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トリセツ6:一度 機能を停止した後でも数か月~2年ほど後に再起動することがあります

機械じかけのマリー【電子限定おまけ付き】 6 (花とゆめコミックス)
あきもと 明希(あきもと あき)
機械じかけのマリー(きかいじかけのマリー)
第06巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

極度に人間不信な御曹司・アーサーの元でロボットと偽ってメイドとして働く(&溺愛される)マリーだが、ついにアーサーがマリーの秘密を知ってしまった!しかし知っているとバレたらマリーがメイドを辞めると思ったアーサーは内緒にすることに。互いにバレてはいけない秘密バトルに突入!…したままお風呂に二人で閉じ込められて…!?人間とバレたくないマリーと、好きな子とお風呂に閉じ込められたアーサーのすれ違いの行方は…!?秘密×すれ違い×溺愛ラブコメ、堂々の最終6巻☆★

簡潔完結感想文

  • 秘密を共有する直前に記憶喪失という一種の遠距離状態が発動するクライマックス。
  • 暗殺者も上司も誰もが この時間(=幸せ)が続くことを願う。その願いは読者も同じ。
  • 無表情ヒロインも、無感情ヒーローも顔をクシャクシャにしながら告げる本当の心。

リーの再起動に必要なのは単三電池ではなく課金、の(無印)最終6巻。

そういえば めっきり屋敷に刺客が登場しなくなったけれど、刺客の数はアーサーの心の安定と反比例するのだろうか。物語の中で側近・ロイが屋敷に刺客が多いのはアーサーが使用人を すぐにクビにするからだと言っていた。その人員配置の隙が刺客が入り込む余地になる。だからマリーと出会ったアーサーが人間的に成長することで屋敷の人員が固定化され、それが屋敷での生活の安寧に繋がっている、ということなのだろう。不安定だった連載の中でも こういうことが描ける作者は凄い。

さて『6巻』では登場人物たちの これまで見たことのない表情が見られることが読者の喜びになる。
無表情だったマリーは表情筋と感情をフル稼働させてアーサーの大きな愛を受け入れる。そして愛人の子の御曹司という難しい立場から他者に対して無感情だったアーサーも寛容を見せ執着を捨てることが出来た。どちらも複雑な環境から子供が当たり前に与えられる愛情を浴びることが出来なかったために自分の感情を殺して生きてきた。しかし これまでに経験しなかった人との交流で彼らは自分に欠けていた愛を取り戻した。

物語の上ではマリーは無表情だからメイドロボットとして送り込まれるが、そのアーサーもまたロボットのように御曹司としての自分のプログラムに従っていただけと言える。これは2人が真人間になる物語なのだと、思える内容を描き切ってくれた作者に感謝したい。

そして主役の2人だけでなく、側近のロイがマリーを失うことへの悲しみや彼女と一緒にいるアーサーの姿に心を打たれた表情を見せているのも見逃せない。そこには使用人という立場以上に父や兄のような立場でアーサーの幸福を願う優しい人の姿が見える。
真のロボットであるマリー2もまた実は物語の進みと共に様々な表情を見せていた。一緒に笑った友達であるマリーと一緒にいられないことに涙を見せるマリー2はロボット以上の何かだと思う。

暗殺者・ノアもまたアーサーと同じく愛を知って変わった。自分が予想する以上にマリーを好きになったことを自覚し、彼の人生は大きく変わる。彼の人生は描かれていないが、暗殺者になるぐらいなのだから複雑なものなのだろう。これまでプロ≒ロボットに徹していた彼もまた自分の人生を歩み始める。

ロイ・マリー2・ノア、この3人がマリーとアーサーと一緒にいる時間を、自分たちの幸福を願ってくれたことが嬉しい。嘘の上で成立していた関係は、嘘が解消されることによって本物になる。主役だけでなく誰もが幸せになることは、まさしく大団円である。

最終話でアーサーの異母兄・メイナードが照れの表情を見せたのも印象的。彼にそんな表情を浮かべさせたのはイザベルの功績で、彼女の存在によってメイナードも変わり始めている。令嬢ならぬ悪役御曹司の立場だけど、その彼が未来志向で動いてくれたことで読者は明るい未来を確信する。

設定とセキュリティがガバガバでリアリティのない話のように思える部分もあるが、そのフィクションという嘘が間違いなく読者を ひと時 幸せにしている。それもまた優しい嘘なのではないか。間違いなく続編も完結したら手を出します。私もまた この時間が少しでも長く続きますように、と願いながら本編の感想文を終える。


使用人のマリーと御曹司が なぜか お風呂で全裸遭遇(漫画特有の謎の大きめタオルあり)。その上、閉じ込められて脱出不可能。どうして浴室の外から鍵がかかり、内側から解除する機構が付いていないのか謎すぎるが、考えてはいけない。マリーなら扉を壊せるが後処理(叱責)を考えることで浴室が心理的密室になる。

アーサーはマリーのことを気遣って彼女を温かい お湯に浸からせ体が冷えるのを防ごうとする。しかし これは完全に人間に対する心遣いである。そこから始まる勘違いの上で成り立つ会話でマリーは自分が人間であることがバレたと観念する。アーサーの方は恋心を自分から伝えようと口を開くが、その直前にアーサーが昏倒してしまう。結局、扉をマリーが破壊して脱出したのだろうか。


ーサーの昏倒は、メイナードの手先が吹き矢で打ち込んだ特殊な毒によるもの。やがてアーサーは覚醒するが『1巻』1話開始時点まで記憶が喪失していた。アーサーが失ったのは彼にとって大切な記憶だったもの全て。
しかし側近・ロイはアーサーがマリーの正体に気づいたことも揉み消せるなら怪我の功名だと この事態の解決に動かない。記憶が回復しなければ ずっと一緒にいられる。そう聞かされマリーの心は揺れる。

人間バレは自分たちの失態。そのミスをリセット出来るアーサーの記憶リセットは僥倖?

アーサーの言動で1話が再現される。それならば自分たちは同じ道を辿り、同じ結末に達するのではとマリーは希望を見い出すが、アーサーの記憶はマリー関連だけでなく学校生活で築いた人間関係までも消していた。それはトラウマを乗り越えたアーサーが もういないことを意味していた。だから恋愛解禁以前に戻り、嘘を理解し寛容するアーサーは消滅してしまった。

過去の再現で周囲を把握する余裕が生まれたマリーは この人嫌いのアーサーが寂しそうであることに気づく。ロボットメイドとの出会いが彼の性格を軟化させていた。それが今のマリーには分かる。


から彼と一緒にいられる自分の身の保証を捨てても、マリーはアーサーの成長を取り戻そうとする。学校で友人たちが増えた経験を取り戻せばアーサーは自分がいなくても幸福を見つけるだろう。そう考えマリーは独断専行してメイナードの屋敷に解毒剤の入手に向かう。しかし同じように全てを見てきたロイにはマリーの心の動きも見えていた。

メイナードの別荘に男性執事として潜入したマリー。金持ちの屋敷の警備は いつもガバガバ。それにしても男装マリーは身体のラインが出過ぎている。
しかし解毒剤捜索直後にメイナードの警護をしているノアに発見される。ノアは必死なマリーで遊びながら、本気で彼女の心変わりを期待している。しかしマリーは寂しさや嘘をつく罪悪感に負けてノアに縋ったのではない。マリーがアーサーと決別するのは、真実から逃げるのを止めるため。それが彼女の前進なのだ。

マリーは解毒剤の発見の前にメイナードらに包囲される。メイナードが解毒剤を所持していないことを知り、絶望に駆られ涙する。その絶望から彼女を救うのはノア。彼はマリーに本気で恋をしているからこそ、マリーの絶望を見たくない。それが動機になる。だから自分で試作した解毒剤を彼女に渡す。ノアが出会った時からマリーはアーサーに恋をしていた。だから初めからアーサーが好きなマリーがノアは好きになった。

しかし あと一歩のところでメイナードに捕獲されるマリーだったが、そのピンチを屋敷の案内のために連れて来ていたイザベルが救う。ヒロイン力で築いた彼女との関係が自分を助ける。ノアもマリーに協力し、マリーは屋敷を脱出する。


敷に到着直後に解毒剤をロイに奪取される。が、それはアーサーが口に含む物質の安全性をマリー2に確認させるためだった。ロイは自分が出来なかったアーサーの心の檻を解錠させたマリーに期待している。解毒剤を渡すことは自分たちの罪をアーサーが認識すること。それによって今の仲間たちが散り散りになる可能性があるが、アーサーの幸福を皆が願うからこそ この決断を実行する。
一瞬、ロイが冷酷で冷静な一面を見せたかと思ってヒヤッとしたが、彼もまた温かい人間であることが分かり、その落差で読者が一層 安堵させる構成になっている。

マリーはアーサーに解毒剤を飲むよう懇願するが、アーサーは記憶の回復ではなくロボットメイドとの平穏な日々を望んでしまう。彼の理想が目の前にいる。それが今のアーサーの幸福なのだろう。成長をリセットしようとするアーサーにマリーは解毒剤を口移しで強制的に飲ませる。そして自分が人間であることをアーサーにリプログラムする。自分の本当の心を告げ、アーサーに背を向ける。

解毒剤によってアーサーの記憶は風呂場での遭遇まで戻る。そのプチリセットで状況が分からないアーサーだが、取り敢えず自分のもとから去ろうとするマリーを必死に引き留める。アーサーは嘘という罪を断罪しない。なぜならマリーを愛しているから。

この理想郷の中ではアーサーは成長しないからマリーは希望のコンティニューを願う

年後、結婚式を明日に控えた2人。
側近・ロイは皆で一緒にいることは願っていたが、アーサーとマリーの結婚には思うところがある。本編で唯一のアーサーの実家側の交際反対を表明する人物である。勿論、すぐに撤回される。

この結婚式には異母兄・メイナードも参列していた。アーサーは企業の後継者の権利をメイナードに譲渡していた。それはメイナードには社交性があり、後継者になるための努力をしてきたことを知っているから。やりたい人がやるべきだと考えるのは、アーサーが跡取りとして頑張っていたのは父親からの愛情を欲していたのだとアーサーが理解したから。けれど今のアーサーには自分から愛する人が出来た。だから父の愛の象徴である指輪も地位もいらない。しかし指輪は突き返される。メイナードは正当な手段で その座の奪還を目指すと宣言する。兄弟であり良いライバルである。

マリーの方も結婚式まで努力を重ねてきた。本物の令嬢であるブリジット(アーサーに罵られたい同好会会長)に淑女(レディー)としてのマナーや教養を叩き込まれていた。

そうして自分の心残りや心配を乗り越えて2人は結婚の日を迎える。人間としてマリーからの告白の後、2人は参列者の前に姿を見せる。最後に暗殺業界から干され抹殺対象になっているノアも姿を見せ、2人が出会った人々全員からの祝福を受ける。

最後にマリーは新妻でありながらメイドとして復職する。マリーの望む、そしてアーサーの望むマリーの姿である。アーサーが熱望していたのはロボットではなくメイドだったということだろうか(違う)。