《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

トリセツ1:親密度が上がりますと各話ラストで新しい表情を見せることがあります

機械じかけのマリー【電子限定おまけ付き】 1 (花とゆめコミックス)
あきもと 明希(あきもと あき)
機械じかけのマリー(きかいじかけのマリー)
第01巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

元天才格闘家のマリーの新しい仕事は、大財閥の跡継ぎ・アーサーの専属メイド。 ただしアーサーは冷酷&ド級の人間嫌いのため、マリーはロボットと偽って働くことに!! 人間だとバレたら即処刑のピンチのはずが、アーサーは無機物には超絶優しく……まさかの溺愛ルート!?さらにアーサーを狙う暗殺者も次々やって来て――!?機械じかけの(フリをして働く)マリーの毎日は、予想外の出来事の連続!!笑ってキュンする最強ラブコメ第1巻!

簡潔完結感想文

  • 身分を偽る庶民ヒロインと御曹司の交流は白泉社の王道(※ただしロボットとして)
  • 気合いでクシャミは我慢できても、貴方に触れられると心拍数の上昇が止められない。
  • 比較対象として本物ロボットの上位モデルが登場するが彼が愛着を持つのは偽物の方。

三電池で充電すれば何度だって I’ll be back、の 1巻。

2025年の10月からアニメ放送が予定されている作品。当初は読切作品で、その好評により短期連載、定期連載となった。しかも一度は本編が全6巻で完結したはずなのに、アニメ化に合わせて続編まで発表され2025年10月に1巻が発売予定となっている(以下続刊)。

このように何度でも復活するのは読者のニーズにピッタリ合った作品だからではないだろうか。
まず庶民ヒロインと御曹司ヒーローの出会いという白泉社作品の読者が好きな設定が挙げられる。しかも性別を偽って学校潜入は白泉社作品の お家芸を踏襲した、無機物(ろぼっと)だと偽っての潜入まである。その上、ロボットではなく人間だとバレたら死、という最高の緊張感が作品を引き締めている。

しかも恋愛面では なかなか成就しない白泉社らしい遠回りの恋模様を描きながら、1話目から溺愛モノとしても読めるという構造が優秀過ぎる。これは身分を偽っているからこそ成立する状況なのが面白い。ロボットとして絶対的な信用を勝ち取る一方で、人間として嘘を重ねていくコメディの中にある 一粒の苦みが良いアクセントになっている。本書のヒロイン・マリーは彼に好意を募らせれば募らせるほど、その恋が困難であることを思い知る。そのマリーの辛い立場に読者は どんどん肩入れしていく。

アーサーの溺愛対象のマリー(ロボット)と アーサーの粛正対象であるマリー(人間)

そして機械じかけのマリーと御曹司・アーサー、2人の出会いと関係性の構築が双方の感情の封印を解くという話の流れが良い。2人は それぞれに不遇で不幸で、そんな2人が寄り添い合った時に感情が漏れる。そんな2人が醸し出す空気感を描けていて少女漫画として非常に優秀だ。人間嫌いのアーサーが実は人間のマリーを許容し、愛情を抱くことは彼の性格の矯正の第一歩のような気がするし、マリーがロボット失格で内面の感情によって表情が動く様子は人としての正常さを取り戻しているように見える。

マリーの雇い主である側近・ロイも主人であるアーサーの精神状態を心配したからこそマリーを でっち上げたのだろう。ロイが見たかったのはアーサーの笑顔。それはアーサーの心の余裕とも言い換えられ、マリーはロイが送った最高のプレゼントである。スナック感覚で暗殺や誘拐が発生する本書だけど、その根幹に愛情があることが嬉しい。

読んでいて連想したのはアンドロイドが人間だと偽って青春を体験した鈴木ジュリエッタさん『カラクリオデット』。4話から登場する「本物の」ロボット・マリー2がオデットのように感じられた。読者もマリーも本物のロボットであるマリーに感情を移譲していく。それは人間側の勝手な思い入れなのかもしれないが、種族を越えた友情や情愛は確実に存在すると思わせてくれる。また種族を変えて正体がバレないようにするヒロインの姿は赤瓦もどむ さん『ラブ・ミー・ぽんぽこ!』を連想した。ぶっとんだ明るいコメディなところが よく似ている。


内一の大企業の御曹司・アーサーは、幾度も命を狙われているため極度の人間不信に陥っている。もはや無機物しか信じなくなったアーサーのために側近・ロイが用意したのが「機械じかけのマリー」。アーサーが望むロボットとして彼のメイドとして配置したけれど、実際は人間の女性。それがヒロインのマリー・エバンズ、16歳。幼少期から天才格闘家として名を馳せたマリーだったが親の借金返済のため工事現場で働く日々を送っていた。ロイはマリーに学校への通学を約束する代わりに、アーサーのボディーガードを依頼する。高い戦闘力と無表情、それがマリーが選出された理由だった。

アーサーは大企業の次期当主だが愛人の子のため、親族から命を狙われている。幼少期からの事件により感覚が研ぎ澄まされているため、違和感に すぐに気が付く有能な人物として描かれる。守られてばかりじゃないんだぞッ!ということか。
そのアーサーが最も嫌うのは嘘をつく人間。それに該当する者は発見次第 社会的に殺す、というのがアーサーの信念。嘘をついて接近しているマリーはアーサーが最も憎悪する人間である。


能で敏感であるはずのアーサーだが、マリーがロボットだと妄信し そして溺愛する。これまでの人間不信の反動からか、人に対して甘えたかったことをマリーの前で素直に出す。決して崩さなかったアーサーの仮面がマリーの前では崩壊する。

他者に厳しく常に第一線に居続けるアーサーが自分にだけ優しい。そして無表情のマリーのことを可愛いと言ってくれる。この落差が読者の心を掴んで離さない。アーサーの孤独を知ったマリーは彼を甘えさせることを決意する。しかし彼への思慕は同時に嘘をつく罪悪感を増幅する。近づくほどに偽りの上に成り立つ関係なのだ。

ある日、誘拐されたアーサーは自分の存在価値を否定され絶望の淵に立つ。そこに現れるのがマリー。容赦なく誘拐犯を撃退するが、犯人のタバコが引火して煙に巻かれる。アーサーを優先して助けるため彼との今生の別れを決意したマリーは、無表情を崩し、自分の本音を、感情が動かす表情を見せる。アーサーの存在価値を認め、自分にとって大切な人だと告げ、彼を家事から脱出させる。マリーが煙で咳き込んだりしたらバレたのだろうか。
火事の現場から脱出したアーサーは いつも厳しく接する側近たちに頭を下げてマリーの救出を願い、そのお陰でマリーは助かる。アーサーはマリーの中に感情を、そして人間っぽさを確認したこと、そして自分の存在を認められたことでマリーにガチ恋をしてしまう。


1話でマリーの動力源が単三電池だと自分で設定を作っていたが、2話では その充電方法が発表される。マリーは単三電池のマイナス極側を口に咥えるのだが、それでは通電しないだろうとか思ってはいけない。賢いアーサーが そんなことを分からないはずなく、もしかしてマリーを人間だと分かってやっているんじゃないか という疑惑も浮かぶが、漫画なので そこはスルー。
ちなみに人間マリーの動力源は当たり前だけど食事で、アーサーの入浴中に急いで腹に詰め込んでいる。歯に食べ物が挟まっていたら大変だ。

使用済みの単三電池には唾液が付着する…、とかの細かい設定は宇宙へポーイ!

2話から登場するのがアーサーの異母兄であるメイナード。彼はアーサーがいなければ跡継ぎになれたはずの人物で、最も執拗にアーサーの命を狙っている。メイナードはマリーに対して罵詈雑言を吐くが、マリーが許せなかったのは自分の所有者としてアーサーが悪く言われたこと。自分よりも相手を優先し大切に思う気持ちが美しい。

何度も暗殺を失敗しているメイナードは痺れを切らし、自分が直接関与する形でアーサーを誘拐し暗殺を試みる。そのピンチにマリーが役目を果たし、刺客を倒す。しかしメイナードとの直接対決ではマリーは口を挟まず、アーサーが対応する。それはメイナードのマリーへの侮辱を聞いたアーサーが我慢ならなかったから。この構図は誘拐前のマリーが取った行動と同じである。

アーサーは抜かりなくメイナードの誘拐関与の証言を録画しており彼を退散させる。そして命令では上手く出来なかった笑顔をマリーは見せ、アーサーはますます恋に落ち、ロボットとの結婚を考え始める。


ーサーは暗殺者や刺客だけでなく単純に無能な人間も嫌う。
アーサー主催の屋敷でのパーティーでマリーは社会的格差を実感する。けれど彼のメイドとして役目を果たすべく縦横無尽に働く。実は主催者として張り詰めているアーサーを癒やし、スキンシップを取る。だが そのスキンシップでマリーは自分の心拍数が上がっていることに気づく。

そこからはミスを連発。大事なパーティーの雰囲気を壊してしまうマリー側のミスが初めて描かれ、そのピンチをアーサーが機転と立ち居振る舞いで助ける。ミスをするような無能でも許されるのはマリーだからなのか それともロボットだからなのか、そこが問題だ。


のパーティーで2人はお互いの長所を認め合ったようだ。ロボットメイドのマリーを着飾るアーサーは、ロボットに対して人間にするようにデコチューで親愛の情を示す。そんな彼の行動に動揺し、拒絶してしまうマリー。

ロボットの振りを忘れた自分を恥じ、アーサーに秘密が露見してしまったのではないかと恐れるマリー。実際にアーサーから疑いの目を向けられ、詰問されてしまう。そこからアーサーはマリーの動揺とボロを出す目的でスキンシップを多用する。

マリーはアーサーと一緒にいるために全力で感情を封印しようとするが、その様子を雇い主でもあるロイに見られクビを宣告される。ここで登場するのが本物のロボットメイド・マリー2(マリーツー)。どうやら本書の科学レベルは本物を創り出せるぐらいのレベルにあるらしい。だからこそアーサーはロボットメイドの完成を疑わなかったのだろう。

偽物ロボットのマリーとは違い、アーサーが望む本当の無機物。彼は どっちを選ぶ!?

た目こそ1=マリー本人に比べて劣化しているが中身は優秀で、戦闘能力も申し分なく、完全に上位互換モデル。こうしてマリーは存在意義を失う。ロイはマリーに対して手厚い保証をする。遠い地ではあるが通学も住居も用意してくれた。それは当初のマリーの望みの実現であり、この偽りの関係を終了させ、マリーの肩の荷を下ろさせる対応である。
この家で働く理由がなくなりマリーは退職を決意する。

マリーが屋敷を出る間際にアーサーが彼女を発見し、理由の説明を求める。そこでマリー2の優秀さによる自分の存在意義の消失を告げるマリーだったが、アーサーにとって大切にしたいと思うロボットメイドはマリーだけだと訴える。

そこにマリー2が現れ、マリーを戦闘力の高い危険人物だと誤認識して暴走。マリーは応戦するが上位互換であるマリー2に劣勢を強いられる。しかし自分を庇ったアーサーが怪我をしたことでマリーは怒りという感情を露わにしてマリー2の首を吹っ飛ばす。これでクビ回避、という話なのだろうか。

アーサーは最近のマリーの挙動の おかしさを故障と考え、無表情のマリーはロボットに違いないと断言する。こうして人間としての価値、そしてアーサーへの信頼を消失したマリーは全リセットされ、ロボットとして彼を支える決意を新たにする。しかしアーサーに抱きかかえられるマリーの表情は とても機械とは思えない笑顔を浮かべている。