《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

イイ男に忘れられない彼女がいても、その彼女と張り合わないのがイイ女の条件

メンズ校 新装版(4) (フラワーコミックス)
和泉 かねよし(いずみ かねよし)
メンズ校(メンズこう)
第04巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

海まで5分。1日2本のフェリー有り。徒歩ではほぼ脱出不可能のド僻地にある全寮制名門男子校・私立栖鳳高校。彼女が欲しいと嘆く、不毛な青春を送るメンズ達にもようやく恋の季節が到来!? 一方、彼女にフラれ、合コンに行くことになった源田に思わぬ出会いが…!? 話題の青春ボーイズライフ新装版第4巻。

簡潔完結感想文

  • 今 大事に思う人の考え方によって牧の心も整理され、雨の中、晴れて両想い。
  • 自分なりに彼女を大切に思っているのに全く伝わらない男も恋に けりをつける。
  • 和泉作品で最高の男に釣り合うのは女同士の争いに負けない気持ちの強い女性。

風という名の手癖が出ている 4巻。

『4巻』後半は、この作品の一番イイ男・神木(かみき)と平凡な女性・冬華(ふゆか)の格差恋愛が描かれる。この男女の関係性は これまでの和泉作品で描かれてきたものだから過去作を既読の読者にとっては既視感が強い。

これまでは男性視点のエピソードが多かったから気にならなかったが、女性が男性を好きになり攻略するターンになると途端に過去作との重複が多くなる。結局、作者の作品はヒロインが その負けん気やド根性で彼の心を射止めるパターンに帰結するらしい。和泉作品らしくて安心するけど、ハイテンションを盾にして重複を誤魔化しているようにも見える。

少し垢抜けて自分に自信を付けた後、ド根性を発揮するのが和泉作品のヒロイン

また今回、神木の義理の姉・真奈(まな)が少し悪く描かれているのも気になった。最後に語られることなのでネタバレかもしれないけれど真奈は今回の訪問で結婚指輪を外し、もしかしたら戸籍さえも整理して神木に会いに来た。だから彼女なりに真剣で、そしてラストチャンスだと覚悟しながら この地に降り立ったのだろう。
けれど これまで神木と姉弟であることに努めてきた真奈は結局 姉ポジションでしか神木と関われない。一番近い位置にいるけれど最接近できないのが真奈の不遇な状況だろう。だから本物の「彼女」に負ける。

2人の女性の内、失恋から1年が経過した神木が どちらを選ぶかというのが今回の見所。そういえば牧(まき)もエリカとの別れから1年後に歩き出していたが、10代男性が次の恋に動けるようになる標準期間は1年なのだろうか。今回、初登場の源田(げんだ)は これから1年の暗黒期間が必要なのか。

さて、この1年で真奈は自分に神木が不可欠なことを痛感したようだけど、1年前に神木から離れたのは彼女の方。だから その罰を受ける。それはいいのだけど、どうも物語が冬華が正義で、真奈が悪という図式で描かれているのが気になる。真奈は冬華に怒りで少しの暴力を振るうし、冬華を容姿だけで判断する。

今回の話は冬華が真奈という存在を、神木の中の重要性を理解するのに必要なのは分かるのだけど、今更 泣きつくことも含めて真奈を どうして こんなに情けない女性に描くか疑問に思った。折角『1巻』では1話で切ない姉弟関係を描いたのに、その話の価値を下げるような続編になっているのが残念だ。和泉作品ファンは冬華のようなヒロインを待っていたのだろうけど、既視感や彼女を正義にするための手法にモヤッとする。

神木の中の真奈、牧の中のエリカ、男性の中に忘れられない女性がいても、その現実を受け止めても恋をしようという気持ちが女性たちの共通点になっている。そのぐらいの根性がなければ和泉作品のヒロインは やっていられない。


野 エリカ(たかの エリカ)に春野 エリカ(はるの エリカ、通称「エリカ」)の存在を知られ窮地に陥ったかに思えた牧。正直に忘れられない女性だと話すとエリカは それに納得する。

そのままエリカと地元が同じ冬華(ふゆか)の帰省に合わせて神木を含めた4人で会う。(仮)でしかない関係性の割に2人は本当に惹かれ合い、惹かれ合っている割に急に距離感を出す。そんな関係。まだまだ恋愛リハビリ中の牧には そのぐらいが丁度良いらしい。
この頃、エリカは休学中の学校に唐突に戻るという。牧は「エリカ」を忘れられないと言いながら、エリカの見送りのために学校をサボる。自分の気持ちを一番理解していないのは彼自身だろう。

「エリカ」に対する激しい感情が凪いでいくことを牧は裏切りに思っている。だからエリカの前でも「エリカ」のことを口にして「エリカ」に義理立てする。それが自分なりのケジメ。でもエリカは「エリカ」を含めて今の牧を きちんと見てくれる。そういう性格だから牧は惹かれるのだ。


学時代から2年間つき合った彼女・乾 奈緒(いぬい なお)に振られた源田 新(げんだ あらた)。無愛想で人とつるまないからコワイと思われる源田。彼なりに大事にしてきたけれど、それは伝わっていなかったようだ。

第5の男・源田。関係性も失恋理由も普通。この後、彼の出番はあったっけ??

源田は女子校に通う奈緒が、同じ中学で評判の悪かった男に女子校の伝手として利用されていること知る。情報源は奈緒と同じ女子校に通うエリカ。それを牧から知らされる。またもや他者の恋愛に関わる牧は源田に元カノの世話を焼くように促す。大事な人と別れている牧の言葉は説得力が違うので誰でも動く。だが他の男子生徒と同じく口が下手で恋愛偏差値も低い源田は、奈緒を説得するつもりが火に油を注いでしまう。これは交際中に相手を褒められなかったことなど源田の信用の無さも影響している。

そこで牧は合コンを企画し、源田と奈緒を強制的に会わせる。相手を思っているからこそ源田は恋愛に執着を見せないように努めているのが伝わらず復縁は遠のく。そこに牧によって評判の悪かった元同級生が悪役として登場するよう仕組まれており、それによって源田は秘めていた言葉を発することが出来た。彼らが その後 復縁したのかは分からないが、源田は悔いのない恋が出来ただろう。


界と隔絶された世界のはずが、冬華は何度も帰省し、学校前をうろつく。和泉作品らしい格差恋愛は いつも通り、自分が動かないと成就しないという教訓になる。テンション高く お送りしているが、これ大体、過去作の『ダウト!!』で見た内容じゃないか。

和泉作品は男性が常識外れで女性が振り回されるが、結局 女性の方も どっかネジが弛んでいる部分があるというのが基本。冬華も男性に受ける技術は身に付いたが、それが神木に通用するとは限らない。

そんな時、神木の義姉・真奈(まな)が再登場。真奈の登場に神木は冬華を彼女として紹介する。それは神木に真奈からの独り立ちの意図があるのだろうけど、冬華が不憫だ。それを冬華に二人三脚でコーチをしてきた花井(はない)が指摘する神木は自分の鈍感さを認め冬華に謝罪。彼の事情に巻き込まれ、それを大らかに許すことで冬華はヒロインになる。


かし「彼女」として行動しようとしても、所詮 即席。姉歴の長い真奈に完敗する。しかし冬華は肝が据わっているところを見せ、そして真奈が神木を構い過ぎること、それが神木をダメにしていると指摘する。ここで図星を突かれた真奈が冬華に暴力的な行動に出たことで、神木は真奈よりも冬華を大事にする。

真奈は自分で神木から離れようと彼を傷つけたのに、土壇場になって神木から離れられないと泣きつく。神木に「彼女」がいることが想像以上に辛いのだろう。しかし真奈には既に夫がいる。だから神木は1年前と同様に姉を姉として扱う。何だか、こちらも切ない恋をしていたはずの真奈が悪者で浮気者になっていて不憫に思う。けれど最後に結婚指輪を外しているということは浮気ではなく本気だったのだろうか。神木が鈍い男だから気が付かず、神木に拒絶された真奈は そのまま帰っていく。

この一連の神木の行動を見ていた冬華は彼の想いを知る。それでも神木は自分以外の人と幸せになる好きな人の幸せを願う。それが恋だと本書は繰り返し訴えているように思う。保健医のフクは野上の幸せを願ったし、エリカが「エリカ」の存在を許した。そして冬華も神木の忘れられない過去があることを含めて神木を また好きになる。