
あきもと 明希(あきもと あき)
機械じかけのマリー(きかいじかけのマリー)
第04巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★☆(7点)
御曹司アーサーの専属ロボットメイド・マリー…その正体は人間!ご主人様への恋心を隠しながら、記憶喪失(嘘)や退学の危機を乗り越え、ロボットとして溺愛される日々を送るマリー。そんな中、人間嫌いなアーサーの“親友”・ダリルが現れて…!?尊くて切なくて愛おしい★大人気ラブコメ第4巻!
簡潔完結感想文
- アーサー誘拐犯は金銭を引き出そうとするが、マリー誘拐犯が欲しいのは情報。
- 下着を隠したくて ついた嘘に乗っかった御曹司は、嘘をつく動機と背徳感を知る。
- メイナードに続いてダリルでも脅迫材料を揃えてから相手を脅迫するアーサー様。
暗殺者のいない日々は嵐の前の静けさだった!? 4巻。
この『4巻』の主な舞台は学校。屋敷にいても日々、暗殺者に狙われ続ける御曹司・アーサーだけれど、学校内は よほどガバガバな屋敷より安全なのか今回は暗殺者の姿が出てこない。それでは平和なのかというと そうではなく、アーサーもマリーも学校や社会で目立つために恨まれたり羨ましがられたり落ち着かない毎日となる。今回、学校が舞台なのは屋敷という小さな世界ではなく、少し大きな、それでいて学生としては当たり前の世界に2人が触れる、彼らの世界の広がりを表しているのだろう。
変わらないのは嘘が物語のテーマであること。ずっと根底にある心苦しいマリーの嘘に加え、本書で初めて描かれるアーサーの嘘が目新しい。そしてアーサーが嘘をついた経験は今後の伏線となる(はず)。友情や暗殺のようにアーサーの周囲は悪意に溢れた嘘に溢れていたから彼は嘘を嫌悪するが、今回の実体験を通してアーサーは嘘という虚構に逃げ込む人の心理、そして嘘の善なる効用を理解したはずだ。これが彼の寛容を目覚めさせてくれればいいと思う。


そして大きな嘘の発覚前に、アーサーが学校という場で社会性や、他者との交流が生み出す効果について理解したのも前準備だろう。この世界では、マリーシリーズというロボットだけでなく、人間も自分を本心から助けてくれる存在であることを彼は学んだはずである。
このところのアーサーは、マリーに「恋人モード」の搭載を願ったり、自分が執事になったり、勉強を教える側に回りたいと願ったり、自分以外の何かになるというロールプレイについても経験しているように思う。それがマリーの嘘への理解の一助になってくれることを祈るばかりだ。
でも恐ろしいのは本書の場合、当たり前に学ぶこと、気づくことを平気でスルーしそうな点である。結構 思い込みが強くて、自分の望むことを他者に投影してしまう性格のアーサー様だから、自分のことを棚に上げて他者の振る舞いが許せないという結論に達する可能性がある。まぁ反対にアーサーがマリーの秘密を知ったことを記憶から消去したりする とんでも展開もあり得るのが本書なんだけど…。
そして珍しいのがアーサーの鉄拳制裁の場面だろう。上述の通り『4巻』は学校編とも言え、暗殺者が登場しない。だからマリーが彼らを制圧する必要がなく、学生同士の争いならばアーサーが直接 手を出すことも可能なのだろう。
『4巻』でアーサーは2回 戦闘力を発揮するが、そのどちらも広い意味でマリーを守る場面であった。そして2回目はマリーに暴力を振るわせて彼女が周囲から責められることから守るだけでなく、自分で暴力を行使することが過去と決別することを意味していた。
それはトラウマを克服したことでもあり、だからこそ その後、アーサーは暴力を振るった その手を今度は芸術に用いる。小学生のトラウマが原因で ずっと封印していた得意なピアノを奏でることは彼の心の余裕の表れといえるだろう。
芸術を、自分の好きだったものを取り戻したアーサーは無敵。そして少女漫画のトラウマ消失は恋愛解禁の合図である。このままアーサーはロボット(と認識している)マリーとの結婚や子作りを真剣に考えるターンになるはずだったが、その不毛な暴走を止めるためにもラストの展開があるのだろう。
嫌な予感のする終わり方だけど、上述の通り、アーサーが嘘をつくという体験が布石として置かれ、そして その直前にトラウマを克服する場面が用意されている。この2つの出来事がアーサーに寛容さと愛を再取得させると信じたい。私の勝手な思い込みなのかもしれないけれど短期連載分でも長期連載でも作者が1巻を通して描きたいものが見えてくるのが とても好印象。
無人島でのマリーの言動にアーサーは彼女が人間であることを疑い始める。それを意識するあまりアーサーはマリーと距離を取る。
その隙間に入り込むのが この学校の機械(ロボット)マニアが集まる「機械(ロボット)愛好家倶楽部」。大企業の最新鋭ロボットを調査するために誘拐を試みた。ちなみに本当の調査対象はマリー2の方。マニアな男たちに身体の隅々まで調べられる=人間であることがバレる危険があったが、機械オタクたちは奥手な男性で女性型ロボットに触ることを躊躇するというのが面白い。
そこから話題はロボットの所有者であるアーサーに移るが、彼について話すマリーの表情に人間っぽさをオタクたちが発見したことで またマリーは調査対象として扱われてしまう。マリーは隙を突いて逃亡を企てるが数の暴力に負ける(身体を縛られているし)。そのピンチにGPSでマリーの居場所を特定したアーサーが現れ、オタクたちを制圧。アーサーが人間相手に戦闘力を発揮するのは珍しいが、どうやらオタクたちが超絶 弱いらしい。
誘拐犯に容赦ないアーサーだが正攻法で手に入れなければ意味がないと、彼の人生哲学を語る。後継者として恥じない実績と言動を心掛けているアーサーだからこその発言だろう。
こうして心の距離が埋まり、最接近するはずの2人だったが、マリーはオタクたちとの揉み合いの中で服がはだけて下着が露出していた。それを恥じらう乙女心が接近を阻み、マリーは咄嗟にアーサーの記憶を喪失したと嘘をつき、ショックで彼を卒倒させる。人間だけが嘘をつく。
この記憶喪失はアーサーの脳内補完によりマリーはオタクたちに記憶をいじられた結果ということになる。色々と事情を理解した側近・ロイはマリーの勝手な行動に腹を立てながらも、自分が この一件を引き取ることで翌朝に問題をリセットさせることを試みる。
しかし責任感の強いアーサーが自力でのデータ復旧を目指す。その方法は誤データをインストールしてマリーの記憶を埋めるという卑怯なもの。オタクたちへの説教は前振りだったのか…? 誰も彼も自分の欲望に忠実すぎる。嘘が大嫌いなアーサーがマリーに嘘をつく初めての事態となる。愛ゆえか それとも記憶が怪しいロボット相手だからなのか。
2人の間の日課だというイチャイチャ7ヶ条を提示し、記憶復旧のために仕方なく それを実行する。それに戸惑いながらマリーも記憶喪失の自分の設定を利用して、学校生活におけてアーサーは社交をする必要性があるのではないかと尋ねる。これは後半の前振り。アーサーの答えはマリーが最優先で最高の存在。アーサーは いつかマリー(ロボット)との間に子供を設けることまで考えていた。
嘘の条約を盾に彼からキスをされそうになる寸前で体育祭が兄弟校と合同で実施されるという話が舞い込む。そして その兄弟校にはアーサーの親友がいるという。アーサーが唯一 心を開いた人間がいることにマリーは驚き、そして喜ぶ。もはや母親のような心境か。しかしアーサーは親友との再会に複雑な面持ちを見せる。そんな彼のためにマリーは精一杯 寄り添い、7ヶ条の実行によって記憶が回復したと報告する。アーサーの追及を回避するためにも、マリーは彼の嘘を追求し、言葉の暴力で打ちのめす。しかし嘘の上に成立していた関係は間違いなく2人を幸せにしていた。
アーサーの社交性の無さを問うたマリーだったが、彼女もまた学校内で友人がいないまま。
そして もう一つの学校問題として成績不振が挙げられる。マリーがテストで赤点を取り、追試を受けることに。この追試をクリアできないと即 退学。マリーの周辺には秒で死ぬことが多すぎる。
そこから始まる勉強回。暗殺者・ノアも もっともらしい理由でアーサーを納得させて合流。ノアはマリーの過去という弱みを握っているため、そのネタを利用して彼女で遊ぶ。しかし それがアーサーにはイチャイチャに見える。マリーは人間だった頃(?)から独りでいることが普通だったが、今はアーサーたちがいる。嘘の上で成立する関係だけど、その温かさは本物だ。そして屋敷ではロイとマリー2にも見守られながらマリーは勉強している。眠ってしまわないように上下の瞼に貼られたテープはアーサーには見せられない。
マリーは本当にギリギリで退学を免れる。マリーはアーサーに余計な心配と嫉妬をさせることのないよう、ノアに頼らない自立を目指す。
合同体育祭で いよいよアーサーの親友だというダリル・ブロフェルドが登場する。しかしアーサーは彼に背を向ける。そのアーサーの態度にダリルはマリーに、応援を理由にアーサーの出場種目を聞く。
アーサーが最初に出場した乗馬種目でアクシデントが起き、足を痛めてしまう。アーサーは現場でエアガンの玉を入手しており、マリーは暗殺者ではないかと考える。しかしアーサーはダリルの犯行だと考えていた。
その根拠として親友同士の2人の来歴が語られる。アーサーは大企業の後継者として指名される前は ただの愛人の子。しかも成績が優秀だったことで周囲の反感を買う。そんな時に仲良くなったのがダリル。彼もまた連れ子で境遇が似ていた。2人は欠けた物を補い合うことで厳しい学校生活を乗り切っていた。
しかしダリルはアーサーと一緒にイジメられることで彼の警戒心を解いていたイジメの首謀者であることが発覚。結局 ダリルも成績が優秀なアーサーに嫉妬していたのだった。自分たちの関係が虚構の上に成立していたことを知りアーサーはショックを受ける。彼の嘘への拒絶反応も このトラウマが原因だろう。そこからアーサーは誰も信用しなくなった。
2人の経緯を知ったマリーは、アーサーの心境も理解する。偽りだったとはいえ楽しい記憶があるからアーサーがダリルを完全に拒絶できず、だからダリルはアーサーに近づき嫌がらせを続ける。マリーはダリルにアーサーの出場種目を教えたことを悔やむ。
怪我をしたアーサーの代わりに競技に出場し、そこでダリルに勝つことで会話の糸口を掴もうとするマリー。しかしアーサーの欠場とマリーの代役によって競技への不参加者が続出。そこでノア、そして この学校で知り合った生徒の手を借りて騎馬戦に出場する。これがマリーの学校内の絆だ。


しかし そこでもダリル側は不正を働くが、身体能力の高いマリーとノアが協力してダリルを追い詰める。ノアの力を借りてアーサーが心理的な抑制で出来ないダリルへの制裁をマリーが実行しようとする。それはアーサーを大切に思うマリーの怒りである。頭に血が上ったマリーが競技の枠を超えた暴力に走ることをアーサーが止める。その代わりにアーサーがダリルを殴る。不正を告発してもシラを切ろうとするダリルに、アーサーは友人関係を続けながら収集したダリルの悪行の証拠を突きつけ、彼を奈落に突き落とす。
アーサーの人生で 僅かに楽しい思い出として記憶されたダリルとの関係は もういらない。今の彼には日々を薔薇色に染め上げるマリーという存在がいる。だからアーサーは過去を、トラウマを克服できた。ちなみにダリルは体育祭での不正行為だけを咎められて謝罪をする。それ以上の大きな処分は下されなかったようだ。
自分のために多くの人が行動してくれたことにアーサーは感謝の意を示す。これがアーサーが築きつつある まともな人間関係である。今後の彼の社会的成功も約束されたということか。こうしてアーサーは小学生時代から封印していたピアノで音を奏でる。これもトラウマ解消の証明だろう。しかし物語はアーサーに新たな試練を与える…。
