
丘上 あい(おかうえ あい)
やさしい子供のつくりかた(やさしいこどものつくりかた)
第02巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★(6点)
オレ、タケシ。幼なじみの花子とつきあいはじめてけっこうラブラブ。チューもした。でも、このまえ初Hに失敗してからちょっと自信喪失……。大好きな女の子との最高のHをするにはどうしたらいいんだ!? そして避妊って!? みんなが知りたい本音がいっぱい! 大人気「Hな純愛ストーリー」感動の初H編デス!
簡潔完結感想文
- 花子の過去や想いを全部 抱きしめて彼女に触れる。早くも恋愛イベント全部消化。
- タケシは浮気するような人間ではないが性欲に負ける男性ではある。性行為は2人の問題。
- 初めて花子と会った頃の年齢になった あゆ太。彼にとっては花子たちは大人だろう。
やっぱりあらすじ に違和感がある 2巻。
「Hな純愛ストーリー」というのは何を指して言っている言葉なのだろうか。性行為をすることがHなのだろうか。下世話な興味で作品に手を取らせようとする目論見と、作品内で描かれていることが違い過ぎる。『1巻』でも書いたけど、私が作者なら こんな宣伝文で販促されたなら、テーマがまるで伝わっていないと落ち込んでしまうだろう。
まぁ 主人公・タケシの恋愛の失敗において浮気はしない我慢は出来るが、快感は我慢できなくて避妊をしなくなるなんて まるで少女漫画らしくない内容だとは思うけれど。
それでなくても作中で交際中のカップル、タケシと花子(はなこ)は よくすれ違っている。特にタケシは恋愛問題や交際において失敗ばかりで、本書は彼の失敗を基にした成長譚だとも言える。交際中もずっと幸福な訳ではなく、特に作品に描かれるのは2人に亀裂が入るような問題ばかり。それでも読んでいられるのは1つに男性主人公の話だからだろう。これが花子目線で彼女の悩みが書き連ねられていたら作品は陰陰滅滅としてしまっただろう。だけどタケシを主人公にして、彼の失敗談として明るく描くことで作中の湿度は不快なほどには上がらない。アホのタケシが またアホな失敗をしていると笑える。そして女性読者にとっては恋愛問題が男性側の視点で描かれていることが学びになる。だから自分の痛みとして共感して暗くなるようなことがない。
そして作中で問題が多くても2人なら乗り越えられるという安心感があるから読んでいられる。タケシも花子も本当に相手のことを大切に想っていることが分かるから少しの失敗も彼らの絆を深める教訓になるだろうと思える。この土台がないと不安ばっかりで読んでいられない作品になるけれど、本書の場合は2人とも相手以外に ときめかないことが分かっているから、長い交際での1つの問題だと思える。別れないだろうというメタ視点での安心感が読者からストレスや不安を除去している。
雑誌「デザート」の(当時の)読者対象年齢に早く達するようにするためか時間の流れが相変わらず早い。花子の義姉・さつき は妊娠が発覚したかと思ったら、次の回では もう出産している。そのぐらい早い。
そして作中に新たな世代が次々に生まれることで、タケシたちは まず立場的に大人になっていく。あっという間に進路を考え始める高2か高3になっている。最後に収録されている第8話では これまで周囲の年上の人から教えられることが多かった彼らが誰かに何かを教えている。そこに成長を感じた。


良かったのは避妊問題において、男性側を責めるばかりでなく、対等な交際をしているなら女性側も ちゃんと意見を表明すべきだという作品のスタンス。そして2人が避妊問題を軽く見ていたことを痛感するのに、予期せず命を授かった実例と、望んで授かった命の実例を出しているのも良かった。唐突なゲストキャラではなくて、これまで登場したキャラ(スナックのママ)が その立場を担っているのも読者がハッとさせられる場面だった。
「5時間目 初Hのしかた②」…
性行為を試みたけれど未遂に終わって半年、タケシと花子の関係はそのまま。緊張から失敗したタケシに対して さとキン が回数をこなすしかないと回答するのが説得力のある経験談だ。
クリスマスの時期になり互いにプレゼントを用意する2人。プレゼントを買うのが気恥ずかしいと思う日本男児のタケシは通りかかった日下(くさか)に適当に買わせようとするが、日下が他の女にプレゼントを選ばせるな、と思い止まらせる。ずっとタケシに恋をして時に強引だった日下だけど、こういう線引きが しっかり出来ていて見直した。
当日は隣同士の2つの家族で合同クリスマス会が開かれる。途中でタケシは父に連れられ、花子の兄・裕二(ゆうじ)とスナックに連れていかれる。このスナックは最終回まで登場する準レギュラーとなる。
ここでタケシは花子と裕二が義理の兄妹であることを聞かされる。花子の父親と裕二の母親が連れ子同士で再婚したのだった。この事実、必要?と思う部分もあるけれど、花子の周囲は全員 他人。実父は単身赴任中で物語に登場せず、兄嫁・さつき だけでなく、甥っ子である あゆ太も血の繋がりはない。それでも花子の家は家族としての愛情に溢れている。
スナックを途中で抜け出し、タケシは花子に会いに行く。そこで実母は3歳の時に事故死したこと、そして小学校に上がった頃、父親が再婚した。その際に引っ越してタケシの家の隣になった。義兄となった裕二は既に19歳。父は仕事ばかりで花子は他人に囲まれた生活となり苦しかった。その疎外感を救ったのが アホのタケシ。タケシの行動に救われ花子は笑顔を取り戻す。花子にとってタケシは大切な恩人でもあるのだろう。
花子の過去を知り、そして昔からタケシに好意的だったことを知り、タケシは花子の全てを知りたいと思った。その気持ちを抱きながら2人は身体を重ねる。性欲や性体験への渇望ではなく、タケシの動機は純粋あのが少女漫画らしい描き方。花子が お店で見つけた品物の行方も洒落ている。タケシもまた家族に愛されていることが分かる最後の1コマも良い。
「6時間目 浮気のふせぎかた」…
少女漫画的には性行為は最後の恋愛イベント。これを終えたら物語は畳む方向に進むが、本書の場合は まだまだ続く。
クリスマスから半年の高校2年生の5月、違う学校に通う2人は入れ替わるような日程で修学旅行となる。隣同士の幼なじみの2人は2週間近く会えないプチ遠距離期間となる。
花子しか眼中にないけれどタケシは無自覚にモテる。以前も色仕掛けをしてきた同じ学校の女子生徒・麻生(あそう)が修学旅行中にタケシを落とそうと狙う。タケシが花子との通話中に声を掛けてたり、自分の存在をアピールする。それ以降もタケシは性欲を刺激されるが 何とか乗り切る。それでも麻生と つかず離れずの微妙な距離を取り続けるタケシを見かねた同じ学校の日下はタケシの目を覚まさせる。自分は麻生から好意を抱かれていることに少なからず喜んでいた。そんな自分を自覚しタケシは反省し、そして麻生との関係に一線を引く。日下は2連続でナイスアシストである。
これまでも これからもタケシは失敗し続けるが、その失敗が彼を成長させていく。
「7時間目 避妊のしかた」…
兄嫁の さつきが2人目を妊娠していることが発覚。そして単身赴任中の父親が戻り、花子の家族が勢揃いする。互いの家で まったりしにくくなったこともあり、タケシは花子と海に行く。デートらしいデートは初めてではないか。
麻生からの誘惑には負けなかったけれど、タケシの性欲は とどまることを知らない。悪友からコンドームを着けない いわゆる生の気持ちよさを聞かされ、人気のない海辺で生で致してしまう。その後もタケシは自分の快感を優先し、装着できる状況でもしない。
今回のタケシの失敗は花子(女性)のリスクを無視したこと。それを教えられるのは父の行きつけのスナックのママ。現在35歳のママには19歳の娘がいる。それは16歳前後で避妊を考えていなかった結果だった。好きだった相手からは当たり前のように おろせ と言われ、それに反発して生む決意を固めると親にカンドーされた。そして風俗店で働き、一家心中を考え、でも今こうしてママをしている。母親の言う「ちゃんとした おつきあい」というのは、本当に大事な人との さきのことを ちゃんと考えるという意味でもあるのだろう。自分の存在や あゆ太の存在は望まれた結果で そこに幸せがある。そんなことにタケシは気付かされる。
今回タケシに さつき が口を出さないのは、彼女には花子を諭す役目があるから。花子は さつき を通じてタケシの行動を変えようとするが、それは自分が責任を放棄していることだと教えられる。タケシの行動を変えるのは花子の行動なのだ。望んで妊娠した さつき と違い、子供を望まない性行為なら花子も自衛する責任がある。
快感を最優先にする男性側が悪いという一方的な描き方ではなく、女性側も自分を大切にする重要性を欠いているのが良い。


「8時間目 進路の決めかた」…
この前 高校生になったばかりなのに17歳になった花子たちに進路問題が持ち上がる。さとキンカップルは彼女が海外留学をするため遠距離恋愛か破局かで悩んでいる。その話を それぞれ聞いた花子たちは友達のことで喧嘩になってしまう。
さつき は妊娠が発覚して1話で出産している。名前は胡桃(くるみ)、第2子長女である。この甥っ子と姪っ子の面倒を上手に見ていることを母親から褒められ、花子の進路は徐々に決まっていく。
この話では これまでは周囲の大人から教えられることの多かった花子が あゆ太という より小さい子に諭す場面がある。将来も見えない彼らは自分たちのことを決して大人だとは思えないけれど、着実に大人に近づいている。
この回で初めて いつも怒られたり諭されたりしているタケシが さとキンに自分なりに出した彼の恋愛問題に答えを出している。自分の意見を持てること、それもまた大人へのステップだろう。
