《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

目的と手段を間違えてしまう未熟な僕らは目の前の大事な人の表情を見ていない

メンズ校 新装版(6) (フラワーコミックス)
和泉 かねよし(いずみ かねよし)
メンズ校(メンズこう)
第06巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

超イケメン男子が集う名門男子校・私立栖鳳高校。しかし、その実態は、海と山に囲まれた全寮制の獣の園。甘~いハッピーライフを求めて学祭で女装喫茶をすることになった牧達。衣装を借りようと保健室にやってきた野上は、福原先生とケンカしてしまい…。新装版第6巻!

簡潔完結感想文

  • 一番最初にカップルになった一方で一番ケンカもしている野上とフクが向かい合う。
  • 男子にとって勉強の妨げになる物は? というメンズ校らしい恋愛要素皆無の回。
  • 性体験の達成に焦る牧は神木を降臨させるが、自分の歩幅で歩く大切さを学ぶ。

愛は一人でするものではない、の 6巻。

高校2年生の秋を迎え、いよいよ彼らのメンズ校生活も後半戦へと突入していく。半年後には受験生となる男子進学校の彼ら。その前に恋愛に決着を付けようということなのか、玉虫色の関係性だった2組のカップルが ずっと言えなかった言葉を言う。

牧(まき)そして野上(のがみ)の2人は それぞれ相手の女性を大切に思いながら自分のプライドや羞恥が邪魔をして それを相手に伝えることが出来なかった。それが いつも問題を引き起こしているのだけど、未熟な自分を克服して自分の言葉を自分で伝えられる強さを持つ。それは彼らのアイデンティティの獲得と言えるのかもしれない。そして相手への思い遣りや愛情であって、やっと彼らは恋愛は相手を想うことから始まることを意識する。失敗の多かった過去を乗り越えた彼らの未来は明るい、はず。

行動は神木を降臨させてもいいが大切な言葉は自分の言葉で言わなくてはいけない

一つ心配なのは僻地にいる彼らは大学受験を終えたら都会に出ることが予想される。各地方に偏差値の高い高校は点在しているかもしれないが、地方に偏差値の高い大学は少ない。野上は東大を目指すと言っていたし、高校卒業と共に彼らの恋愛の形態は変わる。それを乗り越えられるほど彼らの恋が運命的かというと そうではないのが不安だ。しかも これまでの3組のカップルとも同じ問題を抱えるため、3組の遠距離恋愛の解決の仕方が描かれるのだろうか。恋愛成就まではオムニバス形式も面白かったが、似たような交際模様の繰り返しは飽きる。そこを作者は どう決着を付けるのか。

気になったのは『5巻』で花ちゃんがジャージ姿の理由を語ると言っていたのに、特に理由が語られていないこと。ヘアメイク担当だからという理由は察せられるけれど、布石の回収とは言い難い。

男子校あるあるを詰め込んだギャグシーンのテンションがいつも同じだから そろそろ飽きてきた。痛い人間を紹介します、という どこから目線か分からない作者の語り口は既読の3作品ずっと変わらない。現代高校生の生態を熟知している感じを醸し出し続けると、その内 作者自身が痛い人になりかねないのではと心配になる。ファンタジー路線への転換は必然だったかもしれない。


園祭に訪れる数少ない女性に警戒心を持たれず そして 興味を持ってもらおうと野上(のがみ)が考案したのが女装喫茶。勉強が出来る人たちの机上の空論の末の迷走である。
そこで唯一の女性である保健医のフクに衣装を借りようとする野上。フクの私服から10歳差の恋愛の難しさを浮かび上がらせるのが見事。しかし野上は言葉は乱暴だけど、フクを責任をもっていることが牧には見えてくる。青臭いけれど彼なりに精一杯 フクを愛しているという領域まで達している。

そうして お互い相手のことを想っているのに すれ違ってしまうのが この2人。学園祭でフクにセクハラする親父に対して野上は暴力を振るう。フクは野上の将来のために暴走しないことを願ったが、野上は自分の将来なぞフクのために捨てられる。でも その野上の愛情はフクにとって蛮行にも見える。
意思疎通が難しさや感情の行き違いに悩んだフクは別れを切り出す。別れない条件として、自分の抱える悩みを野上が当てることを望む。牧や神木が最初の恋と失恋を経て少し経験値が上がっているのに対して、野上の恋愛偏差値は初登場と変化がないと言っていい。彼は いつも破局寸前のギリギリの恋愛での失敗から学び続けるのだろう。


上が牧に相談する形になるのは、これは牧が一歩引いて色々なことを見ているという信頼感があってのことか。暴力事件が明るみに出た時、野上が牧にしたことは信頼感なのか…。ただ野上としては正直に名乗り出るとフクを困らせるという考えがあったのかもしれない。巻き込まれる形になった牧はフクから野上への気持ちを聞く。野上はフクに対して何もしなくていい、悩まなくていいと一人で背負い込む一方で自分の方を見ていない。それが悲しいし苦しい。

野上も似合わないと思っているフクの私服。しかし彼女がどんな気持ちで それを着ているのかを考え、野上は彼女の方向を少しずつ見始める。フクへの具体的な答えは出ていないが、それでも自分の気持ちがハッキリと分かった野上。足りない言葉に少し本音を滲ませれば、それぞれの愛情が見えてくる。

上から目線ではなく同じ目線で相手に伝わる言葉を語ること。それが野上の課題

園祭後に神木・源田の部屋に突如現れる段ボールの謎を巡る話と その意外な結末。1話丸ごと男子寮の実態を描いた回で恋愛要素が皆無。1話から何だかんだで女人禁制のメンズ校に女性が登場していたように思うけど、今回は一切 女性が登場しない。


いてもメンズ校らしい性体験の話。全員が恋愛偏差値が低いから誰もが未経験かと思いきや、牧の周辺は ほとんど経験済。それとこれとは関係ないようだ。相手は この作品で描かれていない女性たちらしいが、野上・神木、そして花井(はない)までも済ましているらしい。花井の相手の性別は どっちなのか。勢いで、ってことは女性なのか。それだと花ちゃんらしさが無くなると思うのは読者の勝手な願望だろうか。

いつもは相談役に回る牧が色々な人に相談して回っているのが印象的な回。その中でも最も頼りになった神木を牧は参考にする。タカノと会う際に牧は自分の中の神木を憑依させて無敵になる。そんな即席の似合わない言動で失敗するかと思いきや、タカノが悩んでいたのは異性に対して感情を制御できない自分。牧の一挙手一投足に過敏になり敏感になっている、そんな自分をタカノは嫌悪する。そして牧は自分が感じていたタカノから置かれる一定の距離感が彼女の不安の表れでもあることを理解し、今 彼女が欲する言葉を初めて言う。性体験なんて まだまだ先だけど、それでも牧は成長している。