが が唐突に杏璃の気持ちを理解する流れも不自然に思える。後半の展開で補足説明されているけど、杏璃を客観視したことで見えてきた視点、というのが作品で描きたかったことのようだ。

そこに父親が障子越しに登場する。名前は伊勢谷 夜霧(いせや よぎり)。たいが は彼に自己紹介するが父親は直接 姿を現さない。そこに彼の意志を見る たいが だったが、烈華が確保されたと連絡が入り両親との交流は そこで終わる。
たいが たちは従者たちに二度目はないと釘を刺され解放される。しかし たいが は1度では引っ込まないことを先に彼らに頭を下げて謝罪する。


いが の凛とした対応に感動した烈華の提案で2人は京都に行って杏璃たちと合流する。…なんで? 強引に一緒のバスに乗り、強引に一緒に食事をする。もう常識が通用しない作品になったようだ。

疑似的な修学旅行の夜は黒鉄に呼び出されて、2人で宿泊先のホテルを抜け出す。そこで黒鉄が たいが のために買っておいてくれた お土産を渡され、キスをして幸せを感じる。ただ同時に裏切りを覚えるから黒鉄に自分の正直な気持ちを話す。烈華と同じように その感情を否定されない たいが。黒鉄の「そうか」という一言は物足りない。
『8巻』の初キスのように、杏璃の名前を出して黒鉄に もっと感情を乱して欲しかったのだろうか。たいが は黒鉄を誘導する一番の手段が杏璃の名前を出すことなのが本能的に分かっているのかもしれない。でも それが黒鉄の胸を苦しめることを分かっていないように思える。

照れながらプレゼントを渡して演出したムードを台無しにする空気の読めない女

2日目は もはや生徒たち公認で他学年の たいが たちは団体行動を始める。旅費とかどうなっているんだ、と考えてはいけない。

たいが と黒鉄の間に何か行き違いがあることを察した烈華は、黒鉄に そのフォローをするように勧める。なぜ裏切られてショックを受けた方が、ビッチヒロインに対して労わらなければならないのか意味不明。でも黒鉄も たいが に甘く、たいが が最後に選ぶ男に自分がなるだけだと彼女の心を尊重する。イエスマンばかりで気持ちの悪い世界だ。

こうしてフォローされることで笑顔を取り戻して、自分に優しい仲良しグループでの旅行を たいが は満喫する。どうやら受験シーズン中らしいが、烈華は推薦で進路を決めているので大丈夫。いよいよ卒業を控えて最初で最後のグループ旅行だということが分かる。杏璃のタイムリミットである夏休みには烈華は この学校にいない。

杏璃が席を外している際に、たいが と烈華の伊勢谷家潜入がバレ、そして たいが は彼らに全員での潜入を持ち掛ける。ダメなら一人でも決行するという たいが に対して、彼女に甘い人たちは全員での潜入を約束する。その たいが の肝の座った勇気に触発され、黒鉄は たいが に本音を漏らす。素っ気なく了承した二股は それ以外に言えなかったから。本当は悔しかったけど、そう言って小さい男だと思われたくなかった。それぐらい たいが のことが好きだと黒鉄は訴えるが…。