
丘上 あい(おかうえ あい)
やさしい子供のつくりかた(やさしいこどものつくりかた)
第01巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★(6点)
「好き」なんてよくわからない。「キス」や「H」なんてますますわからない。周りのみんなは「恋したい」とか「Hしたい」とか言ってるけど、そんなにいいもんなの!? ピュアで一途な中学生、タケシと花子の恋の成長を通して、理想の恋とHを描いた大人気シリーズ。純愛だからってタブーはなし! わたしたちがいちばん読みたかった、本音のラブストーリー!
簡潔完結感想文
- 生まれたばかりの赤ちゃんの成長を見守る僕たちもまた誰かから見守られている。
- 2話連続 花子を別の男性に差し出すような真似をしてから行動する鈍感なタケシ。
- 性に奔放な人を周囲に配置することで主人公カップルのピュアさを際立たせる。
失敗を重ねて大きくなっていく タケシの初恋、の 1巻。
タイトルはともかく、なぜ ↑ のあらすじ は こんなにも性の匂いを強く醸し出しているのだろうか。『1巻』で性が感じられるのは全4話中1話だけで、それも これ以上なくピュアな結末になっている。これは2000年代前半に巻き起こった少女漫画の過激化を受けての間違ったプロモーションなのだろうか。私が作者なら、こんな誤解を与えるような紹介をされたら泣きたくなる。
再読して感じたのは周囲の大人たちの優しさ。第1話で「あんたが やさしくすれば 女の子だって やさしいんだよ?」という名言が出てくるが、それは大人と子供の関係にも言えること。大人が優しいから子供も優しくなる。そんな良い循環を感じられる作品。


高校生になった息子とも お風呂で裸の付き合いをする父親、下品な物言いをするギャルかと思ったら大事な場面で子供たちを優しく導いてくれる兄嫁など、いい加減に生きているようで愛情 溢れるキャラたちが愛おしい。彼らの口を借りて作者が自分の人生訓なんかを言わせたら興醒めして物語が台無しになるところだけど、作者は ちゃんと彼らの言葉や立ち位置を守り続ける。それによって本書は作品として成立している。この後に作者が連載作品を多く持つのも納得の実力を感じた。
思春期に突入して性に目覚め、恋を知って、人を愛することを学んでいく1人の男性・タケシと その幼なじみの女性・花子(はなこ)が小学6年生だった11,12歳 ~ 23歳の12年余りを描いた作品。
連載開始は2002年。掲載誌「デザート」が画力が最優先という一種のルッキズムを爆発させる前の作品で、様々なジャンルの作品が集まった ごった煮状態の頃だろうと推測される。雑誌の傾向がいわゆる夢見がちな少女漫画よりも地に足のついた実践的な恋愛や性が語られていた時代だったから描けた作品か。
その頃だから許された男性目線、いや男子目線から始まるストーリー。花子は ずっとタケシのことが好きだと思われるが、花子側の感情は語られない。彼女の言動や表情から読み取るしかない。少女漫画を動かす恋心の描写はタケシ側に任される。彼が女子全体を得体の知れないものと感じていた頃から その中で花子だけは特別だと気づき、失敗を重ねながら彼女の恋心を貫いていく様子が描かれる。その途中に男女交際において不可避な性事情が語られるだけ。そこがメインではないから あらすじ の文章に首を傾げる。
語られないことと言えば、タケシが自分の容姿の良さを自覚していないのが良かった。彼が少女漫画の主人公のメインの年齢である高校生になっても彼は自分の容姿の良さに溺れたりしていない。自信満々だったり女性の扱いになれてしまったりせず、ずっと等身大の悩みや不安を抱え続けてくれる。作品的に素敵に描かれているが、友人の さとキン と同じレベルでも問題ない。そういう自意識過剰とは無縁の おバカさに安心する。
作者や編集部は最初から大河ドラマ的な時間の流れを考えていたのだろうか知りたいところ。作品人気が出ないと作中のキャラも成長できない中、ちゃんと社会に出るまで描けたのは作者が高いクオリティの連載を維持したからだろう。『1巻』収録の3話目と4話目が10月掲載と翌年の1月掲載と時間が空いているのは、正式に両想いになった3話までが短期連載で、4話目以降は好評につき連載延長ということなのだろうか。


「1時間目 子供のつくりかた」…
小学校6年生の松本 タケシ(まつもと タケシ)と倉持 花子(くらもち はなこ)は隣同士の幼なじみ。タケシは頭は良くないが顔が良くモテる。しかし精神年齢が女子よりも低いので女子がなぜ自分に声を掛けたり、告白してくるのか理解できていない。
その頃、タケシの周りには新たな命が誕生しようとしていた。生まれてくるのは親友の さとキンに弟妹、そして花子の兄・裕二(ゆうじ)夫婦の間の第一子。そこからタケシは生命の誕生に興味を持ち、男女の違いを学んでいく。そして自分のすぐ隣にいる花子と自分は男女という違いがあることを理解する。
そんな時に自分に熱烈にアプローチしてくる女子・日下(くさか)から告白とキスを受け、その際に花子の顔が脳裏に浮かんだことにタケシは混乱する。その混乱が収まらない中、花子に遭遇し、彼女を拒絶するためにタケシは花子の お腹に蹴りを入れてしまう。
自分が花子を傷つけ彼女に嫌われたこと、女子の お腹は大事だと知ったばかりの自分が花子に酷いことをしたことをタケシは猛反省し号泣する。花子の母親、そして兄嫁である さつき から慰められる。特に さつき の「あんたが やさしくすれば 女の子だって やさしいんだよ?」という言葉は、これまで女子に やさしくなかった自分と、その自分の態度への反発を女子が取っていたことに気づかされる。
タケシは花子に初めて好意を抱く。この時 授かった裕二と さつき の子供・あゆ太(あゆた)の成長は作中の時間経過を分かりやすくしてくれる存在となる。
「2時間目 キスのしかた」…
中学生になったタケシは、花子に悪態をつくことでしか好意を表現できない。少しずつ それぞれの性の特徴が現れ始める2人。この頃になると男子も色恋に目覚め、タケシは悪友が王様ゲームで花子とキスを目論んでいることを知る。それを阻止しようと中学生グループの合コンのような誕生日会(嘘)に参加するタケシだったが、そこに参加していた花子に日下と過去にキスしたことを知られてしまう。花子は その事実に怒りを見せ、そしてタケシは知られたくなかったと思う。
その場から立ち去る花子をタケシは追いかけ、彼女が涙を浮かべていることを知る。その花子の表情に撃ち抜かれ、タケシは2人きりの王様ゲームを主宰し、花子にキスをする。花子は また泣き出してしまうが、その成分は嬉し涙に分類されるだろう。そこから手を繋いで帰り、タケシは花子に恋をしている自分を明確に自覚する。


「3時間目 好きな人の守りかた」…
中学2年生になったが、事実上 両想いの2人に進展はない。あと一歩 踏み込めないのがタケシの欠点だろう。この頃になるとタケシも性に目覚め、子供のつくりかたを本能的に知っている。
さとキンが男女交際していることに驚き、部活の元先輩の前で花子との交際を否定したことで彼女を傷つけてしまうタケシ。花子を その元先輩に差し出すような真似をしたタケシを叱ってくれるのは さつき。いつも喧嘩ばかりの嫁と小姑だが、さつき は花子を実の妹のように大事に思ってくれている。1話目と同じく さつき によって自分の過失を認められたタケシは花子の救出に向かう。2話目と同じく花子を異性に接近させる真似をして たくさん傷つけるが、その失敗がタケシを成長させていく。
初めて花子から好きと言われ、いよいよ2人の交際が始まろうとしている。
「4時間目 初Hのしかた①」…
早くも中学卒業。2人の進路はバラバラで違う高校に進学する。1話で生まれたばかりの あゆ太が もう喋り始めている。
女子校の花子と共学のタケシ。高校生にもなると女性からのアプローチに性的誘惑が加わる。性春まっさかりでもあるタケシは自分が性的に揺らいでしまいそうになることを自覚する。
今回は これまでとは逆で、タケシに近づく異性の存在に花子の心中は穏やかではないという話でもある。そんな中、花子の兄夫婦がデートをするため、あゆ太と3人で留守番をすることになる。花子の両親も不在のため2人(3人)きりの時間を まるで夫婦のように過ごす。兄嫁・さつき が料理が苦手な花子にボロを出させないためにレシピを用意してあげているのが優しい。
兄夫婦は最初から家に帰らないつもりで、タケシたちも お泊り回になる。隣の家なんだから帰っても良いと思うけど。また いくら花子が育児になれているからといって未成年者2人に子供を任せるのは いかがなものか。あゆ太は祖父母と一緒にいることにすればいいのに、と思う。てっきり あゆ太が泣き出すとか「するする詐欺」の理由になるのかと思ったけど、そうでもないし。
タケシ側の問題もあったけれど、性的欲求ではなく ゆっくりと2人のペースで進む関係性が描かれている。ラストで2人が手を繋いでるのは2話(または3話)続けての描写。
