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トリセツ3:コスプレは抑圧された自我の解放と欲望に忠実になる喜びをもたらします

機械じかけのマリー【電子限定おまけ付き】 3 (花とゆめコミックス)
あきもと 明希(あきもと あき)
機械じかけのマリー(きかいじかけのマリー)
第03巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

人間不信な御曹司・アーサーのロボットメイドとして働くマリー(本当は人間)。ところが、アーサーへの恋心を自覚したせいで挙動不審になってしまい大ピンチ!ドキドキを隠しながらのメイド生活は、なぜか主従逆転したり、南の島でバカンスしたり、暗殺者と戦ったりと大忙しで…? ますますカオスな綱渡り溺愛ラブコメ第3巻★

簡潔完結感想文

  • ようやく出来た親友にすら嫉妬してしまう人間の ままならない恋愛感情。
  • 誕生日のトラウマを克服することで開く次の扉。独占欲強めの黒執事 爆誕
  • お出掛け回は遭難回で海回で水着回で最終回のはずだったが単三電池 確保。

実を聞かれたくないけど察して欲しい乙女心、の 3巻。

『2巻』では暗殺者・ノアが縦軸になっていたけれど、『3巻』では本物のロボット・マリー2が物語の中心にいたように思う。

マリー2は『2巻』のノアとの戦闘で壊れ、修理され バージョンアップして戻ってきた。これまでは命令遂行プログラムが強く働いていたが、今回から意思疎通が出来るようとなる。不思議なもので この意思の疎通を見ると読者としてもマリー2への愛着が増す。自発的な発言が人間に特別な感情を引き出させるのだろうか。

人間が無表情のロボットにも愛着を見い出すことを読者はマリー2を通して経験する

面白いのはマリー2の立ち位置。マリー2はマリーを助けるようプログラムされ、彼女のサポートをする。こうしてマリーにとってマリー2が何でも相談できる親友枠になる。マリーがアーサーには言えない恋の悩みもマリー2は共有してくれ解決策を一緒に考えてくれる。人間を助ける健気さも愛着の理由の一つだろうか。

そしてマリー2は親友枠になった直後に仮想敵にもなるのが良かった。これによって恋愛感情の綺麗な部分だけでなく汚い部分も浮かび上がらせて、無表情のマリーが一層 人間的な悩みに直面している。ずっと孤独だったマリーがマリー2の存在に救われたのに、その彼女に嫉妬してしまう。そんな矛盾も人間らしい。
またマリー2の存在によって、『2巻』では当て馬ポジションにいたノアを物語の中に寄せ付けない働きもしている。これによって作者が言う通り『3巻』は主役の2人だけの話が多くなっている。奇跡の復活を果たしてきた本書も、本来は全3巻で終わる予定だったらしいので、ノアを退散させることで、グッと2人の距離を近づける心積もりだったのだろうか(そしてまた作品は奇跡の復活を果たす)。


リーがマリー2に嫉妬するのはアーサーがマリー2に夢中だから。けれど はたして本当にそうなのだろうか。恋愛経験値の低いマリーには見えていないことが俯瞰すると見えてくる。

それはアーサーはマリー2に男のロマンを要求する一方で、マリーには何も要求しないということ。そこがマリーの寂寥にも繋がっているのだけど、それはアーサーはマリーにマリーのままでいて欲しいということである。マリー2にロボ的な改造を要求するのはアーサーにとってはマリー2は飽くまでもロボとして認識しているから。異性として意識している女性と、飽くまでも友だちである女性だからフランクさが違う という感じか。

マリー2は仮想敵であり、そして悪く言えば恋愛の踏み台なのだけど、マリー2はサポートに徹していること、そもそも種族が違うことが読者の気持ちを濁さない。人間はロボットを人と同等とは思わず雑に扱っていることの証拠かもしれないけど…。もう これから悪感情の阻止のために女性ライバルとか悪役令嬢とか全員ロボットでしたということにすればいいのではないか。

それにしてもアーサー様のトラウマや地雷は星の数ほどあり総数は把握できない。これからもイベントの度(クリスマスやバレンタイン)にアーサーにトラウマを思い出してもらえば それだけで話が作れる。確実に狙われる設定はネタに困らないのかもしれない。そういう前提があるから連載の延長にも対応できるのだろうか。


よいよアーサーへの恋を自覚したマリーは以前と同じようにミスを連発。そのマリーをサポートするのが、マリーを助けるようにプログラムされた本物のロボット・マリー2。2人のマリーは種族を越えた友情を結ぶ。マリー2に見守れながらアーサーのお世話をするマリーだったが、以前と同じことが出来ない。彼を直視することも彼の願望を即座に叶えることも もう難しくなってしまった。

そのことに落ち込むマリーだったが、マリー2から励まされてアーサーと向き合う覚悟を決める。アーサーがマリーのことを大切な存在だと言ってくれたことで言えないはずのスキという言葉が自然と口から零れ落ちる。いつも通りに賊を撃退し、いつも通りに最後にマリーの表情が和らぐ。仕切り直しの連載とはいえ重複が多い。続けて読むと飽きるかも。


いてはアーサーの誕生回。アーサーの設定は牡羊座(のA型)なので作中は3月後半~4月中旬なのだろうか。しかし誕生日はアーサーにとって地雷。祝いの品には悪意が込められていることを彼は学んでいた。

この回でマリーは いわゆる悪役令嬢たちに目を付けられるのだが、彼女たちは「アーサー様にゴミを見るような目で見られたい同好会」の人たち。(女好きの)父からの教育で女性に優しく接するが人間嫌いが隠せず、ぎこちなく接するアーサーに萌えるようだ。しかしマリーがガチ恋勢だと知った途端、結局 同好会の人たちは悪役令嬢になる。

誕生日で唯一、アーサーに父と食べたケーキに良い思い出があると知ったマリーはケーキ作りに勤しむ。失敗を繰り返しながら完成したカップケーキ大の品をアーサーに渡そうとするが、途中に事故で見映えが悪くなる。尻込みをするマリーだったが、アーサーの嫌な思い出を塗り替えようとする気持ちが強くなり、彼にプレゼントを渡す。これで また一つトラウマが解消されたということか。


ラウマ解消で誕生回は終わったと思いきや、今度はマリーがアーサーの望みを叶えて欲しいと言われる。それが主従逆転。アーサーが執事になりマリーお嬢様を お世話したら楽しいんじゃね?というのが彼の願望らしい。ちなみに勝手をしてマリーが怒られないように側近・ロイの了承済み。

アーサーは お世話すると言っておきながら強権的。普段のマリーへの態度と違い俺様モードで渋るマリーを従わせる。黒執事なのだろうか。アーサーはワガママが許される自分の誕生日に向けて準備と練習を進めていたらしい。ずっと強い(強すぎる)愛情を覗かせながらアーサーはマリーに忠実に仕える。いつもとはアーサーが逆でマリーの世話をして ひざまくらをする。恋心を自覚したマリーには緊張するイベントだろう。

その執事、有能。でも ご主人様への愛が重すぎて黒執事というより「病み執事」だ

しかしアーサーが何事も万能にこなし、そして自分は何もしないことでマリーは自分の存在意義を見失う。いつも通りの屋敷への賊の侵入もアーサーが片付けてしまう。そこでマリーは自分にアーサーを守りたいという願望があることを理解する。


ーサーがマリー2(のロボット的な改造)に夢中なことにマリーは やきもちを焼いてしまう。こうして これまでになく2人の間に距離が生まれる。マリー2は親友枠でありライバル枠ではないのだけど仮想敵ではある。

現在はマリー2が仮想敵なのでマリーの相談相手はノアの役目となる。マリーは最初からノアに相談しようとしたのではなく、アーサーに近づくとモヤモヤするので、ノアを監視することで仕事に集中しようとしていた。そのノアに的確に状況を診断され、マリーは人間的な自分の心の汚さを自覚し、一刻も早くアーサーへの失礼な態度を詫びようと彼のもとに走る。

そして彼に正直に心の経緯を説明し、嫌われることを覚悟する。けれどアーサーの反応には照れと嬉しさが見られた。嫉妬をするほど自分のことが分かったからだ。こうして互いに特別に想いで特別に想われていることを理解した2人。ハッピーエンドである。
ちなみにマリーに冷遇されたアーサーは彼女から好かれるように他者にも優しい人間となっている。アーサーの歪んだ人格を矯正するには この冷遇モードは役に立つのではないか。


末はお出掛け回になるはずが、クルージング中に悪天候で船が転覆し遭難回となる。そして水着回でもある。マリーさんスタイル良すぎ。

マリーは無表情ながらパニックに陥っていたが、アーサーは遭難シミュレーションの成果を発揮し大いに役立つ。知識と体力によって食事を確保した2人は生き延びる希望を見い出す(マリーは隠れて食す)。作品内で初めての極貧生活ともいえる状況となりマリーの過去が語られる。両親と3人で暮らしていた時は幸福だったが、父の事故死によって母が麻薬に手を出す。そして現実逃避を始め、子供のネグレクトを始めた。その状況下でマリーは その辺の草を食べて生き延びてきた。
過去を回想したことで うっかり自分の幼少時代のことを語りそうになるピンチが到来。何とか誤魔化すが、アーサーには自分の全てを知ってもらうことは不可能だと思い知る。

夜、水着姿のまま2人は抱き合って横になる。日中は頼りになったアーサーだが、夜になると今回の遭難を反省。そんなアーサーをマリーが一緒なら幸せだと慰める。いや慰めるというよりも本心だろう。ミスをフォローされアーサーは彼女に改めて好意を伝える。その好意に応えたくてマリーは もし人間だったらという仮定の上でアーサーを好きになったはずだと彼に伝える。
そこに救出部隊が到着するが、マリーは帰りたくないとばかりにアーサーにしがみつく。胸にアーサーの腕を誘導し誘惑しているように見える。

当初は ここで短期連載も終了する予定だったらしく、この無人島でのカミングアウトによって両想いハッピーエンドだったのだろうか。