
松月 滉(まつづき こう)
王子と魔女と姫君と(おうじとまじょとひめぎみと)
第03巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★(4点)
イケメン男子たちから前世の責任を取れと迫られた、女子モテ☆な王子系女子・昴! 前世関係者の理事長や美少女・米子も増えて、昴の周囲は一層賑やかに! そんな中、煤原似の男が学校に現れて!? プリンスたちと交流を深めるうち、それぞれの優しさに気付き始めた昴は…!?
簡潔完結感想文
- 昴が誰かを愛することが目標なのに、ずっと愛されることしか描かれない虚しさ。
- 1年半のタイムリミットが設けられたことは、1年間は日常回が続くということか。
- 先輩組の扱いの雑さ、それに比べて仁の丁重さ。誰が選ばれるかドキドキしない。
また1人、脱落者が決定する 3巻。
『2巻』の感想文で書いたけれど、作中でプリンスと呼ばれる5人の生徒は、その人を好きになる固有キャラが登場した時点で、ヒロイン・昴(すばる)に選ばれる可能性は無い、というのが本書の非公式な裏ルールだと思う。この『3巻』でも また1人 脱落者が決定したと言える。本書は誰が選ばれるか分からない恋愛リアリティショーかと思ったら、続々と脱落者が選出されるデスゲームなのかもしれない。
そういう独自の読み方をしないと もう楽しめる要素がない。作中に思わせぶりな台詞は散りばめるが、物語を進める気は毛頭ないことは明白だ。今回のタイトルにもしたけれど、昴が誰を選ぶかの期限は、現在高校2年生1学期の終わりを迎える彼女が卒業するまでと理事長から明かされる。すなわち猶予は1年半余りとなる。
この猶予に白泉社の常套手段を加味すると、この後の1年は何も起きない、ということと同義だと思う。1話から強制恋愛が予告されたけれど、メインキャラが揃ってからは1年間の日常回の連続となる。引っ張れるところまで話を引っ張り、残り1巻分ぐらいで いつでも終わらせられるタイプの作品である。繰り返しになるけれど男性キャラを横一線の状況にしなかった時点で本書の楽しさは半減している。


本書はヒロインの昴が誰かを愛することを見つける物語なのに、序盤からずーーーーっと皆から愛されることしか描かれていない。恋愛趣味レーションゲームで例えるならばプリンスたちが昴からの好感度を上げるのが目的なのに、ずっとプリンスたちの昴の好感度が上がっている。
その目的の履き違えが ただでさえ選ばれる人がバレバレで虚無感が漂う物語を一層 虚しいものにしている。昴が愛されることで読者は承認欲求が満たされるかもしれないけれど、それでは物語が一歩も前に進んでいない。肉体的な接近やセクハラ以外で昴の好感度が上がるような格好いいプリンスたちの姿があるべきなのに、結局 王子様が人たらしでした、という結論。作者はヒロインが愛されるだけの作品は前作でやったのだから、そこから作家として一歩でも前進して欲しかった。
仁(めぐみ)以外で唯一、元親(もとちか)が今回 昴からの好感度を上げたように見えたのに、同じ回で元親を(これから)好きになる女子生徒が現れてしまい、彼はサイレント脱落したばかり。全くドキドキしない、誰もが予想する範囲で物語が進んでいく。しかも ここから1年は現状維持が最優先の日常回である。ここから一層 読みどころが皆無になりそうだ…。
冒頭は零時(れいじ)の個人回(2回目)。プリンスたちの兄弟を出して更にキャラを増員。そして彼らを連載のネタにする。零時回は昴が零時の性格を知って、彼のツンデレ言語の裏にある真意を読み取れる修行とも言える。相変わらず人を魅了してしまう昴、という結論で変わり映えがしない。
続いては女性メンバー5人による お泊り回。失恋した米子(こめこ)を癒やすのも昴の役割となっていて、彼女に運命の人を見つけることが前世からの約束だったようだ。これが随分と長いスパンのロングパスとなることを この時の読者たちは まだ知らない。
その次は隼人(はやと)と夢路(ゆめじ)が まとめて扱われる。やっぱり この先輩たちはキャラとして弱い。性格や言動が どこかしら初期メンバーと被っている部分もあって、キャラクタが掴めないまま。
この回で隼人の恋心が本格始動し、昴は吉野(よしの)と完全にライバル関係になる。けれど吉野個人が昴を認めているので、吉野は もう昴を逆恨みして攻撃したりしない。こうやって きっちりと割り切れる吉野を好きだというファンは少なくないだろう。わざとらしさを感じる昴やイケメンたちよりも女性キャラの方が好感を持てるかもしれない。
続いては仁(めぐみ)の個人回(3回目)。昴が自分にかけられている呪いについて考察していると、理事長がタイムリミットが存在し、それが昴が卒業するまでと宣言される。これは逆に言えば昴が卒業するまでの残り1年半以上、物事が何も動かないことを意味しているのかもしれない。そして理事長はモノローグで呪いのリスクで昴が死ぬことはないが、死ぬより辛いことが待っていると呟く。
ここでは初期メンバーの回想が入り、仁がプリンスたちと出会った高校1年生の頃の話となる。仁は部外者で魔女出ることをプリンスたちに気づかれないのだけど、成り行きで彼らと一緒に行動するようになった。そして ある時、プリンスたちが魔女を心から憎んでいないことを知り仁は救われている。
しかし昴が王子は魔女に嫌われていたから呪いをかけたのではと思っていることで仁は その訂正をしようと少しだけ踏み込む。こんな行動を取ったらバレるキッカケになりそうだけど、昴は鈍感なままでいる。
続いては元親(もとちか)の個人回(2回目)。この回で主要キャラではないものの新キャラとして元親の同級生の音鞍(ねくら)という女子生徒が登場する。音鞍の登場によって元親の運命は決まったと言える。
元親回では、本人の好みと見た目によって決められるキャラの齟齬について語られ、それは昴とも共通の悩みであった。その互いの悩みを相互で解消していく。この回では元親単独で昴のトラウマを払拭しており、彼への好感度は急上昇(ただし1話の焼き直し。昴の攻略ポイントは分かりやすくチョロい)。本命になりにくい可愛いポジションの元親エンドは誰もが予想外な展開ではないか。


最後は真白(ましろ)回(2回目)。この回は勉強回でもあり、昴が真白の自宅に勉強を教えに行き、そこで彼の異母弟妹に会う。血の繋がりについて、兄と弟妹それぞれが悩みを抱える中、昴様が彼らの心を軽くするという いつも通りの展開。
