
山田 デイジー(やまだ デイジー)
恋するふたごとメガネのブルー(こいするふたごとメガネのブルー)
第01巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★☆(5点)
ももとさくらは、超なかよしのふたごの姉妹。幼いころから病弱だった姉のもも。妹のさくらは、活発な元気な子。性格はまるっきり正反対だけど、ふたりの世界をなんでも半分コして生きてきた。そうすれば、倍の世界が楽しめるから…。内気な姉のももが初めて恋をして、全力で応援しようと意気込むさくら。だけどその相手は、さくらの同級生のフジタ…!?
簡潔完結感想文
- 双子姉妹の姉は夜の塾で、妹は昼の学校で藤田の隣の席。場所と時間で人格が変化!?
- 藤田はオンオフがハッキリしてるから学校は遊ぶ場で塾は学ぶ場。色々 間違ってない?
- 鈍感ヒロインが恋に気づくのは、彼が最も好きになってはいけない人だと気づいてから。
まだ はやい、は やがて もう手遅れに変わる 1巻。
まず気になったのが3月31日(と4月1日)生まれの双子の姉妹が高校2年生の春の時点で17歳と表記されていること。彼女たちは早生まれであり、学年で最も遅く誕生日が来る人たちなのに物語開始時点で17歳なのは おかしいだろう。誰も この表記に疑問を感じていない時点で本書はヤバい…??
それでも連載当時全20回中19回、読者アンケートで1位を取ったという作品。作者が掲載誌の看板作家となり黄金期を迎えた作品なのだけど、どこが そこまで優れた作品なのか、リアル読者の心を掴んだのか私には分かりかねた。


双子で同じ人に恋をする、という いかにも少女漫画やライトノベルのような設定は面白いと思うのだけど、本書はヒロインもヒーローもエンジンがかかるのが遅くて、予期せず恋に落ちることや止められない想いなどを少女漫画を読む上での喜びを少しも感じられなかった。作者の中で本書の合言葉は「まだ はやい」らしいが、満を持して恋愛が動く前に多くの読者は動かない恋愛に辟易しているのではないか。
私は本書の次回作『初恋はじめました。』から作者の作品に入ったのですが、両作品とも致命的にヒロインたちに可愛げがないように思った。最初は、恋に不慣れなヒロインとして面白く読めるのだけど、話が進むにしたがって付き合いづらさや、一緒にいてストレスを感じるタイプの人間に思えてしまう。メインカップルの どちらも魅力的に思えないのは致命的。人に好かれる愛嬌のあるキャラを生み出すのは難しいのだろうけれど、作者の生み出すキャラは面倒くさい。
また私が少女漫画で望んでいないタイプの、恋をしようと思っていない人をヒロインに据えるから、恋が始まるまでが長すぎる。その途中でヒロインの性格に辟易してしまって、両想いの達成に興味が薄れてしまう。鈍感ヒロインならまだしも、結果的に泥棒猫みたいな状態だし…。困難の多い恋愛の方が読者は盛り上がるのだろうけど、色々 こじらせて周囲に迷惑を掛けた後に恋愛が成就しても素直に喜べない。私が手に取った2作品連続で似たテイストだったので、辟易が倍増されてしまった。
面白いと思ったのは双子の造形とヒーローの立ち位置。
双子の姉妹 もも と さくら は分かりやすく言えば陰と陽である。そして彼女たちが目撃する藤田(ふじた)というヒーローもまた陰と陽に分けられる気がする。陽のキャラである さくら は日中 学校で明るく馬鹿笑いする藤田の隣の席になる。そして陰のキャラである もも は日が暮れてから始まる塾で藤田と出会い、彼の理知的で優しいところに惹かれていく。


藤田という人間を、メガネの有無や昼と夜、場所によって全く違う人間のように描くことが面白かった。ネタバレすると双子姉妹が目撃する藤田は双子ではなく同一人物なのだけど、まるで違う人間のように見え、昼担当の さくら が夜の藤田を目撃することは彼の性格のギャップを知ることになり、その性格の幅が魅力的に映るのだろう。これは逆もまた然り。
そして もも が昼に さくら と一緒にいる藤田を見ること、その逆の夜に もも と一緒にいる藤田を見ることが双子姉妹の それぞれに小さな胸の痛みを発生させる。自分の知らない藤田の一面を見たいけれど、その人の前でだけ見せる藤田の表情は見たくない。そんな葛藤が描かれていく。
二面性のある藤田という設定は面白いのだけど、なぜ彼が そんなキャラ変をして生きているのか という疑問が残る。そして塾ではガリ勉しているのに学校では授業をまともに受けないというのも謎。学校の友達とは勉強と無縁の関係を築きたいのだろうか。その割にテストでオール100点を取ったり、勉強が出来ることを隠さないのが謎。藤田にギャップがあるから最初の藤田双子説の根拠となるが、同一人物だと発覚してからは ただの矛盾に成り果てている。普通に学校でも勉強しなよ、と彼の美学が中二っぽくて恥ずかしい。
17歳(正しくは16歳?)の双子の姉妹、春田(はるた)もも と さくら。姉の もも が通う塾で初めて好きな人が出来たから春田家は大騒ぎ。塾で親切にしてくれたメガネの男性に もも は恋をした。
もも と さくら は双子だけど正反対。姉の もも は優しくて料理上手で頭がよく お嬢様高校に通っている。しかし身体が弱くて 超 人見知り、男子にいじめられたトラウマで男子と話すことができなかったが、塾のメガネの彼が そのトラウマ克服の第一歩となった。
妹の さくら は その逆。学校内では男女問わず友達が多く、運動神経抜群でフィジカルエリート。脳筋ともいう。そんな さくら のことを学校内でイジりまくるのが藤田 青(ふじた あお)。クラスメイトは藤田との仲を探るが、さくら に そんな意識はない。姉の初恋で、さくら は自分も高2で初恋がまだのことを自覚する。だから恋をしようと努めてみるが、実際に男子生徒たちから恋愛感情を ぶつけられると逃亡してしまう。したいのは自発的な恋であることに気づいた さくら は男子生徒たちに お断りする。今は気付いていないが さくら が感情を揺さぶられるのは藤田だけのようだ。
もも はメガネの男性に助けられてばかりだが内気さが邪魔をして お礼を言えない。彼の教科書を間違えて持って帰ってしまったので返却しようとするのだが、顔のコンディションが悪いからと さくら が もも の髪形を真似して代役をすることになる(毛量が違い過ぎる気もするけど)。もも は自分の都合を優先してしまうのが良くない。
塾に潜入した さくら が目撃したメガネの男性は藤田だった。学校で藤田に描かれた頬への落書き対策として装着したマスクで藤田は もも(さくら)が体調不良なのではないかと考え、彼女を休憩室で休ませる。もも の代役で授業に出なければいけない さくら に対して優しさを見せ授業後ノートのコピーを さくら に渡すように手配してくれた。塾での藤田は学校では見せない一面を見せるので、彼をよく知る さくら は別人説を考え始める。陽の さくら が藤田に会うからなのか、この回は明るい内から塾がある(というか そもそも陰と陽、夜と昼という法則なんて ないのかも…)。
帰宅後、さくら は もも の好きな人が自分の よく知る人物かもしれないという疑惑を もも に話さない。さくら は学校で藤田の様子を観察し、別人ではないかと疑い、彼の兄弟構成を聞く。すると弟が1人いて誕生日が一緒だという。藤田も双子だという結論に達した さくら は双子同士で会おうという話を進める。
しかし その日の夜、塾帰りの藤田(弟)を目撃し話し掛けると、藤田(弟)は藤田その人だった。彼の弟・空(そら)は小学生の男の子。高校生男子の藤田は1人しかいなかった。そして藤田もまた さくら と もも が双子の姉妹だと言うことを理解する。こうして登場人物たちの間に秘密は無くなったが、さくら だけは この一件を通じて藤田にギャップを感じていた。ギャップとは その人の知らない一面。それを知っていくことが彼の魅力に気づくことに繋がる。
前日に藤田に水を掛けられたことと精神的に落ち着かないことで さくら は発熱する。この風邪回に藤田がプリントを持って見舞いに来る。そこで改めて3人が再会する。塾以外で見る藤田の姿は もも にとってギャップを感じるものだろう。
そして以前に さくら が提案した通り、春田姉妹と藤田兄弟を含めた仲良しメンバーでの動物園への お出掛け回が始まる。他の参加メンバーは さくら の女友達、そして学校一モテる男・有永 冬馬(ありなが とうま)の男女3人ずつ計6人となる。
もも のための企画だが それを忘れて さくら は いつも通り藤田と じゃれ合う。その精神的不安という訳ではないけれど もも が軽い熱中症になりダウンする(そういえば病弱設定だった)。そこに藤田が いいタイミングで飲み物を渡し、もも が作った お菓子を通じて全員との交流が始まる。ただ今度は もも と藤田の交流を見て さくら の気持ちが不安定になる。藤田と一緒にいる もも だけでなく、もも の中の優先順位で自分が下位に転落したことが さくら は気になるのだ。
恋に積極的になった もも は さくら を通じて情報収集しようとする。自分も塾で席が隣なのに その勇気を出さない。もも が最も聞き出したいのは藤田に好きな人がいるかどうか。それ以外の情報も集めるために さくら は藤田を改めて見つめることになる。新しく相手のことを知ること、それはギャップを知ることと効果が似ている。


それでも もも も動物園に行ったことで藤田と距離が近くなる。そして自分で距離が近づく手応えを感じた もも は彼に好きな人がいるかという問題を保留にする。
ずっと もも の知りたい情報を集めていた さくら はテストの点数が悪く全教科補習となる。一方で藤田は満点。学校での勉強態度は悪いが、塾に通っている。勉強は藤田の夢を叶える手段らしい。放課後に塾までの時間で学校で勉強をする藤田は いつもより大人びている。これもまたギャップ≒魅力だろう。
